働く広場2025年10月号
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 北海道銀行において障がい者雇用の取組みが大きく前進したのは、「多様な人材一人ひとりの能力を発揮しやすい職場環境の整備」を目的として2019年6月、人事部内にダイバーシティ推進室が設置されてからだ。 当初配属されたのは、いまは総合事務部の部長を務める山やま内うちえり奈なさん1人だった。山内さんは「さまざまな人材の活躍を目ざす観点で障がい者雇用の推進もミッションの一つでした。ちょうど着任時に労働局から法定雇用率未達成の通知をもらっていたので、この推進室ができた意味もふまえて具体的な取組みを考えていきました」と話す。 山内さんは「障害者職業生活相談員」の資格認定講習を受けるなどして、必要な配慮や対応の仕方などを学んだほか、職場の障害のある職員にヒアリングも行っダイバーシティ推進室た。「それまで採用後はフォロー体制ができておらず、外部の支援機関による定着支援もないまま本人は困っていることをいい出せなくて、周囲も事情がよくわからないまま悪循環に陥ることもあったようです」(山内さん) その後うまく進むようになったのは、当機構(JEED)の北海道障害者職業センターの職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援を利用したことだった。 きっかけは、療育手帳を持つ職員の採用だ。やはり療育手帳を持つほかの職員と同じ係に配属したが、現場から山内さんに思わぬ戸惑いの声が伝えられた。 「毎朝出勤すると、納得いくまで自分のデスクの上の拭き掃除をやめなかったり、フロア内に業務連絡の放送が流れるたびに作業が止まってしまったりする様子が目立ち、『どう指導したらよいか』と相談されました」と山内さんは話す。 本人は1人で就職活動をしてきて支援機関に登録していなかったが、ハローワークの担当者からジョブコーチの定着支援を受けられることを助言してもらっていた。山内さんは「さっそくジョブコーチに来てもらったところ、本人には発達障がいの特性もあることがわかりました。同じ療育手帳を持つ人でも一人ひとり違うのだと納得できました。ジョブコーチに支援してもらうなかで新たに学んだことも多かったですね」と語る。 いまではダイバーシティ推進室が中心となり、日常的に外部の支援機関と連携している。「先日も朝出勤してこない職員と電話がつながらず、心配になって支援機関に連絡したところ単なる寝坊でした。ちょっとのことでも頼れるところがあるのは大きな安心です」(山内さん) ダイバーシティ推進室の人員も兼職ながら4人まで増え、今年7月からは3人の専任体制となった。その1人で調査役の佐さ伯えき亜あ耶やさんは、もともと人事部の採用担当だった経験と人脈を活かしながら、事務センター以外の本部セクションへの受け入れに力を入れている。 佐伯さんによると「このように対応すれば、ほかの人と変わらず働けます」、「何かあれば必ず私たちがフォローに入ります」などと直接説明し、安心して受け入れてもらえる体制づくりを心がけているという。「受け入れ部署も増え、最近は、前職の仕事を活かしビッグデータを解析する部署のサポートメンバーになっている人もいます」と佐伯さん。 将来的には、本部部署以外にも採用を広げていくことが目標だ。今年7月に営業店から異動し、ダイバーシティ推進室室長を務める眞ま鍋なべ亜あ由ゆ美みさんは「以前か総合事務部部長の山内えり奈さんダイバーシティ推進室室長の眞鍋亜由美さん(左)と調査役の佐伯亜耶さん(右)働く広場 2025.106

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