クローズアップ マンガでわかる! わが社の障害者雇用物語 第5回 職場定着に向けて  前回までは、障害者雇用の検討から採用活動までを紹介してきましたが、障害者雇用は入社してからが本番です。障害特性のみならず、個々の状況を把握して職場環境を整えたり、支援機関と連携して支援を行ったりするなど、ともに長く働いて いくための体制をつくっていきましょう。 監修:三鴨(みかも)岐子(みちこ) (『働く広場』編集委員)  名刺や冊子などのデザインを手がける「有限会社まるみ」の取締役社長。精神保健福祉士。  障害のある社員の雇用をきっかけに「中小企業の障害者雇用推進」に関する活動を精力的に行っている。 職場定着を目ざして  新しい職場に慣れるまではだれでも時間がかかります。それに加えて障害のある人は、自身の障害特性により「すぐ疲れてしまう」、「仕事を覚えるのに時間がかかる」といった課題が生じることがあります。さらに働きづらさがあるものの「配慮してほしい」と周りに伝えることができず、短期間で離職してしまう場合もあります。  一方で企業側からも「業務で生じた課題や本人の要望が、障害特性から来るものなのか、そうではないのかの判断がむずかしく、指導方法に悩む」という声が聞かれます。  そのため職場定着に向けて、各支援機関と連携し支援していくことが重要です。 ジョブコーチ支援とは  企業は、障害のある人が職場に適応しやすくするため、職場に職場適応援助者(ジョブコーチ)の派遣を受けることができます(※1)。  ジョブコーチによる支援は、JEEDの地域障害者職業センターに所属している「配置型ジョブコーチ」のほか、支援機関等に所属している「訪問型ジョブコーチ」も行うことがあります。また、自社の従業員がジョブコーチ養成研修を受けて、「企業在籍型ジョブコーチ」(※2)として社内の障害のある従業員の支援を行うこともできます。  マンガに登場するのは、地域障害者職業センターの配置型ジョブコーチによる支援を利用した事例です。地域障害者職業センターの障害者職業カウンセラーが、支援を必要とする障害者、企業との相談を通じて職場の状況などを十分把握し、双方の同意を得たうえで、個々の状況に応じた支援計画を策定し、配置型ジョブコーチは、その支援計画に基づき、企業に出向いて支援しました。  支援内容として、障害のある人に対しては、職務遂行に関する支援や職場でのコミュニケーションに関する支援を行い、企業に対しては、障害を適切に理解し配慮するための助言、職務内容や指導方法を改善するための助言・提案を行います。  支援期間は、標準的には2〜4カ月間です。支援は永続的に実施するものではなく、ジョブコーチによる支援を通じて適切な支援方法を職場の上司や同僚に伝えることにより、事業所による支援(ナチュラルサポート)に移行し、障害のある人の職場定着を図ることを目的としています。 日常生活からサポートする  支援機関の一つである「障害者就業・生活支援センター」は、障害者の職業生活における自立を図るため、就業面と生活面の一体的な支援を行う機関です。企業に対して、障害のある人それぞれの障害特性をふまえた相談支援も行っており、2024(令和6)年4月1日時点で全国に337カ所設置されています(※3)。  マンガでは、一例として職場でのサポートは地域障害者職業センター(ジョブコーチによる支援)が行い、医療面での相談も含めた日常生活等に関するサポートは障害者就業・生活支援センターが行う様子を描いています。  職場定着は、障害のある人や社内の担当者の努力に委ねてしまうのではなく、必要に応じて支援機関と連携し、従業員の理解促進も行いながら企業全体で取り組んでいきましょう。  そして、なによりも「働くその人自身をしっかりと見る」ということ、これこそがともに長く働くためにとても重要です。 ※1 職場適応援助者の詳細はこちらをご覧ください。 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/06a.html ※2 今号の職場ルポ(6〜11ページ)に企業在籍型ジョブコーチの事例が掲載されています ※3 障害者就業・生活支援センターの一覧はこちらをご覧ください。 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_18012.html ★この物語はフィクションです。