視覚の障害に関係なく楽しめるゲーム――浅見さんたちは大学2年次に、視覚障害がある人もない人も一緒に楽しめるボードゲーム「グラマ」を開発しましたね。経緯を教えてください。浅見 きっかけは大学1年次に受けた福祉の授業です。なかでも視覚障害に興味を持ちました。もともと僕は視覚優位なものが好きで、ゲームや漫画、アートなどをきっかけに友だちもつくってきましたが、そうすると視覚障害のある人と一緒に楽しめるものがないと気づき、仲間5人と一緒に開発することにしました。 重視したのは「みんなが同時に楽しめる」ことです。例えばサッカーなどで歓声が上がると、見えていない人は、ゴールが決まったのか惜しくも外れたのか、すぐにはわかりません。時間差で喜ぶのは、僕だったら少しつまらないと思ったのです。 成功・失敗や勝ち負けを目でも耳でも同時にわかる仕組みとして、音とシーソー、重さを活用したボードゲームを思いつきました。当事者団体などにフィードバックをもらいながら完成したのが「グラマ」です。2人または4人が、鈴つきの小袋を手に「家のなかにあるもの」といったテーマを決めて間接的なヒントを出し合いながら、多様な形状の重りを出し入れし、全員が同じ重さを目ざすというものです。最後に十字のシーソー型の天秤に載せ、同時に手を放して釣り合えば成功、バランスを崩したら鈴の音とともに失敗とわかります。 クラウドファンディングで資金を集め、「数十台つくって寄贈できたらいいよね」ぐらいの気持ちでしたが、予想以上に反響があり、2024(令和6)年に商品化しました。課題は、材料費が6000円もかかることで、販売額6500円は高すぎるうえに事実上赤字です。コンセプトを広げることが目的なので続けていますが、ビジネスとしてはむずかしいですね。「ビーラインドプロジェクト」設立――ゲーム開発とともに、一般社団法人ビーラインドプロジェクトを設立されました。浅見 ミッションは「見ても見なくても見えなくても楽しめる」を社会に増やすことです。2023年に仲間と立ち上げたとき、名前は最初ローマ字でBlined Projectとしていました。Blind(目が不自由な)に、Be lined(横に並ぶ)の意味をあわせた造語ですが、視覚障害のある人が端末で聴き取る場合にブラインドプロジェクトと読まれてしまうため、カナ表記に統一しました。 視覚障害に関するイベントやワークショップなども開催していますが、そこで多くの当事者と知り合うなかで、予想以上に、彼らを取り巻「見ても見なくても見えなくても楽しめる」を増やす一般社団法人ビーラインドプロジェクト 代表理事浅見 幸佑さんあさみ こうすけ 2003(平成15)年、東京都生まれ。2023(令和5)年、立教大学文学部在籍時に「一般社団法人ビーラインドプロジェクト」を設立し、ボードゲーム「グラマ」の開発や福祉・障害をテーマにしたイベントなどを企画運営する。2024年に「大学SDGs ACTION! AWARDS」(朝日新聞社主催)で準グランプリ受賞。2025年2月に視覚障害のあるスタッフがいる「Moonloop Cafe(ムーンループ カフェ)」(東京都杉並区)をオープンさせた。働く広場 2025.92
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