るのですが、流れ作業なので、スムーズに進めるために大事な前準備です」とのことだ。 2人めの女性は、平賀さんと同じく「モモがけ」作業に従事していた。モモがけをするときには、基準より大きなモモはその場で選別されて、クリスマスシーズンなどに売られる特大商品として冷凍保存されるのだそうだ。 鶏肉が、さまざまな工程を自動的に回りながら解体されていき、最後に「せせり」や軟骨などを含んだ部位が、大きなかごにたまっていく。これも重要な商品として出荷される。計量したケースを運搬していたのは、3人めの男性社員。「25㎏~30㎏にもなるケースを計量し、スムーズに取り替え、台車に積み上げて運搬する作業は体力も含めてたいへんな仕事です。彼はとてもがんばってくれて、助かっています」と松田さん。 このように住田フーズで働く知的障がいのある社員もみな、大事な戦力として働き続けている社員ばかりだが、執行役員の吉田順さんによると、プライベートな面での支援には苦労することもあったという。特に金銭管理の面では、ときに後見人にも相談の場に入ってもらうなどして解決にあたってきたそうだ。 なかには、本人の社会的自立をめぐって家族の同意が得られない例があったそうだ。吉田順さんは「例えば、本人なり一人ひとりの人生をにお金を貯めて、自立した生活をしたいという夢があるにもかかわらず、その実現がむずかしい例がありました。その保護者と話し合いをしたこともあります」と明かす。 また、別の例ではグループホームでの自立生活を希望している一方で、実家の収入が減ることを後ろめたく思い、決断できずにいることがあった。事情を知った吉田さんたちが、自分の希望を最優先にするよううながし、現在はグループホームで楽しく暮らしているそうだ。 吉田順さんは「一人ひとりの人生を考えたときに『働いてお金を得る』ことは大切なことですし、障がいの有無にかかわらず、自分で考えながら生きていくことも、大切なことだと感じています」という。だからこそ働こうとする本人に対しても「一定の、勤務し続ける気構えや体力は必要です」とつけ加えた。 最後に、住田フーズでの障がい者雇用について吉田順さんは、こう語ってくれた。 「当社では、障がいのある社員を職場全体で温かく見守っていると同時に、特別扱いをしないという社風があります。だからこそ彼らは、休憩時はいつも輪のなかに存在しています。そういう点からも、職場の同僚たちには本当に感謝しています」計量したケースを台車に積み上げる「モモがけ」作業働く広場 2025.89
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