働く広場2025年7月号
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も開いた。福井障害者職業センターから、本人の特性や必要な配慮、ジョブコーチ支援の内容について説明を受け、アドバイスももらった。平瀬さんは「いろいろな面で初めて経験することもあり、専門家の方たちに相談しながら受け入れの準備ができたのは心強かったですね」と当時について話す。 その男性社員は、職場では出荷準備作業などを順調にこなしていたが、事情により7カ月後に退職となった。「残念な結果でしたが、受け入れが失敗したわけではないので、引き続きハローワークなどの紹介を受けながら採用活動を進めていきました」と高橋さん。 同年のうちに男性2人を採用し、最初に入社した従業員と同様に、支援会議や学習会を開催しながら定着支援に力を入れたそうだ。前回同様、ジョブコーチによる支援を活用し、入社3カ月後には「ジョブコーチ支援振り返り会議」として、福井障害者就業・生活支援センターの担当者も加わり、職場改善や本人への支援対応について情報交換を行った。 2人のうち1人は2年目にやむなく退職となったが、もう1人の麻あそう生竜りょう馬まさん(37歳)は、現在勤続10年目になるという。さっそく、麻生さんが働いている現場を見せてもらった。 麻生さんの配属先である製造部製造2課組立グループは、本社2階のフロアにある。あちこちに部品材料などが入った容器が積み上げられ、従業員はそれぞれ部品の組立作業などに従事している。麻生さんも、組立の工程の一つであるナットやワッシャーの組付け作業をしていた。 麻生さんは、以前の職場で体調を崩し退職後、就労移行支援事業所に通っていたところハローワーク経由で紹介されたそうだ。日本AMCでは、本人の特性を考慮して「作業指示はこまかく分ける」、「図や写真を活用した説明」などの工夫をしながらOJTを重ねた。 麻生さんについて、製造部製造2課課長の今こん度ど隆たか宏ひろさんは、「ほかの従業員と分けへだてなく指導していますが、毎日コミュニケーションをとるようにしています」と話す。本人の特性として、周囲への注意力が散漫になったり、忘れやすくなったりすることがあるため「現場には安全面で守るべきルールがあり、麻生さんには、毎日のようにくり返し確認しています」とのことだ。 また麻生さんは、隣のベテラン男性に話しかけることが好きで、つい話に夢中部品の組付け作業になってしまうこともある。そこで本人に承諾を取り、2人の間にパーテーションを立てることで、作業の合間だけ世間話ができるようになっているそうだ。 数年前から麻生さんは、組付け作業以外にも、部品入り容器を別フロアから運搬してくる作業も担当するようになった。「やることがたくさんあって、たいへん」という麻生さんだが、一方で「いまはやさしい先輩がいて、上司もよい人だからありがたいです」と明かしてくれた。 麻生さんたちが入社以来ずっと続けているのが、2カ月ごとの「障がい者フォロー面談」だ。就業面や生活面についての状況確認と可能な支援について、本人と総務部、配属先の管理職らが一緒に話し合う場となっている。 高橋さんは「日ごろから本人と会話はしていますが、それとは別に面談というあらたまった場で、じっくり話を聞いてもらいたいという気持ちがあるようです。職場では言葉数が少ない従業員でも、面談の終わるころに、急に話し始めることも少なくありません」と話す。 面談を通して本人の状況を把握するなかで「思い切って生活面に立ち入ること2カ月ごとの面談でフィードバック製造部製造2課組立グループの麻生竜馬さん製造部製造2課課長の今度隆宏さん麻生さんは、ナットやワッシャーの組付け作業を担当している働く広場 2025.76

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