働く広場2025年4月号
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人間の究極の幸せはだれかに必要とされること 大山氏は、禅寺での法事の席で隣りあわせになったご住職との会話のなかで、「会社で字が読めない重度の知的障害のある人が働いており、施設で面倒をみてもらったほうがずっと楽だと思うのに、なぜその社員が、毎日会社に来るのか不思議だ」と話しました。 するとご住職は、「人間の究極の幸せは、愛されること、褒められること、役に立つこと、必要とされることで、それらは施設では得られないでしょう。会社であればこそ、こんな大雨のなか来てくれて助かったよ、昨日よりもたくさんつくってくれてありがとうなどと、言葉をかけられるでしょう」と話しました。 さらに、「このように人に〝ありがとう”といわれること、必要とされることが人間としてうれしい、幸せだから、毎日会社に来るのです。企業が人間を幸せにしてあげられるのです」といわれました。 そして大山氏は、思っていたことと正反対の答えが返ってきたことに驚いたものの、「人間の幸せは人に必要とされて働き、自分で稼いで自立すること。そういう場を提供することが自分のできることではないか」と考え、障害者を多数雇用することにふみ切ったそうです。 企業は社会の公器ともいわれます。企業活動は利益を追求することも重要ですが、加えて社会の発展に貢献する責任があります。この「社会の公器」としての役割を果たすために、障害者雇用は重要な意義があるといえるでしょう。2025年度以降の障害者雇用の施策動向 法定雇用率は少なくとも5年ごとに労働状況やその割合の推移を検討したうえで設定されています。現在は2023(令和5)年度からの法定雇用率改定が進められており、2024年度から民間企業は2・5%となりました。また、2026年7月に2・7%となることが決まっています。加えて除外率設定業種(表2参照)の企業においては、2025年度に除外率が一律に10ポイント引き下げられます。 今後は、2028年度に向けた法定雇用率が検討されていきます。労働状況や障害福祉の施策をみても、法定雇用率の引上げは続いていくでしょう。このようなことを意識しながら、企業は経営環境や技術の変化にあわせた障害者雇用を進めていく必要があります。そのため直近の障害者雇用だけでなく、中長期的な視点から戦略を考えることが求められています。除外率設定業種除外率(変更前)除外率(変更後)非鉄金属第一次製錬・精製業・貨物運送取扱業(集配利用運送業を除く)15%5%建設業・鉄鋼業・道路貨物運送業・郵便業(信書便事業を含む)20%10%港湾運送業 ・警備業25%15%鉄道業・医療業・高等教育機関・介護老人保健施設・介護医療院 30%20%林業(狩猟業を除く)35%25%金属鉱業 ・児童福祉事業 40%30%特別支援学校(専ら視覚障害者に対する教育を行う学校を除く)45%35%石炭・亜炭鉱業50%40%道路旅客運送業 ・小学校55%45%幼稚園 ・幼保連携型認定こども園60%50%船員等による船舶運航等の事業80%70%除外率制度とは?障害者の就業が一般的に困難であると認められる業種について、雇用する労働者数を計算する際に、除外率に相当する労働者数を控除する制度です。ノーマライゼーションの観点から、2002(平成14)年法改正により、2004年4月に廃止されましたが、経過措置として、廃止に向けて段階的に除外率の引下げ、縮小が行われています。(編集部)(参考:厚生労働省「除外率制度について」)厚生労働省リーフレット(障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について)より編集部作成表2 令和7年度からの除外率設定業種と除外率働く広場 2025.411

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