働く広場2025年10月号
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ら『地元に戻って働きたい、地元の営業店で受け入れてもらえないか』との相談もあり、職場の理解を得ながら、いろいろな場所でだれもが活躍できる職場を目ざしていきたいと考えています」と説明する。 あらためて事務センターの職場を、部田さんたちに案内してもらった。ビル3階にあるフロアは、多数のパソコンが置かれているが、全体的に見通しがよく通路も広い。「書類などをワゴンに載せて移動するため、余裕のあるレイアウトになっており、車いすや杖を使う職員も動きやすい環境です」と部田さん。 その一角で数人の職員が、パソコン画面に映し出された手書きの伝票画像を何度も確認しながら手ぎわよく入力していた。嘱託社員2人から話を聞いた。 2021年入行の梅うめ原はら美み希きさん(22歳)は下肢機能障がいがあり、部田さんによると「採用時に両親とも面談し、心配なことを伝えてもらったうえで、実際の仕事内容などを決めました」とのことだ。職場では、重い物を持つことや移動が多い作業への配慮をしてもらっている。 また、情報管理の厳しい事務センターでは出勤時間も厳密だが、杖を使って電何度でも同じ質問ができる環境車通勤をする梅原さんら数人にかぎり、15分早く出勤できる。多くの人で混み合う時間帯は、狭い雪道で人とぶつかるなどの危険性が高いためで「この15分の差が、とても大きいのです」と梅原さんはいう。 梅原さんはいまでは、行内インターンシップの職員に仕事を教える役も務め、「わかりやすい」と評判だそうだ。これについて梅原さんが「先輩からのていねいな指導のおかげです」と紹介してくれたのが、前まえ田だ知とも恵えさん。前田さんに指導で心がけていることを聞くと「何回同じことを聞いてもいいよ、と伝えてきたことです」と説明してくれた。 「じつは、以前勤めていた職場の上司が、仕事に厳しい一方で『わからないことをわからないままにされるほうが困るから、何回でも聞いてほしい』といってくれました。この言葉に救われ、安心して質問できたことが私のスキルアップに大きく影響しました」 部田さんも「障がいに関係なく、何度でも質問できるような環境が大切」だとして、全体会議などでくり返し紹介している。指導役を対象に、言葉遣いや教える姿勢などで気をつけるべき9項目のセルフチェック表も毎月提出してもらっているそうだ。 「安心して聞ける環境」は職場全体に浸透しているようで、眞鍋さんも「私が営業店にいたときに、事務センターに問い合わせると毎回ていねいに教えてもらえたことが、本当にありがたかったです」とふり返る。 下肢・体幹機能障がいのある嘱託社員の岩いわ崎さきはぐみさん(22歳)は、高等養護学校在学中に市役所の職場実習を経験したことから「一般企業で障がいのない人と同じように働きたい」と、2022年に入行した。もともとは車いすユーザーだが、いまは職場では使っていない。「通勤で体力がついてきて、杖のほうが移動しやすくなりました」と岩崎さん。 配属先はさまざまな代理業務を行う係で、同じ入力作業でも覚えるべき手順やルールが多い。だが岩崎さんは当初、困っていることを伝えるのが苦手だった。「甘えだと思われないか、任される仕事を減自分に最適な方法で成長したい事務センターで働く岩崎はぐみさん梅原さんは、手書き伝票の入力作業を担当している事務センターで働く梅原美希さん梅原さんの指導にあたる前田知恵さん働く広場 2025.107

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