まじめにていねいに作業してくれます。私がダブルチェックをしていますが、全然ミスがありません。それどころか製品の小さな傷も見つけ出してくれるので、助かっています」と太鼓判を押す。実際に水本さんは2024年、2人の従業員とともに社内で「品質優秀賞」を受賞している。 中さんは、水本さんについて「そろそろ次のステップというか、ほかの業務にもトライしてみないかとすすめているところです」という。そして、いまはピッキング作業をペアでやり始めているそうだ。同時に、現在の6時間勤務のパートタイム契約から正社員を目ざせるよう、週1回の8時間勤務も試している。 「フォロー面談などで、みんなで相談し、彼女の意思を尊重しながら進めています」と平瀬さん。中さんも「これは本人が自立して生活していくためのキャリアアップの一環です。余計なお世話と思われているかもしれませんが、少しずつ背中を押していきたいですね」と親心をのぞかせる。 水本さんも「新しい作業でミスがないか不安になることもありますが、ほかの業務もフルタイム勤務も、挑戦したいと思っています」と笑顔で意欲を語ってくれた。 2017年に入社した沙いさご新しん吾ごさん(56歳)は、前の仕事を辞めてから、初めて療育手帳を取得したという。「なんとなく自覚があったので、きちんと診断してもらいました。その後は障害福祉サービス事業所で清掃やシール貼りの作業などをしていました」 その後、福井障害者就業・生活支援センターの紹介で5日間の就業体験に参加し、「就業振り返り会議」などで必要な配慮についても情報共有してもらったそうだ。平瀬さんによると「人と話すのが苦手と聞いていたので、会話の負担をかけないようスケジュール表を作成し、それに沿って作業できるようにしました」。 沙さんの担当は本社建物内の清掃業務で、日ごろは1人でこなしている。会議室や食堂、廊下など場所も内容も多岐にわたるが、最初は福井障害者職業センター人と話すことが苦手でもから派遣されたジョブコーチにくり返していねいに教えてもらいながら、作業を覚えることができたそうだ。 5~10分ごとに細かく区切られた「作業タイムスケジュール表」も年々改善されてきた。簡単な平面図に番号で清掃場所を示したり、使い分けるタオルを色で判別しやすくしたり、備品の補充を総務部に依頼するときは「注文リスト」にチェックを入れて提出する形にした。沙さんは「いまはストレスなく、1人で作業できているので働きやすいです」と話す。平瀬さんによると「職場に慣れてきたのか、最近は注文リストを提出するときも、私たちに声がけをしてくれるようになっています」とのことだ。 一人暮らしの沙さんは「今後は、健康に気をつけながら定年まで働き続けることが目標です」と話してくれた。私生活では、毎日家計簿をつけ、お弁当もつくっているそうだ。 4人目に紹介するのは、2021年に「優秀勤労障害者」当機構理事長努力賞を受賞した油あぶら谷だに宏ひろ明あきさん(36歳)だ。油谷さんは2007年、農業高校の卒業と同時に入社し、品質保証部で検査業務を担当し「優秀勤労障害者」を受賞総務部総務課の沙新吾さん沙さんは、清掃業務のほか「新聞折り」の作業も担当している折りたたんだ新聞は、製品を入れるコンテナの下敷きや中敷きとして利用されている働く広場 2025.78
元のページ ../index.html#10