働く広場2025年9月号
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なったという。箱根さんは「最初は職場として何に配慮し、どう接したらよいか不安な部分もありました。ジョブコーチが2人を指導する様子を見ながら、学べることも多かったですね」とふり返る。 入社後の2人については、箱根さんたちがあらためて得手不得手を見きわめながら、本人の意向を聞きつつ柔軟に担当業務を変更し、いまでは大事な戦力になっている。そこで、それぞれが職場で働く様子を見せてもらった。 「工作が好きで、モノづくりの仕事に就きたいと思っていました」と話してくれたのは1人目の箱はこ田た望のぞむさん(32歳)。入社後はプレス加工グループに配属され、部品の形状に合わせた型をプレス機に取りつける作業を3カ月程度で習得。その後も順調に上達していったが、数年ほどして、精神的に不安定になる様子が増えてきた。箱根さんによると「自分の仕事ぶりを周囲と比べ、気にしてしまうようでした」。全体の作業効率にも影響するため、配置転換を検討することになった。 工場長の箱根さんは、箱田さんが以前職場の掲示板向けに上手なイラストを描いてくれたことを思い出し、「手先の器用さを活かせるように」と組立梱包作業手先の器用さを買われを提案した。器用さや判断力が必要だが、ほぼ1人で完結する作業だ。箱田さんも意欲を見せてくれたことからトライすることになった。 指導にあたった、製造部製造2課課長の石いし坂ざか鶴つる夫おさんによると「箱田さんは作業の飲み込みが早く、ていねい」とのことで、すぐに新しい仕事になじんでいったそうだ。 その後、組立梱包作業は職場からなくなったものの、その実績を買われ、現在は金属配管の切断・穴あけ作業を、やはり1人で担当している。 現場では、切断サイズや穴あけ場所を間違えずにすむ治具を使っているほか、トラブルや疑問が生じたときには周囲に音と光で知らせる呼び出しベルもある。「もともと外国籍の従業員向けに工夫したものですが、このおかげで箱田さんも安心して最初から単独作業ができました」と箱根さん。一方で、気持ちに余裕がなくなったりすると作業に影響が出やすいことから「“慌てないでいいよ”と声がけしたり、注意するときは声のトーンを落として穏やかに伝えるよう心がけています」(石坂さん)とのことだ。 箱田さん自身は「自分のペースと責任で仕事ができ、やりがいもあります。仕事のあとは機械や現場の掃除をして、ルーティン作業を意識できるようになり、上司から信頼の言葉をもらったことがうれしかったです」と教えてくれた。ちなみに箱田さんはマラソンが趣味で、「かすみがうらマラソン」の10マイルコースも好タイムで完走しているそうだ。 2人目の田た山やま裕ゆう也やさん(32歳)は入社当初、スポット溶接作業を担当していた。「おっとりした性格なので、単独での作業が合うだろうと判断しました」(箱根さん)。 ただ、部品ごとに溶接位置を変えるなどの複雑な作業だったことで、心配性の田山さんが判断をあおぐことが増え、周囲の負担が大きくなってしまった。本人も落ち込むようになったことから、配置転換を検討することにしたという。そして本人の「やってみたい」との意思も尊重し、梱包作業などを経験してもらった。 だんだんと仕事に自信が持てるようになった田山さんは、現在は品質管理部品コツコツ作業を続ける力品質管理部品質管理グループの田山裕也さん製造部製造2課の箱田望さん製造部製造2課課長の石坂鶴夫さん工作機械で金属配管に穴をあける箱田さん働く広場 2025.96

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