働く広場2025年4月号
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告をしてくれるようにもなりました」(好川さん) コミュニケーションの向上に合わせるように、石井さんは、機械の脱着といった新しい担当作業もいくつか増やしてきた。 最初は時間をかけて好川さんと一緒に一つひとつの作業をくり返し、作業が正しくできているかフィードバックしながら覚えてきたそうだ。「補助的な作業をいくつか担当できるようになった分だけ、ほかの社員も助かります。間違いなく戦力ですよ。今後はさらに難度の高い作業も、根気強く時間をかければできるようになると思います。本人からは『やってみる』という意欲も感じられるので、少しずつ、周囲とのコミュニケーションを図りながら、担当する作業を増やしていけたらと思います」と好川さんは期待している。 石井さんにも話を聞いてみた。こちらの質問に、はにかむような笑顔で、答えに困る様子を見せながらも、休日にはゲームセンターに行くこと、自転車で通勤していることを教えてくれた。「好川さんはどんな人ですか」との質問には、にっこりしながら「やさしいです」と答えてくれた。ちなみに、年に1回の社員旅行も、行きたい場所があるときなど参加するようになったそうだ。 総務部長の山やま本もと真しん也やさんも、「安心して頼ることができる上司がいることで、本人も大きく成長できました」と話す。 「入社した当時は、親御さんがついてきたり、代わりに連絡をされたりしていたようですが、いまはそういうことも一切ありません。突発的に休まないといけないときも、本人から好川さんに直接連絡しているようです。社会人として自立してきていることもうれしいですね」 障害者職業生活相談員(※)でもある山本さんは、数年前に瀬戸製作所に転職してきた。以前は大手自動車メーカーの特例子会社に出向していたことがあり、そこで多くの障害のある社員に仕事を指導していたという。こうした豊富な経験も含め、職場内で何かと頼られる存在だ。 次に案内してもらったのは、同じ工場建物内の、総務部などがある事務所と透明ガラスで隔てられた小部屋。ここは、できあがった製品の性能などを保証するための検査や測定を行う品質管理室だそ工業高校で学んだことを活かすうだ。 その一角で、回転型の測定機と向き合っていたのは、2013年に入社した品質管理課の田た淵ぶち航わたるさん(29歳)。 測定機の真ん中には、油圧バルブの中に組み込まれる弁棒といわれる小さな金属部品が取りつけられている。田淵さんは「これは真円度測定機と呼ばれるもので、この弁棒がどれぐらい正確な円状であるかを計測しています」と教えてくれた。この業務でもっとも気をつかうのは、数値の違和感だという。 「手順通りの操作をすれば自動的に数値を出してくれますが、ごくたまに、ちょっとした設置のずれなどで、誤った数値が出ることがあります。そこを見逃さないように、『いつもと違うな』とか『ここでこの数字はおかしいかも』といった違和感を大事にしています」 両足が不自由な田淵さんは、地元の工業高校で就職活動をしていたときに、瀬戸製作所の求人票があると先生から紹介されたそうだ。「ほかにも印刷会社でパソコンを使う仕事もあったのですが、電子科だったので、ここの職場が合っていると思いました。一緒に入社した同級生もいました」※「障害者職業生活相談員」の詳細はこちらをご覧ください。 https://www.jeed.go.jp/disability/employer/employer04.html総務部長の山本真也さん品質管理を担当する田淵航さん働く広場 2025.47

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