働く広場2025年3月号
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かに正確に加工できるかが重要だ。選手3人を送り出していた愛知県のろう学校の先生は、「初めてで緊張したようで、いつも通りにはできませんでしたね。3人とも2年生なので、また来年がんばると思います」と話していた。ちなみに同校OBで、第10回国際アビリンピック(フランス・メッス大会)の「家具(応用)」で銅賞を受賞した伊い藤とう俊とし貴きさんは、今回、第62回技能五輪全国大会に出場したそうだ。 知的障害のある選手が参加する「木工」の課題は、「蓋ふた付き木箱」の製作(5時間)。のこぎり、のみ、かんななどの手工具を使い、機械作業ではできないような完成度の高い洗練された製品づくりを競う。高等特別支援学校3年生の坂さか尾お麻ま奈なさん(茨城県)は、銅賞だった昨年の講評を参考に、重点的に練習したそうだ。同行した先生は「学校には各種コースがありますが、専門的な学習を通して、働くときに必要な姿勢、挨拶や報告、同僚との協力などを全般的に学び、どんな業種でも通用するようにして就職を目ざしています」という。すでに木工関係の会社から内定をもらったという坂尾さんは、「今年は90点です。思い残すことはありません」と手応えを語った通り、銀賞に輝いた。●洋裁/縫製/フラワーアレンジメント/ネイル施術/写真撮影 「洋裁」の課題は、薄手ウールを使ったオーダー仕立ての「オーバーブラウス」の製作(6時間)。粗あら裁だちされた布地の裁断→芯貼り→印付け→本縫いミシン→アわれるCADを用いた被かぶせもの(歯列)のデザイン(2時間)と、CAMを用いてプリントした製作物の課題模型への適合(1時間)。天然歯列に調和したデザイン、かみ合わせ、模型への適合などが評価ポイントだ。箱はこ石いし哲てつ郎おさん(青森県)は、歯科技工所を経営しながらアビリンピックに何度も挑戦している。「僕らアナログ世代は、デジタル化についていくのもたいへんですが、思いきって設備投資もして新しい技術を学んでいます」と話し、関係者と熱心に情報交換をしていた。 「義肢」の課題は、繊維強化プラスチック製の「下腿義足ソケット」の製作(4時間15分)。切断部分の正確な型どり、解剖学的・人間工学的知識をもとにした修正、正確な加工・組立を行うための技能などが求められる。今回出場したのは大おお橋はし義よし樹きさん(茨城県)と、吉よし原はら晃こう一いちさん(長崎県)の2人で、それぞれ義肢の会社に勤めながらの初出場。競技後に大橋さんは「見られながら製作するのは初めてで作業も予想外のことがありました。貴重な経験をていねいな義肢づくりに活かしたいです」と話した。一方の吉原さんは「自身が義足で、会社では測定装具をつくっています。今回の挑戦で多くのことを学べました」とふり返った。結果、吉原さんは金賞に、大橋さんは銀賞に輝いた。 「家具」の課題は、花台の製作(5時間30分)。手工具や木工機械を使って図面にもとづいた正確で見栄えのよい作品を完成させる。板と板、角材と角材の接合をいイロン→ロックミシンの順で作業を進める。見た目も美しい仕上がりが求められる。梅うめ本もと遙はる香かさん(大分県)は、10年近く勤める服飾会社で裁断を担当し、社長からアビリンピック挑戦をすすめられ、初挑戦。「職場とは違うやり方が多くて戸惑いましたが、なんとか仕上がりました」と安堵の様子だった梅本さんは、今回同種目でトップとなる銀賞を受賞した。 「縫製」の課題は、エプロンの縫製(4時間)。配布された9枚のパーツをもとにミシンやアイロンなどを使って完成させる。布地の表裏を正しく見きわめ、各工程にあわせた適切な技術と判断力が必要とされる。松まつ髙たか美み咲さきさん(佐賀県)は、大手自動車部品メーカーの子会社で車のシートカバーの縫製などを担当。アビリンピックには特別支援学校時代から挑戦し、今回の初出場を受けて先生が自宅に指導に通ってくれたそうだ。「今回はポケットの部分がきれいにできなかったのが反省点。練習がたいへんだったので、再挑戦するかどうかは考えます」と苦笑いしていた。 「フラワーアレンジメント」は花束(55分)、ブライダルブーケ(55分)、会場装飾(90分)の3課題。このうち会場装飾は骨組みを使ったアレンジメントで、国際アビリンピックの競技内容が取り入れられた。不動産会社に勤める兵ひょう頭どう麻ま耶やさん(愛媛県)は、フラワー教室の講師も務めるほどの腕前で、以前通っていた職業訓練校にすすめられて出場。「今日は講評で先生にブーケをほめていただい開会式で大会旗旗手をつとめた 井出依芭さん(愛知県)は「家具」種目に出場「義肢」銀賞、大橋義樹さん(茨城県)「義肢」金賞、吉原晃一さん(長崎県)「歯科技工」箱石哲郎さん(青森県)働く広場 2025.38

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