特別支援学校の卒業生のために――柳本さんが理事長を務める「社会福祉法人わかぎり」は、もともと特別支援学校の卒業生のための「青年学級」から始まっているそうですね。柳本 はい。現在の筑波大学附属大塚特別支援学校(以下、「大塚特別支援学校」)で1967(昭和42)年に開設された「青年学級」が始まりです。これは特別支援学校の卒業生らに学習や余暇活動の機会をつくることを目的にした取組みで、1960年代以降、全国各地で展開されてきました。いまは自治体や地域ごとに運営しているケースもありますね。 青年学級は当初、学校職員らが行っていましたが、保護者のみなさんの間で、「卒業生たちの成長を支える青年学級をよりよい活動にしていこう」という思いが広がり、親の会である「桐とう親しん会かい」が発足し、1978年には一般社団法人の認可を取得しました。最初は校長先生の自宅を事務局にしていたそうです。 そこまで熱心だったのは当時、特別支援学校を卒業した子どもたちが、引き続き通える福祉作業所のような場所があまりなく、学校側が「卒業生のアフターケア」の必要性を強く感じていたからでしょう。保護者のみなさんも、横のつながりがなくなることへの不安だけでなく、地域に受け皿が必要だという問題意識があったのだと思います。私自身は2000(平成12)年から10年間ほど大塚特別支援学校の校長を務めた縁もあって、桐親会とつながり、運営を見守ってきました。 いまも青年学級は、大塚特別支援学校の体育館を会場にして月1回程度開催しています。ミニ運動会や音楽を楽しむ会、ゲーム大会、バスを借り切っての1泊旅行、二十歳を祝う会、手話講座など、毎回趣向を凝らした内容です。 開設から58年になる青年学級は、参加者も卒業したての若者から70代までと幅広い年齢層になっています。卒業生のみなさんが、安心できる環境で、ともに学び、楽しい時間を過ごせる場を提供し続けてこられたのは、ひとえに保護者のみなさんの熱意と学校側の協力のたまものだと感じています。 また桐親会では、青年学級を軸にして、さまざまな活動・事業を展開してきました。定期的な余暇活動として和太鼓教室や音楽クラブ、フラワーサロンとお茶会、在校生の放課後支援活動などを続けていますし、社会参加の機会を広げるために高齢者施設などを訪問する試みもありました。 こうした青年学級を中心とする活動のなかで、最も大きく展開したのが2002年に開所した 「青年学級」から始まった活動の広がり社会福祉法人わかぎり理事長、東京福祉大学教育学部教授柳本 雄次さんやなぎもと ゆうじ 1947(昭和22)年、静岡県生まれ。1975年3月、東京教育大学大学院教育学研究科特殊教育学専攻博士課程単位取得後退学、筑波大学心身障害学系教授、筑波大学附属大塚養護学校校長などを経て、2018(平成30)年4月から東京福祉大学教育学部教授、2021(令和3)年からは社会福祉法人わかぎり理事長も務める。著書に『特別支援教育~一人ひとりの教育的ニーズに応じて』(共編著、2019年、福村出版)、『使ってみよう!スヌーズレン』(共編著、2022年、ジアース教育新社)など。働く広場 2025.72
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