では朝の挨拶のほか「トイレに行ってきます」、「お疲れさま」といった表現を、職場で交わし合うようになっている。手話教室の希望者は多いが、いまのところは生徒4人で、少しずつ広げていく予定だ。 長助澤さんに、手話教室についての手ごたえを書面で伝えてもらった。 「お二人から『手話を教えてほしい』といわれたことが、とてもうれしかったです。職場でも手話によるコミュニケーションを取り入れることで、仕事もスムーズになったと思います。手話が言語であることを理解してもらえ、本当に感謝しています。他チームでも手話で挨拶してくれる人もいて、今後さらに理解を広めて、手話で楽しい会話ができたらいいなと思っています」 長助澤さんは、11月に東京で開催されるデフリンピックも「ぜひ注目してほしい」と伝えてくれた。じつは、別の係にいる聴覚障がいのある職員の弟夫婦が、バドミントン競技の代表選手として出場する予定だ。この職員は大会期間中に1歳の甥の世話をすることになり、長期の有給休暇を取得することになっているという。 部田さんによると、最近の職場内アンケートでは「彼らが一生懸命なので、自行内全体の顧客サービスにも分ももっとがんばらねばと思う」、「前向きな笑顔を向けられると、自分のモチベーションアップにつながる」といった好意的な声が増えたそうだ。 アンケートで管理職は「当事者からの『こうすればできる』、『こういうのは不得手』などの声はとても貴重。それが遠慮なくいえる雰囲気をつくることも大事」や、「仕事の枠組みを決めず、本人にとって少しだけレベルの高い仕事にもトライしてもらうことで自信とやりがいを持てるよう意識している」と答えるなど、活躍してもらうための工夫を実践している部署も少なくない。 「地道にがんばる職員たちの姿を見て、周囲の意識も変わっていったように感じます」と話す部田さんも、事務センター全体の意識改革に努めてきた。「Well-being(幸せ)な職場づくり」をモットーに掲げ、「個人の強みを発揮し、弱みは皆でカバー」との考え方をくり返し伝えている。障がいのある職員が配属されるときは「ハンディキャップがある」とだけ伝え、具体的な配慮や工夫は一人ひとりと話し合いながら決め、本人に確認したうえで同じチームの職員に必要な配慮を伝えるそうだ。 「ハンディキャップは、障がいのある人だけでなく体調不良者、子育て中の人や家族を介護している人にもあります。いまは60歳以上の職員も30人と多く、だれもが安心して働ける場にするには、やさしい職場でないと長続きしません」という部田さんは、「女性や障がい者、高齢者を活かせる職場運営が重要だという共通認識の広がりも感じています。今後は、事務センター内で各チームが重ねてきた工夫やノウハウを標準化させ、行内全体にも広げていきたいですね」と語る。 ダイバーシティ推進室では昨年度、同じ親会社を有する株式会社北陸銀行と連携し、障がいのあるお客さまへの対応についてまとめた冊子「ほくほくハートフルマニュアル」(全52ページ)を全営業店に配付した。「バリアフリーチェックシート」も作成し、ハードとソフトの両面で障がいのあるお客さまへの配慮すべき点を確認できるようにしている。北海道銀行では、今後も引き続き、多様な人材がそれぞれ能力を発揮して活躍できる場を増やしていく予定だ。長助澤さんの指導にあたる田崎浩子さん(左)と森敏子さん(右)職場の一角で行われる手話教室で、笑顔のみなさん顧客への配慮すべき点を確認できるバリアフリーチェックシート働く広場 2025.109
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