りをしてしまう場合もあるかと思います。全国的にLDの診断ができる医療機関が少ないことに加え、「読み書きが苦手」という理由で医療機関・相談機関に行くことがないことから、困難があるにもかかわらず、LDの診断を受けている人が少ないのが現状です。また、LDの診断だけでは、障害者手帳を取得できないため、一般就労している人のなかにも読み書きに困難を抱えている人が一定数存在していると推測されます。発達障害のある人の就労状況~会員調査より~ 全国LD親の会では2025(令和7)年1~3月に、18歳以上の子どもをもつ会員および本人を対象とした「教育から就業への移行実態調査Ⅴ」を実施し、現在集計作業を行っています(2026年度に報告書を発行する予定です)。この調査は2003年から継続して実施しており、支援制度の利用状況や就労状況などについて調査しています(今回の調査の回答数は保護者411人・本人207人)。現在の就労状況は、一般就労19%、障害者枠での就労40%、就労継続支援事業所(A型・B型)14%、また障害者手帳の取得率は80%(学生を除く)となっており、軽い障害と誤解されがちな発達障害ですが、厳しい就労状況にあります。 全国LD親の会では、2019年度に厚生労働省の委託を受けて、「発達障害者の顕在化されにくい読み書き困難の現状」について実態調査を行い、報告書をホームページ(※)に公開しています。こちらもご参照いただけたら幸いです。発達障害のある人が働き続けるために LDなど発達障害のある人が働き続けるためには、合理的配慮が非常に重要です。読み書き障害のある人は文書の読み取りに時間がかかったり文書の作成がむずかしい場合があり、書類中心の業務では能力が十分に発揮できないこともあります。実務的には、音声読み上げや音声入力・スケジュール管理などICTツールを導入することも助けとなります。当事者からも「電話でやり取りしながらメモを取ることができない」、「パソコンで入力した文章を読み直しても、漢字の誤変換に気づけない」、「読み書きができないことで、職務能力を低く評価されてしまう」といった悩みも聞かれます。読み書きの困難さについて理解されず、叱責されることが続くと自信をなくしたり自己肯定感が下がったりして、ストレスを抱えることになってしまいます。本人が自分の得意・不得意を把握して、苦手な業務への対処法を工夫したり、困っていることを相談できる環境も必要です。 発達障害への理解は進んできましたが、一般社会ではまだまだ「努力不足」、「職場の困った人」 特定非営利活動法人全国LD親の会副理事長、あいちLD親の会かたつむり副代表。 発達障害(LD・ADHD)のある次男の小学校入学を機に、親の会に入会。その後、愛知県の親の会の代表を10年ほど務める。次男が就職して20年目を迎え、職場でのサポートによって働き続けられていることに感謝の思いで、母として発達障害と向き合った経験をもとに、家族支援や啓発活動に取り組んでいる。 読み書きに困難がある人が身近にいることを知ってほしい…全国LD親の会では、公開フォーラムや特別支援教育支援員養成講座などを開催し、イベントや情報発信を通じて、発達障害のある人への理解を広げる活動に取り組んでいる。多久島 睦美(たくしま むつみ)と誤解されることも多く、同僚の障害理解も重要です。以前、当事者の方から「外国籍の人が多い職場なので、スケジュールや作業手順が、図や写真など視覚的にわかりやすく提示されているので助かっている」という話を聞いたことがあります。合理的配慮は、「特別扱い」ではなく「働きやすさの調整」です。業務内容を見直し、視覚的・構造的にわかりやすくするなどの合理的配慮によって、障害のある人だけでなく、だれもが働きやすいユニバーサルな職場になってほしいと願っています。※https://www.jpald.net/book/index.html働く広場 2025.103
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