働く現場で全体として気をつけていることを聞くと「現場は機械だけでなく、解体用のナイフを持った作業者もいるので、その周辺は安全面で特に注意を払っています」と教えてくれた。事故防止のため、最低二人一組の共同作業を徹底している。 「それ以外で、6人について特に考慮していることはありません。障がいのある従業員は20年以上前から少しずつ増えてきたこともあり、受け入れる現場の社員や従業員も理解があるというか、慣れているような気がします」 現場の取り仕切り役として製造部解体課長を務める松まつ田だ哲てつ也やさんにも、日ごろ心がけていることを聞いたところ、「日常的なコミュニケーションについては、本人が、言葉を選びながら話していることが多いので、途中でさえぎるようなことをせず、いったんすべて聞いてから、こちらであらためて『それって、こういうこと?』などと一緒に確認しながら、お互いの認識に食い違いがないよう気をつけています」とのことだ。その場で一緒に確認することで、こちらの指示をしっかり理解してくれていることもわかり、ほかのことも指示できるようになるという。 解体課では、従事者の3分の1にあたる50人がベトナムやインドネシア、ミャンマーの国籍だという。ほとんどが技能実習生だ。現場では日本語ができる実習生を介して指示や確認をしてきたが、2年前には日本語のできるベトナム人女性を総合職として迎え、だれもが働きやすい環境づくりを図ってきた。また、70代後半のシニア世代の従業員も、ベテランとして力を発揮してもらっているそうだ。 吉田健さんは「私たちの工場は、近隣の市町村に住む従業員も多いのですが、全体として人材不足であることは間違いありません。ここで働く全員が戦力ですし、外国籍やシニアの従業員もだからこそ現場でも全員で支え合いながら、いろいろな課題も乗り越えてきました」と語ってくれた。 ここで「モモがけ」と呼ばれる作業を担当している1人が、2014年に入社した平ひら賀か莉り沙ささん(36歳)だ。この日は、隣に立つ同僚の従業員が、重さによって選別した鶏モモ肉の足首部分を、自動レーンにぶらさがっているカギ状の器具に1本ずつ次々と引っかけていく。レーンが回るスピードにあわせなければならず、「油断するとたちまち工程が滞ってしまうため、ある程度の集中力も必要ですね」と松田さん。 平賀さんは、大船渡市にある岩手県立気仙光陵支援学校を卒業後、就労継続支援B型事業所「星雲工房」で箱折り作業やお菓子づくりなどを行っていたそうで、「シフォンケーキもつくっていました」と仕事に真摯に向き合う工場長の吉田健さん「モモがけ」を担当する平賀莉沙さん製造部解体課長の松田哲也さん働く広場 2025.87
元のページ ../index.html#9