などを強みとして整理します。今できていることや、他者から強みとしてフィードバックを受けたことに焦点を当て、現在の取組みへのモチベーションや自己肯定感を高める機会とします。◦改良ポイント③これから働くうえで大事にしたいことに目を向ける 受障により、これまでのキャリアやライフプランを大きく見直す必要が生じることによって、それまで大事にしていた価値観が揺らぎ、将来への不安が生じる場合があります。そこで、過去の支援プログラム参加者が述べられた価値観を紹介するなどして、価値観の個別性、ライフイベントやライフステージによる可変性への理解をうながします。【作業支援】 作業上の障害の現れ方や課題の把握、補完手段の有効性の検討を目的に模擬的な職場場面で行う作業課題において活用する「振返り・工夫検討シート」を作成しました。◦おもて面(図2) 「振返り・工夫検討シート」に、「他の受講者によくある状況」欄を設け、これまでの受講者に生じた作業におけるエラーや身体的・精神的な状況の例を掲載しました。本人が作業の取組み状況を振り返る際に、これを参照することで、「自分はどうしてできないのか」といった不安や気分の落ち込みを軽減できるようにしています。◦うら面(図3) 作業で達成したい目標や、取り組めそうな工夫について、具体的な選択肢のなかから、本人が選べる形式としました。 目標としては、「手順を間違えないようにしよう」、「ミスを減らそう、なくそう」、「困ったとき、迷ったときは質問をしよう」などから選択できます。 取り組めそうな工夫としては、「道具(ふせん・手順書・アラームなど)」、「確認(目視・指差し・回数等)」、「休憩(頻度・時間・タイミング等)」、「視覚的刺激への対処(机上整理・照明等)」、「聴覚的刺激への対処(耳栓・ノイズキャンセリングヘッドフォン等)」などから選択できます。 本人自身が選択することで、主体的・意欲的に作業へ取り組めるようにしています。【グループミーティング】 支援プログラム参加者から、「同じ症状のある人とじっくり話をしてみたい」、「復職に向け過去にプログラムを受けていた人の話をきいてみたい」との希望をふまえ、支援プログラム参加者や終了者によるグループミーティングを実施しています。同じような状況に置かれた当事者間で自らの経験を語り合い、体験的知識やロールモデルを得る機会となるとともに、本人が日々経験する、できなくなってしまったことへの不安の軽減、生活のしづらさへの対処法や障害への気づきにつながります。【おわりに】 高次脳機能障害における認知機能の障害は、病識獲得のむずかしさなどとしても現れます。自己理解にかかる支援は、一人ひとりの状況に合わせて無理なく中長期的に進めることが大切です。今ある興味や関心、できることに目を向け、自己肯定感を高めることで、葛藤や不安を抱えつつも、本人の主体的な取組みにつなげていけるのではないかと考えます。支援方法を検討する一助として、この報告書をぜひご活用ください。* * * * 実践報告書№42「高次脳機能障害者の自己理解を進めるための支援技法の開発」は、障害者職業総合センター研究部門のホームページに掲載しています(★1)。また冊子の配布を希望される場合は、下記にご連絡ください(★2)。★1 「実践報告書No.42」は、https://www.nivr.jeed.go.jp/center/report/practice42.htmlよりダウンロードできます★2 障害者職業総合センター職業センターTEL:043-297-9043https://www.nivr.jeed.go.jp/center/index.html図2 振返り・工夫検討シート【おもて面】図3 振返り・工夫検討シート【うら面】29
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