働く広場2026年4月号
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驚きでした。そして2011年には手話を言語と位置づける改正障害者基本法が成立し、公的にも認められました。 NHK手話ニュースのスタート時は、キャスター全員が私のように聞こえる人でしたが、2021(令和3)年に辞めるときには私以外は全員が聞こえない人たちになっていました。アナウンサーが使うプロンプターもありますし、だれかがタイミングを示してくれさえすればまったく問題はありません。昨年10月に開催されたデフリンピックの開閉会式で活躍した国際手話や、日本手話の通訳者も、すべて聞こえない人でした。みなさん、本当にすばらしい通訳でした。 聴覚障害をめぐる誤解も――大学では、障害のある人をテーマに、どんなことを教えていらっしゃるのですか。中野 幼稚園教諭や保育士を育成する大学では、助けを必要とする子どもたちとの接し方を、薬科大学では薬局などにおける障害者や高齢者との接し方などを指導しています。私たちが誤解していることもたくさんあり、それを正しく理解しておくことが大切だからです。 例えば高齢者が補聴器をつけていたら、普通に聞こえるのだと思ってしまいます。しかし、補聴器はマイクで周囲の音を集め、アンプで音を大きくし、スピーカーから耳へ届ける器械ですので、機能差はありますが、雑音まで拾ってしまいがちです。ですから、装着しただけでは目の前の人の声をクリアに聞くことはできないのです。より聞こえやすくするためには、環境を整えてください。ドアを閉めてBGMを消し、エアコンの音も拾わない静かな場所なら聞こえやすくなります。そして必ず相手の目を見て、声を届けようと意識してください。 聴覚障害は、みなさんが思っているよりずっと重い障害です。先天性の方は、まず言語の獲得に苦労します。例えば3歳の子でも「お姉ちゃんがたたいた」、「お姉ちゃんにたたかれた」と自然にいえるのは聞こえているからです。聞こえない人は「が」、「に」の使い方などから学ばなければなりません。発語も大きな課題です。「あかさたな」の舌の使い方を教えるためにスプーンを使用したり、ときには口の中に指を入れて、舌の位置を体得させるのです。ただ音が聞こえないという問題ではないことを、学生たちに伝えています。 また、同じ聴覚障害でも、いつ失聴したかによって手話通訳の方法は違ってきます。言葉を覚える前に失聴した方たちが使う日本手話は「私、遊びに行った、京都、先週」という語順になり、ここにうなずきや眉の上げ下げなどの文法が入ります。中途失聴の方たちは通常の日本語順での表現を求めることが多く、これは日本語対応手話などと呼ばれています。思い込みで接しないように――障害者雇用を進める企業へのアドバイスをお願いします。中野 行政や企業の研修を担当させていただくことが多いのですが、みなさんにまずお願いするのは、「正しく知って理解してください」ということです。そのためには目の前にいる本人に、「きちんと聞いて確認する」ことです。受け入れる側は「聞いたら失礼なのではないか」と遠慮し、当事者のほうは「困っている状況をわかってもらえない」と悩んでいる、というすれ違いが少なからず起きています。よかれと思ってやったことが、かえって相手を困らせることになりかねません。 当事者の立場に立って想像力を働かせ、率直に話し合える人間関係づくりをすることは、障害者だけでなく、さまざまな事情をかかえた従業員全員にとっても必要なことです。その結果、だれもが働きやすく、安心して自分の能力を発揮できる職場になっていくと思うのです。 最後に、私自身の反省を含めてお伝えしたいことがあります。先日、ある企業で「障害者雇用に関する研修」を行ったのですが、その後に届いたアンケートのなかに「ずっと『お願いします』といわれて苦しかった」という声がありました。新しく職場に入ってきた当事者への支援はもちろんですが、それとともに支援担当者への配慮も重要なのですよね。さまざまな調整を含めて周囲の理解が得にくい状況では、孤独な闘いになってしまいます。決して担当者任せにせず、職場全体が「障害」について正しい知識を得て正しく理解し、担当者と協力し合っていく仕組みづくりこそが重要なのだと、あらためて思っています。働く広場 2026.43

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