働く広場2025年6月号
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しないで働いてもらいたい」と伝えたところ、みんなが協力してくれたそうだ。 工場内でのおもな業務は、包装業務ラインでの流れ作業だが、「飯島さんが流れについていくのはむずかしいかもしれない」と判断した現場の社員が、ラインのわきにテーブルを置き、飯島さんのペースでやってもらうことにした。 ところが始めてみると飯島さんは手ぎわがよかった。周囲の従業員たちも「これならすぐに一緒にできるかも」と驚いたそうだ。飯島さんは、高等特別支援学校2・3年次に毎回2週間の実習を計4回経験し、2005年に入社するころにはすっかり職場と仕事に慣れていた。 このときの成功を活かし、特別支援学校からの実習生には1年次の職場実習後、2・3年次に計8週間ぐらいの実習経験をしてもらっている。 「ある程度長い時間をかけて一緒に働けば、何より本人に自信がつきます。その間に親御さんとも情報共有をしながら協力関係を築くことができます」と詠子さん。 飯島さんは第1工場の製造2課で、ほかの従業員と一緒に包装業務ラインに立ち、勤続20年になる。仕事のベテランぶりについて詠子さんが語る。 「以前、繁忙期に私がヘルプでラインに入ったとき、隣の飯島さんよりも作業が遅くなっていました。気づくと飯島さんは、何もいわずにそっと私の分までやってくれていたんですよ」 飯島さんは恥ずかしがり屋さんということだったが、無理をいって少しだけインタビューに答えてもらった。仕事で心がけていることは「間違えないことです。やはり間違えることはあるので」とのこと。専務の詠子さんについて聞くと「本当に思いやりのある、やさしい人です」と即答してくれた。 飯島さんの成功例が関係者にも伝わり、その後すぐにハローワークなどからの紹介で、飯島さんが入社した翌年に2人が入社した。その1人が大おお橋はし祐ゆう介すけさん(40歳)だ。 第2工場の製造1課に所属する大橋さんは、機械で具材が封入された大量の小袋を、組み立てた段ボール箱に入れて運び出す業務の担当をしている。「毎日300箱ほどを組み立てて、運んでいます。だれかにぶつからないよう、周囲に人がいないか注意しながらの作業です」と説明してくれた。 大橋さんについて、社長の泰明さんは「大次々とハローワークから紹介きな戦力です」と断言するエピソードを紹介してくれた。以前、食品関連の大手企業から、商品のナポリタンにつける小袋入りの粉チーズを大量受注した。イタリアから送られてきた粉チーズは長期冷蔵の影響で固まっていたため、大きなざるを使って再び粉状に濾こす作業が必要だった。それを大橋さんは1人で毎日ひたすらやり続けたそうだ。 「ほかの従業員さんも手伝いましたが、彼だけは最初から最後まで根気強く2年間ほど続けました。彼にしかできなかったと思います。あのときは本当に助かりました」(泰明さん) そんな大橋さんは最後に、「マイカー通勤で、最近ガソリン代が高いですが、ここは給料がいいのでよかったです。長く勤められるようがんばります」と笑顔をみせてくれた。 大橋さんの職場では後輩も育っている。上うえ原はらガブリエルさん(21歳)は、特別支援学校での実習を経て2022年に入社小袋の入った段ボール箱を保管場所に運び出す大橋さん飯島さんは、包装業務ラインでの作業を担当している第2工場製造1課の大橋祐介さん働く広場 2025.66

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