働く広場2025年7月号
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早い段階で自分自身を理解し、対処できるようになってほしい、という願いから、『リワーク』をやっています。早期発見、早期対応の大切さがご本人にも企業にも浸透していくとよいと思います」と茂木さんがお話しくださいました。  小石川デイケアの瀬戸口さんによれば、利用機関によっては、リワークには次のような課題がみえています。・企業との連携・症状の改善に時間を要する・個別対応の困難性・利用期間の短縮・職場復帰後のサポート・支援の範囲がかぎられる・ほかの医療機関との連携・一般枠か障害者枠かの選択・ 無料でリワークを行う行政機関の予約が取れないこと・費用負担の問題(企業か、個人か) 就職したときは一般雇用だった人が、過酷な労働環境によるメンタルダウンによって精神障害と認定される状態になり、職場復帰をするときに、障害者枠での勤務にするかどうか、という大きな問題が出てきます。本来、従業員の潜在能力を活かすことが求められる職場において、逆にリワークをめぐる課題 「自分をよりよく知ること、働く前の自分を取り戻すためにどうすればよいかに気づいてもらうこと、物事のとらえ方の癖、復職後の自分の立ち位置について考えるというワークを行い、一緒にふり返りを実施してきました。リワークで元気を取り戻し、復職していった方と面談をすると、職場ではコミュニケーションがうまくできないという状況がみえてきて、やはり医療機関で行う認知機能リハビリテーションが必要と考えました」 「日本精神障害者リハビリテーション学会前会長である池いけ淵ぶち恵え美み先生を中心とした医療者が開発した、『VヴィーキャットジェイCAT-J』という支援プログラムと出会いました。これは『Jジェイコアーズcores』というソフトウェアを用いた認知機能リハビリテーションと、就労支援モデルを組み合わせた支援プログラムです。注意・作業記憶・処理速度・言語性記憶・流暢性・遂行機能の六つをパソコンゲームと言語セッション(グループワーク)を通じて高めていくプログラムです。本人の得意なことや苦手なことを支援者と共有して、それを基に職場で働きやすくするための合理的配慮に活用することが、大事なポイントです。今後効果が出てくると期待しています」  「メンタル不調がどんどん悪化する前に、早期発見・早期対応  JSNでは、利用前に3点セットと呼ばれる書類を用意しています。①本人アンケート、②主治医意見書、③支援者アンケートの三つです。もちろん、本人との面談からの聞き取りを大事にしながらも、別の角度の意見もアセスメントの参考にしています。日ごろから医療機関とのかかわりが多いため、本人と関係者の連携に長けている印象があります。 全さんは、休職・離職にいたるまでの思いを吐露してもらい、悲しみや怒り、自分を責めるといった気持ちの整理をすることを手伝います。自信を失くしている方が多いので、「本来の自分らしさ」は何だろうと一緒に考えていきます。その変化を文書化し、経緯報告を求める企業へは本人に確認したうえで伝えるようにしています。 休職は主治医の判断のみで可能ですが、復職には会社の判断も必要です。主治医が「復職可」と判断しても、会社側から「待った」がかかることもあります。正確な情報の共有が必要であると感じました。  井川さんに、新しく導入したプログラムについてお話しいただきました。医療・本人・企業を結ぶ支援プログラムの進化Jcoresプログラムゲームタイトル画面(画像提供:VCAT-J研究会)Jcoresプログラム機能選択画面(画像提供:VCAT-J研究会)働く広場 2025.724

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