る現場の事情のわかる人(現場担当者)、③は雇用されている精神障害のある人にそれぞれ回答を求めました。有効回収数は、①2553社、②3638人、③2601人でした。3 調査研究の結果(1)企業調査 回答のあった企業・法人のうち、従業員規模が100~299人の企業・法人が1133社(44%)で最も多く、次いで300~499人の企業・法人が389社(15%)でした。企業・法人全体で実施している雇用管理上の配慮・措置は「障害特性に応じた配置先の決定、業務の選定・創出等」が79%で最も多く、次いで「通院・体調等に配慮した出退勤時刻、勤務時間、休暇・休憩など労働条件の設定・調整」(57%)、「定期的な面談による体調及び業務管理」(52%)などが多くなっていました。(2)現場調査 現場調査で対象となった精神障害のある人(以下、「対象者」)のおもな疾患は、「気分障害」(27%)が最も多く、次いで多かった疾患は不明(17%)、「統合失調症」(14%)、「ASD」(14%)、「ADHD」(7%)でした。手帳の等級は、1級が3%、2級が42%、3級が49%でした。おもな疾患を手帳等級別に見ると、多くの疾患で3級が最も多いのですが、統合失調症と高次脳機能障害は2級が最も多くなっていました。対象者の就業上の課題を聞いたところ、「課題あり」または「やや課題あり」とされた対象1 調査研究の背景と目的(1)背景 精神障害者保健福祉手帳(以下、「手帳」)は、障害の程度の重いほうから1級、2級、3級の等級があり、その判定は、「精神疾患(機能障害)の状態」と「それに伴う生活能力障害の状態」の両面から総合的に行われます(厚生労働省「精神障害者保健福祉手帳制度実施要領」)。判定は就労場面における状態とは別の観点で行われるため、就労上の困難とどの程度関係するかは必ずしも明確ではありませんでした。 労働政策審議会障害者雇用分科会などでも、精神障害のある人の雇用の促進等を議論するなかで、手帳の等級と就労上の困難との関係がしばしば話題となっていましたが、参考になる資料は十分にない状況でした。(2)目的 本調査研究(※1)は、このような状況をふまえ、精神障害のある人の手帳の等級と就労上の困難との関連を把握することを目的としています。就労上の困難は、アンケートで直接把握することがむずかしいと考えられたことから、事業主が雇用管理上の配慮・措置を実施しているかどうか、またそれがどの程度負担かという観点から把握することとしました。 また、「精神障害者の就労困難性と精神障害者保健福祉手帳の等級は必ずしも関係するものではない」(「労働政策審議会障害者雇用分科会意見書」)といった意見がすでにあることをふまえ、手帳の等級以外に配慮・措置の実施状況と、おもな疾患およびそのほかの要因との関連も検討することとしました。2 調査研究の方法 本調査研究では、①企業調査、②現場調査、③障害者(当事者)調査という3種類のアンケート調査を実施しました。①は企業・法人全体に関する調査となるため、人事・労務の人に回答を求めました。②は精神障害のある人を雇用す※1 調査研究報告書No.182「精神障害者の等級・疾患と就業状況との関連に関する調査研究」は、以下のホームページでご覧になれます。https://www.nivr.jeed.go.jp/research/report/houkoku/houkoku182.html精神障害者の等級・疾患と就業状況との関連に関する調査研究障害者職業総合センター研究部門 障害者支援部門働く広場 2025.1028
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