1991(平成3)年設立の食品加工会社「株式会社松本パック」(以下、「松本パック」)は、おもに即席みそ汁やインスタント麺に入っている乾燥具材・粉末スープなどを充填包装する業務を手がけている。群馬県伊勢崎市内に三つの工場があり、大手メーカーからのさまざまな注文にこたえている。 松本パックで障害のある従業員を雇用し始めたのは2005年。たまたま特別支援学校からの依頼で実習生を受け入れたのがきっかけだそうだ。その後も学校やハローワークなどから紹介を受けながら採用を重ね、いまでは従業員269人のうち障害のある従業員は15人(知的障害14人、精神障害1人)、障害者雇用率は7・32%(2024〈令和6〉年6月1日現在)だという。また松本パックは、2023年度、「障害者雇用優良事業所」当機構理事長表彰を受賞している。現場で働く従業員の活躍ぶりとともに、障害者雇用の取組みの経緯や工夫を紹介する。 松本パックの代表取締役社長を務める乾燥具材などの充じゅう填てん包装職場実習の受入れを機に松まつ本もと泰やす明あきさんは、障害者雇用の取組みについて「恥ずかしながら私よりも専務が、採用から日ごろの支援までほぼ取り仕切ってきました」と明かす。専務とは、泰明さんの妻である松まつ本もと詠えい子こさんのことだ。 詠子さんは「ある日、特別支援学校の先生から『そちらの近所に住んでいる生徒に、職場実習を受けさせてもらえないか』との相談を受けたことが始まりでした」とふり返る。 それまで松本パックに障害のある従業員はいなかったが、二つ返事で受入れを決めたのは、詠子さんの母親の影響が大きかったという。40年ほど前、群馬大学教育学部養護学校(現・群馬大学共同教育学部附属特別支援学校)の養護教諭をしていた母親が、「生徒たちは一つのことに集中して取り組めるんだよ」と長所をあげながら、「就職先がとても少ないのは残念」と話していたのを、詠子さんはずっと覚えていたそうで「職場実習受入れの話に、自分たちも役に立てるチャンスが来たと思いました」と話す。 初めての実習生は、当時高等特別支援学校2年生だった飯いい島じま憂ゆう巳みさん(38歳)。事前に工場見学をした先生によると「こつこつまじめに取り組むことが得意な飯島さんに、ここの仕事は合っていると思いました」とのことだった。 一方で詠子さんは、「飯島さんにとって初めての働く機会だから、ここで何か嫌な思いをして『仕事って嫌だな、会社って怖いな』って思ってしまったら、その後の人生に大きな影響を与えてしまうかもしれない」と心配した。そこで従業員を集め「まずは飯島さんに、嫌な思いを特別支援学校からの実習生受入れが成功例となり、 継続的に採用1本人の適性を見ながら、担当作業を柔軟に見きわめる2自由参加による定期的な集まりで、学び合いながら 仲間意識も醸成3POINT株式会社松本パックは、乾燥具材などの充填包装業務を手がける専務の松本詠子さん株式会社松本パック代表取締役社長の松本泰明さん(写真提供:株式会社松本パック)第1工場製造2課の飯島憂巳さん働く広場 2025.65
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