働く広場2026年3月号
8/36

 ロジャーを使っているのは、事業部業務担当の髙たか木ぎ宗しゅう祐さん(23歳)。福岡県立福岡高等聴覚特別支援学校の専攻科(商業技術科ビジネスコース)を卒業後、2023年4月に入社した。 もともと補聴器をつけている髙木さんは、入社当初、朝礼や会議などで「多人数で、少し複雑な会話をすると聞き取れなくなることがあり、あとで確認していました」という。すぐに片岡さんは、JEEDの就労支援機器貸出制度について話し「ロジャーを試してみよう」とすすめたそうだ。ロジャーは、小さな送信機が話者の音を拾い、本人が首からかけた受信器を経由して補聴器(人工内耳)に送る仕組みだ。周囲のさまざまな音のなかから、集中的に聞き取りたい音だけが聞こえるという。 間もなくロジャーが届き、髙木さんはさっそく使ってみたが、うまく聞こえなかった。送信機の持ち方や立ち位置を変えても改善しない。片岡さんからのSOSに、正田さんは「髙木さんが補聴器を買った店に、ロジャーを持ち込んでみてもらっては」と助言。2人で店に行くと、「補聴器側の設定を調整すれば大丈夫」とすぐに直してくれた。話し手側も理解すること さらに店の人が職場にも来てくれ、「4~5人ぐらいの少人数で使うタイプなので、ざわついた場所では聞こえづらい」ことなど注意点もいくつか教えてくれた。例えば送信機には複数の切り替えボタンがあるが、髙木さんによると「朝礼などでは1人ずつ送信機を持ちながら話しますが、何かの拍子にボタンを押して切り替わっても、気づかず話し続けられてしまうことがあります」という。片岡さんは「私たちは『これさえあれば、本人が助かる』と思いがちですが、使用範囲や適用人数も含め、話し手側の使い方も重要なのだと再認識しました」。 また片岡さんは、髙木さんに「気づいてもらうのを待つのではなく、その場で『困っています』と主張するようにしてみてください」と助言した。それまで、あとから遠慮がちに注意をうながしていた髙木さんも、片岡さんに背中を押されながら、「いま聞こえません」といえるようになったそうだ。 ウィルアクトでは、JEEDの障害者作業施設設置等助成金(※2)を活用してロジャーを購入した。 ちなみに髙木さんは、たまに西鉄本社ビルに出向いて1人で社内便担当として社内を回ることもある。ロジャーがない代わりに、聴覚障がいがあることを示すカードと電子メモパッドを持ち、必要に応じて筆談している。それでも不具合がある場合には、指導員にメールを送って対応しているそうだ。 そして髙木さんは、2025年4月から正社員になった。「難易度の高い仕事に挑戦させてもらい、責任も感じるようになっています」という髙木さんは、「これまでは指示された仕事をこなすばかりでしたが、もっと積極的に、後輩に仕事を教えたり指導したりできるよう努力していきます」と語ってくれた。 ウィルアクトでは、パートタイム社員からスタートし、契約社員を経て、社員登用試験を通過すれば正社員になる。「正社員になるとグループ統一の社員証と福利厚生が受けられるので、みんなの大きな目標です」と片岡さん。現在、障がいのある従業員31人のうち18人が正社員だ。 ウィルアクトには以前から「周囲の音手づくりの就労支援機器※2「障害者作業施設設置等助成金」の詳細は、JEEDホームページをご覧ください。https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/shisetsu_joseikin/index.html※3耳マーク:聞こえが不自由なことを表すと同時に、聞こえない人・聞こえにくい人への配慮を表すマーク。https://www.zennancho.or.jp/mimimark/mimimark/筆談用の電子メモパッド(上)の裏面(下)には、聞こえが不自由なことを表す「耳マーク」(※3)と筆談をお願いするメッセージが記されている事業部業務担当の髙木宗祐さん髙木さんは就労支援機器を活用し、さまざまな業務をこなす耳マーク6

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る