前は、商品知識を熟知したようなベテランでないと務まりにくい部署でした」と箱根さんが説明する。というのも1500種以上の商品が、似たような名前や6桁もの品番で並び置かれていたため、品数が増えるにしたがい誤出荷してしまうことも少なくなかったそうだ。 そこで6桁の品番を4桁の背番号として整理し直し、注文書に反映。商品棚も背番号順に番地のように表示して、見つけやすくした。「さらにバーコードで二重チェックすることで、だれがやっても、ミスなくスムーズにピッキングできるようになりました」(箱根さん) この部品ストアのある管理部管理課資材グループで働いている1人が、2022年入社の小こ島じま有ゆう斗とさん(21歳)だ。 特別支援学校3年次に受けた職場実習では、出荷先から戻ってきた空ケースの片づけなどを担当し、「みなさんに温かい対応をしてもらって、仕事もていねいに教えてもらいました」という小島さんだが、入社後は、「ピッキング作業を覚えるのに苦労しました」とふり返る。その焦りからか、たまに感情的になることもあった。資材グループリーダーの飯いい塚づか祐ゆう司じさんは、「おだやかな声がけを意識しながらも、しっかり返答するまで何度もくり返すなどコミュニケーションの指導を続けました」という。 一方で岩浪さんが家族と連絡を取り合い、本人に従業員としての自覚をうながしてきたところ、「この数カ月で急にしっかりしてきて驚いています」(横山さん)。理由は本人も明らかにしていないが、最近うれしかったことについて「仕事の量を三つ以上任せてもらえたことです」と話していた。 箱根さんは「彼なりに、周囲から必要とされていることに気づき、それがモチベーションにつながったのかもしれませんね」。欠勤や早退も激減した小島さんは「今後は少しでもミスがないよう取り組みたいです」と笑顔で話してくれた。 障がいのある従業員が増えてきたなか、カシマでは数年前から、少人数によるランチ会も行っている。企業在籍型ジョブコーチでもある横山さんが、箱根さんとペアを組み、障がいのある従業員2人と一緒に4人で近くの飲食店などでランチをともにするというものだ。1人あたり年3回ほど参加するという。 「彼らと雑談しながら、仕事や職場についての悩みや不満、私生活の様子などを第三者的な立場で聞き、必要なら現場にもフィードバックする目的でした。ただ、やはり私たち2人だと、少し圧迫感があ「共存共栄」の実現を目ざしるようなので、いまでは岩浪さんともう一人の女性従業員にお願いしています」(横山さん) 食後にはアンケート用紙も配り、その場で話せなかったことや感想などを記入してもらっているそうだ。 「もう職場には慣れた人たちばかりなので、最近はもっぱら世間話が多いですね。でも、そうやってたまに外で好きなものを食べながらおしゃべりすることがリフレッシュにもなっているようで、楽しみにしている従業員が多いです」(岩浪さん) 職場外でのコミュニケーションを深めてもらおうと、社内行事にも力を入れている。地域清掃やマラソン大会でのボランティア活動のほか、有志によるバス貸し切り社員旅行、ノーリツグループでの夏祭りイベント、忘年会などには、毎年参加する従業員も多いそうだ。 横山さんは「コロナ禍で一時中止していた行事も復活し始めています。80人ほどの職場規模では、日ごろから職場内のコミュニケーションを軸にしたまとまりも重要だと思っています。全員が戦力ですから」として、「みんなで働いて、みんなで利益を出すために、私たちが企業理念に掲げている『共存共栄』の実現に向けて、より働きやすく、生産性を上げられる職場環境づくりを目ざしていきます」と話してくれた。管理部管理課資材グループの小島有斗さん資材グループリーダーの飯塚祐司さん部品ストアでピッキング作業にあたる小島さん働く広場 2025.99
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