もあります」と平瀬さん。あるときは、年末調整で保険料の金額がかなり高いことに気づいた平瀬さんたちが本人に確認してみると、必要のない保険契約をいくつもしていたことが判明した。外部の支援機関とも連携しながら、解約手続きをサポートしたこともあったそうだ。高橋さんが話す。 「本格的な障がい者雇用に取り組むときは、やはり外部の就労支援機関との連携体制づくりが最重要だと実感しています。一人ひとりの特性について多様なアドバイスをもらいながら一緒に職場環境を考えていけば、私たちができることも多いと気づきますね」 現場の上司や同僚に見守られつつ、キャリアアップを図っている従業員もいる。営業部出荷課出荷Bグループに所属する水みず本もと美み咲さきさん(25歳)だ。特別支援学校3年次に先生からすすめられて会社見学に訪れ、夏休みを活用した就業体験を6日間、11月~12月にも現場実習を9日間経験したという。 水本さんは2018年の入社以来、オーリング装着と呼ばれる出荷準備作業を担当してきた。オーリングとは環状パッキン社内で品質優秀賞のことで、ネジなどにはめ込むことで接着部分から液体などが漏れないようにするものだ。 作業デスクに置かれた専用トレーは20カ所に区切られており、水本さんが、一つずつオーリングを入れてから、専用の治具を使ってネジ部品に一つずつはめ込んでいく。営業部出荷課課長の中なか重じゅう徳とくさんは、「この専用トレーを使うことで、数え間違いによる二重装着・装着漏れや異品装着を防止しています。水本さんにかぎらず、だれもが作業しやすいよう工夫した職場改善の一つです」と説明する。 同じ現場の先輩としてフォロー役をになっている酒さか田た真ま奈な美みさんは、「心がけているのは、不安のない状態で仕事に取り組んでもらうことです」と話す。「『気になることはいつでも聞いてね』といってありますし、顔や手の動きが見える距離にいるので、動きが止まったり顔色が悪かったりするときは声をかけています」 特に入社から数年の間は体調を崩すこともあり、休憩室に行くよう誘導したり、同僚の女性従業員らで励ましたりしていたそうだ。水本さんは「最初のころは仕事への緊張で、食べても吐いてしまって、すごく痩せてしまったこともありました。だんだん職場に慣れてきて、大丈夫になりました」とふり返る。最近では「安全唱和の声が大きいと褒められたことが、うれしかったです」という。 水本さんの仕事ぶりについて酒田さんは、「とにかく素直でまっすぐな性格で、水本さんは、オーリング装着作業を担当している営業部出荷課出荷Bグループの水本美咲さんオーリングの装着漏れ防止などに専用トレーが活用されている営業部出荷課課長の中重徳さん営業部出荷課で水本さんのフォローにあたる酒田真奈美さん働く広場 2025.77
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