省庁だより 令和6年版 障害者白書概要A 内閣府ホームページより抜粋  11月号に続き、今号は「令和6年版障害者白書」の概要の第3章、第4章、第5章、第6章を紹介します。 第3章 社会参加へ向けた自立の基盤づくり 第1節 障害のある子供の教育・育成に関する施策 〇特別支援教育の充実  障害のある子供については、その能力や可能性を最大限に伸ばし、自立や社会参加に必要な力を培うため、一人一人の教育的ニーズに応じ、多様な学びの場において適切な指導や必要な支援を行う必要がある。  2023年3月13日に公表された「通常の学級に在籍する障害のある児童生徒への支援の在り方に関する検討会議」報告において示された方向性を踏まえ、特別支援学校と小・中・高等学校のいずれかを一体的に運営するインクルーシブな学校運営モデルを創設することが「障害者基本計画(第5次)」に明記されたところであり、2024年度から新規事業として実施すべく関連予算を計上している。 〇障害のある子供に対する福祉の推進  2023年12月に、全てのこどもと子育て世帯をライフステージに応じて切れ目なく支援していくこと等を基本理念として掲げ、若い世代が希望どおり結婚し、希望する誰もがこどもを持ち、安心して子育てできる社会、こどもたちが笑顔で暮らせる社会の実現に向けて、「こども未来戦略」が閣議決定された。  その中で障害児支援については、多様な支援ニーズを有するこどもの健やかな育ちを支え「誰一人取り残さない」社会を実現する観点から、地域における支援体制の強化やインクルージョンの推進を図ることとされた。 第2節 雇用・就労の促進施策 〇障害のある人の雇用の場の拡大  2023年の民間企業(2023年は常用雇用労働者数43.5人以上規模の企業:法定雇用率2.3%)が雇用している障害者の数(2023年6月1日現在、以下同じ)は約64.2万人(前年同日約61.4万人)で、20年連続で過去最高となった。また、雇用している障害者の割合は2.33%(前年同日2.25%)であり、初めて実雇用率が報告時点の法定雇用率を上回った。  国の機関(2023年は法定雇用率2.6%)に在職している障害者の割合、勤務している障害者数はそれぞれ2.92%、9,940.0人で、全ての機関において法定雇用率を達成している。 〇総合的支援施策の推進  障害のある人の多様な働き方の推進や、通勤が困難な者等の雇用機会の確保の観点から、ICTを活用したテレワークを障害のある人の雇用においても普及することが重要である。このため、好事例集の作成やフォーラムの開催により、先進事例やノウハウを周知している。2024年度は、障害のある人のテレワーク雇用の導入を検討している企業等に対して、導入に向けた手順等の説明を行うセミナーや、個別相談による支援の実施も予定している。 第4章 日々の暮らしの基盤づくり 第1節 生活安定のための施策 ○利用者本位の生活支援体制の整備  「障害者総合支援法」及び「児童福祉法」では、障害のある人に必要なサービスが提供されるよう、将来に向けた計画的なサービス提供体制の整備を進める観点から、「障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針」(以下「基本指針」という。)に即して、市町村及び都道府県は、数値目標と必要なサービス量の見込み等を記載した「障害福祉計画」及び「障害児福祉計画」を策定することになっている。  2023年5月には、2024年度を始期とする「第7期障害福祉計画」及び「第3期障害児福祉計画」の策定に係る基本指針について改正を行った。 ○在宅サービス等の充実  障害のある人が地域で暮らしていくためには、在宅で必要な支援を受けられることが必要となる。このため、市町村において「障害者総合支援法」に基づき、利用者の障害の程度や必要な支援の内容等に応じ、居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護及び重度障害者等包括支援を実施している。2023年に「地域におけるこどもの発達相談と家族支援の機能強化事業」を開始し、地域の保健、子育て、福祉等と医療機関との連携体制を構築し、こどもの発達相談を実施するとともに、必要な発達支援や家族支援につなぐなど、こどもや家族の支援ニーズに適切な時期に対応できる体制整備を進めている。 ○スポーツ・文化芸術活動の推進  令和5年度「障害児・者のスポーツライフに関する調査研究」によると、障害のある人(20歳以上)の週1回以上の運動・スポーツ実施率は32.5%(20歳以上全般の実施率は52.0%(令和5年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」))。2023年度は、公園や商業施設等のオープンスペースを活用することで、障害のある人とない人が、気軽な形でウォーキングフットボール等を体験する取組等を実施している。  2025年日本国際博覧会(略称「大阪・関西万博」)において、展示・体験ブースや映像配信等により新たなスポーツの価値創造に係る取組を発信する中で、障害者スポーツにおける先端技術を活用した取組やパラスポーツ体験の周知などの情報発信を予定している。  パラリンピックの競技特性や環境等に十分配慮しつつ、オリンピック競技とパラリンピック競技の支援内容に差を設けない一体的な競技力強化支援に取り組んでいる。  障害のある人による文化芸術活動については、2023年3月に策定した「障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な計画(第2期)」に基づき、障害のある人による文化芸術活動の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進している。 第2節 保健・医療施策 ○障害の原因となる疾病等の予防・治療  疾病等の早期発見のための健康診査、障害の原因となる疾病等を予防し、健康の保持増進を図るための保健指導を行っているほか、難病の患者に対する良質かつ適切な医療の確保及び難病の患者の療養生活の質の維持向上などを図っている。 ○障害のある人に対する適切な保健・医療サービスの充実  「障害者総合支援法」に基づき、身体障害の状態を軽減するための医療(更生医療及び育成医療)及び精神疾患に対する継続的な治療(精神通院医療)を自立支援医療と位置付け、その医療費の自己負担の一部又は全部を公費負担している。  国立障害者リハビリテーションセンターでは、早期退院・社会復帰に向けて、各障害に対応した機能回復訓練を行うとともに、医療相談及び心理支援を行っている。  また、高次脳機能障害については、2023年度から(1)高次脳機能障害の診断及びその特性に応じた支援サービスの提供を行う協力医療機関及び専門支援機関を確保・明確化し、(2)当事者やその家族等の支援に資する情報提供を行う地域支援ネットワークの構築を図ることなどを目的とする「高次脳機能障害及びその関連障害に対する地域支援ネットワーク構築促進事業」に取り組んでいる。 第5章 住みよい環境の基盤づくり 第1節 障害のある人の住みよいまちづくりと安全・安心のための施策 ○ユニバーサルデザインの考え方を踏まえたバリアフリー施策の推進  バリアフリー整備目標について、障害当事者団体や有識者の参画する検討会において議論を重ね、ハード・ソフト両面でのバリアフリー化の一層の推進、聴覚障害及び知的障害・精神障害・発達障害に係るバリアフリーの進捗状況の見える化、「心のバリアフリー」の推進等を図るとともに、新型コロナウイルス感染症による影響への対応等も考慮して、2020年11月に最終取りまとめを公表し、「移動等円滑化の促進に関する基本方針」を改正して5年間の新たなバリアフリー整備目標を2021年4月に施行した。現在の同整備目標は、2021年度から5年間を目標期間としているものであり、2026年度以降の新たな整備目標の策定に向けて、2024年度以降、検討を開始する。 ○公共交通機関、歩行空間等バリアフリー化の推進  公共交通機関、歩行空間等のバリアフリー化の推進に関し、2023年度に実施した主な施策等は次のとおり。  ・公共交通機関の旅客施設・車両等・役務の提供に関する移動等円滑化整備ガイドラインの改訂  ・「道路の移動等円滑化に関するガイドライン」の改定  ・「人・ロボットの移動円滑化のための歩行空間DX研究会」の活動としてのシンポジウムの開催  ・旅行会社が商品造成時に観光施設に求めるバリアフリー情報を検証する実証事業の実施及び障害の種別等に応じた旅行商品造成に資するノウハウ集の作成 ○防災、防犯対策の推進  東日本大震災以降、防災対策における障害のある人などの「要配慮者」に対する措置の重要性が一層高まっている中、市町村が要配慮者にも配慮した、避難所、避難路等の整備を計画的、積極的に行えるようにするための支援や、要配慮者の安全かつ迅速な避難が可能となるよう、防災情報システム等の整備強化等の取組を推進している。  また、障害のある人の犯罪・事故被害の防止のため、身近な犯罪や事故の発生状況、防犯上のノウハウ等の安全確保に必要な情報の提供などの取組を進めている。  令和6年能登半島地震においては、障害者等要配慮者の避難先となる福祉避難所を設置するとともに、一般の避難所においてもニーズの把握を行い、福祉避難スペースを設けるなどの必要な対応を行うよう被災自治体に対して通知した。  特に障害のある児童生徒等への対応に当たっては、令和6年能登半島地震の被災地域に対し、「令和6年能登半島地震における被災地域の児童生徒等の学習の継続について(事務連絡)」等を発出し、障害のある児童生徒等も含め、就学機会の確保とともに、発達障害のある児童生徒等の障害の状態等に応じた配慮事項や、自立活動の継続、個別の教育支援計画・個別の指導計画の活用について周知した。 第2節 障害のある人の情報アクセシビリティを向上するための施策 ○情報アクセシビリティの向上  「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律」(障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法)第11条第3項に基づき、障害のある人による情報取得等に資する機器等の開発及び普及の促進並びに質の向上に関する協議の場を共管府省庁(内閣府、デジタル庁、総務省、厚生労働省、経済産業省)において開催し、障害のある人による情報取得等に資する機器等の開発及び普及の促進並びに質の向上に資するよう情報共有や意見交換等を実施している。2023年度は視覚障害をテーマに、障害者団体や事業者から、取組内容の説明を聴取し、意見交換を行った。 ○情報提供の充実  「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」(読書バリアフリー法)に基づく「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画」により、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図っている。また、2023年度は、同法に基づく関係者協議会を開催し、地方公共団体における計画の策定状況や2023年度以降に講ずる施策等について意見交換を行った。 ○コミュニケーション支援体制の充実  意思疎通を図ることに支障がある人に、手話通訳者や要約筆記者、盲ろう者向け通訳・介助員、失語症者向け意思疎通支援者等の派遣等による支援を行う意思疎通支援事業や電話リレーサービスの提供等が実施されている。 第6章 国際的な取組 我が国の国際的地位にふさわしい国際協力に関する施策 ○国際協力等の推進  障害者施策は、福祉、保健・医療、教育、雇用等の広範な分野にわたっているが、我が国がこれらの分野で蓄積してきた技術・経験などを政府開発援助(ODA)などを通じて開発途上国の障害者施策に役立てることは、極めて有効であり、かつ、重要である。我が国は、有償資金協力、無償資金協力、技術協力のほか、国際機関等を通じた協力等を行っている。  無償資金協力においては、障害者関連援助として「一般文化無償資金協力」、「草の根・人間の安全保障無償資金協力」等を実施した。  技術協力の分野では、独立行政法人国際協力機構(JICA)を通じて、研修員の受入れや専門家及びJICA海外協力隊の派遣など幅広い協力を行っており、2023年度においては、就労を希望する障害者が円滑に労働市場に参入できるよう労働−福祉行政機関の連携に基づく就労支援サービスを立案・実現する「スリランカにおける障害者の就労支援促進プロジェクト」や、開発途上国の障害のある人たちが自国で「障害者権利条約」をどう実践していくかを学ぶ研修「障害者権利条約の実践のための障害者リーダー能力強化」などを実施している。 ★「障害者白書」は、内閣府ホームページに掲載しています。 https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/index-w.html