いう。そのうちに気仙障がい者就業・生活支援センターからの紹介で、住田フーズでの職場実習を受けることになった。 平賀さんの働きぶりがよかったことと、彼女を知る人が職場にもいて働きやすい環境にあると考えられることから採用に至ったそうだ。 入社後、平賀さんは軟骨拾いや皮取り、解体ラインへのモモ肉並べといった作業から始めたという。「作業を見たときは、自分にできるかなと不安になりましたが、隣に入ってくれた方に、いろいろ教えてもらいました」とふり返る平賀さんは、11年目のいまでは大事な戦力として作業ラインに立っている。 松田さんは、平賀さんについてこう評する。 「彼女は、いまの担当業務でいえば私よりもずっとベテランなので信頼しています。素直でまじめな性格で、いつも仕事に真摯に向き合ってくれているなと感じています」 平賀さんは、今後の目標について「休憩前にモモ肉を冷蔵庫に戻すとき、もっと素早くできるようにしたいです」と教えてくれた。じつは工場内では、作業中に肉の鮮度を落とさないよう、各工程で昼休憩を時間差で取りながら現場に肉を残さない工夫をしている。平賀さんも、処理途中のモモ肉をかごに入れて冷蔵庫に移動させてから休憩を取り、休憩後に再び出してくるのだそうだ。 松田さんも「ふだんはそんなに口数も多くないですが、作業をするうえで少しでもよい方法を自分なりに考えているようです。思ったことは大きな声で私にしっかりいってくれます。今後もそのまま向上心を持って、伸びていってほしいですね」と期待する。 工場長の吉田健さんも、平賀さんについて「先日の朝、会社の送迎バスに一緒に乗っていたほかの従業員が具合を悪くしたとき、真っ先に私がいる事務所の更衣室まで来て、外から大きな声で説明してくれました。頼りになります」と、エピソードを紹介してくれた。 取材した日は、生産ラインに影響を及ぼさないよう直接インタビューの時間をもらったのは平賀さん1人だったが、ほかにも知的障がいのある社員3人の働いている様子を撮影させてもらうことができた。 1人めの女性は、ベルトコンベアーを挟んで同僚と向かい合い、成形前のむね肉を同じ向きに並べていた。松田さんによると「この先でナイフを使って成形す各工程で戦力として成形前のむね肉を同じ向きに並べる鶏モモ肉をレーンの器具に手際よくセットする平賀さん働く広場 2025.88
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