した。大橋さんと同じように、段ボールを組み立てたり運んだりと、力仕事に励んでいる。職場では「ガブちゃん」と呼ばれ、かわいがられる存在だ。 上原さんは「最初は、積み上げた段ボールにラップを巻いたり、製品の名前を書いたりする仕事がたいへんだったけど、いまは大丈夫です。目標は遅刻しないことと、一生懸命にやることです」と話す。最近、詠子さんたちを驚かせたのが運転免許を取得したことだ。日ごろは自転車通勤だが、たまに母親を助手席に座らせて運転をしているという。 実習内容も含め入社後にどんな仕事をしてもらうかは、支援機関の担当者等と相談しながら、体力や手先の器用さ、性格なども考慮して配属先を決めているという。 ある知的障害のある女性は実習中、緊張すると手が震えてしまい、ライン作業がむずかしいとわかった。一方で、ライン用に具材を準備する仕事は難なくこなすことができた。「現場の担当社員とつねに相談しながら、違うかなと思えばどんどん変えて、本人が一番力を発揮できそうな担当作業をみつけていくようにして力を発揮できる分担作業います。工場内はいろいろな分担作業がありますから」と詠子さん。 仕事内容などを覚えやすいよう写真つきのマニュアルも使っているが、「障害のある従業員のためだけではないんですよ」と詠子さん。というのも伊勢崎市には外国籍の人が多く住み、工場で働く従業員も2割程度が外国籍だという。工場内にある掲示も日本語、英語、タイ語、ベトナム語とともにわかりやすい写真やイラストがつけてあるそうだ。 2019年、10人以上に増えていた障害のある従業員を対象に、月1回の集まり「ブルームの会」がスタートした。 きっかけは詠子さんが、群馬県障害者雇用ネットワーク登録企業が集まった会ブルームの会合で他社の事例を知ったことだった。「当事者による社内グループ活動で活き活きとしながら仕事への意識を高め合い、助け合える機会になっているとわかりました」(詠子さん) ブルームという会の名前は、従業員が家族と一緒に考えて提案し、みんなで「かっこいいね」と決めたそうだ。 毎回自由参加で、就業時間後に集まり、詠子さんがテーマを提供して意見交換を行っている。「職場内でよくないことをした従業員がいたり、ちょっとしたトラブルがあったりしたときは、本人の名前はふせてケースとして紹介し、みんなで『どうするべきだったか』などと話し合います。第2工場製造1課の上原ガブリエルさん材料の入った段ボールを充填室に運び込む上原さん工場内の注意書き。イラストによる図解やふりがながふられ、だれにでもわかりやすいブルームの会で行われたボーリング大会での一コマ。月1回の集まりを楽しみにしている従業員も多い(写真提供:株式会社松本パック)働く広場 2025.67
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