働く広場2025年7月号
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 また、企業と医療機関が協働することで、「この企業は復職を支援してくれる」という安心感が職場内に広がり、社員のエンゲージメント向上にもつながるのではないでしょうか。  現在、リワークプログラムを実施する機関では、企業側からの相談にも対応しています。まずは地域にどのような支援資源があるのかを把握することが第一歩です。加えて、以下のような企業内での制度整備が必要です。・復職に関する社内ガイドラインの整備 ・リワーク利用時の社内フロー明文化 ・ 通勤練習期間や時短勤務など合理的配慮の設定 ・ 人事担当者のメンタルヘルス研修の実施 こうした取組みを通じて、メンタル不調に陥った社員が「戻れる場所がある」と感じられる職場環境を整えることが、求められています。  今回、筆者がリワークを取り上げるきっかけとなったのは、とある公的機関の医師が「最近、休職者は企業から復職前にリワークプログラムの受講を決められている場合が多く、費用のかからない公的機関は数導入・活用のヒントまとめダウンしてしまう現象が、決して少なくないということに、多くの人がもっと注意を向けていかなくてはならないと感じました。 ひとたび職場を離れると、元に戻すには時間とエネルギーがかかります。本人の心、身体、金銭面などの負担が発生し、また企業側のダメージもとても大きいことがよく理解できました。だからこそ、重篤な状態にならないように、企業が職場環境を整備する必要もあるのではないでしょうか。同時に初期症状を自分でも気づくことができるような、メンタルヘルス教育が重要であると痛感しました。  障害者雇用を担当する企業の人事・労務担当者にとって、精神障害のある従業員の「定着」は大きなテーマです。特にうつ病を含む気分障害は、就労しても長続きしないという課題があり、定着において支援が必要とされます。 リワークプログラムに参加した従業員は、単に症状が改善しただけでなく、「自分の強み・弱みを理解し、セルフマネジメントができる」状態に近づいています。企業にとっては、このようなプロセスを経た復職者をよく理解することで、精神障害のある従業員の定着につながる知識が得られると考えます。企業側が知っておくべき リワークの意義カ月の順番待ちである」と発言したのを耳にしたからでした。費用がかかるのは、どのような機関なのか、違いは何なのかと疑問がわきました。今回は医療機関のデイケアと就労移行支援事業所を取材し、それぞれの特徴を知ることができました。 職場にはストレスがつきものですが、昔に比べると対処しきれず、身体に変調をきたしてしまう人が増えているような感覚を持ちます。もちろん職場だけではなく、家庭などの生活面にもストレスは多く存在します。 取材でみえてきたのは、安心して「しんどさ」を正直に語れる場所をみつけられない人がじつに多いということでした。日々のつらさが極まったとき、メンタルと身体症状の崩れが起き、休職や離職につながります。ですが、リワークのような信頼できる人と場所に出会え、自分の気持ちを言葉にしたとき、傷が癒え、回復していくのも事実です。 リワークプログラムの進化や、医療者、支援者の熱意と努力をすばらしいと感じました。しかし、かかわるみなさんが「じつは、リワークプログラムが不要となる世界を求めている」と発言していたのも事実です。そもそも、職場でのメンタルダウンが発生しなくなるような取組みについての情報がもっと広まり、減らしていきたいと願う機運が高まることが重要なのではないか、と思いました。働く広場 2025.725

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