【表紙】 令和8年5月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第584号 ISSN 0386-0159 障害者と雇用 2026/6 No.584 職場ルポ 地域農業を支える加工工場、手作業で力発揮 株式会社パンドラファームグループ(奈良県) グラビア 職場配置や仕事内容の工夫で、一人ひとりが能力を発揮し活躍 丸善製薬株式会社 本社・本社工場(広島県) 編集委員が行く 中高年齢期にある障害のある従業員への対応 〜スズキ・サポート、くらしえん・しごとえんを訪ねて〜 株式会社スズキ・サポート(静岡県)、特定非営利活動法人くらしえん・しごとえん(静岡県) この人を訪ねて 重度障害者が、主体性を持って暮らし働くとは 株式会社障碍社 代表取締役 安藤信哉さん 「木工の仕事でがんばっている姿」茨城県・栗原(くりはら)秀輝(ひでき) 6月号 【前頁】 心のアート インドクジャク Tomomi Nakatani (社会福祉法人ともに福祉会 ともに) 画材:サインペン、画用紙/サイズ:390mm×545mm  日々の軽作業では、目標を持ってこつこつと取り組んでいます。週1回の創作活動のときは、お気に入りのとり図鑑や写真集を見て、フリーハンドで滑らかな曲線を描き、ていねいに色を塗り重ねていきます。とりとさかなとサザエさんが大好き。いままで描いたとりは約400羽。まだまだ継続中。 (文:社会福祉法人ともに福祉会 ともに 石川(いしかわ)則子(のりこ)) Tomomi Nakatani(ともみ・なかたに) 1989(昭和64)年生まれ 2018(平成30)年 ともに福祉会主催「tomoni art にじいろ世界展」(北海道札幌市/大通美術館)12点出展 2022(令和4)年 ともに福祉会主催「ともにのにじいろアートワーク本日も晴天なり」 (北海道札幌市/大丸藤井セントラル スカイホール) 75点出展 【もくじ】 障害者と雇用 目次 2026年6月号 NO.584 「働く広場」は、障害者雇用の啓発・広報を目的として、ルポルタージュやグラビアなど写真を多く用いて、障害者雇用の現場とその魅力をわかりやすくお伝えします。 心のアート 前頁 インドクジャク 作者:Tomomi Nakatani(社会福祉法人ともに福祉会 ともに) この人を訪ねて 2 重度障害者が、主体性を持って暮らし働くとは 株式会社障碍社 代表取締役 安藤信哉さん 職場ルポ 4 地域農業を支える加工工場、手作業で力発揮 株式会社パンドラファームグループ(奈良県) 文:豊浦美紀/写真:官野 貴 クローズアップ 10 「合理的配慮」という希望 〜人事と法務の交差点から〜 第4回 管理職を孤立させない 〜日々のマネジメントと合理的配慮〜 JEEDインフォメーション 12 【2026(令和8)年度新規開催】「上級職場適応援助者養成研修」のご案内/「障害者の就労支援に関する基礎的研修」のご案内/令和8年度「地方アビリンピック」開催地一覧 グラビア 15 職場配置や仕事内容の工夫で、一人ひとりが能力を発揮し活躍 丸善製薬株式会社 本社・本社工場(広島県) 写真/文:官野 貴 エッセイ 19 障がいのある人が働きやすくなるヒントと考え方 第4回 福祉の世界に“ビジネスのプロ”が少ない理由 放送作家・ライター 姫路まさの 編集委員が行く 20 中高年齢期にある障害のある従業員への対応 〜スズキ・サポート、くらしえん・しごとえんを訪ねて〜 株式会社スズキ・サポート(静岡県)、特定非営利活動法人くらしえん・しごとえん(静岡県) 編集委員 若林 功 省庁だより 26 令和8年度 障害保健福祉部予算の概要(1) 厚生労働省 障害保健福祉部 研究開発レポート 28 職場復帰支援におけるキャリア再形成に関する調査研究 障害者職業総合センター研究部門 障害者支援部門 ニュースファイル 30 編集委員のひとこと 31 掲示板・次号予告 32 e-Govを利用して障害者雇用納付金関係助成金を電子申請できます 表紙絵の説明 「この題材を選んだのは、木工に興味があったからです。木工の仕事は少したいへんそうですが、自分の手でよい作品がつくれるのは楽しそうです。作業をしている人の服を描くことに苦労しましたが、道具を細かく描けて満足しています。受賞を聞いて、うれしさもありましたが、驚きのほうが勝っていました」 (令和7年度 障害者雇用支援月間絵画コンテスト 中学生の部 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長奨励賞) ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。 (https://www.jeed.go.jp/disability/data/works/index.html) 【P2-3】 この人を訪ねて 重度障害者が、主体性を持って暮らし働くとは 株式会社障碍社 代表取締役 安藤信哉さん あんどうしんや 1974(昭和49)年神奈川県生まれ。18歳のときに交通事故で頚髄損傷による重度障害者となる。2001(平成13)年、関東学院大学大学院修士課程(経営学専攻)修了。2005年、有限会社パーソナルアシスタント町田(現・株式会社障碍社)を設立。同社は2022(令和4)年に第12回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の厚生労働大臣賞を受賞。著書に『事故ル!18歳からの車いすライフ』(2009年、幻冬舎ルネッサンス刊)がある。 自薦ヘルパーで自立生活 ――18歳のときに重度の身体障害者となった安藤さんは、26歳から1人暮らしを始めたそうですね。 安藤 高校3年生だった1992(平成4)年、バイクで走行中に、ふいに出てきた車と衝突し、頚髄損傷を負いました。リハビリも含め1年あまり入院しましたが、手足はほぼ動かない状態になりました。それでも大学に入学し通学できたのは、母が自宅介護をはじめ、送迎や授業同席などを一手に引き受けてくれたおかげです。一方で、遠慮のない親子ならではの口論も絶えませんでした。その後ヘルパーの介助を受けるようになり、母とほどよい距離感が大切だと気づいた私は、介護保険制度が始まった2000年、1人暮らしを決心しました。  まずは入院先のすすめで、障害者の自立生活を支援する「特定非営利活動法人町田ヒューマンネットワーク」(東京都町田市)を訪ねました。しかし、そこはすでに私よりも重度な方へのヘルパー派遣で手一杯でした。代わりに担当者から「自分で探した“自薦ヘルパー”がいれば、こちらで給与関連の事務はになえる」とアドバイスされました。  じつはこの仕組みは、デンマークで1980年代に「パーソナルアシスタント制度」として確立されています。障害者自身が募集から面接、採用、雇用管理までを行い、勤務報告に沿って自治体などから給与が支払われる流れです。  そこで私もヘルパー探しから始めました。パソコンで作成した募集チラシを専門学校や公民館の掲示板に貼ったところ、介護福祉士や看護師を目ざす学生、主婦、フリーターの方々が応募してくれました。その後は、一人ひとりに私向けの介助方法を教え、勤務シフトの作成から欠勤対応までと本当にたいへんでした。しかし、慣れてくると、自分で計画を立てて外出や旅行をするようになり、大学院にも進学できました。 セルフケアマネジメントで自己効力感 ――その後ご自身で、重度訪問介護事業を行う会社を設立したのはなぜですか。 安藤 きっかけは、2003年に開始された障害者支援費制度によって、通勤・通学にホームヘルプサービスが使えなくなり、同サービスの利用時間が削減されたことです。私は博士課程を3年で退学し、その代わりに市と交渉する障害者団体の副代表として活動しました。そして5カ月後には、サービス時間数を回復させることができました。  当時の仲間には、職場介助が受けられないために働いていない障害者もいました。それなら助成金を活用し職場介助を提供することで、貴重な人財として活躍してもらえばよいと思い立ち、2005年に「有限会社パーソナルアシスタント町田」(現・株式会社障碍社)を設立し、仲間の1人をシステム担当として雇用しました。  私たちの重度訪問介護事業は、デンマークの方式を参考にしつつ、利用者同士でヘルパーをシェアできるようにしました。あらかじめ事業所で採用・登録したヘルパーのなかから利用者が面接をして選び、シフト管理も行います。この仕組みを当社ではセルフケアマネジメント(SCM)と呼んでいます。SCMによって削減された間接費は、ヘルパーの給与に還元しました。  スタート時は利用者5人とヘルパー26人でしたが、正直なところ、これ以上大きくはならないだろうと思っていました。自由に暮らせる一方で管理責任もともなうことになり、相応の覚悟が必要だからです。しかし実際は口コミで広がり、現在は利用者74人、ヘルパー290人以上、事業所も本社のある町田市を含め3カ所にまで拡大しています。  これほど受け入れられた理由は、SCMによって利用者に自己効力感が生まれたからだと思っています。自分で選んだヘルパーに、自分の生活スタイルに合わせた介助をしてもらうことは、自己選択・自己決定の連続です。私自身もそうでしたが、全面的に介助が必要な状況であっても、日々の行動を自分で決め、主体性を持って生活することで、自信や意欲にもつながっているのだと感じます。  また、利用者が賞与査定にもかかわることで、ヘルパーのモチベーションやサービスの向上にもつながります。当社の常勤ヘルパーの平均年収は業界平均を上回り、当初から目標としていた「ヘルパーの社会的地位の向上」にも貢献できました。結果として離職率も低く、利用者は安定した生活を続けられるという好循環が生まれています。 ピアサポーターや所長として働く ――利用者である重度障害者の雇用も進めてきましたね。 安藤 私はどれほど重度の障害があっても、働きたい人は働ける社会にしたいと考えてきました。実際、自立生活が安定すると「働きたい」という人は少なくありません。当社では障害の程度や本人の希望に応じて、在宅勤務も含め常勤・非常勤で雇用しています。現在は身体障害者21人(うち重度19人)、精神障害者7人が、ピアサポーターや事業所の所長、幹部社員として活躍しています。  ただし、私は社員には厳しいです(笑)。合理的配慮はするけど、甘えは許さないというのがモットーです。例えば、車いすだからといって遅刻が許されるわけではありません。電車にうまく乗れないリスクをふまえ、余裕を持って行動する努力も必要です。車いすユーザーにかぎらず、さまざまな事情を抱えながら奮闘している社会人も多いですからね。  権利を主張する以上は、就労者としての義務もしっかり果たす。そうして私たち重度障害者も、自立生活を通して社会との接点を増やし、経済活動の一部をになうことで、共生社会から共創社会へと本当の意味でのダイバーシティにつながっていくと考えています。 だれもが夢を持って自由に暮らせる社会を ――障碍社はこれまで多様な事業を展開してきましたが、今後の抱負も教えてください。 安藤 私たちは当事者の視点や経験を活かしながら事業展開を図ってきました。2009年に立ち上げた資格講習事業所では、介助者に必要な資格講習を受講者1人でも開講し、企業・団体向けには当事者講師らによる出張研修も行っています。さらに、相談支援事業所や就労継続支援B型事業所、福祉用具事業所(車いすの修理・販売)、発達障害児向けの放課後等デイサービスなど、幅広い福祉サービスを提供しています。  現在は、重度の知的障害や精神障害、強度行動障害のある人たちも地域で安心して自立生活ができる環境づくりを視野に、新たな人財育成を進めています。社内では、いろいろな夢の計画を掲げていますが、経営者として意識しているのは、会社の成長と社員の幸せを同時に追求することです。そして今後も、障害者福祉の総合企業として、さまざまな社会的課題に挑戦し、だれもが夢を持って自由に暮らせる社会の実現を目ざしていきます。 【P4-9】 職場ルポ 地域農業を支える加工工場、手作業で力発揮 株式会社パンドラファームグループ(奈良県) 人口減少が進む山間地域の農作物加工工場は、技能実習生らとともに障害のある従業員を戦力としながら、地域の農福連携にもかかわっている。 (文)豊浦美紀 (写真)官野 貴 取材先データ 株式会社パンドラファームグループ 〒637-0037 奈良県五條市(ごじょうし)野原中(のばらなか)4-5-27 TEL 0747-26-2121 FAX 0747-25-1832 Keyword:知的障害、精神障害、ジョブコーチ、加工工場、農福連携 POINT 1 知的障害のある従業員1人を初めて採用、ベテラン従業員の指導で定着 2 引きこもりの若者も農業体験で受け入れながら採用の幅を広げる 3 就労継続支援A型事業所と協力し、農福連携の取組みも 農作物の加工販売  梅や柿といった農作物の生産から加工、流通・販売までを手がける「株式会社パンドラファームグループ」(以下、「パンドラファーム」)は、奈良県五條市で果樹農家をしていた王隠堂(おういんどう)誠海(まさみ)さんが、有機農業を実践する仲間たちと1984(昭和59)年に立ち上げた生産者団体「有限会社王隠堂農園」を母体としている。パンドラファームは、生産者が農業に専念し、出荷商品の品質を平準化・安定化することを目的に地域共同事業センターとして1996(平成8)年に設立された。農産物の集出荷や選果・選別作業を請け負うほか、さまざまな農産物加工品を生活協同組合(生協)などに販売している。現在は奈良のほか三重、和歌山の各県に点在する共同農場や生産者組織とも連携し、紀伊半島地域の生産力強化を図っている。  パンドラファームの障害者雇用は、2005年に初めて知的障害のある従業員を採用したことを機に、ハローワークなどからの紹介を受ける形で続けてきた。いまでは全従業員117人のうち障害のある従業員は6人(身体障害1人、知的障害4人、精神障害1人)で、障害者雇用率は5.1%という。  同社の設立時から代表取締役を務める和田(わだ)宗隆(むねたか)さんは「私たちが運営する加工工場やビニールハウスでは、障害のある従業員も、本人に合った取組み方で安定して働いてくれており、大事な戦力です」と話す。  今回は、加工工場で働く従業員の様子とともに、地域の農福連携を含めた同社の取組みなどについて紹介する。 梅干しの選別作業  加工工場の1階フロアでは、ベルトコンベヤーの脇に並んで立つ10人ほどの従業員が、主力商品である梅干しの選別作業を行っていた。手作業で実の大きさを選り分け、サイズごとのラインに載せていく流れだ。案内をしてくれた管理本部参与の中田(なかだ)正寛(まさひろ)さんが、「この工程は、まだまだ人の手が必要です。ちょうどいま、ミャンマーやベトナムからの技能実習生が来て働いてくれています」と説明する。  しばらくすると、男性が奥から大きなプラスチック製のカゴを運び込んできて、コンベヤーの端から大量の梅干しを投入し、選別作業に加わった。この男性が2005年に入社した辻田(つじた)武弘(たけひろ)さん(42歳)だ。現在は8時から17時までのフルタイムで勤務している。  知的障害のある辻田さんは、以前はパン製造・販売店で働いていたが、職場になじめず退職したという。その後、辻田さんの家族からの相談をハローワーク経由で受けた和田さんが、「とりあえず本人に会ってみよう」と応じた。そして、辻田さんとの面接を担当した中田さんは「口数は少ないもののまじめそうな印象でした。加えて運転免許を持っており、自力通勤が可能であったことも大きな要素でした。というのも、工場の周辺は公共交通機関を利用しようとするととても不便ですから」と語る。  パンドラファームにとっては、知的障害のある人を雇用するのは初めてだったが、和田さんは「当時の工場は現在ほど大きくなかったこともあり、目も届きやすい環境でしたから、まずはやってみようという判断でした」という。  辻田さんを指導したのは、ベテランの女性従業員だった。選別作業の手順を手取り足取り教えながら、「厳しさも含め、母親のように見守ってくれていたようです」(中田さん)。当初の印象通り、辻田さんは欠勤することもなくまじめに取り組みながら、1人でも仕事ができるようになった。  現在、現場のリーダー役を務めている福嶋(ふくしま)崇人(たかと)さんは、辻田さんについて「日々の作業については安心して任せています。休まず出勤してくれるのも大きな支えです」と評価する。「全体の工程の流れにあわせて指示を出すこともありますが、しっかりと理解して動いてくれます。心がけているのは、たまに確認の声がけをすることぐらいです」とのことだ。  近年は技能実習生や特定技能外国人が増えており、辻田さんが身ぶり手ぶりで作業を教える場面も見られるそうだ。福嶋さんは「今後も職場の先輩として、さらに指導できるようになってもらえたら」と期待する。  辻田さんにも話を聞いたところ、最初に仕事を教えてくれた女性従業員はすでに定年退職しているそうだが、「とてもやさしかった」とふり返ってくれた。いつも磨きあげた車で通勤してくる辻田さんは、車の運転が好きとのことで、中田さんたちにすすめられてフォークリフトの資格も取得したという。  最後に、この会社に入ってよかったことを辻田さんにたずねたところ、「事業内容自体がすばらしいと思います。安心して食べられるものをつくっているからです」と、はっきりした言葉で答えてくれたのが印象的だった。 手作業で商品シール貼り  加工工場の2階には、商品の箱詰めや出荷作業を行うフロアがある。梅干しをはじめ、梅酢を使った紅ショウガ、干し柿、ドライフーズなど30種類以上のパック・袋詰め商品が、生協などからの注文に応じて日々出荷されている。  フロア内は、大口注文に対応する複数人での作業と、小口注文に対応する個別作業に分かれている。このうち小口注文用の作業台では、注文数にあわせて印刷されたシール状のラベルと商品がセットになったものを確認しながら、1ケースごとにラベルを貼って箱詰めしていく流れとなっている。  ここで同僚2人とともに作業していたのが、2018年に入社し勤続8年になる山田(やまだ)真由美(まゆみ)さん(31歳)。就労移行支援事業所に通っていたときに、奈良県内の障害者就業・生活支援センターの担当者と一緒に加工工場を見学し、1週間ほどの職場実習を経験。「みなさんがやさしく、すごくよい雰囲気でした」と入社を希望したそうだ。山田さんも車通勤をしている。  最初は大口注文用の作業現場に配属され、同僚と一緒にラベル貼りや箱詰めをしながら作業の段取りを覚えていった。2年ほど前からは、一連の作業を1人で完結させる小口注文用の担当も任されるようになったそうだ。  加工事業部で上司の松本(まつもと)左余三(さよみ)さんは、山田さんの仕事ぶりについて「ほかの人よりも少しだけ作業がゆっくりかもしれませんが、その分、ラベルの位置をきっちり正確にそろえて貼ってくれています。作業は特に指示をしなくても任せられますし、わからないことはすぐに聞いてくれます」と評価している。また出勤時と退勤時には、松本さんが離れた場所にいても必ず近くまで来て「おはようございます」、「お先に失礼します」と挨拶してくれるそうで「とてもていねいなので感心しています」とつけ加えた。  一方で、山田さんはふだん自分から話すタイプではなく、作業も黙々とこなしていることが多いため、松本さんは「たまに心配になって『楽しくやっているかな?』と声をかけるようにしています」という。  そんな山田さんと松本さんはSNS(LINE)でも連絡を取りあっており、体調不良による欠勤時も、きちんと理由を含めて伝えてくれるとのことだ。ちなみに先日は、LINEを通じて、山田さんがウクレレを演奏している動画を送ってくれた。10年ほど前から母親の知人である先生のもとで月2回レッスンを受けていて、得意な曲は『涙(なだ)そうそう』だそうだ。  パンドラファームで働き始めてよかったことについてたずねると「自分の好きなものが買えるようになったことです」と語る山田さん。「お給料のうち2万円をお母さんにあげて、2万円を貯金して、残りは自分でウクレレ関係のものを買っています」と教えてくれた。 臨時アルバイトから  パンドラファームでは、障害のある求職者だけでなく、引きこもりなど働きづらさを抱えた人にも職場体験の場を提供し、状況に応じて雇用につなげてきた。  きっかけの一つが、15歳から49歳までを対象としている、厚生労働省委託の就労支援機関「地域若者サポートステーション(サポステ)」(※1)から農業体験者を受け入れたことだ。これまでに30回以上、延べ80人以上が参加したという。  さらに、当時サポステの指導員だった女性を、2015年から障害者雇用担当として採用した。入社後は、当機構(JEED)が実施する企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修(※2)を受講してもらい、職場定着支援や地域の支援機関との連携強化に取り組んだそうだ。女性はその後、持病の療養のためやむなく2023(令和5)年に退職したが、中田さんは「在籍中は、新たに採用した人たちへの支援に加え、毎月一人ひとりと面談を行って心理面のフォローもになってくれました。必要な情報を職場内で共有してくれたことで理解が進み、障害のある従業員本人と同僚とのコミュニケーションも深まったように感じます」とふり返る。  現在は専任の障害者雇用の担当者がいるわけではないが、和田さんは「職場全体が自然体で見守る雰囲気になっていると思います。技能実習生も含め、いろいろな方たちが一緒に働いていることで、互いに思いあえる関係ができているのだと感じます」と語る。  また、サポステからの受入れとは別に、臨時アルバイトをきっかけに採用へとつながったケースもある。パンドラファームが新聞の折り込みチラシで募集した臨時アルバイトに応募してきた男性は、担当する柿の選果作業に最後までまじめに取り組んだ。この様子を見ていた中田さんたちは、そのまま常勤の従業員として、ビニールハウス栽培の手伝いなどを担当してもらうことにした。採用時にあらためて本人から話を聞いていくと、精神障害があることを打ち明けられたそうだ。和田さんは「私たちのおもな業務は加工と流通・販売ですが、収穫された梅や柿をサイズごとに選り分ける選果作業、所有するビニールハウスでの野菜の栽培なども行っています。各工程で、さまざまな仕事がありますから、障害の有無に関係なく、その人ができる範囲で無理なく取り組めるのではないかと思います」と説明してくれた。 福祉施設との連携  2021年に奈良県内で初となる「もにす認定制度」(※3)の認定を受けたことを機に、和田さんたちは「もっと地域の障害者雇用に貢献できることはないか」と考えるようになったという。  まず検討したのが、知的障害のある人たちが通う福祉作業所への業務委託だ。例えば、干し柿の一種「あんぽ柿」の加工工程のうち、皮むき作業は専用の機械に一つずつセットしていけば自動的に皮がむける。比較的取り組みやすい手作業であることから、和田さんは、地域に点在する複数の作業所に声をかけて「毎日5、6人程度を工場に派遣してもらえる体制がとれるよう、作業所同士で連携できないか」と提案してみたという。しかし、残念ながら実現はしなかった。シフトを組んで決まった人数を派遣するというのは、通所者の急な休みなどもあるためむずかしいからだという。「よかれと思っての提案でしたが、現場の実情から、簡単にはいかないものだと実感しました」(和田さん)  その後、パンドラファームは、主要取引先でもある「市民生活協同組合ならコープ」(以下、「ならコープ」)の子会社で、就労継続支援A型事業所を運営する「株式会社ハートフルコープよしの」(以下、「ハートフルコープ」)の新たな取組みに協力している。  拠点となるのは五條市内にある旧小学校で、2021年の統廃合で廃校となったのを機にハートフルコープが市から借り受けた。体育館や教室を活用してシイタケ栽培や干し柿・干し芋の加工などを行う計画だ。  このうち干し柿は、パンドラファームから提供される半生状態の「あんぽ柿」を、体育館でさらに乾燥させるのだという。昨年、試験的にパンドラファームからの業務委託で取り組んだところ、無事に仕上がったそうだ。今後はあんぽ柿を仕入れる形にして、ハートフルコープで販売していくという。  「干しいも」は、2025年に総務省の地域振興関連の助成金を活用して加工用機械などを導入し、ならコープから仕入れたサツマイモで商品化することができた。さらに校庭の一部を畑に整備しサツマイモ栽培も手がける予定で、2026年から本格的に動き出したい考えだ。  ハートフルコープでは現在、フレンドリー社員と呼ばれる利用者56人が、宅配水の製造や小ロット農産物の集荷作業、水耕栽培などを行っている。専務取締役の竹村(たけむら)彰(あきら)さんは「利用者が増えていることもあり、より安定した働く場の確保を視野に入れた農福連携事業として、パンドラファームさんの協力も得ながら取り組んでいきたい」と説明する。和田さんも「農業従事者の高齢化が進むなかで、柿の生産量を守っていくためにも、加工分野を含めた農福連携の重要性は今後さらに高まっていくと思います」と期待を寄せる。 農業を守っていくために  パンドラファームが、地域の就労支援機関などと連携してきた背景には、やはり急速に進む労働力人口の減少がある。和田さんは「このあたりの山間地域では、通常の求人募集だけでは、なかなか人員確保をするのはむずかしいのが現実です」と話す。  五條市は、2005年の市町村合併時には人口3万8000人を超えていたが、2026年3月末時点では約2万6107人まで減少している。約20年間で1万2000人ほど減ったうえ、高齢化率も約4割に達しようとしている。和田さんは「五條市は柿の生産量が市町村で日本一を誇りますが、収穫時期などには都市部から臨時で多くの方を雇用し、私たちの工場も3年ごとに技能実習生に依存せざるを得ないのが現状です」と明かす。  農業そのものを守っていくために、和田さんたちは、にない手不足を解消すべくスマート農業(※4)の導入にも取り組んでいる。山の斜面に広がる梅の圃場(ほじょう)は作業負担が大きいことから、リモコン式草刈り機や自走型運搬車などのスマート農機を生産者間で共有し、効率的な生産を目ざす実証プロジェクトを進めているそうだ。「それでも」と、和田さんは続けて語ってくれた。  「農作物の生産から加工、販売までの間には、やはり人の手に頼らざるを得ない作業が多くあります。そのなかには、障害のある人も特性を活かして戦力になれる作業もまだまだあるでしょう。今後も地域で連携し、いろいろな人が多様な働き方をしながら、少しでも農業にかかわることのできる場や機会を増やしていけたらと考えています」 ※1 「地域若者サポートステーション(サポステ)」については、厚生労働省ホームページをご覧ください。 https://saposute-net.mhlw.go.jp/ ※2 「企業在籍型職場適応援助者養成研修」については、JEEDホームページをご覧ください。 https://www.jeed.go.jp/disability/supporter/seminar/job_adapt02.html ※3 「障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度(もにす認定制度)」については、厚生労働省ホームページをご覧ください。 https://www.mhlw.go.jp/stf/monisu.html ※4 スマート農業:ロボットやAIなどの先端技術を使って、農業の作業効率化や品質向上を目ざす取組み 写真のキャプション 株式会社パンドラファームグループ代表取締役の和田宗隆さん 管理本部参与の中田正寛さん 加工工場で働く辻田武弘さん 梅干しの選別作業を行う辻田さん 加工工場のリーダー役を務める福嶋崇人さん 山田さんは、小口注文の出荷作業を担当している 商品にラベルを貼り、ダンボール箱に詰めてゆく 出荷部門で働く山田真由美さん 加工事業部の松本左余三さん 干し柿の一種で半生状態の「あんぽ柿」(写真提供:有限会社農悠舎) 「あんぽ柿」をより乾燥させた「干し柿」(写真提供:有限会社農悠舎) ならコープで販売された「干しいも」(写真提供:株式会社ハートフルコープよしの) 総務省の地域振興関連の助成金を活用して導入した「乾燥機」(写真提供:株式会社ハートフルコープよしの) 【P10-11】 クローズアップ 「合理的配慮」という希望 〜人事と法務の交差点から〜 第4回 管理職を孤立させない 〜日々のマネジメントと合理的配慮〜  2016(平成28)年4月の障害者雇用促進法改正により、事業主には障害のある労働者に対する合理的配慮の提供が法的に義務づけられ、それ以降、働く障害者のみなさんの間では、合理的配慮への期待が大いに高まっているのを感じます。  第4回はQ&A形式で、職場での労務関係での配慮、日々のマネジメントをになう管理職への支援を通じた合理的配慮について、弁護士の小島健一さんが解説します。 執筆者プロフィール 鳥飼(とりかい)総合法律事務所 弁護士 小島(こじま)健一(けんいち)さん  人事労務を基軸に、問題社員処遇から組織・風土改革、産業保健、障害者雇用まで、紛争予防・迅速解決を助言・支援。日本産業保健法学会理事など、労働法務・人事労務と産業保健を架橋する諸活動を行う。精神・発達障害者の就労、治療と仕事の両立などの執筆・講演多数。 はじめに ―「対話」を日常に実装する  前回は、雇用開始時における配慮事項の確認・現場の同僚への周知を検討し、人事が現場の管理職を「二人羽織」のように背後から支えること、産業保健スタッフが医療情報を職場の言葉に「翻訳」すること、配慮対象者にも「できる業務」で貢献してもらう「役割の再定義」が重要であることを確認しました。今回は、その体制を前提として、入社後の日々のマネジメントにおいて管理職が直面する具体的な課題に焦点をあてます。  そもそも合理的配慮は、入社時に決めた「配慮事項」を守れば完結するものではありません。業務内容の変化や上司の交代、あるいは本人や周囲のコンディションによって、障壁の形は刻々と変化します。この変化に即応するのは現場の管理職ですが、彼らを「配慮の実施者」として孤立させてはなりません。  前回に引き続き、賛多(さんた)弁護士との対話形式でご説明します。 1 日々の指導における工夫 ―「事実」と「評価」を分ける Q 人事担当者  「二人羽織」の体制は理解しましたが、実際に管理職が日々の指導で困ったとき、人事はどのように介入すればよいのですか。 A 賛多弁護士  まず取り組むべきは、管理職の報告から「事実」と「評価」を切り分ける習慣をつくることです。管理職が部下のことを「やる気がない」、「反抗的だ」と訴えるとき、それは行動についての「評価」であって「事実」ではありません。「どのような場面で、どのような言動があったか」を具体的に聞き取り、客観的な事実(事例性)を一緒に整理するのです。事実が見えれば、障害特性から生じる行動の「理由(わけ)」を推測でき、的外れな叱責を避けることができます。  さらに、注意指導の「伝え方」を管理職と一緒に工夫すること。口頭だけでなく、文字や図解を用いる、指示を一つずつ出す、具体的な行動目標を設定するなど、本人に「伝わる方法」を開発します。その際、「わかりましたか」と抽象的に確認するのではなく、「では、次に何をしますか」、「期限はいつですか」と、本人の言葉で復唱してもらって確認すると、行き違いを減らしやすいです。こうした工夫は、障害のある部下にかぎらず、すべての部下にとってもわかりやすい指導になります。合理的配慮の実践が管理職自身のマネジメント力を磨く――この経験こそが、組織にとっての「投資」です。  そして見落としがちなのが、管理職の感情のケアです。困惑や苛立ちは自然な感情であり、抑え込ませるのではなく、人事が否定せずに受けとめる場を確保してください。感情を吐き出せないまま放置すれば、いずれ不適切な言動として表面化するリスクがあります。管理職同士の経験共有の場や、産業保健スタッフとの定期的なふり返りも有効です。管理職自身が「弱音を吐ける」心理的安全性が確保されてはじめて、部下に寄り添う余裕が生まれます。人事の否定しない傾聴こそが、現場に「配慮の連鎖」を生み出す確かな起点となるのです。 2 良好な人間関係の醸成 ―虐待を防ぐために Q 人事担当者  職場での障害者虐待のニュースを目にすることが増え、不安を感じています。虐待を防ぐために、日ごろから心がけるべきことは何でしょうか。 A 賛多弁護士  厚生労働省が公表した令和6年度の統計では、使用者による障害者虐待が認められた事業所は434事業所、被害を受けた障害者は652人に上ります。虐待の種別では、最低賃金未満の支払い等の経済的虐待が85.0%と最多ですが、暴言、不当な差別的言動などの心理的虐待も依然として少なくありません。  虐待の背景には、しばしば「指導」と「支配」の混同があります。業務上必要な注意指導であっても、本人の特性を無視して一方的に叱責をくり返したり、理詰めの追及を延々と続けたりすれば、それはもはや指導ではなく、支配です。管理職が自らの感情に気づき、相手の行動の「理由」を想像する力を養う対話型の研修こそが効果的です。日々の指導のなかで「伝わる方法」を工夫することが、結果的に虐待の予防にもつながるのです。  もう一つ見逃せないのが「無自覚な虐待」です。現場の疲弊が限界に達すると、「あの人のせいで仕事が増えた」という被害感情が蔓延し、無視や排除といった心理的虐待にいつの間にか陥ることがあります。管理職が必要な業務指導を控え、周囲への説明もないまま本人を放置すれば、職場から孤立させることになりかねません。こうした事態を防ぐには、配慮を受けている本人だけでなく、その周囲で業務を分担している同僚の負担にも目を配り、チーム全体の状況を定期的に確認する仕組みが必要です。 3 支援機関等の活用 ―「過重な負担」は客観的判断 Q 人事担当者  社内の工夫だけでは限界がある場合、外部の支援制度をどう活用し、「過重な負担」との関係をどう考えればよいのでしょうか。 A 賛多弁護士  合理的配慮が「過重な負担」にあたるかどうかは、事業活動への影響の程度、実現困難度、費用・負担の程度、企業の規模、企業の財務状況、公的支援の有無などを総合考慮して判断されます。つまり、公的支援を活用すれば企業の負担が軽減され、配慮の範囲を広げられる可能性があるのです。  おもな制度をご紹介します。まず、職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援事業(※)。独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が各都道府県に設置した地域障害者職業センターなどが実施主体となり、ジョブコーチが職場に出向いて、障害のある社員への直接支援と、上司や同僚へのかかわり方の助言などを行います。ただし、ジョブコーチ支援は永続的な支援ではなく、上司や同僚が適切な支援方法を身につけ、職場内に支援体制を構築することに主眼があります。  また、JEEDは、就労支援機器の無料貸出し(原則6カ月以内)や、障害者雇用納付金制度に基づく各種助成金の相談・支給業務をになっています。  障害者就業・生活支援センター(通称「なかぽつ」)は、就業面と生活面の一体的支援を行う地域の拠点で、定着支援について企業からの相談にも応じています。  こうした外部資源の活用は、法的リスク管理の観点からも重要です。O公立大学法人事件の判決(京都地裁平成28年3月29日判決)でも、アスペルガー症候群由来の行動が問題となった大学准教授の解雇事案につき、障害特性をふまえた配慮や援助の不足が重要な争点となり、解雇は無効と判断されました。合理的配慮や専門的支援の検討過程を尽くしたかどうかが、厳しく問われることを示す事例です。  仮に外部資源を活用しても本人の希望通りの配慮が困難な場合でも、対話を打ち切ってはなりません。過重な負担にならない範囲で実施可能な代替措置を検討するとともに、本人が希望する配慮がなぜむずかしいのかをていねいに説明することが求められます。「過重な負担」の判断は、企業側の主観的な「がまんの限界」ではなく、やるべきプロセスを尽くした後にはじめて認められる「客観的な限界」です。  現場の管理職を孤立させず、社内外のリソースを戦略的に組み合わせること。それによって、障害者雇用は「特別な負担」から、個人と組織がともに成長する「投資」へと変わっていくはずです。  次回は、最終回です。配置転換、昇進、退職などの人事において配慮すべき事柄をメインテーマとし、ダイバーシティ(DE&I)の観点からも、合理的配慮を企業内で進める意義を確認したいと思います。 (第5回へ続く) 参考:厚生労働省「令和6年度使用者による障害者虐待の状況等」(令和7年9月公表) https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001553553.pdf なお、この統計にいう「障害者」には障害者手帳未取得者も含まれ、虐待種別は重複計上され得る ※「職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援」についてはJEEDホームページをご覧ください https://www.jeed.go.jp/disability/person/job01.html 【P12-14】 JEEDインフォメーション 〜高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)からのお知らせ〜 受講料 無料 【2026(令和8)年度新規開催】 「上級職場適応援助者養成研修」のご案内  職場適応援助者(ジョブコーチ)として一定の実務経験を有する方に対して、ほかの職場適応援助者にスーパーバイズ等を行う指導者として必要な知識・スキルを習得するための「上級職場適応援助者養成研修」を実施します。 対象者 次の@〜Dのすべての要件に該当する方が対象となります。 @次のいずれかに該当する方 ●障害者の就労支援を行う法人に雇用されている方、または同法人の代表者・役員 ●医療機関等に所属している方、または医療機関の代表者・役員であって、精神障害者等の就労支援を担当している方 ●障害者を雇用している、または雇用しようとしている事業主に雇用されている方、もしくは同事業主(法人の代表者・役員) A研修修了後、JEEDホームページに法人名等を掲載することに、事業所の長より同意が得られる方 B次のいずれかに該当する方 ●訪問型職場適応援助者養成研修を修了している方 ●企業在籍型職場適応援助者養成研修を修了している方 ★上記研修をJEED以外の機関で受講された方も対象となります C次のいずれかに該当する方 ●職場適応援助者養成研修修了後、ジョブコーチとしての実務経験が3年以上ある方 ●職場適応援助者養成研修修了後、職場適応援助者助成金を活用したジョブコーチ支援の経験が20件以上ある方 Dすべての科目を受講することができる見込みのある方 日程等 2026年度開催分 (1)オンライン形式 2026年8月4日(火) (2)集合形式(場所:障害者職業総合センター) 2026年10月13日(火)〜16日(金) ★(1)と(2)は両方受講することが必要です。部分受講は原則認められません。 申込方法 【申込期間】 2026年6月2日(火)〜6月23日(火) 「JEED 研修電子申請サービス」(※)より期間内に申請してください。 ※「JEED研修電子申請サービス」は、株式会社NTTデータ関西が提供する「e-TUMO」を利用しています。 ※下記「上級職場適応援助者養成研修」のウェブページで、サービスの申請方法についてご案内しています。 ◎JEEDホームページ:上級職場適応援助者養成研修 https://www.jeed.go.jp/disability/supporter/seminar/job_joukyu.html 受講料 無料 「障害者の就労支援に関する基礎的研修」のご案内  福祉、教育、医療等の分野で、障害者の就労支援にたずさわる方を対象に、雇用と福祉の切れ目のない支援を可能とするために必要な基礎的な知識・スキルの習得を目的とした研修(正式名称:雇用及び福祉分野における横断的な基礎的知識及び技能を習得させるための研修)を実施しています。  オンデマンド研修と集合研修(JEED地域障害者職業センターで実施)の2部構成の研修です。オンデマンド研修は、就労支援の理念や障害者雇用施策・福祉施策、障害特性と職業的課題、企業に対する支援、就労支援機関の役割・連携などを学習する基礎的な内容です。集合研修は、ケーススタディや演習、各地域の就労支援機関の紹介や連携方法など、地域の実情をふまえた実践的な内容です。 対象者  就労支援の基礎的な内容を学ぶ初学者の方が対象です。  厚生労働省より、受講を必須とされる方が示されています。そのほか、福祉、医療等の施設で就労支援にたずさわる方、職場適応援助者養成研修の受講を予定されている方、企業で障害者雇用の担当をされている方も受講の対象となります。 基礎的研修の受講が必須とされる方 ●障害者就業・生活支援センター 就業支援担当者 ●障害者就業・生活支援センター 生活支援担当者 ●就労移行支援事業所 就労支援員 ●就労定着支援事業所 就労定着支援員 日程等  オンデマンド研修と集合研修の日程は、各地域障害者職業センターにより異なります。  なお、基礎的研修の日程や申込み方法、申請期間等の詳細につきましては、JEEDホームページに記載しておりますので、ご確認ください。 ◎JEEDホームページ:障害者の就労支援に関する基礎的研修 https://www.jeed.go.jp/disability/supporter/seminar/kisoteki.html 「上級職場適応援助者養成研修」および「障害者の就労支援に関する基礎的研修」のお問合せ先 職業リハビリテーション部 人材育成企画課 TEL:043-297-9095 E-mail:stgrp@jeed.go.jp ◆令和8年度「地方アビリンピック」開催地一覧◆ 各都道府県における障害者の技能競技大会「地方アビリンピック」が下記の日程で開催される予定です。 アビリンピック マスコットキャラクター アビリス 都道府県 開催日 会場 北海道 10月3日(土) 北海道職業能力開発促進センター 青森 10月下旬 青森職業能力開発促進センター ホテル青森 岩手 7月26日(日) 岩手県立産業技術短期大学校 矢巾キャンパス 宮城 7月11日(土) 宮城職業能力開発促進センター 秋田 7月9日(木) 秋田市にぎわい交流館AU 山形 7月2日(木) 山形国際交流プラザ(山形ビッグウイング) 福島 7月4日(土) 福島職業能力開発促進センター 茨城 7月11日(土) 7月12日(日) 茨城県職業人材育成センター 栃木 7月4日(土) 栃木職業能力開発促進センター 障害者スポーツセンター(わかくさアリーナ) 群馬 7月4日(土) 群馬職業能力開発促進センター 埼玉 @7月4日(土) A7月11日(土) @国立職業リハビリテーションセンター A埼玉職業能力開発促進センター 千葉 11月28日(土) 千葉職業能力開発促進センター 東京 2月中旬〜下旬 東京障害者職業能力開発校(職業能力開発総合大学校) 神奈川 @10月24日(土) A10月31日(土) @関東職業能力開発促進センター A神奈川障害者職業能力開発校 新潟 9月5日(土) 新潟市総合福祉会館 ホテルグローバルビュー新潟 富山 7月18日(土) 富山市職業訓練センター 富山県技術専門学院 石川 10月18日(日) 石川職業能力開発促進センター 福井 @6月20日(土) A7月11日(土) @福井職業能力開発促進センター A福井県立福井産業技術専門学院 山梨 10月4日(日) 山梨職業能力開発促進センター 長野 7月11日(土) 長野県障がい者福祉センター サンアップル 岐阜 7月11日(土) ソフトピアジャパンセンターセンタービル同センタードリーム・コア 静岡 @7月7日(火) A7月11日(土) @静岡職業能力開発促進センター A静岡市東部勤労者福祉センター清水テルサ 愛知 @6月6日(土) A6月14日(日) B6月21日(日) C6月27日(土) @大成今池研修センター A中部リハビリテーション専門学校 B愛知県立名古屋聾学校 C中部職業能力開発促進センター 都道府県 開催日 会場 三重 6月27日(土) 三重職業能力開発促進センター 滋賀 11月14日(土) 近畿職業能力開発大学校附属滋賀職業能力開発短期大学校 京都 1月30日(土) 京都府立京都高等技術専門校 京都府立京都障害者高等技術専門校 大阪 @6月20日(土) A7月4日(土) @A関西職業能力開発促進センター @社会福祉法人日本ライトハウス 視覚障害リハビリテーションセンター 兵庫 6月20日(土) 7月4日(土) 兵庫職業能力開発促進センター 奈良 7月11日(土) 奈良職業能力開発促進センター 和歌山 7月4日(土) 和歌山職業能力開発促進センター 鳥取 6月25日(木) 鳥取県立福祉人材研修センター 島根 7月11日(土) 島根職業能力開発促進センター 岡山 7月4日(土) 7月11日(土) 岡山職業能力開発促進センター 広島 7月18日(土) 広島職業能力開発促進センター 山口 10月17日(土) 山口職業能力開発促進センター 徳島 6月27日(土) 徳島職業能力開発促進センター 徳島ビルメンテナンス会館 香川 1月〜2月ごろ 未定 愛媛 7月4日(土) 愛媛職業能力開発促進センター 高知 @6月27日(土) A7月4日(土) @学校法人龍馬学園 龍馬デザイン・ビューティ専門学校 A高知職業能力開発促進センター 福岡 @7月4日(土) A7月11日(土) @福岡職業能力開発促進センター Aクローバープラザ 佐賀 1月ごろ 佐賀職業能力開発促進センター 佐賀勤労者総合福祉センター(メートプラザ佐賀)(予定) 長崎 7月4日(土) 長崎職業能力開発促進センター 熊本 6月28日(日) 熊本職業能力開発促進センター 大分 10月3日(土) 大分職業能力開発促進センター 宮崎 7月4日(土) 宮崎職業能力開発促進センター 一般社団法人宮崎県ビルメンテナンス協会 鹿児島 @7月6日(月) A7月11日(土) @鹿児島ホテル短期大学校 A鹿児島職業能力開発促進センター 沖縄 7月11日(土) 沖縄職業能力開発大学校 ※2026年5月11日現在 詳細は、JEEDホームページをご覧ください。 地方アビリンピック 検索 アクセスはこちら! ・開催地によっては、開催日や種目ごとに会場が異なります。 ・日程や会場については、変更となる場合があります。 【P15-18】 グラビア 職場配置や仕事内容の工夫で、一人ひとりが能力を発揮し活躍 丸善製薬株式会社 本社・本社工場(広島県) 取材先データ 丸善(まるぜん)製薬(せいやく)株式会社 本社・本社工場 〒722-0062 広島県尾道市(おのみちし)向東町(むかいひがしちょう)14703-10 TEL 0848-44-2200 FAX 0848-20-6006 写真・文:官野 貴  広島県尾道市に本社を置く丸善製薬株式会社(以下、「丸善製薬」)は、植物などの天然物から有用成分を取り出し、健康食品や医薬品、化粧品などの原料として、幅広い分野のメーカーに出荷している。  丸善製薬では、2012(平成24)年から積極的に障害者雇用に取り組んでおり、現在18人の障害のある従業員が本社や工場など、さまざまな部署において活躍している。  精神障害のある進(しん)哲也(てつや)さん(43歳)は、同社の障害者雇用の第1号で入社14年目。清掃業務をはじめ、福利厚生用の飲料補充、社内便の配達など、さまざまな業務を担当している。進さんのまじめな働きぶりが、障害のある従業員の職域拡大につながったそうだ。  進さんとペアを組んで清掃業務を行っていたのが、知的障害のある大亀(おおがめ)和平(かずへい)さん(36歳)。大亀さんは、清掃業務以外に、品質管理部門で使用されるバイアル瓶(分析用の試料を入れる小型容器)の洗浄業務を任されている。以前は品質管理の担当者が行っていた業務を大亀さんがになうことで、担当者が本来の業務に集中できるようになったと好評で、業務の依頼量も増えたという。大亀さんは、「このバイアル瓶の洗浄が得意な業務です」と話し、黙々と作業を続けていた。  精神障害のある門田(もんでん)栞(しおり)さん(30歳)は、事務室でパソコンに向かい、伝票の入力業務をスピーディにこなしていた。その仕事ぶりが社内に広がり、資料のPDF化などの業務依頼が舞い込むようになったという。門田さんはパソコン業務だけでなく、研究部門や工場の品質管理部門で使用する「ろ紙」を折りこむ業務も担当している。このように、手間のかかる周辺業務を障害のある従業員が代行することにより、業務の効率化が図られている。  丸善製薬では、それぞれの個性に合わせた、職場配置や仕事内容を工夫することにより、一人ひとりが能力を発揮して働いている。これらの取組みが評価され、2025(令和7)年度には、「障害者雇用優良事業所」として当機構理事長努力賞を受賞。今後も一人ひとりが、自分らしく働ける環境づくりを大切にしながら、障害者の雇用促進に継続して取り組んでいく予定だという。 写真のキャプション 工場に設けられた休憩室の清掃業務。モップをかける進哲也さん(左)と、いすに粘着ローラーをかける大亀和平さん(右)。清掃業務は上記のほか、テーブル拭きや流しの清掃、給茶機の清掃など多岐にわたる 進さんは、清掃業務(写真右)のほか、福利厚生用飲料の運搬や補充(写真中央)、社内便の配達(写真左)など、幅広い業務をこなす 清掃業務の合間に休憩をとる進さん(左)と大亀さん(右)。休憩中は、共通の趣味などについて話がはずむという 給茶機の清掃にあたる大亀さん。清掃業務は、進さんと大亀さんでローテーションし、業務の属人化を防いでいる 大亀さんは、品質管理部門で使用する分析用バイアル瓶の洗浄業務も担当している。超音波洗浄機からバイアル瓶の入った容器を取り出す 超音波洗浄を終えたバイアル瓶を流水ですすぎ(15ページの写真)、イオン交換水で仕上げのすすぎを行う バイアル瓶に汚れが残っていないことを一つひとつていねいに確認しながら作業を進める 取引先から送られてきた伝票を業務ソフトに入力する門田栞さん。間違いのないように確認しながら作業を進める 門田さんは「ろ紙折り」も担当。写真左側のろ紙を折りこみ、写真右側のようにろ紙に“ひだ”をつける。集中力が求められる業務だ ろ紙をひだ折りにする門田さん。作業前に手を洗う、ろ紙の内側に極力触れない、ろ紙の中心部は強く折らないなど、さまざまな注意点に気をつけながら作業する この日は、市内の福祉施設から仕入れたパンの社員向け販売が行われた。大亀さん(左)と門田さん(右)がペアを組み、伝票と入荷数をチェックしている 門田さんが電卓を使って合計金額とお釣りを計算し、大亀さんがお金を預かり、お釣りを渡す。スムーズなやりとりが続き、パンは完売となった 【P19】 エッセイ 障がいのある人が働きやすくなるヒントと考え方 第4回 福祉の世界に“ビジネスのプロ”が少ない理由 放送作家・ライター 姫路(ひめじ)まさのり  放送作家として、数多くのテレビ・ラジオ番組の制作をにない、ライターとして、新聞や雑誌、ウェブメディアで記事を執筆。同時に、ダウン症をはじめ、自閉症などの障がい、HIV・AIDSなどの支援事業にたずさわり、当事者の声を取材。執筆や講演活動を通し、その思いを伝える。  著書に『ダウン症で、幸せでした。〜10年追いかけて分かった幸福の秘密』(東京ニュース通信社・講談社、2025年)、『障がい者だからって、稼ぎがないと思うなよ。〜ソーシャルファームという希望』(新潮社、2020年)などがある。 本棚にビジネス本、どれくらい並んでいますか?  週末ともなれば、ご家族や関係者向けのセミナーに参加する機会も増えました。「親なき後」、「就労支援」などテーマはさまざまですが、ふと感じるのは登壇者の多くは福祉の専門家で、ビジネスの専門家が少ないという現実です。放送作家という職業柄、他人の本棚を分析するのが大好きで、施設に出向くたびにブックスペースや卓上の本棚を眺めてしまいます。すると大抵は、福祉関連の書籍は充実しているわりに、ビジネス関連の書籍は隅っこにこぢんまりと置かれていることに気づきます。職員さんに、ベストセラーとなったビジネス書についてたずねても、「そんな本、あるんですね?」とビックリされることさえも…。  勘違いしないでほしいのは、職員さんが不勉強だとは思っていません。前述のようなセミナーや勉強会にも足しげく通う方も多く、むしろ勉強熱心な方が多い印象です。ただ、その勉強すべき範疇に「ビジネス」の要素が抜け落ちていませんか?と感じるのです。 経営の視点を兼ね備えた“福祉ビジネスマン”!  じつは僕の周りには、経営の視点を兼ね備えた“福祉ビジネスマン”とでも呼ぶべき人物が何人かいます。例えば、企業関係の交流会に参加しては、「その仕事、うちで請け負いますよ」と仕事を取ってくる営業マン。彼は飲食店のDM作業やSNS運営のお手伝いなど、絶えず新規の仕事を発掘している。利用者に新しい作業に挑戦してもらいながら、可能性を探り続けています。  もう一人、僕も尊敬する人物が砂長(すななが)美(び)んさんです。彼女は商品開発から売り場開拓まで、施設の商品開発コンサルティングをしています。一躍有名になったのが、2014(平成26)年に始めた国会議員会館での障がい者施設がつくった商品の販売です。彼女曰く、もっともよく売れた商品がコーヒーだそうで、中身ではなく、パッケージに国会議事堂のイラストをあしらうことで、“永田町おみやげ”に変えるという“マジック”をかけたのです! 砂長さんは、『障がい者がつくったんです、買ってくださいは全然違う。お客さんが、「おもしろいな」、「友だちや会社に配りたい」、という気持ちになる商品こそが大切』と語ります。ほかにも金箔を豪華にあしらった「金箔紅茶」。利用者さん手づくりの粘土細工を「群馬埴輪(はにわ)」として売り出すなど、そのアイデアはユニークで、同時に実益にもつながっています。  砂長さんにかぎらず、作業所における「外部コンサルティング」がになう役割は少なくないと感じています。ただ、業務の切り出しや定着など“利用者の就労支援のコンサルティング”はさておき、商品開発や販路拡大など“売上げを伸ばすためのコンサルティング”に、報酬を支払って依頼することに、ためらいを感じる人も多いのではないでしょうか? 実際には、ロイヤリティを払えば東京タワーの絵柄をパッケージに使うことも可能だったり、プロでしか知りえない知見や提案は無数にあります。 大切なのはビジネスと福祉のバランス  ただもちろん、売上げがすべてとは思っていません。このエッセイでもいく度とご紹介した滋賀県にあるクッキーなどのお菓子工場「がんばカンパニー」さんも、かつて大企業の発注に依存するあまり、“無理な仕事”を受注していた過去もあったとふり返ります。いまはその反省を糧とし、「自分たちの商品に共感してくれる取引先」を吟味し、オリジナリティを構築しています。  大切なのは【ビジネスと福祉のバランス】であり、就労をになう作業所は、その両輪を考え続けることが求められます。だからこそ、そのやりくりは、一般企業よりもむずかしいと、私自身も強く感じています。企業と違い営業や広報などの部署を持つことは現実的ではありません。ただ、そうした志向を持ち得ることは、だれでも可能です。みなさんの脳内メーカーの片隅に少しでも、「ビジネス」、「経営」という視点が入れば、また違った世界が見えてくるのではないでしょうか? ぜひ、本屋にお出かけの際は、ビジネス本コーナーもチェックしてみてくださいね! ★本誌では通常「障害」と表記しますが、姫路まさのりさんのご意向により「障がい」としています 【P20-25】 編集委員が行く 中高年齢期にある障害のある従業員への対応 〜スズキ・サポート、くらしえん・しごとえんを訪ねて〜 株式会社スズキ・サポート(静岡県)、特定非営利活動法人くらしえん・しごとえん(静岡県) 国際医療福祉大学 准教授 若林 功 取材先データ 株式会社スズキ・サポート 〒432-8611 静岡県浜松市中央区高塚町(たかつかちょう)300 TEL 053-447-6778 FAX 053-440-2077 特定非営利活動法人 くらしえん・しごとえん 〒430-0944 静岡県浜松市中央区田町(たまち)223-21ビオラ田町3F TEL 053-489-5828 FAX 053-489-5829 若林 功 編集委員から  現在、加齢の影響による認知的機能や身体的機能の変化、家族等の状況変化により、さまざまな対応が必要となった障害のある従業員の雇用継続をいかに行うかについて、関心が高まりつつある。本稿はこうしたことに対応したいと考え、一つの事例ではあるが取材に基づいて執筆したものである(21ページ★)。 写真:官野貴 Keyword:中高年齢期の障害者、加齢、特例子会社、知的障害、精神障害、ジョブコーチ支援、機能の維持のための負荷、家族・関係機関との連携、アセスメント POINT 1 前提として、職場内でのさまざまな環境の工夫や支援体制の存在が重要 2 障害のある従業員本人の想いを基に、家族や関係機関と連携 3 負荷のある作業を過度に避けないなどの現場実践と、客観的・科学的な観点が両輪に はじめに  今回、取材を行ったのは、静岡県浜松市に本社のある株式会社スズキ・サポート(以下、「スズキ・サポート」)である。同社は自動車製造の世界的企業であるスズキ株式会社の特例子会社である。中高年齢期の障害のある従業員の方たちへのさまざまな対応を行っているとの情報を得て、どのような取組みを行っているのかを知りたいと思い、取材を行った。  また、スズキ・サポートのある浜松市は、障害者就労支援に関する制度やネットワークによるさまざまな活動が行われている。その浜松市において、職場適応援助者(ジョブコーチ)養成やジョブコーチ支援などを長年展開されている「特定非営利活動法人くらしえん・しごとえん」を訪問した。同法人は企業への助言なども行っている。そこで、高齢化してきた障害のある従業員へのサポートに関する企業への支援や、浜松市地域の就労支援ネットワークの現状等についてお話をうかがった。 スズキ・サポートの基本的情報  スズキ・サポートは2005(平成17)年2月に設立された。2026(令和8)年現在では従業員数は158人、うち障害のある従業員は99人(約63%)となっている。管理者8人や農業でのパート従業員17人のほか、指導員34人を配置している。障害のある従業員の平均年齢は32歳、障害種類の内訳は知的障害78人、精神障害17人、身体障害4人、と知的障害のある従業員が多い。  障害のある従業員の業務内容は、清掃、農業、事務であり、勤務場所は、スズキ本社やスズキ歴史館(以下、「歴史館」。スズキの原点である織機やレトロな旧車から最新の車種までスズキの二輪車・四輪車・船外機等を数多く展示している)、10カ所の社員寮、工場、研修センター、2カ所の農園である。  のちに紹介する障害のある従業員の方が従事する清掃について詳細を記すと、本社でのおもな作業場所は、事務所フロア、トイレ、洗面所、階段などであり、スケジュールがびっしりと組み込まれ、そのスケジュールに沿った動きが求められるとのこと。一方、社員寮のおもな作業場所はトイレ、階段、廊下、風呂場などであるが、こちらのほうは日中、あまり人がおらず、本社での清掃に比べ少しゆったりとした感じがあるとのこと。 スズキ・サポートにおける障害のある従業員の方たちへの基本的なサポート  管理部長の佐藤(さとう)隆彦(たかひこ)さんに出迎えていただき、同社の基本的な情報・概況についておうかがいした。先述した基本情報のほか、今回は取材しなかったが、農園での状況(イチゴやベビーリーフの収穫)や、知的障害のある方が多いこともあり、作業の正確さややりづらさを克服するためのさまざまな工夫や支援体制、同社に一定数の特別支援学校の卒業生がいるため、特別支援学校や支援機関とのかかわりなどについて説明をいただいた。  作業の工夫の具体例をいくつか示していただいた。例えば@清掃用具の整理整頓をするために、洗剤や備品にはその用具を使用する箇所を記入し、わかりやすくする、Aフックにモップなどをかけることとしているが、フックが回転してかけにくかったためフックを回転しない(固定式の)ものに変更する、などである。つまり、視覚的にわかりやすくしたり、作業をスムーズに遂行するためのちょっとした工夫をするなどいろいろと取り組まれていた。なお、企業在席型職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修(※)の修了者が15人ほど在籍している。  また、仕事をする体制として、障害のある従業員3人に対し指導員1人というチーム制にしており、職場によって配置するチーム数が異なるそうである。指導員は仕事のことを中心に支援をしているが、ときには障害のある従業員から、日常生活のことや他愛のないちょっとした相談や報告などがあるとのこと。「仕事と生活は分けるべき」という意見や、「会社が日常生活にどこまで踏み込むか」は社内でも議論があったそうだが、佐藤さんとしては仕事と生活面の課題をすっきりと割り切れるものではないと考えており、従業員の家族や障害者就業・生活支援センターなどの関係機関とも連携しながら、会社としてできることに対応しているとのことであった。 高齢化している障害のある従業員の方たちへの対応  以上の対応は当然ながら、中高年齢期の障害のある従業員にも行われている。なお、こうした工夫や対応、制度があることによって、中高年齢期にさしかかって体力などに変化がみられている方も、継続勤務しやすくなっているということをまず押さえておきたい。  加えて、会社の方針として、中高年齢期となり、能力の低下がみられるからといって、負荷をすぐに取り除くのではなく、できていたことがなるべく維持できるように、これまでと同様の作業をやってもらい、周囲の人がさりげなくサポートを行っているとのことであった。さらに、障害のある従業員本人の気持ちを大切にすること、必要に応じて計算ドリルなどの「脳トレ」を就業時間の前後に取り組むことをすすめ、その取組みにつき添うなど本人の気持ちを大切にしながらサポートを行っているそうである。こうした、特に加齢の影響がみられる従業員へのサポートは、各チームにおける協力しあう雰囲気やこれまでの関係性があるからこそ効果を発揮していると思われる。 障害のある従業員の方へのインタビュー  続いて、中高年齢期にさしかかっている障害のある従業員の方4人に、指導員の方とともにお話をうかがうことができた。 小川由利子さん  21年間勤務している小川(おがわ)由利子(ゆりこ)さん(41歳)は、もともとは本社で清掃を担当していたが、現在は寮の清掃業務を担当しており、指導員や同僚からのさりげないサポートを受けながら継続して働いている。指導員の太田(おおた)美奈(みな)さんによると、「例えばモップを絞る際に十分に絞れなくなってしまうことがあるなど、体力低下がみられます」とのこと。ただ、だからといって、その業務を外すのではなく、やれるところまでは自分でやってもらい、必要に応じて仲間に助けを求める、または指導員のフォローを得ながらやってもらっているそうである。また、「家庭で練習をして改善することもあります」と話してくれた。 佐藤栄作さん  佐藤(さとう)栄作(えいさく)さん(54歳)は18年間勤務しており、現在は歴史館でトイレや展示品などの清掃を行っている。管理部の下位(しもい)正巳(まさみ)さんによると「佐藤さんはもともと本社のフロアやトイレなどを担当していて、清掃の経験は豊富であるが、50代になって、本社よりスケジュールにゆとりがある歴史館に担当の場所を変更しました。しかしあまり大きな能力低下はみられません」とのこと。佐藤さんはお姉さんがたいへん協力的で、お姉さんが毎日、その日の佐藤さんの様子を日誌に書いて会社とやりとりをしている。その結果、ちょっとした変化、佐藤さんの思いなどを細かく汲むことができているそうである。また、そうしたやりとりがきっかけとなり、佐藤さんの好みなどの把握や、「脳トレ」に昼休みや就業前の時間帯に取り組んでもらうことにつながっているそうである。佐藤さんは「掃除は楽しいです。ほかのメンバーさんとの仲もいいです」と話してくれた。 池田篤史さん  池田(いけだ)篤史(あつし)さん(48歳)は6年間勤務しているとのこと。欠勤などなく安定して働いており、佐藤さんと同じチームで歴史館での清掃業務に3年程度従事している。歴史館の清掃はスケジュール的にはゆとりがあり、展示物などの清掃は楽しくやりがいがあるとのこと。会社としては精神障害のある従業員は、時間的なプレッシャーが少ないほうがよいのではと考え、歴史館に何人か配置しているとのことである。  池田さんは、体調は安定しており、計画的に有給休暇を取ってリフレッシュをし、たまに調子が悪いときには自己申告をして休むなど体調の自己管理をしている。池田さんは他者とかかわることがあまり得意ではないようなので、池田さんの趣味(4コマ漫画や絵を描くこと)の作品を会社に持ってきて披露することで、ほかの方々とコミュニケーションをとるようにうながしているとのことである。  池田さんに今後の目標を聞くと「新入社員に対していろいろ教えてみたいです」と話してくれた。 田中わかなさん  田中(たなか)わかなさん(55歳)は2021年に入社し、現在は寮の清掃業務に従事している。以前は就労継続支援A型事業所で働いていたが、実習を経てスズキ・サポートに就職した。当初は本社で勤務していたが、体力的な負担を考慮して昨年から寮での業務に配置転換された。現在は田中さんのほか2人の障害のある従業員と1人の指導員の4人でチームを組んで清掃業務を行っている。田中さんは腰や膝に痛みがあるため、会社は軽量の掃除機に変更するなどの配慮を行っている。  生活面について相談がある際は、就労支援機関や福祉機関を活用しているという。そういった支援機関を利用すると、担当者が異動などで替わった場合に困ることはないか聞いたところ、きちんと連携・引継ぎがされていて、困ったことはないとのこと。  田中さんに給与をご自分の楽しみに使用しているのかと聞くと、「家庭で必要な費用があるので自由には使えない」とのことだったが仕事にやりがいを持って取り組んでいるようである。田中さんは「70歳まで働き続けたいという目標を持っています」と話してくれた。 まとめ@  スズキ・サポートには、年齢にかかわらず、体力や認知面の制約に応じた環境調整・工夫や、受容的な人間関係を構築し、さりげなくサポートしあう風土、指導員をサポートする体制が前提としてあった。それらを土台に、中高年齢期にさしかかっている障害のある従業員への対応・支援として、職場の異動、個々の障害特性に応じた配慮、休憩時間などを活用した認知面のトレーニングや人間関係の構築、家族や関係機関との連携が行われていた。特に、家族の理解と協力は重要な要素としてあげられていたことを指摘しておきたい。また、中高年齢期にさしかかっているとはいっても、できることは自分で行うという方針を取ることで、本人のプライドが尊重され、また適度に負荷が設定され、本人の力を維持したり伸ばしたりする効果を生んでいるといえるだろう。 くらしえん・しごとえん  続いて、特定非営利活動法人くらしえん・しごとえん(以下、「くらしえん・しごとえん」)を訪問した。くらしえん・しごとえんはジョブコーチ支援を専門とする法人として、2006年11月に設立され、ジョブコーチ支援と厚生労働大臣の定める「職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修」を二つの柱としてこれまで事業をすすめてきた。また、後述する「浜松市企業伴走型障害者雇用推進事業」を浜松市より受託し、さらに障害者雇用ゼロ企業や障害者雇用率が未達成である中小企業等に対し、労働局などによる雇用指導と一体的に相談援助を実施する「障害者雇用相談援助事業」の事業者にも労働局から認定されている。代表は鈴木(すずき)修(おさむ)さんである。鈴木さんと筆者は知己を得て15年以上経過しているが、今回初めて浜松にてお話をうかがうことができた。話題は多岐に及んだが、本稿では、浜松市地域の就労支援ネットワーク、企業支援、中高年齢期にさしかかった障害のある労働者への対応を特に取りあげたい。 @浜松市地域の就労支援ネットワークとくらしえん・しごとえん  浜松市やその周辺のエリアには、ほかの地域と同様、障害者就労支援に関する社会資源として、障害者就業・生活支援センターがあり、静岡県の県庁所在地である静岡市にはJEEDの静岡障害者職業センターがある。また各就労移行支援事業所や就労定着支援事業所などもある。  加えて、静岡県独自のジョブコーチ支援制度、浜松市が設置・委託している就労に関する相談機関である「浜松市障害者就労支援センター」、浜松市独自の企業支援制度である「浜松市企業伴走型障害者雇用推進事業」(「障害者雇用アドバイザー」の派遣、障害者雇用に関する勉強会・研修会の開催、オンラインを活用した障害者雇用に関する情報提供・意見交換会を行う)や、「認定NPO法人オールしずおかベストコミュニティ」という静岡県全体の障害者就労支援ネットワークの構築を意図した団体もあるとのことであった。  鈴木さんの見立てによれば、このようにさまざまな社会資源があるが、一方で静岡県や浜松市には一定程度の大企業があり(特例子会社は浜松市内にスズキ・サポートをはじめ数社存在する)、企業側からの障害者雇用の支援に関するニーズは高く、支援機関側が企業に対して提供するサービスが十分でない場合もあるのではないかと感じているとのことである。鈴木さんとしてはそのようなニーズに応え、さらには浜松市・静岡県地域をよりよいものにしたいという想いがあるように感じられた。 A企業支援について  くらしえん・しごとえんでは職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修を行っており、企業在籍型ジョブコーチについても、スズキ・サポートの職員の方々をはじめ多く養成している。そして、企業在籍型ジョブコーチとなった研修修了者の在籍する企業に、ジョブコーチ養成研修における実習を受け入れていただいているそうである。さらに、研修修了者に対して、年に1回(11月ごろ開催)有識者による講演会や、事例検討会を開催しているとのこと。この行事はくらしえん・しごとえんの設立以来毎年行っており、20年近く続いている。  さらに、先述した浜松市企業伴走型障害者雇用推進事業の受託事業では、障害のある方個人からの相談ではなく企業・支援機関からの相談への対応、2カ月に1回(年間5回)のオンラインによる事例検討会、意見交換会を行っている。このような企業に所属する支援者への支援、スーパービジョンやコンサルテーションを通じ、企業支援を行っている。こうした取組みは一義的には、企業に所属する社員への支援ということになるが、企業の方との障害者雇用支援のネットワーク構築や、つながる機会としても機能しているのではないかと思われる。 B中高年齢期にさしかかっている障害のある方への支援について  以上のような、企業や地域とのネットワークを前提としたうえで、中高年齢期にさしかかっている障害のある方への支援(中高年齢期障害者支援)についてもその実際や考えをお聞きした。まず、くらしえん・しごとえんではジョブコーチ支援を行っており、その支援を通じて、中高年齢期障害者支援に直接的にかかわることがあるとのこと。そうした実践や、コンサルテーション、研修などを通じ感じることとして、雇用現場での様子をよく見て解決することはもちろん重要であるが、それとともに、GATB(General Aptitude Test Battery:厚生労働省編 一般職業適性検査)やAMPS(Assessment of Motor and Process Skills:作業遂行技能評価)などの標準的なアセスメントツールを活用することも重要と考えているとのこと。こうしたツールを使用することで、主観的な印象だけではなく、客観的な基準(ベースライン)と比べ、どの程度低下したのかを把握することができる。つまり、単に実践で試行錯誤をするだけでなく、科学的根拠に基づくことの双方が重要であり、そうした情報を得るためにもJEEDが提供する「職業リハビリテーション研究・実践発表会」などでの情報が有用とのご意見をいただいた。また、中高年齢期障害者支援というと、「いかに本人への負荷をかけないようにするか」と一般的には思われるかもしれないが、能力・機能の維持・向上のためには本人への負荷は必要ではないか、とのことであった。これはスズキ・サポートでの取材でお話しいただいた、適度な負荷の設定と共通するものであった。 まとめA  浜松市や静岡市では多様な就労支援の資源がある一方、企業の支援ニーズも高い。  くらしえん・しごとえんでは、研修や事例検討など企業に所属する支援者への助言を通じて企業支援を展開している。また、中高年齢期障害者支援では、現場での観察に加えGATBやAMPSなど科学的・客観的アセスメントを用いることの必要性のほか、負荷をなくす・減らすだけでなく能力維持の視点から適度な負荷も重要と指摘されていた。  スズキ・サポートでの取材では、現場での実践を企業(特例子会社)の立場からお聞きすることができたが、くらしえん・しごとえんの取材では、支援者側の立場からお話をうかがうことができた。この支援者からの視点も有用であるように思われる。 おわりに  本稿では、中高年齢期にさしかかっている障害のある従業員への対応・支援のテーマを中心として、スズキ株式会社の特例子会社であるスズキ・サポートや、浜松市においてジョブコーチ養成やジョブコーチ支援などを長年行っているくらしえん・しごとえんを訪問し得た情報を記した。こうしてまとめてみると、中高年齢期にさしかかっている障害のある方への対応が、中高年齢期にない障害のある方とはまったく違う、何か非常に特別な支援や環境調整が行われているわけではないということがわかる。まずはどの年代でも必要な支援・環境調整を行うことが前提として重要である。そのうえで適度な負荷を設定したり、客観的なアセスメントツールを活用するということになるだろう。本稿の情報が同様の関心をお持ちの方に少しでも有用となれば幸いである。 ★当機構(JEED)障害者職業総合センターが、2026年3月に発刊された調査研究報告書No.186「中高年齢障害者の雇用継続支援及びキャリア形成支援に関する研究」にて、この問題を取り上げているため、ご興味のある方はぜひご一読ください。 https://www.nivr.jeed.go.jp/research/report/houkoku/houkoku186.html ※「企業在籍型職場適応援助者養成研修」については、JEEDホームページをご覧ください。 https://www.jeed.go.jp/disability/supporter/seminar/job_adapt02.html 写真のキャプション 株式会社スズキ・サポートが入るスズキ株式会社本社(左)、スズキ歴史館(右) 株式会社スズキ・サポート管理部長の佐藤隆彦さん 佐藤さんからスズキ・サポートの基本的な情報などをご説明いただいた 寮の清掃業務を担当する小川由利子さん 小川さんの指導にあたる太田美奈さん 寮の洗濯室で洗濯機のフィルター清掃にあたる小川さん 歴史館の清掃業務を担当する佐藤栄作さん 管理部の下位正巳さん 歴史館の清掃業務を担当する池田篤史さん 寮の清掃業務を担当する田中わかなさん ていねいに洗面台を清掃する佐藤さん 特定非営利活動法人くらしえん・しごとえん代表理事の鈴木修さん 職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修の様子(写真提供:特定非営利活動法人くらしえん・しごとえん) 【P26-27】 省庁だより 令和8年度 障害保健福祉部予算の概要(1) 厚生労働省 障害保健福祉部 1 障害福祉サービスの確保、地域生活支援などの推進 1 良質な障害福祉サービスの確保 1兆8145億円(1兆6531億円)  障害者が身近な地域等で暮らすために必要な障害福祉サービスに必要な経費を確保する(※障害児支援に必要な経費として、5148億円(4871億円)をこども家庭庁で計上)。  また、令和8年度障害福祉サービス等報酬改定については、障害福祉分野の職員の他職種と遜色のない処遇改善に向けた着実な対応を行うことで、改定率は+1.84%とする。 【令和7年度補正予算】 ・障害福祉等分野における食材料費・光熱水費高騰等への支援 重点支援地方交付金の内数  物価上昇の影響を受ける障害福祉サービス事業所・施設等(補装具事業者を含む。)への、重点支援地方交付金の活用を促進する。  就労系サービスについては、障害福祉サービス施設等に対する物価高騰対策支援の活用と併せて、中小企業等に対するエネルギー価格高騰対策支援についても、活用を促進する。 ※この他、給付費が大きく増加する中で、利用者に提供されるサービスの質を確保しつつ、制度の持続可能性を確保する観点から、臨時応急的な見直しを実施する。 2 障害福祉分野における賃上げ、省力化・業務効率化の支援 【令和7年度補正予算】 〇医療・介護等支援パッケージ(障害福祉分野) 453億円 ・障害福祉分野における賃上げに対する支援 439億円  障害福祉分野の人材不足が厳しい状況にあるため、他職種と遜色のない処遇改善に向けて、令和8年度障害福祉サービス等報酬改定において、必要な対応を行うこととし、報酬改定の時期を待たず、人材流出を防ぐための緊急的対応として、賃上げの支援を行う。 ・障害福祉分野の介護テクノロジー導入支援事業 6.0億円  利用者の安心安全な生活の確保を図りつつ、障害福祉現場の職員の介護業務の負担軽減、労働環境の改善、業務効率化を推進するため、介護ロボットやICTのテクノロジーを活用し、障害福祉現場の生産性向上を一層推進する。 ・障害福祉分野における人材確保・生産性向上サポート促進事業(都道府県等実施分) 5.6億円  都道府県等が、事業所支援等を行うためのサポートセンターの設置等を行う場合に必要な事務費等を補助し、障害福祉サービス等事業所や市町村に対するワンストップ型の支援体制の確保を図る。 ・障害福祉分野における人材確保・生産性向上サポート拠点整備事業(国実施分) 3.3億円  人材確保や生産性向上等についての都道府県レベルでの総合的な支援体制の整備を促すとともに、全国レベルでの支援の実施や、生産性向上に係る効果的な取組・手法の全国展開を進める。 3 地域の特性や利用者の状況に応じた地域生活支援の推進 505億円(502億円)  手話施策推進法の施行等を踏まえ、意思疎通支援など障害者等の地域生活を支援する事業について、地域の特性や利用者の状況に応じた事業の推進を図る。 ※地域共生社会の実現に向けた重層的支援体制整備事業の対応分を含む。 4 障害福祉サービス事業所等の整備等の推進 40億円(50億円)  障害者の社会参加支援や地域生活支援を更に推進するため、地域移行を支える基盤としてグループホーム等の整備を促進する。 【令和7年度補正予算】 ・社会福祉施設等の耐災害性強化等への支援 101億円  「第1次国土強靱化実施中期計画(令和7年6月6日閣議決定)」等を踏まえ、障害者支援施設等の利用者等の安全を守るため、防災・減災対策に関する施設整備等を行う。 ・障害者支援施設等の災害復旧への支援 12億円  災害により被害を受けた障害者支援施設等の速やかな復旧を図るため、障害者支援施設等における災害復旧事業に要する費用を補助する。 5 障害者の地域における相談支援体制等の充実 @都道府県による地域生活支援体制の整備推進 20百万円(32百万円)  改正障害者総合支援法において令和6年4月から都道府県による市町村への広域的な支援の役割が明記されたことを踏まえ、都道府県による市町村に対する基幹相談支援センターや地域生活支援拠点等の設置・整備及び運営に関する助言等の取組を促進する。 A国による地域生活支援体制の整備推進 11百万円(11百万円)  国において、地域の相談支援体制等の状況について調査・分析を行うとともに、基幹相談支援センターや地域生活支援拠点等の整備の推進及び(自立支援)協議会の効果的な運営のため、国と自治体の間で意見交換等を実施するための会議の開催を行う。 6 障害者等への良質かつ適切な医療の提供 2809億円(2666億円)  心身の障害の状態を軽減し、自立した日常生活等を営むために必要な自立支援医療(精神通院医療、身体障害者のための更生医療、身体障害児のための育成医療)等を提供する。また、自立支援医療の利用者負担のあり方については、引き続き検討する。 7 特別児童扶養手当、特別障害者手当等 2197億円(2093億円)  特別児童扶養手当及び特別障害者手当等の支給を行う。 8 障害者虐待防止、権利擁護などに関する総合的な施策の推進 @障害者虐待防止の推進 6.1億円(6.2億円)  都道府県や市町村で障害者虐待の未然防止や早期発見、迅速な対応、その後の適切な支援を行うため、専門性の高い職員の確保や地域の関係機関の協力体制の整備、関係機関職員への研修、障害者虐待の通報義務等の制度の周知を図ることにより、支援体制の強化を図る。 A障害者虐待防止・権利擁護に関する人材養成の推進 12百万円(12百万円)  国において、障害者の虐待防止や権利擁護に関して各都道府県で指導的役割を担う者の養成研修を実施するとともに、虐待事案の未然防止のための調査研究を行う。 B成年後見制度の利用促進のための体制整備 地域生活支援事業等の内数  「第二期成年後見制度利用促進基本計画」(令和4年3月25日閣議決定)を踏まえ、成年後見制度の利用に要する費用の補助や制度の普及啓発等の取組を推進する。 9 重度訪問介護等の利用促進に係る市町村支援 14億円(12億円)  重度障害者の地域生活を支援するため、重度障害者の割合が著しく高いこと等により訪問系サービスの給付額が国庫負担基準を超えている市町村に対する補助事業について、小規模な市町村に重点を置いた財政支援を行う。 10 重度訪問介護利用者の大学等の修学支援 89百万円(89百万円)  重度障害者が修学するために必要な支援体制を大学等が構築できるまでの間において、重度障害者に対する大学等の敷地内における身体介助等の提供を支援する。 11 障害者施策に関する調査・研究の推進 2.4億円(3.6億円)  障害者施策全般にわたり解決すべき課題について、現状と課題を科学的に検証・分析し、その結果を政策に反映させていくため、調査・研究等への補助を行う。 12 障害者等の自立・社会参加支援の推進 @障害者の情報アクセシビリティ・コミュニケーション支援 11億円(12億円)及び地域生活支援事業等(1−3)の内数  手話通訳者をはじめとする意思疎通支援従事者の養成・派遣について、手話施策推進法の施行等を踏まえ、全国実施に向けて実施自治体の拡充等を推進するとともに、ICT機器の利用支援の取組、読書環境の整備の促進等を行う。 A芸術文化活動の支援の推進 3.6億円(3.7億円)  第2期障害者文化芸術活動推進基本計画の策定を踏まえ、地域における障害者の芸術文化活動を支援する都道府県センター等の機能強化や、障害者芸術・文化祭の開催による芸術文化活動(美術、演劇、音楽等)を通した障害者の社会参加をより一層推進する。 B障害者自立支援機器等の開発等の促進 0.7億円(0.7億円)  障害者の自立や社会参加を促進する支援機器の開発や、製品化した支援機器の普及促進を支援する。 【令和7年度補正予算】 ・障害者自立支援機器に関する効果検証等事業 2.4億円  障害者を雇用する企業等に支援機器を導入し、その効果(使用効果及び改良の示唆)について実証を行うとともに、実証により得られた効果等を基にした支援機器の普及・広報活動等を行う。 13 事業者・自治体間の障害福祉関係手続きに関するシステムの構築 【令和7年度補正予算】 ・事業者・自治体間の障害福祉関係手続きに関するシステムの構築に関する事業 13億円  電子的な申請・届出機能に加え、事業所台帳管理機能や業務管理体制データ管理機能を有する、事業者・自治体間の障害福祉関係手続に関するシステムの整備について、令和9年度第4四半期の運用開始を想定し、システムの構築を図る。 14 障害福祉関係データベースの構築 【令和7年度補正予算】 ・障害福祉関係データベース構築に関する事業 5.9億円  計画実施状況調査機能の拡充(自治体の計画見込値の設定等)、報酬改定に伴う対応、自治体の抽出機能及び集計結果配布等の改修等を行う。 15 障害者自立支援給付審査支払等システムの改修(自治体向け) 【令和7年度補正予算】 ・障害者自立支援給付審査支払等システム事業(自治体分) 10億円  障害福祉サービス等報酬改定に係る地方自治体の報酬の事務処理システムの改修に必要な経費に対して補助を行う。 〈2、3、4、5は次号で掲載します〉 ★本誌では通常西暦で表記していますが、この記事では元号で表記しています ※( )内は令和7年度予算額 【P28-29】 研究開発レポート 職場復帰支援におけるキャリア再形成に関する調査研究 障害者職業総合センター研究部門 障害者支援部門 1 はじめに  2022(令和4)年に改正され、2023年4月から施行された改正「障害者の雇用の促進等に関する法律」では、雇用の質の向上に向け、事業主の責務が明確化され、キャリア形成の支援を含め適正な雇用管理をよりいっそう積極的に行うことが求められることとなりました。休職した精神障害者の職場復帰支援は本人のキャリア形成の観点からも重要です。  独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)障害者職業総合センター職業センターでは、うつ病等により休職した労働者の職場復帰を支援するためのリワークプログラムなどを開発し、全国の地域障害者職業センター(以下、「地域センター」)においてリワーク支援を行っています。企業による積極的な職場復帰支援につながるよう、重要な要素であるキャリア形成支援に焦点を当て、キャリア形成支援の実態や本人への影響、キャリア観の変化等を明らかにするため、2023年度〜2025年度に「職場復帰支援におけるキャリア再形成に関する調査研究」を実施しました。  本調査研究では、「キャリア」を「『個人が生涯にわたって仕事や社会とどのように向き合い、どのようにかかわっていくのかということ。ライフキャリア』を意味する」と定義し、リワーク支援等を活用して復職した社員のキャリア観(仕事観・やりがい・人生・興味といった自身の価値観)のふり返りを「キャリアの見つめ直し」と表現しています。 2 職場復帰支援実施機関における「キャリアの見つめ直し」に影響を与えた支援  職場復帰支援実施機関による復職支援の実態等について、医療機関と地域センターを対象にアンケート調査を行うとともに、医療機関、地域センター、EAP(※1)機関、リハビリテーション機関に対し、ヒアリング調査を実施しました。  医療機関では、利用者の「キャリアの見つめ直し」に影響を与えた支援として、「自己洞察」(100%)、「症状自己管理」(84.1%)が高い割合で見られました。  地域センターでは、「キャリアの見つめ直し」に影響を与えた支援として、「キャリア支援」と「障害特性支援」が高い割合であげられました(図)。また、キャリアと直接的な関連はないように見える「基礎体力支援」についても一定数回答が見られました。職業生活では、睡眠や食生活など生活リズムの安定が重要であり、長時間の残業等による生活リズムの乱れがメンタル不調の要因となる場合があります。そのため、生活リズム表を活用した生活管理≠ネどの支援を通じて、働き方をふり返ることが、キャリアの見つめ直しにあたって重要であり、「基礎体力支援」の回答につながったと推測されます。 3 企業における復職支援とキャリア形成の取組み リワーク支援等を利用し復職した社員が在籍する企業でのキャリア形成支援の実態について、アンケート調査とインタビュー調査を実施しました。対象企業は、地域センターやリハビリテーション機関による支援を利用し復職した社員が在籍する企業です。アンケート調査への回答企業は30社(回収率83.3%)、インタビュー調査は13社を分析対象としました。  アンケート調査では、復職した社員に対して、「産業保健スタッフ、管理部門、従業員所属部署等」が連携して対応しており、休職に至るまでの働きかけでは、「取得可能な休職期間や休業補償、復職に関する情報(傷病手当金などの経済的な保障・休業の最長期間)等について説明した」や「産業医相談を勧める、受診を促す」が多くあげられました。  また、キャリア形成を支える取組みについて、一般社員に対しては、回答企業の8割以上が、「スキルアップ研修」、「定期面談・1on1ミーティング」、「目標管理制度」を実施していました。一方、復職した社員に対しては、「定期面談・1on1ミーティング」、「目標管理制度」、「スキルアップ研修」の順に実施率が高かったものの、一般社員と比べると実施率の割合が低位でした。  インタビュー対象企業では、一般社員と復職した社員に対するキャリア形成の仕組みに差異はなく、同様の研修制度や目標管理制度が適用されていました。一方で、復職後の支援は個別対応が中心であり、産業保健スタッフ、人事、上司が連携し、面談や業務調整を通じて本人の状態に応じた支援が行われていました。発達障害の特性や高次脳機能障害のある社員については、企業のキャリア形成支援の方針と本人の特性との調整の困難性が指摘され、適性の見きわめや職務設定に苦慮する声もありました。  復職支援のなかで行われる業務調整や面談は、社員本人の希望や主体性を尊重する姿勢が顕著であり、本人の意向をていねいに聴取し、キャリア形成支援に反映させる取組みが多く見られました。こうした支援は、復職後の安定した就業がキャリア形成支援の出発点となるとともに、その後の自律的なキャリア構築をうながすうえで重要な取組みになっているものと考えられます。 4 復職した社員から見た「キャリアの見つめ直し」  復職した社員のキャリア観の変化やその変化に影響を与えた要因、企業や支援機関による取組みに対する受けとめの実態を明らかにするため、アンケート調査への回答企業のうち、インタビュー調査に協力いただける社員(分析対象:12名)に対しインタビュー調査を実施しました。対象者にはキャリアに対する考え方や、その考えに影響を与えたこと、企業や支援機関による復職およびキャリアを支える取組みへの受けとめなどをたずねました。  精神疾患により休職し復職した社員からは、地域センターのリワーク支援のプログラムやメンバーとの交流などを通じて、健康や人間関係などを重視する働き方や生き方へと価値観が変化したことが語られました。復職後の部署や職務、配慮事項に対してはおおむね肯定的に受けとめられていました。リワーク支援での企業を交えた定期的な面談が、配慮事項の調整や上司・同僚によるサポートにつながり、企業によっては、組織の働き方改革との相乗効果で、復職した社員の受けとめによい影響を与えたと考えられました。高次脳機能障害により休職し復職した社員からは、休職期間を経て、仕事中心の考え方から、健康を重視する考え方へと変化したことが語られました。復職後に職務内容や周囲の人の態度に不安などを抱いていた時期があったものの、上司や産業保健スタッフ、人事担当者とコミュニケーションをとり、復職後の部署異動や職務内容の調整を通じて、前向きに働くことができていることが語られました。また、復職支援を通じて障害が職務に及ぼす影響に気づいたうえで、自分ができる範囲で会社に貢献したいという思いや、自身の状態を知る人がいなくなった場合など将来のキャリアへの不安を抱いていることが示されました。これらの点から、企業と復職した社員とのコミュニケーションが重要になると考えられました。 5 最後に  本調査研究では、職場復帰支援機関を対象としたヒアリング調査やアンケート調査、企業および職場復帰した社員へのインタビュー調査結果等が示されており、復職した社員がどのようにキャリア形成を図っていくか、支援を検討するうえでの参考としてご利用いただけます。本調査研究報告書(※2)は障害者職業総合センターホームページで公開していますので、ぜひご活用ください。 ※1 EAP:Employee Assistance Programの略で、従業員支援プログラムのこと ※2 調査研究報告書No.183「職場復帰支援におけるキャリア再形成に関する調査研究」は、以下のホームページでご覧になれます。 https://www.nivr.jeed.go.jp/research/report/houkoku/houkoku183.html ◇お問合せ先 研究企画部 企画調整室 (TEL:043-297-9067 E-mail:kikakubu@jeed.go.jp) 図 利用者の「キャリアの見つめ直し」に影響を与えた(復職)支援(複数回答) 医療機関の回答 n=69 自己洞察(n=69) 100.0% 症状自己管理(n=69) 84.1% モチベーション(n=62) 72.6% コミュニケーション(n=68) 58.8% 感情表現(n=34) 50.0% 作業能力・集中力(n=65) 35.4% その他(n=10) 30.0% リラクセーション(n=68) 29.4% 基礎体力(n=63) 20.6% 地域障害者職業センターの回答 n=48% キャリア支援(n=48) 89.6% 障害特性支援(n=48) 79.2% 作業遂行支援(n=48) 52.1% 企業連絡支援(n=44) 47.7% 新たな職務支援(n=28) 46.4% 対人技能支援(n=48) 45.8% その他(n=11) 45.5% 基礎体力支援(n=48) 41.7% 企業支援(n=45) 31.1% 医療連絡支援(n=44) 27.3% 【P30】 ニュースファイル 国の動き 国土交通省 バリアフリー化推進功労者大臣表彰  国土交通省は、国土交通分野におけるバリアフリー化に関する優れた取組みを表彰する第19回「国土交通省バリアフリー化推進功労者大臣表彰制度」受賞者の2社を発表した。  1社目の「西日本旅客鉄道株式会社」(大阪府)は、特急「やくも」の新型車両の開発にあたり、設計段階から障害のある人との意見交換を基に、細やかに配慮した車両を設計。車いすスペースのある3号車の乗降口やトイレの幅を広めにしたほか、トイレットペーパーホルダーの両サイド設置、ドア開閉ボタンの大型化・増設などの改良を行った。  2社目の「関西エアポート株式会社」(大阪府)は、改装工事を前に当事者らと課題を整理。エレベーター内に二次元コードを貼付し、緊急時に聴覚障害者がチャットで連絡できるシステムを構築。また車いすユーザーと視覚障害者の要望に沿ってエレベーター内の左側のみ扉がカゴの端まで開くようにしたほか、一般トイレの奥行を拡大し手動車いすも利用できるよう整備した。 https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/barrierfree/sosei_barrierfree_tk_000399.html スポーツ庁 障害児・者のスポーツライフに関する調査  スポーツ庁は、令和7年度「障害児・者のスポーツライフに関する調査」の調査結果概要を公表した。  過去1年間に運動・スポーツを行った日数についての調査結果から、「実施頻度が週1日以上」の割合について20歳以上と7〜19歳に分けて集計した結果、20歳以上は35.0%、7〜19歳では38.3%だった。前年度と比較すると、週1日以上の実施率は、20歳以上で増加、7〜19歳は横ばいとなった。  過去1年間に運動・スポーツを実施した種目については、「ウォーキング」(散歩・ぶらぶら歩き・一駅歩きなどを含む)の割合が特に高く(20歳以上で76.4%、7〜19歳で51%)、次いで、20歳以上では「階段昇降」(23.8%)、7〜19歳では「水泳」(24.1%)の割合が高かった。運動・スポーツ実施者が運動・スポーツをやってよかったことの上位は、「ストレスが解消される」(33.8%)、「体力・身体的機能が向上した」(28.3%)、「外出が増えた」(24.7%)、「体を動かすこと自体が楽しい」(24.3%)、「行動範囲が拡大した」(18.8%)などだった。 https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/houdou/jsa_00231.html 働く 全国 「ソーシャルプロダクツ・アワード2026」受賞商品発表  「一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会」(東京都)は、持続可能な社会の実現につながる優れたソーシャルプロダクツとして、社会性と商品性の両面を評価する「ソーシャルプロダクツ・アワード2026」の受賞商品・サービスを発表した。このうち大賞の一つに、NPO法人AlonAlon(アロンアロン)(千葉県)の農福連携による胡蝶蘭(こちょうらん)生産が選ばれた。  発表によると、同法人は「ゆっくり、ゆっくり」という理念のもと、ITやIoT、AI、ロボット技術などを活用したスマートアグリと障害者のていねいな作業特性をかけ合わせ、高付加価値な胡蝶蘭を生産しながら就労継続支援B型事業所の利用者に安定した仕事を提供している。審査員コメントでは「一人ひとりの得意やペースを尊重した働く環境を整え、それを高い付加価値を持つ商品づくりへとつなげている点は高く評価される。農福連携の分野における新たな可能性を示す先進的な事例。安定した収益基盤を築き、スポーツチームのスポンサーをになうまでに成長している点も特筆。消費者や企業にも障害者の働き方への理解と行動の変化をうながす社会的インパクトを生み出している」などと評価している。 https://www.apsp.or.jp/spa_award_year/2026/ 東京 難病者と「ともに働く」を考えるフォーラムを7月に開催  「難病者の社会参加を考える研究会」(運営:特定非営利活動法人両育わーるど)(渋谷区)と「一般財団法人難病治療開発機構」(中央区)が順天堂大学お茶の水キャンパス7号館(文京区)で7月14日(火)、難病と就労をテーマにしたフォーラム「RDワーカーフォーラム2026『難病と働くをひらく』〜誰もが働きやすい社会へ〜」を開催する。  同研究会は2018(平成30)年に当事者、支援者、企業、医療者らによって立ち上げられ、「難病者の社会参加白書」の発行や勉強会などを行ってきた。同研究会によると、医療の進歩や就労環境の変化とともに働く難病者が増える一方、周囲の理解不足などにより、就労や職場定着に課題を抱えるケースも多いという。フォーラムでは、実際に難病者を雇用している企業の事例紹介や、当事者と企業・行政・支援機関の関係者を交えて「ともに働く」を考えるパネルディスカッションなどを予定している。  当日は14時30分〜17時30分がフォーラム(参加費無料)、18時〜19時は交流会(同有料)で、定員300人。企業の経営層・人事担当者、就労支援関係者、難病者、支援者らに参加を呼びかけている。詳細および参加申込みは左記のホームページから。 https://260714rdworker.peatix.com/ 生活情報 東京 「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」の新拠点オープン  「一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ」(港区)が、暗闇のなかで視覚障害者の案内のもと視覚以外の感覚を体験する「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」の新拠点を、JR高輪ゲートウェイ駅直結の商業施設「ニュウマン高輪MIMURE(ミムレ)」にオープンした。新拠点の名称は「Dialog(ダイアログ) in(イン) the(ザ) Dark(ダーク) 5-1(ファイブワン)=∞Lab.(ラボ)」。第1弾として、暗闇のなかでコーヒーを味わうプログラムを提供する。  約80分間のプログラムでは、完全に光を遮断した暗闇のなかで、視覚障害者の案内を受けながら参加者同士がチームとなって体験。コーヒーを味わうだけでなく、豆に触れ、香りを感じながら、それがどのように育まれ、人の手を渡って届けられてきたのか、1杯のコーヒーになるまでの物語にも思いを巡らせる内容となっている。対象は中学生以上、1回の定員8人。体験費4400円(税込)でチケットは事前予約制。詳細と申込みは左記のホームページから。 https://5-1lab.dialogue.or.jp/mimure/ 本紹介 『就労選択支援ガイドブック』  本誌編集委員で筑波大学人間系教授の前原(まえばら)和明(かずあき)さんの編集で『就労選択支援ガイドブック』(中央法規刊)が出版された。  2022(令和4)年の障害者総合支援法改正にともない創設された「就労選択支援」は、障害のある人のニーズに基づく進路選択を支えるサービス。始まって間もないこともあり、多くの支援者がサービスの質の向上に向けて取り組んでいるのが現状だという。本書では、支援者向けに、障害のある人の希望や適性をふまえた就労先・働き方を選択できるように支援するための就労アセスメントの手法や留意点などを紹介。就労選択支援の理念から、就労アセスメントの目的と手法、就労アセスメントの具体的活用、関係機関との連携、事例紹介まで、就労選択支援が持つ可能性をサービスとして実現していくための知識と技術をまとめた。B5判、234ページ、2640円(税込)。 締切迫る! あなたの力作がポスターになる! 令和8年度 「絵画コンテスト 働くすがた〜今そして未来〜」 「写真コンテスト 職場で輝く障害者〜今その瞬間〜」 応募締切 令和8年6月15日(月) 【当日消印有効】 児童・生徒をはじめ社会人・一般の方もご応募いただけます。 絵画コンテストの応募は障害のある方が対象です。写真コンテストの応募は障害の有無を問いません。多くのみなさまからのご応募をお待ちしています。 シンボルキャラクター “ピクチャノサウルス” 詳しくはホームページの募集要項をご覧ください。 JEED 絵画写真 検索 <過去のポスターや入賞作品などもご覧いただけます> 主催:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 【P31】 ミニコラム 第55回 編集委員のひとこと ※今号の「編集委員が行く」(20〜25ページ)は若林委員が執筆しています。ご一読ください。 実践と科学的知見を両輪とする職業リハビリテーション 国際医療福祉大学 准教授 若林功  今回の取材では「株式会社スズキ・サポート」での日々の積重ね(作業上の工夫、相談をしやすく、またお互いにさりげなくフォローする雰囲気・体制づくり、家庭や関係機関との連携等)の重要性とともに、GATBやAMPSなどのトピックを出していただいた「くらしえん・しごとえん」の鈴木修さんのお話も印象に残りました。これらはいい方を変えると、現場での実践と、科学的知見の双方が、質の高い職業リハビリテーション・就労支援(以下、「職リハ」)には重要であるということになるのではないでしょうか。  そして、職リハに関する科学的知見は、必ずしも十分に普及しているとはいえない状況にあるように感じます。一方、各地でどのような実践をしているのかについて、注目する人はそれなりに多いように思われます。  職リハに関する科学的知見が普及しない要因はさまざまに考えられます。利用者も支援者側も企業側も急激に増加・拡大し、多様な方たちがこの分野に参入し、なかなかそうした情報にたどりつかない、学ぶ時間・余裕がない(個人の自主性に任せられてしまっている)、実践とそうした科学的知見はあまり結びつかないというイメージがあり必要性を感じない、感情的な拒絶反応などなど。  ただし、職リハの利用者像は多様化してきており、やはりこうした科学的知見にもとづかないと、支援が効果的に行えない場合が増えているように思われます。支援には熱意や倫理観がまず必要ですが、それだけでは十分でないということです。職リハを取り巻く状況は継続的に変化しており、制度も変革期にあるといえますが、そのなかにおいて、実践と科学的知見は、質の高い職リハのサービスを提供するうえでの両輪であると思います。私も微力ながら、実践だけでなく科学的知見の普及にお手伝いできればと思っております。 【P32】 掲示板 e-Gov(イーガブ)を利用して障害者雇用納付金関係助成金を電子申請できます! 電子申請手順について、わかりやすく説明しています。 https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/e-shinsei/index.html 各助成金の詳細をわかりやすく動画で紹介しています。 https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/news/setsumeidouga_of_01.html *受給資格認定申請、支給請求、実施状況報告、その他届出書類(助成金事業・支援計画変更届など)をe-Gov電子申請することが可能です。  受給資格認定申請を窓口または郵送で提出した場合であっても、支給請求からe-Gov電子申請に切り替えることが可能です。 ●助成金については、以下にお問い合わせください。 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 各都道府県支部 高齢・障害者業務課(東京・大阪は高齢・障害者窓口サービス課) https://www.jeed.go.jp/location/shibu/index.html ●e-Govの利用方法等は、以下にお問い合わせください。 e-Gov利用者サポートデスク https://www.e-gov.go.jp/contact メールマガジン好評配信中! 詳しくは JEED メールマガジン 検索 読者アンケートにご協力をお願いします! 回答はこちらから→ 次号予告 ●私のひとこと  精神科医の三好彩さんに、精神科医として就労支援にたずさわってきたことへの思い、精神・発達障害のある人の就労や企業の障害者雇用への支援・アドバイスのポイントについて、ご執筆いただきます。 ●職場ルポ  家電製品リサイクル、有害物質および環境負荷物質の回収で地球環境負荷の低減に努めているアクトビーリサイクリング株式会社(熊本県)を訪問。地域の福祉施設と連携した作業体験実習の場の提供や、雇用につなげている取組みなどを取材しました。 ●グラビア  地元ブランドである阿波尾鶏の販売や、食品およびペットフードの製造・加工・販売を営む株式会社丸本(徳島県)を取材。ペットフード工場の製造現場や事務室で障害のある従業員が活躍する姿を紹介します。 ●編集委員が行く  大塚由紀子編集委員が、NTT西日本グループの特例子会社、株式会社NTT西日本ルセント(大阪府)を訪問。現場で働く当事者の声とともに、グループの中核事業をサポートする障害者雇用の役割について取材しました。 公式X(旧Twitter)はこちら! @JEED_hiroba 最新号発行のお知らせやコーナー紹介などをお届けします。 編集委員 (五十音順) 聖学院大学 准教授 石原まほろ ATUホールディングス株式会社 代表取締役 岩ア龍太郎 株式会社FVP 代表取締役 大塚由紀子 NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク 副理事・統括施設長 金塚たかし 弘前大学大学院 教育学研究科 教職実践専攻(教職大学院) 教授 菊地一文 株式会社旭化成アビリティ 代表取締役社長 清水裕之 サントリービバレッジソリューション株式会社 人事本部 副部長 平岡典子 筑波大学 人間系 教授 前原和明 武庫川女子大学 准教授 増田和高 国際医療福祉大学 准教授 若林功 あなたの原稿をお待ちしています ■声−障害者雇用にかかわるお考えやご意見、行事やできごとなどを500字以内で編集部(企画部情報公開広報課)まで。 ●発行−−独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 鈴井秀彦 編集人−−企画部次長 石井伸明 〒261-8558 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-2 電話 043-213-6200(企画部情報公開広報課) ホームページ https://www.jeed.go.jp メールアドレス hiroba@jeed.go.jp ●編集委託−−株式会社労働調査会 〒170-0004 東京都豊島区北大塚2-4-5 電話 03-3915-6415 FAX 03-3915-9041 6月号 令和8年5月25日発行 無断転載を禁ずる ・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。また、本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。 【P33】 国立職業リハビリテーションセンター 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター オープンキャンパスのご案内 開催日程 ●国立職業リハビリテーションセンター 令和8年 6月17日(水) 7月15日(水) 8月19日(水) 9月30日(水) 10月28日(水) 11月26日(木) 12月23日(水) 令和9年 1月13日(水) 2月10日(水) 3月17日(水) プログラム・タイムスケジュール(上記いずれの日程も下記の通り) 12:50〜 受付 13:15〜 当センターの概要説明・入所申請手続き説明、施設見学・質疑応答 15:30〜 訓練体験、または個別相談(いずれも希望者のみ) ●参加者の声 ・実際に訓練の体験ができたり、雰囲気を知ることができて、入所した際のイメージが湧きました。 ・入所する自信がなかったが、見学や体験を通じて「できそうだ」と思えてほっとしました。 ・どの訓練コースも興味深く、しっかり取り組めば、就職することができるのではないかと思えました。 ●国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 令和8年 7月19日(日) プログラム・タイムスケジュール 午前の部 午後の部 9:40〜10:00 13:10〜13:30 @全体説明 10:00〜10:30 13:30〜14:00 A見学ツアー 10:30〜10:50 14:00〜14:20 B質疑応答 10:30〜15:30 C訓練体験(※左記の時間内いつでも参加できます) 11:00〜13:00 14:00〜16:00 D個別相談 ミニオープンキャンパスは毎月(7月除く)開催中!! 令和8年 6月16日(火) 8月18日(火) 9月17日(木) 10月13日(火) 11月10日(火) 12月10日(木) 令和9年 1月19日(火) 2月9日(火) 3月11日(木) ※入所説明、施設見学、個別相談のほか、『職業訓練のセルフ体験』をプラスした内容です。 プログラム・タイムスケジュール (ミニオープンキャンパスについて、上記いずれの日程も下記の通り) 11:30〜12:00 概要説明 11:50〜12:00 入所申請手続き説明 13:00〜14:00 施設見学 14:00〜15:30 職業訓練体験・個別相談 プログラム内容 @全体説明(入所手続き、職業訓練、就職支援等についてご説明します) A訓練見学(実際の訓練の様子をご覧いただきます) B質疑応答 C職業訓練体験(ご希望される訓練コースの体験をしていただきます) 詳細につきましては、各職業リハビリテーションセンターのホームページでご確認されるか、下記お問合せ先までご連絡ください。 申込方法・申込期限 ●国立職業リハビリテーションセンター (申込期限:開催日の1週間前) 1 Microsoft Formsから申し込む 右の二次元コードまたはホームページにアクセスのうえ、お申し込みください。 2 電話で申し込む @参加希望日A氏名(ふりがな)B障害名C希望する配慮D連絡先電話番号E同行者の有無F訓練体験希望の有無を下記の問合せ先までご連絡ください。 ●国立吉備高原職業リハビリテーションセンター (申込期限:令和8年7月1日) 1 Microsoft Formsから申し込む 右の二次元コードまたはホームページにアクセスのうえ、お申し込みください。 2 郵送で申し込む 所定の申込票に必要事項をご記入のうえ、下記問合せ先へ郵送してください。 ※申込票はホームページまたはお問合せにより入手できます。 *ミニオープンキャンパスについては、開催日の1週間前までに職業評価課(TEL:0866-56-9001)にお電話にてお申し込みください。 お問合せ先 国立職業リハビリテーションセンター 職業指導部 職業評価課 〒359-0042 埼玉県所沢市並木4-2 TEL:04-2995-1201 https://www.nvrcd.jeed.go.jp/person/visit/index.html 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 職業訓練部 〒716-1241 岡山県加賀郡吉備中央町吉川7520 TEL:0866-56-9003 https://www.kibireha.jeed.go.jp/index.html 【裏表紙】 画像データです。 6月号 令和8年5月25日発行 通巻584号(毎月1回25日発行)