特集 第45回 全国アビリンピック 10月17〜19日  「第45回全国障害者技能競技大会」(全国アビリンピック)が2025(令和7)年10月17日(金)〜19日(日)、愛知県常とこ滑なめ市の愛知県国際展示場(Aichi Sky Expo)で開催された。今回は2027年5月にフィンランド(ヘルシンキ)で開催が予定されている、第11回国際アビリンピック派遣選手選考会も兼ねており、日本全国から集まった招へい選手39人を含む440人の選手が、技能競技25種目で磨き上げてきた技能を披露した。 文:豊浦美紀/写真:官野 貴・岩尾克治 10月17日(金) 開会式  開会式は、前回に引き続き第63回技能五輪全国大会との合同開催となった。大村(おおむら)秀章(ひであき)愛知県知事の大会名誉会長挨拶のあと、主催者挨拶として山田(やまだ)雅彦(まさひこ)厚生労働審議官による福岡(ふくおか)資麿(たかまろ)厚生労働大臣(開催当時)の祝辞代読に続き、大会会長として当機構(JEED)の輪島(わじま)忍(しのぶ)理事長が登壇。「第11回国際アビリンピック・ヘルシンキ大会の派遣選手選考会を兼ねた今大会は、洋裁ほか15競技種目において第41回から第44回までの全国アビリンピックの優勝者と第10回国際アビリンピックの入賞者を招へいしており、いっそうハイレベルで熱意あふれる競技が展開されることを期待します。ヘルシンキ大会のスローガンは『We can. We belong. Nolimits.(私たちはできる。私たちはここにいる。限界はない)』です。選手のみなさんは誇りを胸に、これまで磨き上げてきた技をいかんなく発揮してください」などと激励した。また石破(いしば)茂(しげる)内閣総理大臣(開催当時)のメッセージを代読した厚生労働省の宮本(みやもと)悦子(えつこ)人材開発統括官は「これまでの技能修練でつちかった高度な技術を競い合い、互いに研さんを積む姿は、わが国の成長と未来を支える原動力となると信じています」などと伝えた。  アビリンピック大会旗入場では、「縫製」種目に出場する古村(こむら)春奈(はるな)さん(愛知県)が旗手を務め、各都道府県の選手団旗手が常滑市立三和(みわ)小学校の児童のエスコートで入場した。その後、MPLUSPLUS DANCERS(エムプラスプラスダンサーズ)による「光のフラッグ」パフォーマンスが会場を盛り上げたほか、愛知県出身のプロフィギュアスケーター村上(むらかみ)佳菜子(かなこ)さんやプロ車いすテニス選手の小田(おだ)凱人(ときと)さん、駐日フィンランド大使館からのビデオメッセージも披露された。  選手宣誓は、「パソコンデータ入力」種目に出場する橋(たかはし)詩織(しおり)さん(愛知県)が、技能五輪の選手とともに「われわれ選手一同は、これまで支えてくださった方々への感謝を胸に、日ごろ磨いてきた訓練の成果を最大限に発揮し、私たちが目標としてきた全国大会というかけがえのない舞台で、正々堂々と競技に臨むことを誓います」と力強く表明した。 10月18日(土) 競技紹介 選手・関係者の声 ●ビルクリーニング/喫茶サービス/オフィスアシスタント/製品パッキング  「ビルクリーニング」(国際アビリンピック対象)は、事務室に多いカーペット床清掃(7分)(※)と、水回りの床(トイレ・給湯室)で使用される弾性床清掃・机上清掃(10分)の2課題。資機材の使用方法やマナー、安全に留意した作業もポイントだ。上良(ころ)侑乃介(ゆうのすけ)さん(福井県)は、入社半年になる特例子会社で清掃などを担当。一つめの課題競技を終えて「キビキビと動き、ごみが残らないよう心がけました」とふり返った。同行の上司は「練習は同僚と2人で評価し合いながら切磋琢磨し、ともにすばらしく成長しました」と教えてくれた。その同僚は今回出場を逃したが、一緒に応援しながら再挑戦を誓っていた。  模擬喫茶店での「喫茶サービス」は、3〜4人のグループごとに接客サービスを2回以上行う(1グループ合計約60分)。身だしなみや基本的な労働習慣、客の目線に立ったスムーズな業務、ほかのメンバーとの連携などがポイントだ。井田(いだ)舞(まい)さん(北海道)は、サービス付き高齢者向け住宅で介護などの業務を任されている。全国アビリンピック出場が決まってからは仕事のあとに母校の特別支援学校に通い特訓してきたという。「ここに来られただけでうれしいです。周囲との連携や笑顔での対応など、仕事でも活かしていきます」と充実した表情で語っていた。  「オフィスアシスタント」は配布物の準備(15分)、発送書類の封入(30分)、封筒の仕分け(20分)の3課題。スピーディかつ正確な作業とともに仕分け時の集中力などが求められる。これまで全国アビリンピックで銅賞受賞経験のある苫米地(とまべち)直樹(なおき)さん(福島県)は、銀行の特例子会社で発送業務などを担当し、勤続14年目。「職場では練習時間を確保してもらい、折りの正確性や速さを高められるよう特訓してきました」と語っていた。  「製品パッキング」の課題は、商品を梱包するための箱や緩衝材の組立・結束25セット(5束)(30分)、小箱・中箱・化粧箱・外箱の組立・セットアップ4梱包60分)の二つ。無駄のない作業や正確さなど各課題に合わせた工夫や改善も必要だ。山本(やまもと)愛斗(まなと)さん(鳥取県)は、入社4年目という大手運送会社で荷物の受付業務などを任され、この日も会社のユニフォーム姿で競技に臨んだ。これまで全国アビリンピックで銀賞を2回獲得している山本さんは「スピードとできあがりの品質に気をつけて、応援してくれている職場のみなさんのためにも金賞を取りたいです」と意気込んでいた。高レベルの競い合いの末、山本さんは銅賞を受賞した。 ●ワード・プロセッサ/パソコンデータ入力/パソコン操作/表計算  「ワード・プロセッサ」(国際アビリンピック対象)の課題は、ワープロソフトを使って作成見本と作業指示書を見ながら和文文書(80分)と英文文書(60分)を完成させる。各種機能を活用したスキルなどが求められる。競技前日のオリエンテーションでは入念に準備作業をしていた様子の武村(たけむら)俊明(としあき)さん(大阪府)は、大手保険会社の特例子会社で事務代行業務などを担当して約10年になるそうで、2016(平成28)年の第36回全国アビリンピック山形大会では金賞も受賞している。同行していた上司は、「本人は、以前よりもスピードが落ちていると嘆いていましたが、国際大会出場を目ざして練習してきたようです」と話していたが、見事2度目の金賞に輝いた。  知的障害のある選手が参加する「パソコンデータ入力」は、アンケート入力、文書修正、帳票等作成の3課題(約2時間30分)で、集中力や持続力、タッチタイピングの技能が発揮される。フイデム・ケヌさん(静岡県)は、大手医療機器メーカーの工場で消毒作業や廃棄物回収などを行っている。アビリンピックには特別支援学校に通っていたときに先生からすすめられて挑戦を始めたそうで、全国アビリンピックは初出場だ。上司は「事務系の仕事もできるようになってくれたらと思っているので、この競技はステップアップの場として最適です」と話していた。フイデムさんも「自宅練習でスキルを磨いてきました。全国アビリンピックは、自分がどこまでできるかの挑戦です」と意欲を見せていた。  視覚障害のある選手が対象の「パソコン操作」は、インターネット検索で入手した情報の入力・作成をはじめ、プレゼンテーションソフトや表計算ソフトを用いた資料作成やデータ加工などの4課題(90分)。パソコンの画面情報読み上げソフトや拡大読書器等の支援機器を活用しながらパソコン操作技能を競う。原(はら)真波(まなみ)さん(東京都)は、大手非鉄金属メーカーに勤めながら6回目の全国アビリンピック出場で、職場では指導員の立場だという。競技後、「支援機器の性能やパソコン機能の向上とともに、視覚障害者の職域もどんどん広がっているだけに、競技の課題も幅広くなりました」と話していた原さんは、念願の金賞に輝いた。  「表計算」は、表の装飾・編集、関数式による表の完成、データ処理、グラフ作成を行う(75分)。どの順番で取り組んでもよく、いかに正確に効率よく表やグラフの作成・編集などを行えるかがポイントだ。小倉(おぐら)佳浩(よしひろ)さん(徳島県)は、高校時代からパソコン教室で学び、現在勤務する情報関連会社ではウェブサイトの作成にかかわっている。表計算種目で3回目の全国アビリンピック出場だそうで「できれば入賞したいですね。これまでの集大成だと思って練習してきました」と意気込みを語っていた小倉さんは、銅賞入賞と健闘した。 ●DTP/データベース/ホームページ/コンピュータプログラミング  「DTP」(国際アビリンピック対象)の課題は「『日本酒によるまちおこし』の日本酒ラベルと告知ポスターのデザイン」(3時間30分)。DTPに関するオールマイティな知識が求められるほか、国際アビリンピックでは、デジタル技術の進歩とともに高度なオリジナリティが重視される傾向にあるという。山ア(やまざき)菜津子(なつこ)さん(栃木県)は、デザイン会社が運営する就労継続支援B型事業所に6年前から通い、自分の希望でDTPを一から学んだそうだ。同行していた支援担当者によると、「彼女の特性に合わせた教育用動画で学んでもらい、いまではチラシ作成などを担当してくれています」とのことだ。文字のフォントが大好きだという山アさんは「速くきれいに仕上げるようがんばりたいです」と笑顔で話していた。  「データベース」(国際アビリンピック対象)の課題は、学校における「卒業試験合否判定システム」を10の課題に沿って作成するというもの(3時間)。システムのデータ構造を理解し、その流れに基づいて仕組みをつくるために、さまざまな専門技能が必要とされる。小木曽(こぎそ)圭(けい)さん(愛知県)は、大手自動車メーカーの特例子会社に入社して5年目。以前、表計算種目でも全国アビリンピックに出場している。職場では書類の電子化作業を担当し、データベースのソフトを使うこともあるため種目を変えての再挑戦だ。「この大会での経験を仕事にも活かしていきたいです」と意気込んでいた。  「ホームページ」(国際アビリンピック対象)の課題は、「防災」をテーマにしたホームページ制作と当日発表された要件(申込フォームの追加等)にしたがったウェブページの作成(4時間30分)。作成技術のほか情報設計、独創性、アクセシビリティなどに関する知識が広く求められる。競技終了後は、選手同士で作品を講評し合っていた。薮内(やぶうち)貫二(かんじ)さん(福岡県)は、「今回は生成AIを使えたので、かなり助けを借りて作成できました。ほかのみなさんの作品もすばらしくて勉強になります。アビリンピックに出るだけで自分の能力向上につながります」と満足そうだった。  「コンピュータプログラミング」(国際アビリンピック対象)は、ロボットの動きを指示するプログラムを作成し、動きの指示のしやすさや動作確認機能などに加え、ロボット動作の正確さ・速さの優劣を競う(6時間)。プログラマーやシステムエンジニアとしての総合的な技量が試される。システム開発会社に勤める中村(なかむら)涼介(りょうすけ)さん(岐阜県)は、取引先の大学の先生からすすめられての初出場。日ごろはウェブサイト制作を任されているが、「職場ではロボット導入支援業務も行っているので、役に立つだろうと思い挑戦しました」という。競技後「なんとか仕上がりましたが、時間足らずな部分もあったので、リベンジします」と誓っていた。 ●機械CAD/建築CAD/電子機器組立/パソコン組立  「機械CAD」(国際アビリンピック対象)は、3次元CADシステムを使い、ロボットの先端に装着する三爪ハンドの「部品図と組立図」、「組立図と立体分解図」を作成する(3時間10分)。指示事項を正確に把握し、課題図面を読図して正しく図形を描き、設計に意図された事項の寸法記入法、幾何公差、表面性状など規格に沿って記入できること、課題の機能を理解してモデリングができることなどが要求される。今回は残念ながら入賞者はいなかった。  「建築CAD」は、建築CADを用いて、小規模な2階建て学生寮を目的とした鉄筋コンクリート造2階建てビルの図面(縮尺1/100の平面図、立面図、断面図)をA3用紙2枚の図面に仕上げる(3時間30分)。出場者は木村(きむら)信隆(のぶたか)さん(千葉県)1人だけだった。大手化学関連企業に勤務する木村さんは前回の第10回国際アビリンピックでは機械CAD種目で出場しており、「今回は仕事でも同じソフトを使っている建築CADに挑戦してみました。でも練習不足で時間が足りませんでしたね」と語りながら、競技後は審査員らに熱心に質問していた。  「電子機器組立」(国際アビリンピック対象)の課題は、「省エネコントローラーの組立」(4時間)。組立作業の中心である「はんだ付け」作業が、機器の信頼性に影響を及ぼす重要なポイントだ。山下(やました)航平(こうへい)さん(埼玉県)は、2024年12月からJEEDが運営する国立職業リハビリテーションセンターの電子技術・CADコースで訓練中。同行していた職業訓練指導員によると「最初から勉強し、はんだ付けの実習から半年ほどで県大会を勝ち抜きました。彼の長所はまじめに何でも突き詰めて取り組むところです」とのことだ。山下さんは「ものづくりに興味があり、一から学べるカリキュラムと個別指導のおかげで、企業研修も経験し、内定をいただきました。今回の競技経験も活かしていきたいです」と答えてくれた。  「パソコン組立」(国際アビリンピック対象)は、デスクトップ型パソコンの部品の選定、交換または新設、メンテナンスを行ったうえで中身を組み立て直し、ソフトウェアのインストールや設定を行う(4時間)。ハードウェアとソフトウェアの両面から作業を行い、完成度・的確さや正常に動作するかを競う。三宅(みやけ)勝己(かつみ)さん(神奈川県)は、システム開発企業の特例子会社でネットワーク関連の業務を担当し、これまで銀賞などを獲得している。三宅さんは昼休憩中に「今回もねじ回しに手こずりました。最後までくじけず楽しく終わらせたいと思います」。また、元同僚で招へい選手の舘野(たての)裕太郎(ゆうたろう)さん(神奈川県)は「競技の難易度が上がっているように感じますが、国際アビリンピックを目ざしてがんばります」と語ってくれた。 ●歯科技工/義肢/家具/木工  「歯科技工」の課題は、上顎と下顎の全歯を失った患者のために歯ぐきをおおう「上下ろう義歯」の製作(5時間)。既製の模型を使い、かみ合わせを再現できるよう人工の歯を並べ、歯科用ワックスで歯ぐきを自然な形に回復させる。精密な手作業と細やかな調整は、歯科技工士としての高い技術が試される。梨(たかなし)理来(りく)さん(東京都)は、大学の歯科技工研修科に在籍していた前回の全国アビリンピックで努力賞を獲得し、いまは歯科技工所で働いている。「仕事ではクラウン・ブリッジなどを製作しています。全国アビリンピックに向けて職場でも練習させてもらったのでがんばりたいです」と手話を交えて伝えてくれた。  「義肢」の課題は、下腿義足ソケットの製作(4時間15分)。切断部分の形状を正確に型採りし、解剖学的・人間工学的知識を基に断端モデルを修正後、それに合わせた正確な加工・組立を行う。初出場の奥野(おくの)佳太(けいた)さん(佐賀県)は数年前、事故で両足に大きな傷を負い、義肢装具士にひざ用の装具をつくってもらったそうだ。「自分もこんな仕事がしたいと思い専門学校に入って、いまはお世話になった義肢製作所で働いています。金賞が取れるまでアビリンピックには挑戦していきたいですね」と意欲を語ってくれた。  「家具」(国際アビリンピック対象)の課題は、花台の製作(5時間30分)で、「板と板の接合」、「角材と角材の接合」がポイント。のこぎり、のみ、かんななどの手工具や木工機械を使用して、図面に基づき正確で見栄えのよい作品をつくる。全国アビリンピック出場は3回目という田中(たなか)匠貴(しょうき)さん(長崎県)は、船舶装備会社で船内向けのベッドやカウンターをつくっているそうだ。競技後、「5枚組の接ぎを外したときに割れがみつかったが、新しいものに交換して完成できてよかったです」と伝えてくれた田中さんは、結果もこれまでの銅賞から銀賞へと躍進した。  知的障害のある選手が参加する「木工」(国際アビリンピック対象)の課題は、「蓋(ふた)付き木箱」の製作(5時間)。家具種目と同様に手工具を使い、機械作業ではできないような洗練された製品をつくり出す。加工精度や作業時間がポイントだ。高等養護学校3年の川畑(かわばた)曜伎(てるき)さん(滋賀県)は、専門教科(工業)で木工を学び、アビリンピック初挑戦での全国大会。「蟻組(ありぐみ)という特殊な伝統技法で板を斜めに切って接合するのがむずかしいのですが、今日はすき間なく完成できました」と手応えを語った川畑さんは、すでに大手精密機器メーカーから内定をもらっているという。「同じものづくりの職場なので、この競技経験も活かしたい」という川畑さんは、銀賞を獲得した。 ●洋裁/縫製/フラワーアレンジメント/ネイル施術/写真撮影  「洋裁」(国際アビリンピック対象)の課題は、薄手ウールを使用したオーダー仕立てのオーバーブラウスの製作(6時間)。粗裁(あらだ)ちずみの布地が支給され、ミシンやアイロン、ロックミシンなどを使い仕上げる。菊地(きくち)李果(ももか)さん(鹿児島県)は、鹿児島障害者職業能力開発校のアパレル科で学んで半年足らず。「趣味だったミシン操作がうまくなりたくて入校しました。将来はミシンを使った仕事をしたいです」とのこと。同行していた職業訓練指導員と「最初にミスもあったけど、そのおかげで落ち着いたよね」と笑い合っていた菊地さんは、銅賞入賞を果たした。  「縫製」(国際アビリンピック対象)の課題は、エプロンの縫製(4時間)。9枚のパーツが配付され、ミシン、アイロン、はさみ、目打ちなどの道具を使用して製作する。中桐(なかぎり)桜(さくら)さん(岡山県)は、就労継続支援A型事業所でバッグなどをつくり、商品はインターネット販売もされているそうだ。同行していた母親は「不器用だと思っていたら、中学生になって急に折り紙がうまくなり、たまたま支援学級の先生が手芸を教えてくれて、縫製の道が開けました。好きなことを仕事にできる娘がうらやましいです」と目を細めながら見守っていた。  「フラワーアレンジメント」(国際アビリンピック対象)は、花束(60分)、トルソーに装飾するフラワーアクセサリー(ネックレス)(90分)、会場装飾(アレンジメント)(90分)の3課題。目的に応じた花の選択や造形などの基本知識に加え、実用性や完成度の高い作品が求められる。実業系の高校に通う弱視の黒岩(くろいわ)佳叶(かいと)さん(長野県)は、小学生のころからクラブ活動で生け花を習っていたことから、高校でも同様の部活動に所属。先生のすすめでアビリンピックに挑戦してみたという。競技後「サプライズ花材もあって時間も不足気味でしたが、満足のいく作品に仕上げられました」と語った黒岩さんは努力賞を獲得した。今後は調理の専門学校に進むそうだ。  「ネイル施術」(国際アビリンピック対象)は、実際のサロンワークを想定した時間と内容で、正確でていねいな技術力や美的感覚、仕上がりの完成度を競う。課題1のネイルケアとカラーリング(75分)では爪のケアやカラーリングの基本技術、課題2のネイルアート(80分)では今回「地球と自然(Earth & Nature)」をテーマにした表現力が問われる。初出場の北島(きたじま)玲奈(れな)さん(福岡県)は、就労継続支援A型事業所でネイル施術を学び始めて1年足らず。同行していた指導員は「事業所ではネイルの資格を取る人が増えていて、仕事につなげていくのが目標です。北島さんは努力家なのでがんばってほしい」とエールを送っていた。北島さんは「少し前まで精神的につらくて練習不足だったこともあり、力を出し切れなかった部分もあります」と悔しさをにじませていたが、それでも努力賞を獲得し、指導員と喜び合っていた。  「写真撮影」(国際アビリンピック対象)の課題は、愛知県国際展示場とアビリンピック競技の風景などをパンフレットなどで紹介することを想定した、魅力的な写真の撮影(4時間)。撮影許可をもらってよい表情を引き出すポートレート撮影のほか基本的な撮影技術や総合的な構成力等を競う。初出場の橋(たかはし)良明(よしあき)さん(宮崎県)は、競技後「レベルの高い選手たちと写真を撮り合い、すばらしい作品も見られ、とても刺激をもらいました」と語ってくれた。最近アウトドア施設の運営会社に転職したばかりで、SNSでの情報発信に写真技術を活かしていきたいそうだ。そして、見事に銀賞を受賞した。 ●デモンストレーションRPA/ドローン操作  前回に続いて実施された「RPA」(Robotic Process Automation)は、パソコンで行う事務作業の自動化のことで、競技課題は「プログラムの新規作成」、「プログラムの修正と機能追加」。成果物の結果の正しさ、処理動作の安定性・速さ、可読性(わかりやすさ)がポイントだ。今回は特設ステージでの披露となった。  JEEDの国立吉備高原職業リハビリテーションセンターによる「ドローン操作」は、建築物の点検業務を想定し、設置された模擬障害物にはりつけた数字や破損個所などを、ドローンを操縦してみつけるというもの。かぎられた空間で建築物に接触することのない飛行ルートを考え、正確に早く数字をみつける技術を実演していた。 ●障害者ワークフェア2025  競技エリアに隣接したフロアでは「障害者ワークフェア2025〜働く障害者を応援する仲間の集い〜」が開催された。これは、障害者の職業能力や雇用に関する展示や実演などを通して来場者に理解と認識を深めてもらうことが目的だ。今年は111の団体・事業所などが「能力開発エリア」、「就労支援エリア」、「職場紹介エリア」、「特設コーナー」に出展し、多くの来場者でにぎわった。  また、特設ステージ横では、次の国際アビリンピック開催地フィンランドで生まれたスポーツ「モルック」の体験コーナーが設けられていた。木製の棒を投げて12本のピンを倒すというもので、一般社団法人日本モルック協会によると、老若男女を問わず気軽に楽しめるという。 10月19日(日) 閉会式  午前10時からの閉会式は、前日の競技の熱気に包まれたまま、大勢の選手や関係者が参加した。会場の大スクリーンで全競技のハイライト映像が放映されたあと、大会会長であるJEEDの輪島忍理事長が「競技に取り組んだ熱くひたむきな姿は、多くの人に大きな感動と勇気を与えるとともに、障害のある人が優れた職業能力を力強くアピールできたと確信しています。自信と誇りを持っていっそう活躍されることを心から願っています」などと挨拶。続いて厚生労働省の蒔苗(まかなえ)浩司(こうじ)大臣官房審議官の来賓挨拶のあと、駐日フィンランド大使館から選手たちを激励するビデオメッセージも披露された。  成績発表と表彰では、目標を達成できた充実感でいっぱいの笑顔やうれし涙をみせる選手たち、ステージ脇で受賞者同士が記念撮影をする様子などがみられた。  最後に、次回開催地である愛知県の大村秀章知事が大会名誉会長として登壇し「多くの方々が、みなさんのがんばる姿を通じて、障害のある方が学校や社会で活躍されていることをあらためて認識され、その高い能力への理解がいっそう深まったのではないかと思います。大会を通してつくった思い出や、新たな絆を今後も大切にしてください。次回もお会いしましょう」などと締めくくった。 金賞受賞者たちの喜びの声  「家具」の山原(やまはら)耕一(こういち)さん(和歌山県)は、「ミスをしないよう、くり返し練習しました。始めは緊張しましたが、そのうちに落ち着いて取り組めたことがよかったです」。  「DTP」の藤元(ふじもと)秀幸(ひでゆき)さん(福岡県)は、「初出場で金賞をいただけて大変うれしいです。時間をかけて課題の読み込みをしたことがよかったと思います。この経験を仕事にも活かしていきたいです」。  「電子機器組立」の松ア(まつざき)七海(ななみ)さん(愛知県)は、「最後まであきらめずに取り組んだことが金賞につながったと思います。職場に戻ったら、これまでがんばってきた成果を発揮できるようがんばります」。  「歯科技工」の佐々木(ささき)千秋(ちあき)さん(北海道)は、「金賞を取ることができてうれしいです。1カ月ぐらい競技に向けて一生懸命練習したかいがありました。今後も技術を活かしてがんばっていきたいです」。  「ワード・プロセッサ」の武村(たけむら)俊明(としあき)さん(大阪府)は、「正直ここまで大変苦労してきました。国際大会もかかっていたので必死に練習し、研究を重ね努力を続けてきたことが結果につながりました」。  「データベース」の矢野(やの)明雄(あきお)さん(福岡県)は、「うれしいとしかいいようがありません。競技では、ほかの選手とは違う、一歩先に出るための工夫をしました。これまで支えてくれた人たちに感謝したいです」。  「ホームページ」の吉田(よしだ)純一(じゅんいち)さん(東京都)は、「ほかのみなさんもよい作品ばかりで無理かなと思っていましたが、私がこだわったアクセシビリティの部分を評価してもらえたようでうれしいです」。  「フラワーアレンジメント」の高橋(たかはし)璃沙(りさ)さん(岐阜県)は、「以前、勤めていた花屋での経験を活かし、教室にも通い懸命に練習を重ねた成果だと思います。金賞をいただけて本当にうれしいです」。  「コンピュータプログラミング」の稲葉(いなば)洋介(ようすけ)さん(東京都)は、「出場3回目での金賞でうれしいです。支えてくださった職場のみなさんのおかげです。毎回快く挑戦させてもらえたことが、何よりありがたかったです」。  「ビルクリーニング」の栗原(くりばら)恋夏(こなつ)さん(群馬県)は、「努力してきた結果が出てうれしいです。競技では素早い動きを心がけました。今後の仕事にも活かしていきたいです。国際大会も目ざしたいです」。  「製品パッキング」の西水流(にしずる)孝碩(たかひろ)さん(愛知県)は、「ゼロから学び、前回は初出場で賞を逃した悔しさをバネに、スピードや品質、動線などを改善しました。これからも仕事に活かしてがんばります」。  「喫茶サービス」の細尾(ほそお)希良々(きらら)さん(岡山県)は、「本当にいろいろな方たちのおかげです。競技ではお客さまの立場になって笑顔で接客ができました。今後も自分らしく接客していきたいです」。  「オフィスアシスタント」の中谷(なかたに)優太(ゆうた)さん(岡山県)は、「金賞を取ると世界が変わります。努力したかいがありました。競技ではスピードと数をこなすことに力を入れました。今後も業務で活かしていきます」。  「表計算」の空田(そらた)聡(さとし)さん(埼玉県)は、「みなさんに応援してもらい、旗もつくってもらって、落ち着いてがんばれました。職場では経理担当で、仕事でも使う関数について特に勉強しました。とてもうれしいです」。  「ネイル施術」の池田(いけだ)衣里(えり)さん(東京都)は、「前回は銀賞だったので金賞を取れてうれしいです。最後まであきらめずに、やり抜いた結果だと思います。今後の目標は国際オリンピックに出場してメダルを取ることです」。  「写真撮影」の大澤(おおさわ)宏輔(こうすけ)さん(愛知県)は、「会社のみなさんや家族、友人の支えがあっての受賞なので喜びを分かち合いたいです。人を撮るのが好きで、練習もたくさんしてきました。今後も日々前進です」。  「パソコン操作」の原(はら)真波(まなみ)さん(東京都)は、「6回目の出場だったので非常にうれしいです。職場では支援する立場なので、大会に出られる選手を育てていきます。努力を積み重ねることで花開きますね」。  「パソコンデータ入力」の増田(ますだ)錬(れん)さん(埼玉県)は、「今回3回目の出場だったので、金メダルが取れて本当によかったです。職場の人たちにも感謝したいです。これからも仕事をがんばっていきたいです」。  「縫製」の古村(こむら)春奈(はるな)さん(愛知県)は、「競技では、フリルにボリューム感と美しさを出すことを意識しました。努力してきたことを発揮できてよかったです。支えてくれた人たちに感謝の気持ちでいっぱいです」。  「木工」の斉藤(さいとう)大地(だいち)さん(北海道)は、「金賞が取れてよかったです。競技では、すき間なくきれいにつくることを心がけました。もし国際アビリンピックに行けることがあれば、がんばりたいです」。 ※課題内容の後の( )内の時間は、競技時間をさします 写真のキャプション 会場となった「愛知県国際展示場(Aichi Sky Expo)」 古村春奈さん(右)がアビリンピック大会旗の旗手を務めた 橋詩織さん(手前)が技能五輪の選手とともに選手宣誓を行った 大村秀章愛知県知事による挨拶 輪島忍JEED理事長による挨拶 石破茂内閣総理大臣(開催当時)のメッセージを代読する厚生労働省の宮本悦子人材開発統括官 「ビルクリーニング」上良侑乃介さん(福井県) 「喫茶サービス」井田舞さん(北海道) 「オフィスアシスタント」苫米地直樹さん(福島県) 「製品パッキング」銅賞 山本愛斗さん(鳥取県) 「ワード・プロセッサ」金賞 武村俊明さん(大阪府) 「パソコンデータ入力」フイデム・ケヌさん(静岡県) 「パソコン操作」金賞 原真波さん(東京都) 「表計算」銅賞 小倉佳浩さん(徳島県) 「DTP」山ア菜津子さん(栃木県) 「データベース」小木曽圭さん(愛知県) 「ホームページ」藪内貫二さん(福岡県) 「コンピュータプログラミング」中村涼介さん(岐阜県) 「建築CAD」木村信隆さん(千葉県) 「電子機器組立」山下航平さん(埼玉県) 「パソコン組立」三宅勝己さん(神奈川県) 「パソコン組立」舘野裕太郎さん(神奈川県) 「歯科技工」梨理来さん(東京都) 「義肢」銅賞 奥野佳太さん(佐賀県) 「家具」銀賞 田中匠貴さん(長崎県) 「木工」銀賞 川畑曜伎さん(滋賀県) 「洋裁」銅賞 菊地李果さん(鹿児島県) 「縫製」中桐桜さん(岡山県) 「フラワーアレンジメント」努力賞 黒岩佳叶さん(長野県) 「ネイル施術」努力賞 北島玲奈さん(福岡県) 「写真撮影」銀賞 橋良明さん(宮崎県) デモンストレーション「RPA」 デモンストレーション「ドローン操作」 「障害者ワークフェア2025」 フィンランド発祥のスポーツ「モルック」体験コーナー 「家具」金賞 山原耕一さん(和歌山県) 「DTP」金賞 藤元秀幸さん(福岡県) 「電子機器組立」金賞 松ア七海さん(愛知県) 「歯科技工」金賞 佐々木千秋さん(北海道) 「ワード・プロセッサ」金賞 武村俊明さん(大阪府) 「データベース」金賞 矢野明雄さん(福岡県) 「ホームページ」金賞 吉田純一さん(東京都) 「フラワーアレンジメント」金賞 高橋璃沙さん(岐阜県) 「コンピュータプログラミング」金賞 稲葉洋介さん(東京都) 「ビルクリーニング」金賞 栗原恋夏さん(群馬県) 「製品パッキング」金賞 西水流孝碩さん(愛知県) 「喫茶サービス」金賞 細尾希良々さん(岡山県) 「オフィスアシスタント」金賞 中谷優太さん(岡山県) 「表計算」金賞 空田聡さん(埼玉県) 「ネイル施術」金賞 池田衣里さん(東京都) 「写真撮影」金賞 大澤宏輔さん(愛知県) 「パソコン操作」金賞 原真波さん(東京都) 「パソコンデータ入力」金賞 増田錬さん(埼玉県) 「縫製」金賞 古村春奈さん(愛知県) 「木工」金賞 斉藤大地さん(北海道)