働く広場2025年10月号
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しょう。また、本人からの訴えが少ない場合でも、業務の進み具合や周囲とのやりとりの様子を見て、必要に応じて個別に話す時間を設けることも有効です。 さらに、体調不良や不安が続くときには、業務の軽減や休憩時間の調整、勤務時間の短縮といった柔軟な対応も検討しましょう。その際、「まずは一緒に考えましょう」という姿勢が大切です。 また、あらかじめ相談できる担当者や体調不良時の対応ルールを決めておくことや、職場に産業医や保健師などの専門職がいる場合は、すぐに連携して支援できる体制をつくっておくこともいざというときに安心です。 障害のある人が安心して働き続けられるかどうかを定期的に確認することも、定着支援には欠かせません。体調の変化、本人の不安や気持ちなどを早めにキャッチし、必要な支援につなげることが重要です。 例えば、月に1回程度、上司や支援担当者と本人が面談を行い、「仕事に慣れてきましたか?」、「最近困っていることはありますか?」といったふり返りの時間を持つことが効果的です。このとき、あくまで評価ではなく、本人の気持ちに寄り添う対話を心がけましょう。 また、遅刻や欠勤が増えてきた、発言が少なくなったなど、行動の変化といった兆候を見逃さず、声をかけてみることも大切です。さらに、「別の部署のほうが合っているのでは」など業務内容や働き方の見直し、広い視点での検討も行うとよいかもしれません。業務における指導・指示命令系統の整備 障害のある人が戸惑いやすいのが、指示や業務命令があいまいであったり、複数の人から異なることをいわれて混乱する場面です。こうした状況を防ぐために、「だれが」、「どのように」、「どの範囲で」指導や指示を出すのか、明確にしておくとよいでしょう。例えば、「日常の業務はAさんが教える」、「困ったことはB課長に相談する」と決めて、本人に伝えておくことで、本人も安心して働くことができます。 加えて、本人だけでなく指導にあたる社員や関係部署とのふり返りを行うことも大切です。「どんな指導が効果的だったのか」、「今後改善が必要なことは何か」などをふり返ることで、職場全体の支援力が向上していきます。効果的な社内支援体制の構築 職場の支援体制を構築し、人間関係や労働環境の改善を図ると、より職場への定着が進みます。配属部署では担当者や管理者が相談窓口となり、必要な相談を行っていくのが望ましいでしょう。その際、担当者任せにせず、部署全体が一つのチームとして支える意識が大切です。人事担当部署は、教育や指導の負担が特定の社員に偏らないよう配慮し、必要に応じて調整します。 また、職場以外での事情が業務に影響している場合や社内だけでは対応がむずかしい場合には、外部の支援機関と連携することもありますが、これについては第5回で詳しくご紹介します。おわりに 障害のある人が長く安心して働き続けるためには、「一人ひとりに合わせた支援」と「職場全体の理解と協力」が何よりも重要です。前回と今回でご紹介した視点を参考に、まずは一つずつ、できるところから取り組んでみてください。 次回は「職場定着のための課題への対処」をお届けします。社内における支援体制強化のために 障害のある人を雇用したときに、その人の職業生活の充実を図る体制づくりを行うことが大切です。「障害者職業生活相談員」や「企業在籍型職場適応援助者(企業在籍型ジョブコーチ)」を配置し、すみやかに対応できる体制を整えることもひとつです。障害者職業生活相談員5人以上の障害のある人を雇用する事業所では、「障害者職業生活相談員」を選任することが義務づけられています。相談員は、その事業所に雇用されている障害のある人に対し、職業生活全般における相談や指導を行います。https://www.jeed.go.jp/disability/employer/employer04.html企業在籍型職場適応援助者(企業在籍型ジョブコーチ)企業に在籍し、同じ企業に雇用されている障害のある人が職場定着のための支援を行う人のこと。企業在籍型ジョブコーチを養成するための研修が実施されています。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/06a.html参考!働く広場 2025.1011

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