エッセイ 障がいのある人が働きやすくなるヒントと考え方 第2回 障がい者製品の販路と“正義”の拡大 放送作家・ライター 姫路(ひめじ)まさのり  放送作家として、数多くのテレビ・ラジオ番組の制作をにない、ライターとして、新聞や雑誌、ウェブメディアで記事を執筆。同時に、ダウン症をはじめ、自閉症などの障がい、HIV・AIDSなどの支援事業にたずさわり、当事者の声を取材。執筆や講演活動を通し、その思いを伝える。  著書に『ダウン症で、幸せでした。〜10年追いかけて分かった幸福の秘密』(東京ニュース通信社・講談社、2025年)、『障がい者だからって、稼ぎがないと思うなよ。〜ソーシャルファームという希望』(新潮社、2020年)などがある。 障がいのある方がつくる商品は多種多様!  おかげさまで、福祉関連のイベントにお招きいただく機会も増えるなか、会場のお店を回るたびに、販売アイテムの良質さに驚かされます。あるとき、タイルの上に色鮮やかなガラスを並べ、サンタやツリーを彩ったオブジェを発見。雑貨屋で買い求めれば3000円に届きそうな物が、なんと300円! お店の人に「安すぎません?」とたずねると、「障がいのある子ががんばってつくったんです」という言葉が返ってきました。  障がいのある方がつくる商品は、かつては「授産品」と呼ばれ、パンやクッキーというイメージもありました。しかしいまや、多種多様、かつ品質もよくなっている印象を受けます。  そんな状況も手伝い、多くの施設から相談を受けるのが、「どうしたらもっと売れますか?」という「販路の拡大」の問題です。せっかくの商品も、おもにご家族やバザーなどでの販売に留まり、認知が広まらずに悩む人も多いようです。 障がい者雇用プラスアルファの“正義”  数年前、障がいのある方が製造・販売にかかわる商品のコンテストの審査員を仰せつかりました。全国から応募があったなかには、海岸で回収したプラスチックを洗浄、加工してつくられたアクセサリー、使わなくなった風呂敷や衣服などの端布を裁縫し直したエコバッグなど、その発想に目を丸くする物ばかり。同時に気づいたのは、いずれもがSDGsも含め、「二つ以上の社会課題」と向き合っている事実でした。海洋資源の保護と障がい者雇用。衣服の再利用と障がい者雇用。顕著たる例が、みなさんもご存じの「農福連携」でしょう。農業のにない手を生み出すという、もう一つの“正義”が加わることで、地域の理解や協力も得やすいという側面があるように思います。 しんどいのは障がい者だけじゃない…  以前、滋賀県で20年以上、クッキーやお菓子の販売を続け、年商2億円を達成したこともある「がんばカンパニー」の中崎(なかざき)ひとみさんから、こんな言葉を聞いたことがあります。  「感じているのは、障がい者の雇用だけで世論を動かすのはむずかしいっていう現実です。私は親の介護で、私はワーキングプアで、シングルマザーで……と、しんどいのは障がい者だけじゃないって声をよく聞きます」  その言葉通り、いま障がい者製品の販路拡大に求められている傾向は、“正義の拡大”なのだと感じています。 地域の困りごとを障がい者雇用で解決  私は、数年前に「ソーシャルファーム」をテーマにした本を書かせていただきました。ソーシャルファームとは、「どうしたら利益を上げられるか」というビジネスの視点を取り入れ、一般企業と競争できる事業を展開する取組みです。1970年代のイタリアで、精神科病院の患者と職員らが協力し、レストランやカフェをつくったのが始まりとされています。そうした成り立ちから、障がい者雇用の施策ととらえられがちですが、引きこもりの人や高齢者から出所者まで、“働きたくても働けない人”をターゲットとしており、実態は数多くの社会問題解決をテーマに掲げているのです。  そう聞くと、「えらく大層な話だな…」と敬遠される読者の方もいるかもしれません。でも、例えば「地域の困りごとを聞く」ということから始められてはいかがでしょうか? 商店街の人に、「何か困っていることはありませんか? 手が回らないことはありませんか?」と聞けば、さまざまな回答があるはずです。実際、ある商店街のパン屋さんに同様の提案をしたところ、「バケットもつくりたいけど、時間がかかるから手が回らない」と聞かされ、パンづくりをしたい障がいのある女性が、バケットづくりを手伝い始めた、という事例もあります。  「共感の拡大」のために、“障がいプラスアルファ”の連携が求められるいまの時代。「地域の困りごとを障がい者雇用で解決する」。そんな目線で見つめ直してみると、あちこちにアイデアが転がっている気がしませんか? ★本誌では通常「障害」と表記しますが、姫路まさのりさんのご意向により「障がい」としています