働く広場2025年6月号
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リテーションセンターの支援により、3年ほど前に大曽根支店に就職したとのこと。現在、朝8時から夕方5時まで場内整理の仕事をしている。 メモを取るようにうながされることもあるが、西濃運輸のスタッフの人たちが気をつかってくれるのを感じており、たいへんありがたいと思っているとのことである。現在は58歳で定年は65歳ではあるが、土井口さんによれば西濃運輸では70歳までアルバイトで働くことも可能とのことであり、それを聞いた本田さんは、「体が続くかぎりやりたいと思います」とおっしゃっていた。 事務室でお話を聞かせていただいたあと、長谷川さんの積み込み場での作業の様子を見学させていただいた。周囲の方とも大きな声やジェスチャーなどを用いてコミュニケーションを取りつつ、荷物を置くなどきびきびと動いていた。また出荷のための台車に荷物を積む様子も、無駄なスペースなくきちんと積むことができており、熟達した技に感銘を受けた。  高次脳機能障害という障害の種類は、障害者就労支援のなかで多数派というわけではないものの、統合失調症や双極性障害などの精神障害、発達障害、知的障害とも異なる配慮が必要である。 そのため、就労支援を行うすべての障まとめに採用される前は、笑い太鼓に2年間弱通い、そして森下さんによるジョブコーチ支援を受けて、大曽根支店での採用・定着につながっている。現在は午後2時から午後8時までの勤務であり、特に夕方5時からのシューターという、商品を行き先ごとに自動で仕分けてくれる機械から流れてきた荷物を積み込むなどの作業で活躍しているそうである。 ご本人は「届いた荷物の仕分け作業や出荷作業をやっています。この会社で働いて2年ぐらいになります。仕事のほうはだいぶ慣れてきました。周りのみなさんに教えてもらいながら。まだわからないところがあったら、なんでも聞いてねと、いってもらってます」とのこと。 また現在も、月に1回程度、出勤前などに笑い太鼓に顔を出すこともあるとのこと。やはりこういった支援機関の就職後のかかわりはありがたいとのことであった。今後について、「今年40歳になります。親に迷惑をかけないよう、なるべく早く一人暮らしをしたいです」と今後の目標を語ってくれた。 もう一方の高次脳機能障害のある従業員である本ほん田だ俊しゅん治じさんからもお話を聞くことができた。 本田さんは、名古屋市総合リハビリテーションセンターの支援を受けて就職をした。本田さんは、以前は建築関係の営業職をされていたが、くも膜下出血で倒れた。その会社は退職し、名古屋市総合リハビ害福祉サービス事業所が高次脳機能障害のある人の支援について高い専門性を持つというのはむずかしいかもしれないが、笑い太鼓のような高次脳機能障害に高い専門性を持つ支援機関が、その地域に存在することは、当事者はもちろんのこと、企業やさらにはほかの支援機関にとっても非常に頼りになっていると思われる。 また、支援方法として、ジョブコーチによる個別的支援により障害のある人の職場適応支援や企業への障害特性などの説明をしていること、就職したあとも地域活動支援センターとして寄り添い続けていることも、効果を上げている要因であると考えられる。 受け入れ側である西濃運輸株式会社大曽根支店という、高次脳機能障害に理解を示していただいている企業・職場の存在も非常に大きい。このような理解には、森下さんなど支援機関の力に加え、西濃運輸にもともとあった理念やカラーと、障害のある人のスキル(今回の場合は挨拶が良好ということ)のマッチングという面も貢献しているように思われる。 本事例ではさまざまな効果的な歯車が組み合わさって現在の状況に至っていると思われる。ただし、それぞれの要素一つひとつも、企業や支援機関にとって大いに参考になるものであり、本稿の情報が他地域での、高次脳機能障害のある人の就労支援の進展に少しでも寄与することを期待したい。シューターから流れてきた荷物を仕分ける長谷川さん大曽根支店で働く本田俊治さん。荷物を作業用の台車に積み込む働く広場 2025.625

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