【表紙】 令和7年1月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第568号 ISSN 0386-0159 障害者と雇用 2025/2 No.568 職場ルポ 意思表示が苦手な従業員も安心できる職場づくり 日本海冷凍魚株式会社(鳥取県) グラビア 働き続けたい職場〜個々の特性を活かして働く〜 大畑建設株式会社(島根県) 編集委員が行く Chance! Challenge! Change! 特別支援学校技能検定の意義と効果 青森県特別支援学校技能検定・発表会(青森県) 私のひとこと アール・ブリュットと美術館の未来 滋賀県、パリ、サンフランシスコの事例紹介を通じて 滋賀県立美術館ディレクター(館長) 保坂健二朗さん 「やさしいばすのうんてんしゅ」鹿児島県・開(ひらく)心煌(しおん)さん 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) Japan Organization for Employment of the Elderly, Persons withD isabilities and Job Seekers 2月号 【前頁】 心のアート 夜空を見て思いを馳せながら笑う鯨 水田篤紀×チョ・ミンソク (たんぽぽの家アートセンターHANA×EASYTOGETHER) 画材:アクリル絵の具、キャンバス/サイズ:F12(606mm×500mm)  韓国・釜山で活動を行う非営利団体「EASYTOGETHER」(イージートゥギャザー)と奈良県のたんぽぽの家との海外交流プログラム「aE.T.プロジェクト」によって生まれたこの作品は、EASYTOGETHERの障害のあるメンバー、チョ・ミンソクとたんぽぽの家の水田篤紀が一つのキャンバスに描くことによって制作された。翻訳機などを使って、互いに相談しながら制作し、言語の壁を一切感じさせない2人の関係は、まるで旧知の友人のようだった。タイトルの「思いを馳(は)せながら」はそれまでの共同制作の思い出がつまっていると話す水田は、「いつかミンソクさんにまた会いに行きたいです」と絵と同じように思いを馳せていた。 (文:たんぽぽの家アートセンターHANA 橋(たかはし)桜介(ようすけ)) 水田篤紀(みずた・あつき)  1997(平成9)年生まれ、奈良県在住。2017年よりたんぽぽの家で活動を始める。  一つひとつの作品にていねいに向き合い、絵画制作や身体表現にて自身の表現を深めている。 〈略歴〉 2017年「状況のアーキテクチャー“Tracing Voices:ラップ×ケア×アート”」(京都府) 2018年「針の穴を通るラクダのカラダ」(奈良県) 2019年「共創の舞踊劇“だんだんたんぼに夜明かしカエル”」(兵庫県) 2021年「OPEN KITCHEN」(京都府) 2023年「陰翳来SUN〜かげのダンス/仮面のダンス〜」(奈良県) 「作品たちがとぶ展。」(奈良県) 2024年「針の穴を通る駱駝のカラダ〜こんなところであうなんて!〜」(京都府) 「『清流の国ぎふ』文化祭2024 エイブル・アート展−表現が生まれるまえとあと−」(岐阜県) 〈アートレンタル〉 2024年ロート製薬株式会社(愛知県、三重県、大阪府2拠点、京都府、福岡県) 韓国×日本 海外交流プログラム 「aE.T.プロジェクト」〜異邦人たちの出会い〜 主催:EASYTOGETHER 協力:たんぽぽの家 後援:財団法人釜山文化財団 写真のキャプション チョ・ミンソクさん(左)と水田篤紀さん(右) 【もくじ】 目次 2025年2月号 NO.568 「働く広場」は、障害者雇用の啓発・広報を目的として、ルポルタージュやグラビアなど写真を多く用いて、障害者雇用の現場とその魅力をわかりやすくお伝えします。 心のアート 前頁 夜空を見て思いを馳せながら笑う鯨 作者:水田篤紀×チョ・ミンソク(たんぽぽの家アートセンターHANA×EASYTOGETHER) 私のひとこと 2 アール・ブリュットと美術館の未来 滋賀県、パリ、サンフランシスコの事例紹介を通じて 滋賀県立美術館ディレクター(館長) 保坂健二朗さん 職場ルポ 4 意思表示が苦手な従業員も安心できる職場づくり 日本海冷凍魚株式会社(鳥取県) 文:豊浦美紀/写真:官野貴 クローズアップ 10 マンガでわかる!わが社の障害者雇用物語 最終回 障害者雇用を始めてみませんか JEEDインフォメーション 12 第32回(令和6年度)職業リハビリテーション研究・実践発表会オンデマンド配信/令和7年度「障害者雇用納付金」申告および「障害者雇用調整金」等申請のお知らせ/障害者雇用の月刊誌「働く広場」がいつでも無料でお読みいただけます! グラビア 15 働き続けたい職場〜個々の特性を活かして働く〜 大畑建設株式会社(島根県) 写真/文:官野貴 エッセイ 19 誰一人取り残さない防災とは? 第3回 レジリエンスの多元性 同志社大学社会学部教授 立木茂雄 編集委員が行く 20 Chance! Challenge! Change!特別支援学校技能検定の意義と効果 青森県特別支援学校技能検定・発表会(青森県) 編集委員 菊地一文 省庁だより 26 農福連携の推進について 農林水産省 農村振興局 都市農村交流課 研究開発レポート 28 事業主が採用後に障害を把握した発達障害者の就労継続事例等に関する調査研究 障害者職業総合センター研究部門 事業主支援部門 ニュースファイル 30 編集委員のひとこと 31 掲示板・次号予告 32 JEEDメールマガジン登録受付中! 表紙絵の説明 「ぼくは、乗り物が大好きです。特に毎日自宅から学校まで乗っていく通学バスは大好きです。また、そのバスの運転手さんもやさしくて、あこがれの一人です。大きくなったら大好きなバスの、そしてやさしいバスの運転手さんになりたいと思い、ていねいに心を込めて描きました」 (令和6年度 障害者雇用支援月間絵画コンテスト 小学生の部 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長奨励賞) ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。 (https://www.jeed.go.jp/disability/data/works/index.html) 【P2-3】 私のひとこと アール・ブリュットと美術館の未来 滋賀県、パリ、サンフランシスコの事例紹介を通じて 滋賀県立美術館ディレクター(館長) 保坂健二朗 アール・ブリュット≠障害者によるアート  アール・ブリュット(Art Brut)とは、フランスのアーティストであるジャン・デュビュッフェ(1901-1985)が1945(昭和20)年ごろに生みだした言葉=概念です。日本語では〈なまの芸術〉や〈き4 の芸術〉と訳されます。英語では直訳すると“Raw Art”となるのですが、いろいろな経緯があって“Outsider Art”が対応する言葉として定着しています。  どのような作品が〈なま〉だと感じられるのか。デュビュッフェの言葉を借りつつまとめると、それは、芸術的文化によって傷つけられていない人たちが、主題や素材、描き方を自分自身の奥底から引き出してきた場合、かつまた、流行や評価を気にせず衝動的につくられた場合、となります。  このように、デュビュッフェ自身によるアール・ブリュットの説明のなかに、〈障害者〉という言葉はみえません。したがって、いま日本で広まってしまっている「アール・ブリュットとは障害者によるアートのことである」という考え方は誤りだといえます。しかし、彼が実際に集めた作品のなかには、精神障害のある人の作品が多数含まれていたのも事実です。20世紀はじめから、ヨーロッパの精神科医たちは、患者たちの作品に独創性や芸術性を見出し、それを展示や論文の形で発表していました。それがデュビュッフェの関心を惹いたわけです。これに対して日本の場合は、2010年代以降、知的障害のある人たちを支える福祉の現場から、「ここにもアール・ブリュットがある!」と声をあげ、自ら展覧会を組織していったことを特徴としています。 なぜ滋賀県立美術館はアール・ブリュットを収蔵するのか?  筆者が勤務する滋賀県立美術館は、2016(平成28)年にアール・ブリュットを収集方針の一つに加えました。2023(令和5)年には公益財団法人日本財団から作品の寄贈を受けました。それらは、2011年にパリで開催された「アール・ブリュット・ジャポネ」展という、日本のアール・ブリュットが世界的な関心を集めることになったきっかけの一つに出品された作品の一部でした。その結果、2024年12月現在の総数は731点となっています。  アール・ブリュットを収集方針に掲げている公立の美術館は、いまのところ日本では当館のみです。滋賀県では、戦後間もない時期から、近江学園など県内の福祉施設で、障害者による創作活動の支援が行われていました。また、制作の支援にあたった人たちに理解があり、個々人の個性や創造性を活かすという雰囲気がありました。そうやって生まれた作品の一部が、やがてアール・ブリュットとして国内外で紹介されるようになります。2013年には、世界最大のアート・イベントであるヴェネチア・ビエンナーレに、澤田(さわだ)真一(しんいち)(1982-)の作品が出品されました。こうした背景があって、滋賀県立美術館は2016年に収集方針に新機軸を追加したのです。 アール・ブリュットを収蔵することのむずかしさ  ただ、美術館にとってアール・ブリュットの収蔵が簡単でないことはいっておかなければなりません。  例えば、美術館は基本的に、収蔵品を永続的に保管することを前提としています。それに対してアール・ブリュットの作品では、マジックやセロファンテープのような身の回りにある素材を使うことがままあります。それらは、時間が経つと激しく退色したり変質してしまったりする素材です。数十年後に色が変わってしまうかもしれない作品の収蔵には慎重になるべきでないかという意見は、日本の同業者からよく聞きます。  私見では、そうやって躊躇してしまう理由の一つに、日本の美術館のほとんどに保存修復の専門家がおらず、本来、美術史の研究者に過ぎない学芸員がそれをになっていることがあると思います。また、少なくない公立美術館が、収集のための予算が長い間ゼロになっているために、現代美術の収蔵ができていないということも遠因としてあるでしょう。現代美術の収蔵には、価値が定まっていないものの評価という側面もあります。そしてそんな現代美術には、アール・ブリュットと同じように保存に向かない素材を使っているケースも多々あるのです。日本の美術館では、文化財保護の観点が強すぎるので、保存が最重要視されがちなのですが、それと同じように評価という機能も根幹にはあるということを忘れてはならないでしょう。 海外の事例にみられる新しい潮流  最後に、海外の美術館ではどのような状況になっているか、少しだけご紹介しましょう。  もっとも注目されるのは、2021年に、パリの国立近代美術館(いわゆるポンピドゥー・センター)がabcdコレクションの一部を受贈したことです。それは242作家921点と大規模な寄贈でした。日本の作家も16人含まれており、そのなかには、やまなみ工房(滋賀県)、工房集(埼玉県)、しょうぶ学園(鹿児島県)といった福祉施設で制作をしている作家も含まれています。2025年6月からは、パリのグラン・パレで大規模なアール・ブリュット展が開催される予定です。  また2023年10月、サンフランシスコ近代美術館(SFMOMA)が、クリエイティブ・グロウス・アート・センター(CGAC)という、障害のある人のためのスタジオを運営している非営利の団体とパートナーシップを結んだことも興味深い事例です。記者発表では、SFMOMAがこれから2年の間に、100点以上の作品を収蔵するとともに、展覧会を二つ以上開催する計画が発表されました。  興味深いのは、彼らは、アール・ブリュットやアウトサイダー・アートといった言葉は使わず、「障害とともにあるアート(Art with Disabilities)」という言葉を使っている点です。これは、障害のある人の創作を、制作、展示、販売と広い角度からサポートしているCGACのコンセプトでもあります。CGACは、そこから生まれた作品がアール・ブリュットと呼ばれること自体を否定はしません。しかし、自分たちから発信する際には「障害」という言葉を強調することで、障害があるからこそすばらしいアートが生まれる可能性もあること、ひいては、障害に対して積極的かつ肯定的な関心をもってもらうことを望んでいるようです。  パリやサンフランシスコから、日本は何を学べるのかがいま問われていると思います。 保坂 健二朗 (ほさか けんじろう)  滋賀県立美術館ディレクター(館長)。専門は近現代芸術。企画したおもな展覧会に「フランシス・ベーコン展」(東京国立近代美術館、2013年)、「人間の才能 生みだすことと生きること」(滋賀県立美術館、2022)、「AWT FOCUS 平衡世界 日本のアート、戦後から今日まで」(大倉集古館、2023)など。  これまで、内閣府「障害者政策委員会」専門委員、文化庁・厚生労働省「障害者文化芸術活動推進有識者会議」委員、厚生労働省「障害者の芸術活動支援モデル事業評価委員会」構成員、東京都「東京芸術文化評議会アール・ブリュット検討部会」専門委員、文化庁「文化審議会 文化経済部会」臨時委員、同「文化審議会 文化経済部会 アート振興ワーキンググループ」専門委員などを歴任。国立新美術館評議員や公益財団法人大林財団「都市のヴィジョン」推薦選考委員も務める。おもな著作に『アール・ブリュット アート 日本』(監修、平凡社、2013年)など。 【P4-9】 職場ルポ 意思表示が苦手な従業員も安心できる職場づくり ―日本海冷凍魚株式会社(鳥取県)― 食品加工業の職場では、困りごとなどをいい出しにくい従業員も安心して働き続けられるよう支援し、定着と戦力化を目ざし取り組んでいる。 (文)豊浦美紀 (写真)官野貴 取材先データ 日本海(にほんかい)冷凍魚(れいとうぎょ)株式会社 〒684-0034 鳥取県境港市(さかいみなとし)昭和町(しょうわまち)12-26 TEL 0859-44-3531 FAX 0859-44-3386 Keyword:知的障害、精神障害、食品加工、特別支援学校、障害者就業・生活支援センター、職場実習、作業日誌、メンター POINT 1 一定期間の職場実習で特性を見きわめ、定着と戦力化を図る 2 現場のキーパーソンを決め、ノートや日誌を活用し安心感につなげる 3 家族や支援機関と連携しながらフォローする カニ加工食品の製造販売  ベニズワイガニなどの水揚げで知られる鳥取県境港(さかいみなと)市。この地で1970(昭和45)年に設立された「日本海(にほんかい)冷凍魚(れいとうぎょ)株式会社」(以下、「日本海冷凍魚」)は、国産カニの解体から冷凍、調理食品の加工、販売までを一手に行っている。  障害者雇用については2000(平成12)年に「障害者雇用優良事業所」として鳥取県知事表彰を受けていたが、その後、障害のある従業員の離職が続き、在職者がゼロになってしまったという。しかし、2011年から2代目として代表取締役社長を務める越河(こしかわ)彰統(あきのり)さんが、障害者雇用の積極的な推進を決め、特別支援学校からの実習生受け入れを中心に採用活動を開始。いまでは従業員123人のうち障害のある従業員は8人(知的障害7人、精神障害1人)で、障害者雇用率は6.09%(2024〈令和6〉年6月1日現在)にのぼる。  越河さんは「障害者雇用では一定期間の実習を行うことでミスマッチが起こりにくくなり、採用後はそれぞれ特性を活かしながら、向上心を持って働いてくれているようです」と話す。各工程にあるさまざまな作業から、本人の特性に合ったものを見きわめ、慣れてきたら少しずつ作業の幅を広げていくようにしているという。製造現場で働く障害のある従業員と、職場の取組みについて紹介する。 会話が苦手な男性の大きな成長  越河さんからのトップダウンで、再び障害者雇用に取り組むことが決まった2011年、タイミングよく地元の特別支援学校から職場実習の依頼があった。そのとき受け入れた実習生が、2012年に入社した藤本(ふじもと)尭大(あきのり)さん(31歳)だ。いまは商品の出荷作業の現場で働いている。  取材した日は、加工食品を詰める組立前の段ボールにスタンプで加工日付の押印作業をしたあと、上司の指示を受けて冷凍庫にある大量の氷をスコップでケースに移し換える作業を行っていた。ほかに商品の箱詰め作業も担当している藤本さんは、「例えば、カニの甲羅(こうらのサイズによって箱が違うので、最初は、一つひとつ大きさを見きわめるのがむずかしかったです」と説明してくれた。  朝8時半からのフルタイム勤務だという藤本さんは、「入社したころは、ちょっと休みがちでした」と明かす。  「仕事を覚えるのがとてもつらくて、ほかの人に話すこともできませんでした。でも会社の人にいろいろ話しかけてもらってから、自分でも話せるようになって、仕事にも慣れて、休まないようになりました」  この経緯について、生産部チーフマネージャーの柳楽(なぎら)一成(かずなり)さんと生産部リーダーの高橋(たかはし)多希(たき)さんに話を聞いた。2人は、障害のある従業員の支援役として、企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ) の養成研修も受けている。  柳楽さんによると藤本さんは、2週間程度の職場実習ではいわれた作業をきちんとこなしたことから採用されたが、いざ入社してみると、出勤してもすぐに、具合が悪いからといって帰ってしまうことが3カ月ほど続いたという。  「このままでは雇用を続けるのはむずかしい」と危機感を抱いた柳楽さんは、ある日、やはり出勤直後に帰ろうとした藤本さんを引き留めて、作業着に着替えてもらい、現場に連れて行った。「やる前から不安だけが大きくなっていた藤本さんの背中を押す必要がありました」  すると藤本さんは、その日は終業まで働くことができた。柳楽さんから「終わりまでできたじゃないか」といわれてうれしそうな顔をしたという。  その日を境に、途中で帰ることが急激に減った藤本さんだが、就業中の課題がもう一つあった。それは、職場で困りごとがあっても直接周囲にはいわず、母親に携帯電話で電話をかけ、母親の口から会社側に伝えてもらうという間接的なコミュニケーションが続いていたことだった。  そこで藤本さんと母親、定着支援を行う障害者就業・生活支援センターの担当者が集まり、話し合った。  「その場で、藤本さんの母校では生徒たちが携帯電話を預けていたことがわかり、職場でも、『強制はしないけれど預けてみたらどうか』と藤本さん親子に提案したところ、藤本さん本人から『預けます』と返ってきました」と柳楽さん。  しかし、携帯電話を預けたからといって、すぐに周囲と話せるようになったわけではない。そこで、「聞きたいことを書くことはできる」といったため、ノートを1冊渡した。藤本さんはその後、職場で聞きたいことや困りごとがあるたびにノートに書き込み、それを柳楽さんたちに見せて助言などをもらうようになった。柳楽さんは「掲示板でみつけた年末調整のお知らせへの対応から『明日が休日というのは本当か』といったことまで、何でも聞かれました」という。  そうしているうちに、藤本さんは仕事や職場の雰囲気に慣れたのか、少しずつ周囲と自然な会話もできるようになったそうだ。いまではノートを介した質問はごくたまにしかないが、それでも本人からは「続けてほしい」といわれている。柳楽さんが話す。  「あのノートがあると安心するのだそうです。家でもノートを見返して、確認しているのだといっていました」  職場内でだれとでも話し、担当作業も増えた現在の藤本さんについて、「奇跡のような大きな成長です」という柳楽さんに、高橋さんがつけ加える。  「いまでは、現場の表示板の間違いなども見つけてくれる働きぶりです。力仕事でも頼りにされ、休まれると困るほどですね。日ごろはみんなに何かと可愛がられる存在でもあります」  藤本さん自身は「会社のみなさんがやさしいので、これからも働いていけると思います」と笑顔を見せていた。 日誌でコミュニケーション  藤本さんとのノートを活用したコミュニケーションが成功した経験をふまえ、ほかの障害のある従業員にも作業日誌を書いてもらうことにした。  高橋さんは「じつは、新たに入社した障害のある従業員に共通していたのは、『困りごとを自分からいい出せない』ことでした。書き込みやすい選択肢つきの日誌なら、小さなことでも相談してもらいやすいと思ったのです」と説明する。  連携している障害者就業・生活支援センター提供の資料をアレンジし、特性に合わせて数種類の作業日誌を用意した。選択肢として「仕事で注意、指摘されたことがある(ある・ない)」、「体調はどうか(悪い=1〜5=よい)」、「相談したい、気になることがあった(ある・ない)」といった内容を基準に、「仕事で困ったレベル(1〜5)」、「仕事で失敗しちゃったレベル(同)」、「嫌な気持ちになったレベル(同)」、「体調レベル(同)」など、わかりやすい表現の選択肢も独自に用意した。  毎日、昼休みなどに総務部のあるフロアへ提出に来てもらい、その窓口で高橋さんたちが一緒に内容を確認し、「ざっくばらんに会話をやり取りしながら、本人の調子や異変を感じとるようにしています」(高橋さん)とのことだ。  また現場では、障害のある従業員一人ひとりにメンター役の社員がつき、仕事の指導や助言をしている。高橋さんによると「本人が頼ることのできる社員を一人に絞っておくことで、仕事のやり方をぶれることなく教えられると同時に、何かあれば気軽に相談できるキーパーソンのような存在として、障害のある従業員の精神的な支えにもなっています」という。そこで確認された課題は、ケースによっては高橋さんたちとも共有し、必要に応じて家族や障害者就業・生活支援センターなどと連携して対応しているそうだ。  こうした支援体制を整える一方、本人に対しては、基本的な挨拶を欠かさないよう力を入れて指導してきたという。柳楽さんが説明する。  「一緒に働いていると『ありがとう』、『ごめんなさい』といった言葉が出てこない従業員が少なくありません。いくら自分からいい出しにくいといっても、少しずつ周囲との心のすき間ができてしまいます。日ごろから助け合わなければいけない職場ですから、本人のためにも、最低限のマナーは必要です。特別支援学校などにもこうした指導をお願いしています」 臨機応変に動く現場  続いて見学させてもらったのは、カニの冷却作業の現場だ。解体されたカニが部位ごとにケースに入って流れてきたものを素早く冷却容器に落とし入れ、温度によって手作業で氷を放り込みながら調節する。「流れ作業を止めないよう、いろいろな作業を考えながら臨機応変に動かなければいけない忙しい現場です」と高橋さんが説明してくれた。  ここでてきぱきと作業していたのは、2017年入社の川上(かわかみ)綾音(あやね)さん(26歳)と、2024年入社の矢吹(やぶき)香菜(かな)さん(25歳)。2人は中学校時代からの知り合いで、いまは毎日一緒に通勤している仲よしだそうだ。  川上さんは、特別支援学校にいたときに2回、それぞれ2週間と1カ月程度の職場実習に参加し、「もともと料理が好きで、食品関係の仕事がしたいと思い志望しました。実習時から冷却作業もやらせてもらえました」という。  「実際に仕事を始めてからは、覚えることが多く、何度も失敗したり間違えたりしました。いまもミスをしないよう注意しながらの作業です」としながらも、「この仕事が好きです。決まった流れ作業が、私に合っていると思います」と語る。  「この職場は、本当にみなさんやさしい人たちばかりで、いろいろ話しかけてもらえるのがうれしいです」とも語ってくれた川上さん。プライベートでは一人暮らしを目ざし、1年以上前からグループホームで生活しているそうだ。  矢吹さんも、特別支援学校時代に日本海冷凍魚で職場実習を受けたが、たまたま採用しない年だったために別の会社に就職した。しかし、しばらくして事業閉鎖のため退職を余儀なくされてしまう。あらためてハローワークで日本海冷凍魚の求人票を見つけ、3カ月間の障害者トライアル雇用を経て念願の入社となったそうだ。  矢吹さんは、洗濯業務も担当しているが、入社当時からそこで仕事を教えてくれたメンター役の上司は、いまも頼りにしている大事な存在だという。  「なかなか人にいえないような自分の悩みも話しています。解決法などを教えてもらったり、アドバイスをもらったりしています。話を聞いてもらえるだけでも安心できます」  いま担当している冷却作業は、「ずっと体を動かしているので好きです」という矢吹さん。「まだまだ覚えることもありますが、社会人としてきちんと働き続けられるよう体力もつけていきたいです」と意欲を見せていた。 就業前の声がけが“スイッチ”  最後に見せてもらったのは、水揚げされたカニが解体されている現場だ。機械や手作業で部位ごとに流れ作業でケースに分けられ、各レーンの端に積み上げられていく。  レーンの間を早歩きで行き来しながら、ケースを移動させていたのは田村(たむら)拓海(たくみ)さん(21歳)。特別支援学校在籍時の実習を経て2021年に入社した。志望した理由を聞くと、「社員旅行や新年会などがあって楽しそうだと思ったからです」と教えてくれた。  「働き始めた当初は、各レーンの積み上げ具合を見ながら臨機応変に動かなければいけないので、ついていくのがたいへんでした」とふり返る一方、「あちこち動き回るようになって、体力もつきました」と笑顔で話す。  記憶するのが少し苦手という田村さん。高橋さんも、このことを田村さんの母校から聞いていたので、忘れてはいけない業務内容などは、紙に書いてロッカーに貼っておくなどの工夫をしてきた。  いまの課題は、たまに原因がよくわからず体調が悪くなり、現場での動きが緩慢になってしまうことだという。その日のうちに「何かあったの?」と聞いても、本人自身もわからないことが多いそうだ。「逆によいときはすばらしい働きぶりなので、体調が悪くなるときの理由がわかるようになるとよいのですが」と高橋さん。  作業日誌になるべく日々のことを書き加えながら、調子の波について分析できるよう試行錯誤しているところだが、最近はよい傾向も見られるという。柳楽さんによると、「朝、現場で田村さんのメンター役の社員が声がけをするとスイッチが入るみたいです。忙しくてそれができないと、スイッチが入らないままお昼を迎えることもあって、そのときは私が声がけをすると午後から動けるようになりますね」。  高橋さんも、「毎日どれだけきちんと声がけができるかが大事かもしれません」と話す。  ところで、田村さんは最近、朝は自分でお弁当をつくっているという。「親にいわれて始めました。冷凍食品ばかりですけど」と苦笑いするが、これも社会人としての大事な一歩だ。 「尊敬する上司のように」  田村さんと同じ現場には、頼もしい先輩従業員もいる。2017年入社の勝部(かつべ)裕太郎(ゆうたろう)さん(26歳)だ。  担当しているのは、各レーンに積み上げられた解体後のカニ入りケースを隣のフロアに運び、次工程につながるレーンに送り出す仕事。部位ごとに冷却などに適した重さが決まっているため、勝部さんは、ケースをレーンの台に載せるたびに、計量数値を見ながら手作業で中身を加減し、適量になったケースから送り出していく。「作業に手間取っていると、すぐにケースがたまってしまいますが、重量数値を間違ってはいけないので、たいへんです」と勝部さん。高橋さんも、「時間と正確さが問われるうえに体力も必要な、とても重要な仕事です」という。  勝部さんは、特別支援学校時代にいくつかの会社の職場実習を経験したなかで、日本海冷凍魚が一番合っているような気がしたという。いまも「入社してよかったと思っている」と話す勝部さんに理由を聞くと、こう返ってきた。  「職場環境に恵まれていると思います。じつは僕は、昔からすぐにイライラしてしまう悪い癖があったのですが、上司や柳楽さんたちと話し合いながら『考えすぎないこと』を心がけるようにしました。いまは、細かいことにイライラする感情を完全になくすことはできなくても、10%ぐらいまで小さくなりました。この職場のおかげです」  柳楽さんは勝部さんについて「とても向上心があって、まじめに仕事に取り組んでくれているのがよいところです。たまにそれが空回りしてしまうことがあるので、みんなで声がけをしながら見守っています」と話す。  勝部さんは、いまも仕事の不安や人間関係が苦手なことなど「課題はある」としたうえで、今後の目標も話してくれた。  「少しずつ改善していって、新しいことにも取り組みたいです。上司が尊敬できる方なので、いつか自分も上の立場になったら、そういう人になりたいです」 精神障害のある従業員も  日本海冷凍魚は、2024年に初めて精神障害のある女性を採用した。3カ月間の障害者トライアル雇用を経て、現在は通院や体力面を考慮し、4時間勤務で働いている。  トライアル雇用中から、仕事のことをメモに書き留めるなど一生懸命な姿も見られた女性社員は、入社前に、合理的配慮として「同時並行で二つ三つのことに取り組むのは、頭が混乱するためむずかしい」、「気持ちがハイテンションになりすぎるとその次に急激に下がってしまうことがあることを知っておいてほしい」と自らの特性を伝えた。女性は以前の職場で、障害のことをいわずに働いていてうまくいかなかった経緯があったそうで、「今回は思い切って開示したところ働きやすくなり、本当によかったです」と話しているそうだ。  今後の障害者雇用について、柳楽さんたちは次のように話してくれた。  「特に食品加工の現場は人手不足になりがちで、若い人たちもなかなか続かないという傾向もあります。そんななかで障害のある従業員のみなさんが、現場の戦力として働き続けてくれることは大きな安心材料です。職場実習やトライアル雇用でのマッチングを重視しながら、今後も可能なかぎり障害のある人を採用していけたらと考えています」 写真のキャプション 国産カニの加工から販売までを手がける「日本海冷凍魚株式会社」 日本海冷凍魚株式会社代表取締役社長の越河彰統さん 加工食品の出荷作業を担当する藤本尭大さん 生産部リーダーの高橋多希さん 生産部チーフマネージャーの柳楽一成さん 段ボールに加工日付を押印する藤本さん カニの冷却作業を担当する矢吹香菜さん 冷却を終えたカニ入りのケースを運ぶ川上さん カニの冷却作業を担当する川上綾音さん 社内のコミュニケーションに活用される作業日誌 各レーンから出されたケースを次の工程へと運ぶ田村さん ケースの移動を担当する田村拓海さん カニの入ったケースを冷却装置に投入する矢吹さん 適量になったケースをレーンに送る勝部さん ケースの移動を担当する勝部裕太郎さん 【P10-11】 クローズアップ マンガでわかる! わが社の障害者雇用物語 最終回 障害者雇用を始めてみませんか  第1回のマンガで、障害者雇用について何も知らないところから取り組み始めたジード工業株式会社。社長と人事担当者の2人が奮闘する姿を通して、障害者雇用で検討すべき内容や相談先、募集から採用、定着までの道のりを5回にわたり紹介してきました。最終回はこれまでの内容をふり返りながら、ポイントなどを再確認します。ぜひ実際に障害者雇用に取り組んでみましょう。 ★これまでの連載(2024年9月号〜2025年1月号)はこちらからご覧ください。 https://www.jeed.go.jp/disability/data/works/index.html 監修:三鴨(みかも)岐子(みちこ) (『働く広場』編集委員)  名刺や冊子などのデザインを手がける「有限会社まるみ」の取締役社長。精神保健福祉士。  障害のある社員の雇用をきっかけに「中小企業の障害者雇用推進」に関する活動を精力的に行っている。 1 情報収集から始めよう  2024(令和6)年4月から民間企業の障害者の法定雇用率が2.5%になり、2026年7月には2.7%に上がります。雇用障害者数は、週の所定労働時間と障害の程度などによって算定します(※1)。障害者雇用は法的義務にとどまらず、企業の社会的責任やダイバーシティ&インクルージョンの一環としても重要な取組みです。  マンガでは、働田社長は経営者の集いで自社に障害者の雇用義務があることをはじめて知りました。その後の情報収集にはハローワークや地域障害者職業センターなどの支援機関(※2)の活用が役立ちます。また、人事担当者の広田さんと一緒に行動していますが、このように経営トップだけでなく、チームを組んだり、企業全体で障害者雇用に取り組むことで、障害者雇用を円滑に進めることが可能となります。 2 職務を選定しよう  はじめて障害者雇用を考える企業では、「どんな仕事を任せたらよいのか」と悩むケースが見られますが、障害のある人が「活躍できる」職務を選定することが大切です。そのためには業務全体を見直して、適した職務を探して創出する「業務の切り出し」が有効です。また、職務を選定しても、採用後に障害特性や本人の希望をふまえたり、就労支援機器の導入や教育・訓練を通じて職場環境を整えたりして、職務の幅を広げていきましょう。  導入初期の職務の内容は、@判断要素が少ない、A納期に縛られない、B作業内容に変化がなく恒常的な作業量である、とよいでしょう。マンガでは地域障害者職業センターへ相談後、各部署の声を聞きました。それらを反映させた整理表(※3)を作成し、活用することで、自社に合った職務を創出することができます。 3 職場実習で相互理解を深めよう  求人票を出すなど本格的な採用活動を始める前に、職場実習を行うことは、企業と障害のある人双方が相互理解を深めるよい機会です。  実習を設定するには、地域障害者職業センターや障害者就業・生活支援センター、就労移行支援事業所、特別支援学校などに相談し、自社に適した実習希望者を紹介してもらう方法があります。  実習前には、作業内容や時間、必要な配慮事項などを十分打ち合わせしておくことが重要です。企業側は「障害のある人の特性を理解し、職場環境を見直し、どう改善すればよいのかを確認する場」、実習者側や支援機関も「実際の職場環境でどの程度本人が実務にたずさわれるのかを知る機会」となります。そのため、実習中には、支援機関等のチェックリスト(第3回で紹介)を活用することで実習者の様子を確認し、相互理解を進めるとよいでしょう。  マンガでは実習後に働田社長と人事担当者の広田さん、現場社員、実習者本人、支援機関が集まり、「ふり返り面談」で感想や課題などを述べています。このふり返りによって、必要な気づきや課題解決へのヒントが得られ、よりよい職場環境を構築できます。 4 採用活動と合理的配慮  障害のある人の採用活動そのものは、一般的な採用活動と同様ですが、留意する点や配慮が必要な点もあります。障害者雇用のノウハウがない場合は支援機関を活用するとよいでしょう。  例えば、ハローワークでは求人票作成や採用時の留意事項の相談ができ、障害者トライアル雇用や特定求職者雇用開発助成金など(※4)についての説明も受けられます。  そして重要になるのが雇用の分野における合理的配慮です。障害のある人が障害のない人と均等な待遇を得られるよう、また能力を有効に発揮できるよう障害特性などに応じた配慮を提供することです。  採用選考時は、障害のある人の申し出により、面接日までに本人と話し合うことが必要です。採用後についても雇入れ時までに本人と話し合います。マンガでは人事担当者の広田さんが面接時の合理的配慮についてハローワークの職員から教わっています。 5 支援機関と連携して職場定着を目ざそう  だれでも新しい職場に慣れるには時間が必要です。加えて、障害のある人は疲れやすさなどの特性があったり、「配慮してほしい」といえず、早期離職したりする場合もあります。一方、企業側も業務で生じた課題や本人の要望が障害特性に起因するものか、そうでないかの判断や適切な指導方法に悩むことがあります。そのため、支援機関と連携して職場定着に向けた支援に取り組みましょう。  企業は、障害のある人が職場に適応しやすくするため、職場に職場適応援助者(ジョブコーチ)の派遣を受けることができます(※5)。ジョブコーチは、障害のある人に対しては、職務遂行に関する支援や職場でのコミュニケーションに関する支援を行い、企業に対しては、障害を適切に理解し配慮するための助言、職務内容や指導方法を改善するための助言・提案を行います。また、障害者就業・生活支援センターからは、就業面と生活面の一体的な支援を受けることができます。マンガでは、一例として職場でのサポートは地域障害者職業センター(ジョブコーチによる支援)が行い、健康面での相談も含めた日常生活等に関するサポートは障害者就業・生活支援センターが行う様子を描いています。 おわりに  障害者雇用は個人や担当者任せにせず、必要に応じて支援機関と連携し、職場内の理解を深めながら企業全体で取り組むことが大切です。そのうえで、マンガ(第5回)で働田社長と人事担当者の広田さんが会話しているように、「働くその人自身をしっかりと見る」ことが、ともに長く働いていくためにもっとも重要な姿勢なのです。 ※1 障害者雇用率の算定方法:JEED『はじめての障害者雇用〜事業主のためのQ&A〜』2024、P129 ※2 障害者雇用について相談できる支援機関一覧:https://www.jeed.go.jp/disability/data/handbook/q2k4vk000003mbkm.html ※3 職務内容の整理表:JEED『はじめての障害者雇用〜事業主のためのQ&A〜』2024、P30 ※4 制度の詳細はこちらをご覧ください。 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/shisaku/jigyounushi/intro-joseikin.html ※5 職場適応援助者の詳細はこちらをご覧ください。 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/06a.htm 写真のキャプション 働田(どうだ)社長 人事担当者広田さん 出荷部門社員 障害者職業カウンセラー 実習生 千葉さん ハローワーク職員 障害者就業・生活支援センター職員 【P12-14】 JEED インフォメーション 〜高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)からのお知らせ〜 第32回(令和6年度) 職業リハビリテーション 研究・実践発表会 オンデマンド配信 NIVR ホームページにて実施中  JEEDは、2024(令和6)年11月13日(水)および14日(木)の2日間、東京ビッグサイトにて「第32回職業リハビリテーション研究・実践発表会」を開催しました。  当日は、病院での障害者雇用体制の構築をテーマとした特別講演や、職場でのコミュニケーションの課題等をテーマとしたパネルディスカッション等を行い、約960名の方にご来場いただきました。  その内容をより広く発信するため、障害者職業総合センター(NIVR(ナイバー))ホームページにおいて動画、発表資料等を掲載しています。  ぜひご覧ください。 配信内容 特別講演 動画 資料 「障害者を中心にした障害者雇用体制の構築 〜職場、家庭、地域の就労支援ネットワークによる支援とともに〜」 岡山(おかやま)弘美(ひろみ)氏 (奈良県立医科大学発ベンチャー認定企業 株式会社MBTジョブレオーネ 代表取締役) パネルディスカッション 動画 資料 T 職場でのコミュニケーションの課題について考える U 障害者就労支援を支える専門人材を育てる〜福祉と雇用の切れ目のない支援に向けて〜 研究・実践発表資料/発表論文集 資料 研究・実践発表(口頭発表・ポスター発表)の内容を最近の職業リハビリテーションの取組みや障害者雇用促進の取組みの動向に応じて、15テーマの分科会およびポスター発表に分けて掲載しています。 基礎講座 動画 資料 T 精神障害の基礎と職業的課題 U 「就労支援のためのアセスメントシート」を活用したアセスメント 職リハ発表会 検索 お問合せ先 障害者職業総合センター 研究企画部 企画調整室 TEL:043 -297- 9067 E-mail:vrsr@jeed.go.jp 事業主のみなさまへ 令和7年度 「障害者雇用納付金」申告および「障害者雇用調整金」等申請のお知らせ 〜常用雇用労働者の総数が100人を超えるすべての事業主は障害者雇用納付金の申告義務があります〜  令和7年4月1日から5月15日の間に令和7年度申告申請をお願いします。前年度(令和6年4月1日から令和7年3月31日まで)の雇用障害者数をもとに、  ○障害者雇用納付金の申告を行ってください。  ○障害者の法定雇用率を下回る場合は、障害者雇用納付金を納付する必要があります。  ○障害者の法定雇用率を上回る場合は、障害者雇用調整金の支給申請ができます。 【申告申請期間】 種別 障害者雇用納付金 障害者雇用調整金 在宅就業障害者特例調整金 特例給付金(経過措置) 申告申請対象期間 令和6年4月1日〜令和7年3月31日 申告申請期間・納付期限 令和7年4月1日〜令和7年5月15日(注1、注2、注3) (注1)年度の中途で事業廃止した場合(吸収合併等含む)は、廃止した日から45日以内に申告申請(障害者雇用納付金の場合は、あわせて申告額の納付)が必要です。なお、令和7年度中の事業廃止等による申告申請については、制度改正により様式が変更となりますので、期間内に申告申請できるよう、余裕をもって各都道府県申告申請窓口にご相談ください。 (注2)障害者雇用調整金、在宅就業障害者特例調整金および特例給付金(経過措置)は、申請期限を過ぎた申請に対しては支給できません。 (注3)常用雇用労働者の総数が100人以下の事業主が、報奨金および特例給付金(経過措置)の申請を行う場合の申請期限は令和7年7月31日となります。 *詳しくは、最寄りの各都道府県支部高齢・障害者業務課(東京・大阪は高齢・障害者窓口サービス課)にお問い合わせください(33ページ参照)。 JEED 都道府県支部 検索 令和7年度申告申請における障害者雇用納付金制度のおもな変更点について @障害者の法定雇用率の引上げ  企業の法定雇用障害者数の算出に用いる障害者の法定雇用率が2.3%から2.5%に引き上げられました。 A一定数を超えて障害者を雇用する場合、超過人数分の調整金および報奨金の支給額を調整  調整金は年間総計120人超で月額23,000円、報奨金は年間総計420人超で月額16,000円に調整されます。 B特定短時間障害者(※)の実雇用率への算入  重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者である特定短時間障害者(就労継続支援A型事業所の利用者を除く)は1人をもって0.5人として対象障害者数にカウントします。※週所定労働時間が10時間以上20時間未満の障害者 C特例給付金の廃止(令和7年度申告申請限りの経過措置)  Bの措置に伴い、特例給付金が廃止され、廃止前に雇い入れられた特定短時間労働者である重度以外の身体障害者または重度以外の知的障害者については、1年間の経過措置が設けられています。 Dシフト制の取扱いの変更  シフト制で働く方の雇用区分の確認方法が変わり、常用雇用労働者および障害者の取扱いが変わります。 *制度改正の概要についてはJEEDホームページをご覧ください。https://www.jeed.go.jp/disability/seido.html JEEDホームページにて、記入説明書および解説動画をぜひご覧ください。 https://www.jeed.go.jp/disability/levy_grant_system_about_procedure.html 申告申請の事務説明会にぜひご参加ください。 *全国各地で2〜3月に開催します。 *参加費は無料です。 JEED 納付金 説明会 検索 障害者雇用の月刊誌「働く広場」がいつでも無料でお読みいただけます! 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)では、障害者に対する雇用支援などを実施しており、その一環として障害者雇用の月刊誌「働く広場」を発行しています。 本誌はデジタルブックでも公開しており、スマートフォンやパソコンでいつでも無料でお読みいただけます。ぜひ、ご利用ください! (毎月5日に最新号がアップされます) 掲載をお知らせするメール配信サービスもございますのであわせてご利用ください。 自由に拡大できて便利! 読みたいページにすぐ飛べる! ★ルポルタージュ形式で障害者雇用の現場をわかりやすく紹介 ★国が進める施策の動向や、助成金などの制度、最新の調査研究を紹介 ★「障害者雇用担当者のモチベーションアップ」、「マンガでわかる!わが社の障害者雇用物語」など、テーマを掘り下げた記事が充実 お問合せ先 企画部 情報公開広報課 電話:043-213-6200 FAX:043-213-6556 E-mail:hiroba@jeed.go.jp https://www.jeed.go.jp/disability/data/works/index.html JEED 働く広場 検索 【P15-18】 グラビア 働き続けたい職場 〜個々の特性を活かして働く〜 大畑建設株式会社(島根県) 取材先データ 大畑建設株式会社 〒698-0012 島根県益田市(ますだし)大谷町(おおたにちょう)36-3 TEL 0856-23-3530 FAX 0856-23-0935 写真・文:官野貴  島根県益田市に本社を置く大畑建設株式会社は、土木や建築をはじめ、造園、公園管理運営など総合建設業として幅広い業務を行っている。同社では、身体障害や知的障害のある従業員6人が、個々の特性を活かして事務や造園、公園管理などさまざまな仕事で活躍している。  入社10年目の井上(いのうえ)楓(かえで)さん(29歳)もその一人。井上さんは、高校卒業後、当機構(JEED)の国立吉備高原職業リハビリテーションセンターで、機械CADを学んだ。「地元で働きたい」との思いから同社に入社し、現在は経営管理部において事務系業務を担当している。脳性麻痺(まひ)により右手が不自由な井上さんは、片手で日本語やアルファベット、数字などが入力できる日本語入力補助キーボードを駆使して、会計伝票などの入力を行っている。  造園部で働く入社13年目の日熊(ひのくま)新次(しんじ)さん(53歳)は、島根県立サッカー場で芝の管理にたずさわる。同サッカー場の天然芝は、サッカーのプロリーグが開催されるスタジアムと同じ仕様であり、その維持には日々の手入れが欠かせない。知的障害のある日熊さんは、上長や同僚とともに青々とした芝の維持管理に尽力しており、同社を「長く働き続けたい職場」だと語る。  入社20年目の岡おか崎ざき則幸(のりゆき)さん(59歳)は、同社における障害者雇用のきっかけとなった従業員だ。同社が県立万葉(まんよう)公園の指定管理者となった際、前の指定管理者のときから万葉公園で働いていた知的障害のある岡崎さんを雇用。維持管理作業員としての十分な仕事ぶりが、障害者雇用に取り組むきっかけとなった。岡崎さんは「体力の続くかぎり、働き続けたいです」と語る。  同社では、障害のある従業員が貴重な戦力となっており、「地域、社会に貢献する」という経営理念のもと、今後も障害者雇用に積極的に取り組んでいくという。 写真のキャプション 日本語入力補助キーボードを使って伝票を入力する井上楓さん 補助キーボードは、国立吉備高原職業リハビリテーションセンターでの職業訓練中に講師のすすめで使い始めた パソコンでの作業のほか、書類のファイリング作業などさまざまな業務をこなす 麻痺のある右手もうまく使い、事務作業にあたる 島根県立サッカー場のバックスタンドで芝刈りを行う日熊新次さん カートに取りつけたブラシで、グランドの芝についた朝露を落とす。芝刈り前の大切な工程だ 刈り取った芝を回収し、トラックに積み込む 強い風を手軽に送り出せる大型ブロワーを使った清掃も、日熊さんが担当する作業の一つ 安全エプロンやフェイスガードを身に着け、刈払機で除草作業を行う岡崎則幸さん トイレの清掃。洗面台の水滴をきれいに拭き取る 岡崎さんは、刈払機や大型ブロワーなどを使いこなして、維持管理作業を行う 花壇の手入れ。植え替えに備えて、土中の根をていねいに取り除く 【P19】 エッセイ 誰一人取り残さない防災とは? 第3回 レジリエンスの多元性 同志社大学社会学部教授 立木茂雄 立木茂雄(たつきしげお)  1955(昭和30)年兵庫県生まれ。1978年関西学院大学社会学部卒。同社会学研究科修士課程修了後、1980年よりカナダ政府給費留学生としてトロント大学大学院に留学。MSW(マスター・オブ・ソーシャルワーク)ならびにPh.D.(ドクター・オブ・フィロソフィー)修得。1986年より関西学院大学社会学部専任講師・助教授・教授を経て2001(平成13)年4月より現職。  専門は福祉防災学・家族研究・市民社会論。特に大災害からの長期的な生活復興過程の解明や、災害時の要配慮者支援のあり方など、社会現象としての災害に対する防災学を研究。  おもな著書に『災害と復興の社会学(増補版)』(萌書房、2022年)などがある。 レジリエンスの多元性―― 逆境から生活を取り戻し、変容する力  被災による逆境を乗り越え、新たな生活を切り拓く力――それが「レジリエンス」だ。日本語に置き換えるなら「再構築力」といえるこの概念は、被災者が逆境に立ち向かい、被災の影響を軽減しながら回復していく「復元力」と、災害による環境変化に応じて自らを適応させ、新たな生活のバランスを見出す「変容力」の二つの側面からなる。被災地の復興現場では、このレジリエンスがいかに重要であるかが浮き彫りになってきた。 生活を取り戻す「復元力」―― 医・職・住が鍵を握る  まず、「復元力」は、物理的・心理的なストレスを克服し、被災前の生活に近い形へ回復する力をさす。阪神・淡路大震災や東日本大震災の被災者調査では、「医(健康)・職(生計)・住(住まい)」という三つの柱が好転することで、被災者が「以前の幸せ」を感じるようになることが確認されている。さらに本連載第2回(※)で紹介したように、被災前の医・職・住が脆弱である層ほど、被害はより深刻に、長期にわたって経験されていた。  興味深いことに、この「医・職・住」というフレームワークは、阪神・淡路大震災の復興計画で神戸市が掲げたものだ。当時、震災からわずか半年で策定された生活再建計画が、今日の被災者生活再建支援の基礎の一つとなっている。 新しい幸せを築く「変容力」―― まちとつながりが紡ぐ未来  一方で、「変容力」は、災害後の環境の激変に応じて自らを変容させ、新しい平衡へと舵を切る力をさす。従来の生活に戻るのではなく、「新しい幸せ」を見出す過程だ。その中核を成すのが、人とのつながりと地域社会の「共同性」だ。  例えば、被災者が趣味や関心を通じて新たに5人以上とつながること、地域のリーダーが課題解決に取り組み、住民が積極的に地域行事に参加する環境が生まれること――これらは「社会関係資本」として、被災者が自身の体験に前向きな意味づけを与える助けとなる。  この「まち」と「つながり」による適応的な変容力の重要性は、震災5年目に神戸市の震災復興総括検証をになった有識者会議が提言したものだ。災害後の復興において、人と人、人と地域が交わることで新たな平衡点を見つける力は、ますます注目を集めている。 支援に求められる視点―― 多元的なレジリエンスを理解する  「復元」と「変容」、この二つの力が交錯するレジリエンスには、被災者一人ひとりの道のりをていねいに理解し、それに応じた支援を提供することが求められる。制度や施策の連携を強化し、被災者が真に必要としていることに応えることで、誰一人取り残さない生活再建が可能となるのだ(図参照)。  災害の記憶が風化していくなかで、私たちが忘れてはならないのは、「レジリエンス」という多元的な力が、未来の災害対策にも応用可能な希望の灯であるということだ。  さらに、この力は、被災後にだけ効力を発揮するものではない。医・職・住・まち・つながりを日常から強靱化させておけば、災害により強い社会をつくりあげられるのだ。 ※本誌2025年1月号(19ページ)をご覧ください。 https://www.jeed.go.jp/disability/data/works/book/hiroba_202501/index.html#page=21 図 阪神・淡路大震災および東日本大震災後の縦断調査に基づく生活再建の復元・変容過程モデル 生活再建 適応的変容 + + 回復・復元 できごと再評価 重要他者との出会い できごと影響度緩和 + まち(共同性) + つながり(弱い紐帯) − こころとからだのストレス(医) + くらしむき(職)すまい(住) 被災による被害 災害 被災前から存在する不平等 ・年齢 ・世帯規模 ・健康 ・障がい ・階級 ・ジェンダー ・人種 ・カースト ・民族性 ・生活困窮 ・移民資格 ・地区や地域の特殊事情 出典:Tatsuki, S., & Kawami, F. (2003) Longitudinal impacts of pre-existing inequalities and social environmental changes on life recovery: Results of the 1995 Kobe Earthquake and the 2011 Great East Japan Earthquake recovery studies. International Journal of Mass Emergencies & Disasters, 41(1), https://doi.org/10.1177/02807270231171504 【P20-25】 編集委員が行く Chance! Challenge! Change! 特別支援学校技能検定の意義と効果 青森県特別支援学校技能検定・発表会(青森県) 弘前大学教職大学院 教授 菊地一文 取材先データ ●主催 青森県教育委員会 〒030-8570 青森県青森市長島1-1-1 TEL 017-722-1111(大代表) 青森県特別支援学校校長会 ●事務局 青森県立青森第一高等養護学校 〒038-0057 青森県青森市大字西田沢字浜田368 TEL 017-788-0571 FAX 017-788-0539 青森県立八戸聾学校 〒031-0081 青森県八戸市柏崎6-29-24 TEL 0178-43-3962 FAX 0178-43-3942 菊地(きくち)一文(かずふみ) 編集委員から  特別支援学校に在籍する生徒たちは、卒業後の夢の実現に向けて、働くために必要な知識や技能、態度を日々の職業教育や地域での多様な協働活動を通して身につけていく。そして身につけた力を「特別支援学校技能検定」を通して発揮し手応えを実感していく。そして「なぜ・なんのため」学ぶのかということをあらためて考えるようになり、自身のいまと将来をふまえ、主体的に学習に取り組んでいく。他方、指導・支援する教師や企業等も彼らの姿からたくさんの大事なことに気づかされていく。本稿ではその実際として、青森県教育委員会が実施する「青森県特別支援学校技能検定・発表会」の取組みをレポートする。 Keyword:特別支援学校、キャリア教育、職業教育、技能検定、清掃、接客サービス、PC入力、農業 写真:官野貴 POINT 1 キャリア教育・職業教育の充実 2 企業等と特別支援学校の連携・協働 3 チャレンジする経験とふり返りと対話による「意味づけ」 特別支援学校技能検定とは  特別支援学校技能検定は、2007(平成19)年の東京都による「都立特別支援学校清掃技能検定」が始まりとされている。2014年には10自治体が実施(藤川、松見、菊地、2016)し、2015年には21自治体(明官、2016)、2016年には26自治体と増加した。その後も実施自治体が増加しており、その多くは知的障害のある生徒を対象とした取組みであったが、近年その対象を広げようとする自治体もみられる。技能検定は学校単位で実施するものを含めると、全国各地で取組みが進められてきている。  技能検定には「清掃」、「接客」、「事務」、「流通」、「食品加工」など、多様な種目が導入され、年々充実が図られてきている。当初から多様な種目に対応しているのは広島県などがあり、「清掃」、「接客」、「パソコン入力」、「食品加工」、「物流」などの種目を実施している。  また、すべての障害種別を対象とした取組みを進めているのは、青森県や福島県などであり、後述するように青森県では、生徒の現在の学びや将来の夢について、「プレゼンテーション」、「ポスター(現在は「プレゼンテーション」に統合)」、「パフォーマンス」といった手段を用いて表現する「コミュニケーション部門」を実施している。  また、青森県や福島県では、各校が作業製品を展示したり、実演ブースを設定したりし、生徒が自分たちの取組みを発信したり、他校のブースで相互に体験したりしている。  特別支援学校高等部に在籍する生徒は、産業現場等における実習(いわゆるインターンシップ)については、高等学校に比べて機会が確保されているといえるが、スポーツや文化的活動、大学受験のための模擬試験など、他校の生徒と場をともにしたり競ったりすることについては、特別支援学校は高等学校と比べて機会がかぎられている。そのため、技能検定は特別支援学校の生徒にとって貴重な「チャレンジする機会」となっている。 特別支援学校技能検定の意義  特別支援学校技能検定の意義として、次の5点があげられる。 @産業構造の変化に応じたキャリア教育および職業教育の充実 A生徒や教員にとっての職業教育における目標の明確化 B学校を越えた学び合いによる生徒の働くことや学ぶことに対する意欲向上と自己理解の促進 Cキャリア発達の視点をふまえ、社会的・職業的自立に向けた授業や教育課程の改善 D企業等における障害者の職業能力や障害者雇用に関する理解・啓発  特別支援学校が「技能検定」に着目し、導入を進めてきた背景には、前述したように産業構造の変化に対応した職業教育の充実や企業就労への取組みの充実を目ざしていることに加え、技能検定の実施によって、生徒が「目標を持つこと」や「何かにチャレンジすること」、「自己の力を知ること」、「他者を意識すること」など、キャリア発達の促進につながる「教育的意義」が大きいということがあげられる。  また、生徒のチャレンジやその成長を目にすることにより、指導および支援にたずさわる側である教員、保護者、企業等の担当者が刺激され、意識変容が図られるなど、キャリア発達支援における相互作用による環境開発が成果としてあげられる。すなわち、生徒の「本気」は大人の「本気」を引き出すのである。 アビリンピックと特別支援学校技能検定の違い  近年、特別支援学校高等部生徒のアビリンピック(障害者技能競技大会)への参加も増えてきている。  アビリンピックとは、障害者が日ごろつちかった技能を競い合い、職業能力の向上を図るとともに、企業や社会に対する障害のある人々への理解と認識を深めることによる雇用促進を目的に、15歳以上の者を対象として行われてきている。  アビリンピックと技能検定のおもな違いは、「競技」と「検定」という点である。アビリンピックは参加者同士が競うものであり、相対評価として「順位」という形で結果がフィードバックされる。  一方、技能検定は、評価規準に基づいて参加者個々の到達程度を評価し、絶対評価として「級」という形で結果がフィードバックされる。 キャリア発達の相互性  近年、推進が図られてきた地域協働活動や特別支援学校技能検定において着目したい成果として、第一には生徒が、だれかのために何かをし、役に立つことで手応えを感じたり、目標を持って何かにチャレンジしたりすることによる「働くこと」や「学ぶこと」に対する意欲の向上があげられる。また、学校を越えた学び合いや、他者から認められることによる生徒の「学び」や「育ち」があげられる。  そして第二にはその支援を通した、教師や企業等の関係者の意識の変容があげられる。  くり返しになるが、地域協働活動や特別支援学校技能検定は、キャリア発達の「相互性」や「同時並行性」による、環境側のキャリア発達やキャリア開発にもつながるものととらえられる。また、このことは共生社会の形成に向けた重要なポイントを示唆しているといえる。  なお、地域協働活動や技能検定はあくまでもキャリア発達をうながす手段の一つであり、これらの取組みそのものが目的化してしまわないように留意する必要がある。また、キャリア発達の視点をふまえ、「何をしたか」というアウトプットだけではなく、取り組んだ結果、「何が変化したか」というアウトカムについて着目し、児童生徒一人ひとりをとらえていく必要があると考える。 青森県特別支援学校 技能検定・発表会 1 実施する部門・分野  青森県では、生徒の生きる力と夢や志を育む教育の一環として技能検定を位置づけ、他県の取組みを参考としながらすべての生徒を視野に入れた技能検定を開発し、2015年にプレ大会を、そして2016年から本格実施した。  青森県特別支援学校技能検定・発表会の目的は次の3点である。 @高等部を設置するすべての県立特別支援学校が一堂に会し、技能検定・発表会を開催することにより、各校の教育活動の成果を共有し、いっそうの充実を図る A企業等の専門家からの評価を受けることにより、生徒が自信を持ち、卒業後の社会的・職業的自立に向けた意欲を高める B企業等をはじめ、県民の理解啓発を図ることで、産業現場等における実習の受入れや雇用機会の拡大などにつなげるなど、共生社会の形成に資する  青森県特別支援学校技能検定・発表会で実施する種目は、他県と同様に「職業技能」部門として「清掃」、「接客サービス」、「PC入力」を実施してきた。  なお、2023(令和5)年度より、農福連携の推進によって新たに「農業」を実施している。  また、ICTなどのさまざまな表現手段を用いて、将来の働くことやいまの学びに対する生徒の「思い」を「プレゼンテーション」、「パフォーマンス」で表現する、全国初の「コミュニケーション」部門を設定し、初級、中級、上級を認定している(図1)。  そのほか、各校による展示・デモンストレーションブースを設置し、来場者を対象に盲学校理療科生徒による、あんま・マッサージの施術を行っている。なお、かつては聾学校生徒による手話教室なども行われていた。  これらが共存することによる相乗効果は大きく、すべての種目において生徒の「思い」の表出や「対話」を大切にするとともに、「なぜ・なんのために」技能検定に取り組むのかについて生徒本人や指導にあたる教員の意識化につながっている。  このようなすべての障害種別を対象とした取組みにより、かぎられた生徒を対象に技能のみを追求してしまう危険性や、単なる発表会となることを避けることを意図している。  これらのことをふまえ、青森県ではキャリア発達をうながす手段として技能検定をとらえ、生徒の「思い」を大切にし、障害種別や状態にとらわれず、可能なかぎりすべての生徒が参加することを念頭において取り組んできた。  協力企業などの方々もこの点を大切にしており、評価規準の開発や大会の運営にあたって、たくさんの指導・助言を得てきている。  なお、「特別支援学校就職サポート隊あおもり」(図2)として、県内約350事業所が登録し、次のサポートを行っている。 @職場見学への協力 A就業体験への協力 B産業現場等における実習への協力 C作業学習等、学校の授業における指導・助言 D作業学習等、学校の授業における物品等の貸出 E技能検定への協力(審査員、物品の貸出、技術指導等) F就労促進(雇用) など 2 各部門・分野の検定の実際  今年度の大会は、284名の生徒が技能検定にチャレンジし、会場には応援する生徒や教員、保護者、審査員やボランティア、企業や就労支援事業所の職員など、約800名が来場し、盛大に開催された。  主会場となったメインアリーナロビーには、すべての特別支援学校ののぼり旗が掲げられ、開会および閉会セレモニーの進行なども生徒が行い、生徒主体の運営を意図して進められた。 (1)職業技能部門  職業技能部門では、いわゆる知的障害の状態が軽度である生徒だけではなく、多様な障害の状態にある生徒のエントリーがみられるようになってきている。また、前述したように、生徒の実態に合わせた基礎的内容に焦点化したカテゴリーも開設されている。 @清掃分野  清掃分野では、外部専門家として一般社団法人青森県ビルメンテナンス協会の協力を得ることや、日々の職業教育において地道な取組みを積み重ねている。  生徒の多様な実態をふまえ、テーブル拭きと、自在ぼうきで構成する「基礎コース」と、ダスタークロス、モップ、テーブル拭きで構成する「応用コース」を設定している。  応用コースでの技能検定の場面では、企業が求める高いレベルの力を発揮する生徒もみられる。また、自身が検定を受けているときだけではなく、他校の生徒が取り組んでいる姿をみて学ぼうという生徒たちの姿勢と、生徒に「させる」のではなく「自ら学び取り組む」ことを大切にしようとする教師の姿勢をみることができた。  基礎コースにエントリーした生徒のなかにはイヤーマフを着用した、ふだんは多くの支援を必要としてきたであろう、知的障害をともなう自閉症のある生徒がいて、自分の力を最大限に発揮しチャレンジしている姿が印象的であった。 A接客サービス分野  接客サービス分野では、ホテルの喫茶部門を外部専門家として活用するなど、より本格的に学んでいる学校もみられる。  技能検定のなかで唯一、直接顧客にかかわる種目であり、周囲にみられるなかで緊張感も高まりやすい。それと同時に、みているほかの生徒にとっても憧れの対象となり、チャレンジしたいという気持ちも高まる。衛生面への意識化の必要性も高い種目であり、その教育的効果も大きい。 BPC入力分野  PC入力分野は、日々の学習活動と関連づけやすい身近な種目といえる。かつては企業の協力を得て、会場にPC(パソコン)を搬入して実施していたが、現在は一つの会場で行うことが困難だったコロナ禍をはさんでからは、各学校で実施する形になって生徒は移動の負担がなくなり、受検者が増えている。  PC入力分野は、一級が通常の検定の四級につながるように評価規準を工夫している。技能検定実行委員会の専門家からは、生成AIの活用を検討することなどを提言されており、今後の導入によるさらなる充実が期待されるところである。  また、一堂に会して行うことや種目を超えて見あうことが生徒の意欲の向上につながることから、そのあり方についても検討が必要であろう。 C農業分野  農業分野は、青森県による農福連携の推進にともない、新たに設定することになった種目である。本種目での具体的な活動は、基準に見合った野菜の選定計量とパッキングであり、他県で「流通・サービス」として実施しているものに近い。そのようなことから注目も高い分野である。 (2)コミュニケーション部門 @プレゼンテーション発表分野  プレゼンテーション発表分野では、プレゼンテーションソフトを用いて、単に興味・関心のあることや学習したことを発表するだけではなく、「なぜ」、「なんのため」に取り組んだのか、どのような「気づき」や「学び」があったのか、そして「どのようになりたい」のかなど、「思い」を自分なりに「表現」したり、審査員の質問に対して「思考・判断」し、伝えたりすることを重視している。そのため審査する側は生徒の思いの理解に努めることと、問いの力が求められることになる。  プレゼンテーション発表分野の審査は各校から選出された校長が対応しているが、過去の審査場面のなかから興味深いエピソードを次に紹介したい。  ある生徒が発表したのは好きなアニメについてであった。発表後の質疑応答場面で審査員の校長は、発表者の生徒がアニメの登場人物〇〇の「生き方」に憧れていることを把握し、「◯◯の姿をみて、あなたはどのようにしたいと思いましたか」と聞いた。  すると生徒はしばらく沈黙し、答えるために一生懸命思考しているようにみえた。  そしてしばらく見守っていた審査員の校長は、「あなたが◯◯に憧れて、まねしたいところでもいいですよ」という。  すると生徒は熟考して「(質問されるまでは十分に)考えていなかったけれど、〇〇のように何か(たいへんなことが)あってもなかったと思えるようになりたい」といった。  アニメの登場人物にはいつもさまざまなトラブルやたいへんなことが起こるが、その問題と向き合い自分らしく生きようとしているそうである。生徒はその姿に憧れているようであった。その言葉の背景には自身の「これまで」と「いま」があり、問いはあらためてこれからに目を向けるきっかけとなったと推察した。  その言葉を受けて、審査員の校長は最後に「あなたは、◯◯のようにたいへんなことがあっても、ふり回されず、がまん強く向き合いたいと思っているのですね」と発表した生徒の言葉や思いを価値づけた。生徒は元気よく「はい!」と応じた。  このような対話こそ、日々の教育活動や技能検定・発表会に向けた指導・支援において大切にしてほしいことである。生徒にとっての「なぜ・なんのため」をふまえて指導計画を再考するとともに、技能検定・発表会に向けた生徒の「思い」や「願い」、そして技能検定・発表会後の生徒の「思い」や「願い」を大切にした指導・支援が肝要となる。 Aパフォーマンス発表分野  パフォーマンス発表分野では、ダンスパフォーマンスなどを通して、できる力を精いっぱい発揮することが多くみられている。過去には、いわゆる重度重複障害のある生徒が視線や身ぶりで意思を伝えたり、知的障害のある生徒が空手やピアノ演奏など、日ごろ努力して磨いてきたことを表現したりすることにより、来場した多くの人の感動を引き出したこともあった。  パフォーマンス発表分野の進行と審査は、地元のお笑い芸人である「あどばるーん」の2人が担当しており、ライブ感満載の問いかけで、生徒の「思い」を引き出していた。  なお、コロナ禍の際は、オンラインによる技能検定・発表会を運営し、企画・運営にかかわる教員の「学びを止めない」という熱意が、いわゆる重度重複障害や精神疾患等により対面参加が困難であった生徒たちの参加の間口を広げることにつながった。表1にこれまでの技能検定発表会の参加生徒数の推移を示す。 (3)大会のふり返りから  これまでの大会後の生徒たちのふり返りからは、「練習の成果を発揮できてよかった」、「もっと練習したいと思った」、「練習通りできなかったけれど、最後までがんばることができた」、「緊張したり思うようにできなかったりしてとてもくやしかった」、「自分の夢について考える機会になった」、「他校の生徒や先輩の姿に感動した」、「自分もやってみたいと思った」などがあげられた。  また教員からは、「できるだけ多くの生徒に経験させたい」、「普段は見せない生徒の真剣な姿を見ることができた」、「生徒の姿から将来に向けてしなければならないことを考えさせられた」、「検定を見た生徒が先輩の言葉づかいやふるまいから、見習うべきところを学んでいた」などがあげられた。  さらに保護者からは、「みんなと一緒に一生懸命パフォーマンスしている姿を見て涙が出た」、「重い障害のある生徒も自分の得意なことや好きなことを表現する場があり、本人の自信につながったと思う」、「審査員との質疑応答は将来の働く力につながる」などがあげられていた。  多くの人の「思い」があふれる大会の成果を、今後日々の教育活動につなぐとともに高等部生徒をロールモデルとした、小・中学部や小中学校等の特別支援学級に在籍する児童生徒の学びや育ちにつなげていくことが期待される。また、企業等の障害者雇用の理解啓発に向けた社会発信もより肝要となるであろう。今後のいっそうの発展が期待される。 (付記)本稿は文献3・4を基に再構成したものである。 図1 2部門6分野の種目を実施 職業技能部門 ・清掃分野 基礎コース:テーブル拭き、自在ぼうき 応用コース:フルエントリー (ダスタークロス、モップ、テーブル拭き) ・接客サービス分野 ・PC入力分野 文字入力、文書作成 ・農業分野 ミニトマト、じゃがいもの選果調整 →10〜1級 コミュニケーション部門 ・プレゼンテーション発表分野 ・パフォーマンス発表分野 →初級、中級、上級 *合理的配慮により、すべての障害種を対象 *評価基準に基づき「級」を認定 ※主催者資料を基に筆者作成 図2 特別支援学校就職サポート隊 あおもりのリーフレット 表1 技能検定発表会の参加生徒数 (人) 検定分野 2016プレ大会 2017第1回大会 2018第2回大会 2019第3回大会 2020第4回大会 2021*第5回大会 2022第6回大会 2023第7回大会 2024第8回大会 清掃 86 110 100 103 124 100 58 95 120 接客サービス 24 31 33 38 33 27 18 9 23 PC入力 28 61 50 56 45 59 42 35 59 農業 − − − − − − − 15 24 プレゼンテーション発表 23 21 19 20 20 10 17 13 5 ポスター発表 12 13 12 8 9 2 0 − − パフォーマンス発表 94 144 125 104 75 75 44 57 53 受検者・発表者計 267 380 339 329 306 273 179 224 284 総参加者数 639 1000 1046 947 881 585 338 747 692 *2021年度は新型コロナウイルス感染症の蔓延状況によりオンライン等による開催 ※主催者資料を基に筆者作成 文献:1.藤川雅人・松見和樹・菊地一文(2016)特別支援学校(知的障害)高等部における技能検定についての調査研究.発達障害研究38(3),314-324 日本発達障害学会. 2.明官茂(2016)平成28年度文部科学省特別支援教育教育課程研究協議会知的障書教育部会助言資料. 3.菊地一文(2016)特別支援学校技能検定の意義とその指導において求められること.実践障害児教育(523)2-5 学研教育出版. 4.菊地一文(2017)夢や志、チャレンジする心を育む「青森県特別支援学校技能検定・発表会」.実践障害児教育(523)2-5 学研教育出版. 写真のキャプション 青森県特別支援学校技能検定・発表会の会場となった「新青森県総合運動公園マエダアリーナ」(青森県青森市) 各校の作業製品が展示され、生徒が取組みについて説明を行った 「青森県特別支援学校技能検定・発表会」開会式の様子 清掃分野「基礎コース」。テーブル拭きの様子 清掃分野「応用コース」。ダスタークロスで床掃除を行う様子 「プレゼンテーション発表分野」。プレゼンテーションソフトを用いて発表を行う 「接客サービス分野」。模擬喫茶店で接客サービスを行う 「パフォーマンス発表分野」。審査員や観客に向けて趣向を凝らしたパフォーマンスを披露する 【P26-27】 省庁だより 農福連携の推進について 農林水産省 農村振興局 都市農村交流課 1 広がりを見せる農福連携  農福連携は、農業と福祉が連携し、障害者の農業分野での活躍を通じて、農業経営の発展とともに、障害者の自信や生きがいを創出し、社会参画を実現する取組です。  農業の労働力確保という課題を抱えている農業・農村分野、障害者の働く場の確保という課題を抱えている福祉分野、その両者が連携することで、双方の課題を解決できるのではないかとの考えから、農福連携の取組が推進されてきており、現在、様々な形で取組が広がっています。  さらに、地域で暮らす一人ひとりの社会参画を図る観点から、農福連携を、ユニバーサルな取組として、障害者のみならず、高齢者、生活困窮者、ひきこもりの状態にある者等の就労・社会参画支援、犯罪をした者等の立ち直り支援等にも対象を広げ、また、その分野も農業のみならず林業や水産業に広げる農福連携等も推進されてきています。  農福連携と聞くと、農業者が障害者を雇用する形、障害者就労施設が農業生産や農産物加工に取り組む形をイメージするのではないかと思いますが、それ以外にも、障害者就労施設が農業者の元に出向き、農作業の一部を請け負う事例、特例子会社が農業に参入する、もしくは地域の農作業を請け負う事例など、地域の実情や課題に則した様々な農福連携の形が生まれてきています。  また、2019(令和元)年に官房長官を議長とする「農福連携等推進会議」において決定された「農福連携等推進ビジョン」に基づき、これまで、@官民が連携する農福連携等応援コンソーシアムが実施するノウフク・アワードの選定・公表による優良事例の横展開、A障害特性等を踏まえた農福連携の実践手法を現場でアドバイスする専門人材の育成、B障害者が農作業を行うために必要な生産施設や休憩所、トイレ等の整備等の支援、を行ってきたところ、農福連携に取り組む主体は、令和2年度からの4年間で3062件増加し、令和5年度末時点で7179件となっており、農福連携の取組は着実に広がっています。 2 農福連携推進の方向性  「農福連携等推進ビジョン」の決定から5年が経過し、農福連携を取り巻く現状や課題が変化していることを踏まえ、2024年に農福連携等推進会議が開催され、「農福連携等推進ビジョン(2024改訂版)」が決定されました。新たなビジョンでは、「地域で広げる」、「未来に広げる」、「絆を広げる」を新たなスローガンとして、政府一体となって、厚生労働省、農林水産省のほか、法務省、文部科学省の関係4省庁で連携して取組を進めていくこととしています。また、新たに、令和12年度末までに農福連携等に取り組む主体数を12000以上、地域協議会に参加する市町村数を200以上とする目標が設定されました。  今後は、新たなビジョンに基づき、@地域協議会等の活動を通じた地域単位での推進体制づくりの後押し、A11月29日を「ノウフクの日」に制定し、企業・消費者も巻き込んだ農福連携等の更なる展開や普及、B世代や障害の有無を超えた多様な者の交流・参画の場としてのユニバーサル農園の普及・拡大などの取組を推進することとしています(図)。 3 農福連携の更なる展開や普及に向けた取組  初めてのノウフクの日となる令和6年11月29日には、総理官邸において、「ノウフクの日」制定記念交流会が開催されたほか、企業をメインターゲットとした「ノウフクの日」制定記念イベントを開催するなど、全国43カ所でノウフクの日の関連イベントが開催されました。また、令和7年1月22日には、農福連携に取り組む団体、企業等の優良事例22団体を農福連携等応援コンソーシアムが主催する「ノウフク・アワード2024」において表彰しました。これまでの5年間で延べ109団体(44都道府県)の優良事例を表彰し、各地に横展開すること等を通じて認知度の向上に努めています。ノウフクの日の制定を契機として、今後も消費者や企業を巻き込みながら、国民的運動として農福連携を推進していきます。  農福連携等応援コンソーシアムでは、農福連携の活動趣旨に賛同し、参加いただける企業・団体の方を随時募集しております。詳細については、農林水産省HPを御確認ください。また、農福連携の推進に向けては、今後も様々な取組を進めてまいりますので、WEBの情報も是非御参照下さい。 農福連携等応援コンソーシアム(農林水産省HP) 農福連携の取組事例(農林水産省HP) 農福連携に関する支援制度(農林水産省HP) 4 農福連携による障害者雇用の事例  農福連携に取り組み、障害者雇用を行っている事例を紹介いたします。ノウフク・アワード2024で準グランプリを受賞された愛知県犬山市の「株式会社ココトモファーム」は、令和元年度に農業法人として設立され、設立当初から農福連携に取り組んでおり、米の生産・加工・販売を一貫して行うとともに、地域内外の企業や障害者就労施設等と連携したバウムクーヘンの開発・販売等を通じて、障害者の働く場を創出しています。障害者雇用に関しては、施設外就労として受け入れていた障害者を正社員として雇用するなどしており、令和5年度では11名の障害者を直接雇用しています。同社では、社内に職場適応援助者養成研修受講者や精神・発達障害者しごとサポーター養成講座受講者を配置し、個々の障害者の能力や適性に応じた作業選定等に取り組んでいるほか、地域内のJAが運営する産直市場に直売所・カフェおよび加工所を併設し、地産地消商品の開発を行うなど、地域の活性化にも取り組んでいます。 図 農福連携等推進ビジョン(2024改訂版)に基づく施策の推進方向について ○「農福連携等推進ビジョン(2024改訂版)」(令和6年6月5日農福連携等推進会議決定)に基づき、「地域で広げる」「未来に広げる」「絆を広げる」を新たなスローガンに、「農福連携等を通じた地域共生社会の実現」を目指して、法務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省が連携した施策を推進。 詳しくはこちら 農福連携等推進ビジョン(2024改訂版)の概要 地域で広げる ●地域協議会や伴走型コーディネーターの活動を通じて、地域単位 の推進体制づくりを後押し ●生産施設等の整備やスマート農業技術等の活用 ●地域での多様な連携やノウフク商品のブランド化 ●現場で農業と福祉をつなぐ専門人材の育成 未来に広げる ●農業の担い手や農業高校の生徒等への普及 ●特別支援学校の実技・実習要望に対する農業者による協力・支援 ●ノウフクの日(11月29日)等による企業・消費者も巻き込ん だ国民的運動の展開 絆を広げる ●社会的に支援が必要な人たちの農業での就労 ●世代や障害の有無を超えた多様な者の交流・参画の場としてのユニバーサル農園の拡大 ●林福・水福連携の推進 農福連携等を通じた地域共生社会の実現 ●地域協議会の体制イメージ 都道府県振興局、市町村、農業・福祉関係者、教育機関等が参画 ●地域協議会で想定される取組 ・農業と福祉のネットワークづくり(交流会、体験会等) ・地域内の農福連携のルールづくり(作業単価の設定等) ・マッチングや農業実習の受入れ ・事業者間で共同した販路開拓 等 ●ユニバーサル農園とは 世代や障害の有無を超えた多様な者の交流・参画、健康増進、生きがいづくり、職業訓練、立ち直りなど、農業体験活動を通じて多様な社会的課題の解決につながる場 KPI 2030年度までに、4省庁が連携して、農福連携等の取組主体数を12,000件以上、地域協議会に参加する市町村数を200以上とする 出典:農林水産省「農福連携をめぐる情勢」https://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/noufuku/attach/pdf/index-5.pdf 写真のキャプション 恵庭市農福連携ネットワーク(北海道) 大隅半島ノウフクコンソーシアム(鹿児島県) NPO法人土と風の舎こえどファーム(埼玉県) 【P28-29】 研究開発レポート 事業主が採用後に障害を把握した発達障害者の就労継続事例等に関する調査研究 障害者職業総合センター研究部門 事業主支援部門 1 はじめに  2005(平成17)年4月の発達障害者支援法の施行にともない、発達障害者に対する支援は充実が図られてきており、職場における課題や継続雇用に向けて講じるべき対処策についての知見は蓄積されつつあるものの、先行研究の多くは、発達障害者として雇用された人を対象としていました。しかしながら、採用後に発達障害であることが事業主に把握された場合に、職場適応上の課題への対応が、新たに求められることもあります。  そこで本調査研究では、事業主が採用後に発達障害であることを把握し、就労継続のために職場適応上の課題解決に取り組んだ事例を通して、発達障害を把握したプロセスや課題解決のプロセスを整理し、採用後に発達障害であることが把握された従業員(以下、「当該従業員」)を雇用する事業主にどのような支援が必要であるかを明らかにすることを目的としました。本稿では、調査研究全体のなかで、企業アンケート調査と企業ヒアリング調査の結果の一部について紹介します。 2 調査方法 (1)企業アンケート調査  2021(令和3)年6月1日現在の障害者雇用状況報告の対象企業10万6921社から、規模×産業×障害者雇用の有無による層化抽出により1万5000社を抽出し、人事・労務管理担当者あてに依頼文を郵送し、Webアンケートフォームにより各社1件の回答を求めました。 (2)企業ヒアリング調査  JEEDの地域障害者職業センター経由で承諾が得られた5社に加え、企業アンケート調査でヒアリングへの対応が可能と回答した51社のうち5社の、計10社に対してヒアリングを実施しました。ヒアリング対象者は、総務担当者、人事担当者、障害者雇用担当者、上司、経営者、社内保健師または社内看護師など、当該従業員の状況をよく知る方々としました。 3 調査結果の概要 (1)企業アンケート調査  3456社から回答を得ました(回収率23.2%)。過去5年程度の間の当該従業員の人数は、「該当者なし」が3143社(約91%)であり、当該従業員が1人以上いるとしたのは、313社(約9%)でした。以下は、当該従業員が1人以上いるとした企業からの回答結果です。  職業生活上の問題(23項目)(図)について、「全く問題がなかった(1点)」、「あまり問題がなかった(2点)」、「やや問題があった(3点)」、「とても問題があった(4点)」として項目ごとに平均点を算出したところ、得点が高い順に「Kマルチタスクが苦手(複数の作業を並行して行うことが困難など)だった」、「P仕事の優先順位を付けられなかった」、「L本人が不注意からミスをしてしまうことが多かった」、「D本人が上司や同僚が言ったことなどをうまく理解できなかった」、「E本人が自分が言いたいことを相手にうまく伝えることができなかった(しゃべりすぎる、情報を伝えすぎる、不適切なことを言うなど)」となっており、これらの5項目に対し、企業が支援や配慮を実施した割合は7割を超えていました。  職業生活上の問題に対する支援や配慮(16項目から複数回答)のうち、企業が実施した割合が高い項目は、「業務指示方法の見直し」(54.8%)、「業務指示や相談に関する担当者の配置」(51.7%)、「職場のルールや迷惑に感じていることを説明し、望ましい対応を伝えた」(51.0%)であり、特に問題を解消した項目として割合が高い項目は、「業務指示方法の見直し」(29.2%)、「本人が遂行可能な職務の創出」(28.8%)、「障害特性上困難な業務(顧客対応や対面業務等)への配慮や工夫、職務内容の見直し」(21.5%)でした。本人が遂行可能な職務を準備し、指示方法の見直しなどを行うことが有効であることが示唆されました。 (2)企業ヒアリング調査 ア 診断・開示に至ったきっかけと経緯  ヒアリングで聴取した10事例のうち5事例は、診断・開示に至った経緯を「職場からの受診勧奨から」としていました。そのなかの1事例は、ストレスチェックで高ストレス者と判定され、本人が産業医の面接指導を希望したことが発端となっており、ほかの4事例は、いずれもほかの従業員との関係に支障を来していた点が共通していました。また別の3事例は、「本人からの自主的な相談から」診断・開示に至ったとしており、そのなかの2事例は、本人が、業務がうまくいかないことに悩み、上司や健康管理室などに相談を持ちかけたものでした。そのほかの2事例は、「本人の心身の不調による勤怠問題から」診断・開示に至っていました。 イ 職業生活上の課題と対応(配慮や工夫)  職業生活上の課題については、作業上またはコミュニケーション上の課題に言及しているものが各8事例で、いずれの課題にも言及していない事例はありませんでした。それ以外には、感情コントロールおよびソフトスキルへの言及が各2事例、気持ちの不安定さおよび出勤の不安定さへの言及が各1事例、対人関係のトラブル(人間関係の拗れ)への言及が4事例ありました。  言及された課題のうち対人関係のトラブルについて、うまくいかないことの原因・理由がわからないまま当該従業員および周囲の従業員の双方が疲弊し修復不能な段階まで拗れてしまうという、障害が把握されていなかったために生じてしまった課題が含まれていました。発達障害と診断され、原因がわかることで周囲の納得や協力が得られることにつながった事例もありましたが、修復不能な段階まで拗れていた場合には、配置転換で環境を変え、新たに人間関係を構築することで対応した事例もありました。 ウ 対応をふり返って(課題、有効な対応方法)  企業で実際に当該従業員と向き合ったヒアリング回答者らの語りのなかには、「根気強く」、「時間をかけて」、「丁寧に」、「寄り添って」、「諦めずに」、「信頼関係の下で」といった言葉が多く聞かれており、こうした姿勢が対応上のポイントになっていたことがうかがえました。また、発達障害者の雇用経験や雇用障害者への対応経験がなかったヒアリング回答者が多く、「手探り」での対応であったことや「手探り」であるがゆえの不安や苦労も語られていました。 4 まとめ  当該従業員が直面する職業生活上の問題は、発達障害者として就職した場合と同様のものでしたが、障害が把握されたのが就職後であったために、業務の調整や周囲の人々との関係の再構築に困難が生じやすいことがうかがわれました。当該従業員に「寄り添い」、「根気強く」、「諦めずに」、「時間をかけて」、「丁寧に」、「信頼関係を築いて」支援や配慮を行っている上司・同僚などが重要な役割を果たしていることがわかりました。こうした方々を支援し、孤立化させないための取組みが重要になると考えられます。  本レポートの元となる調査研究報告書173「事業主が採用後に障害を把握した発達障害者の就労継続事例等に関する調査研究」(※)は障害者職業総合センターホームページからご覧いただけますので、あわせてご活用ください。 図 職業生活上の問題 全く問題がなかった あまり問題がなかった やや問題があった とても問題があった 無回答 n=313 @時間を守ることが難しかった 39.9% 25.2% 17.6% 9.3% 8.0% A衛生面を整えることが難しかった 53.0% 28.1% 8.6% 1.9% 8.3% B仕事をする上で適切な服装をすることが難しかった 55.9% 24.6% 8.9% 1.6% 8.9% Cトイレのマナーを守ることが難しかった 64.5% 25.2% 1.9% 8.3% D本人が上司や同僚が言ったことなどをうまく理解できなかった 14.7% 17.3% 40.3% 19.2% 8.6% E本人が自分が言いたいことを相手にうまく伝えることができなかった 12.5% 21.7% 40.9% 16.0% 8.9% F本人が上司や同僚などの話をうまく聞くことができなかった 16.6% 22.0% 38.0% 14.4% 8.9% G本人が職場の明文化されたルール・規則を守れなかった 30.7% 31.6% 19.2% 9.3% 9.3% H本人が職場の暗黙のルールや場の雰囲気、相手の感情をうまく理解できなかった 21.4% 24.3% 33.2% 12.5% 8.6% Iこだわりが強く、興味や行動が限られた 22.0% 29.4% 27.5% 12.5% 8.6% J興味のない仕事の質や効率が(極端に)低かった 19.5% 30.7% 28.8% 12.1% 8.9% Kマルチタスクが苦手(複数の作業を並行して行うことが困難など)だった 9.6% 14.4% 37.1% 30.7% 8.3% L本人が不注意からミスをしてしまうことが多かった 11.8% 21.7% 36.1% 21.7% 8.6% M本人がやらなければならないことや指示内容を忘れてしまった 15.7% 22.0% 34.8% 18.5% 8.9% N注意の持続が短く、気が散ってしまった 21.4% 27.8% 29.7% 11.8% 9.3% O一つの物事や作業に過度に集中してしまった 19.8% 35.5% 27.8% 7.7% 9.3% P仕事の優先順位を付けられなかった 12.8% 19.5% 36.7% 22.0% 8.9% Q締切に間に合わないことが多かった 19.2% 34.2% 28.8% 8.3% 9.6% R本人が感情的になりやすく、かんしゃくを起こした 39.9% 27.2% 14.7% 8.9% 9.3% S本人と上司や同僚との間で対人トラブルが生じた 27.5% 29.1% 22.0% 12.8% 8.6% 21本人が文字の読み書きをうまくできなかった 50.8% 31.3% 6.7% 1.9% 9.3% 22本人が計算をうまくできなかった 48.9% 30.7% 8.9% 2.6% 8.9% 23本人の勤怠が乱れた 38.3% 24.0% 18.8% 10.5% 8.3% ◇お問合せ先 研究企画部企画調整室 (TEL:043-297-9067 E-mail:kikakubu@jeed.go.jp) ※https://www.nivr.jeed.go.jp/research/report/houkoku/houkoku173.html 【P30】 NEWS FILE ニュースファイル 国の動き 厚生労働省 「現代の名工」障害者部門推薦募集  厚生労働省は、2025(令和7)年度「卓越した技能者(現代の名工)」障害者部門(第22部門)表彰にあたり、国内で第一人者と目されるきわめてすぐれた技能を持ち、活躍する障害者の推薦を募集する。  対象者は、障害者手帳の取得者。被表彰者は、次の@〜Cの全要件を満たしたうえで都道府県知事、全国的な事業主団体等、全国的な障害者団体、個人のいずれかの推薦を受けた者のなかから厚生労働大臣が技能者表彰審査委員の意見に基づき決定する。 @きわめてすぐれた技能を有する者 A現に表彰に係る技能を要する職業に従事している者 B技能を通じて労働者の福祉の増進及び産業の発展に寄与した者 C他の技能者の模範と認められる者  推薦受付けは2025年2月1日〜3月31日。問合せは、厚生労働省人材開発統括官付能力評価担当参事官室(電話03−5253−1111・内線5941、5944)まで。 地方の動き 東京 「障害者の生活実態」調査結果報告書  東京都は、2023(令和5)年度の東京都福祉保健基礎調査「障害者の生活実態」におけるおもな調査結果を報告書としてまとめた。調査対象者は18歳以上の身体障害者4000人、知的障害者1200人、精神障害者1200人および難病患者1200人。  調査内容のうち就労について、知的障害があり仕事をしている人の雇用形態は、「正規の職員・従業員」の割合が37.8%(2018年度調査よりも12.0ポイント増)、「非正規の職員・従業員」の割合が58.6%(同12.4ポイント減)だった。また精神障害があり仕事をしている人の1週間の就労日数は、「5日以上」の割合が72.2%(同14.2ポイント増)だった。また1週間の労働時間は、「30時間以上働いている」の割合が54.9%(同8.4ポイント増)だった。  報告書は、都民情報ルーム(東京都庁第一本庁舎3階南側)で有償頒布(1995円・税別)するほか、福祉局ホームページにも掲載。 東京 「お困りごと解決チャットボット」開設  東京都は、視覚障害や聴覚障害のある人や支援者等から集めた、日常生活での困りごとを乗り越える工夫やノウハウを情報発信するAIチャットボットを開設した。  利用方法は、@東京都の福祉局ホームページ(https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp)のトップページに表示されるふきだしの画像をクリックし、福祉局チャットボットを起動する。A特設サイト「ハートシティ東京」のトップページ(https://www.fukushi1.metro.tokyo.lg.jp/tokyoheart)下部に掲載されているバナーからアクセスする。  例えば、視覚障害者向けに「小銭を管理するときの工夫を知りたい」という質問に対し「小銭スペースが6つに分割されていて、仕分けできる財布を使用することで管理しやすくなります」との回答や、聴覚障害者向けには「タクシーで行き先を伝えるときの工夫を知りたい」との質問に「行き先の住所をメモで伝えています。配車アプリを使用すると、文字入力で行き先を事前に伝えられます」といった回答が出る。 働く 東京 テレワークの企業事例を公開  分身ロボットOriHime(オリヒメ)などの開発・活用事業を行っている「株式会社オリィ研究所」(中央区)は、テレワークに特化した障害のある人のための人材紹介サービス「FフレミーLEMEE」による障害者雇用の企業事例を公開した。  1社目は、IT人材・精神・発達障害のある人を採用し、開発チームが障害のある従業員とともに仕事を進めることで、プロダクトのアクセシビリティに対する意識が向上した。2社目は、週4日のテレワークでも、朝礼や日報、先輩社員の指導、手厚い相談対応で職場定着を徹底的に支援。遠隔でも業務管理が行える体制を整え、グループ内の多様な仕事に対応できる組織へと進化している。3社目は、業務のフォーマット化に取り組み、チャレンジできる人を増やす体制を構築。業務が増えていく過程で、メンバーの成長機会が増えたという。  詳細は同社ホームページへ。https://orylab.com/information/2024/10/23/company-casestudy-of-3startups-on-flemee/ 本紹介 『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に体調管理するための本』  発達障害に特化した就労支援企業「株式会社Kaien(カイエン)」の代表取締役を務める鈴木(すずき)慶太(けいた)さんと、同社の社員で精神保健福祉士の川端(かわばた)大輔(だいすけ)さんが『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に体調管理するための本』(翔泳社刊)を出版した。  本書では、発達障害の症状として体調管理に困難を抱える要因に、感覚過敏や感覚鈍麻からくる体調不良と、多動や不注意、こだわりといった発達障害ゆえに不調を身体に感じるケースをあげる。そこで「睡眠」、「食生活」、「病気」、「健康」、「生活の乱れ」、「メンタル」、「身体性」などの悩みについて具体的な解決策を示し、デジタルを使ったやり方や100円ショップのアイテム活用など、ちょっとした工夫で実践できるアイデアを紹介する。B5変型判180ページ、1760円(税込)。 『発達障害・精神疾患がある子とその家族が もらえるお金・減らせる支出』  日本福祉大学教授の青木(あおき)聖久(きよひさ)さんと、漫画家のかなしろにゃんこ。さんが『発達障害・精神疾患がある子とその家族が もらえるお金・減らせる支出』(講談社刊)を出版した。  発達障害やうつ病、統合失調症などの精神疾患のある子どもとその家族には、経済的な公的支援があるが、自ら申請しなければ受けることができないことから、本書では22歳くらいまでの子とその家族なら受けられる可能性のある経済的支援制度の「仕組み」や「申請方法」を解説。障害者手帳による減免や国や自治体から支給される手当、障害者扶養共済制度、障害年金、医療費のサポート制度なども幅広く紹介している。A5判208ページ、1760円(税込)。 アビリンピック マスコットキャラクター アビリス 2024年度地方アビリンピック開催予定 2月 東京都、滋賀県、京都府、香川県 *開催地によっては、開催日や種目ごとに会場が異なります * は開催終了 地方アビリンピック 検索 ※日程や会場については、変更となる場合があります。 ※全国アビリンピックが11月22日(金)〜11月24日(日)に、愛知県で開催されました。開催の模様は「働く広場」次号(2025年3月号)で特集します。 写真のキャプション 東京 滋賀 京都 香川県 【P31】 ミニコラム 第43回 編集委員のひとこと ※今号の「編集委員が行く」(20〜25ページ)は菊地委員が執筆しています。ご一読ください。 共生社会の実現に向けた「教育」と「産業界」のコラボレーションの重要性 弘前大学教職大学院 教授 菊地一文  我が国では人口減少や少子高齢化が加速し、障害の有無にかかわらず、すべての人が多様性を認め合い、支え合う「共生社会」の実現が喫緊の課題となっている。  特に人口減少や人口流出の先進地域といえる青森県においては、今後これらの課題により相対的に障害のある人の割合が増えていくと予想され、彼らの就労や社会参画は後継者不足問題の解決という視点からも優先して取り組むべき事項といえる。  今回の「青森県特別支援学校技能検定・発表会」の取材を通して、あらためて障害のある生徒が将来の社会的・職業的自立に向けて何かにチャレンジする経験の必要性や、「なぜ・なんのため」、「何を」学ぶのかについて意識化を図り、学校教育において具現化していく必要性、そしてその効果について考えさせられた。  現行の学習指導要領では「我が国の学校教育が長年目指している『生きる力』の育成という目標を、教育課程の編成を通じて具体化し、そうした教育課程に基づく教育活動を通して、児童生徒一人一人に、社会の変化に受身で対応するのではなく、主体的に向き合って関わり合い、自らの可能性を発揮し多様な他者と協働しながら、よりよい社会と幸福な人生を切り拓き、未来の創り手となるために必要な力を育んでいくことである」と示している。  つまり学校内に完結しない教育のあり様が問われており、生徒の「できない」を「できる」にしていくことだけではなく、地域とのかかわりを通して「できる」ことを「活かす」機会をつくり、「手応え」や「達成感」が得られるようにしていくことが肝要となる。  地域や社会、その一つとしての産業界と教育のコラボレーションは不可欠であり、そのいっそうの充実が求められる。 【P32】 掲示板 JEEDメールマガジン 登録受付中!  独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)では、JEEDが全国で実施する高齢者や障害者の雇用支援、従業員の人材育成(職業能力開発)などの情報を、毎月月末に配信しています。 雇用管理や人材育成の「いま」・「これから」を考える人事労務担当者のみなさま、必読! 高齢 定年延長や廃止・再雇用 障害 障害のある従業員の障害新規・継続雇用 求職 ものづくり技能開発・向上の手段 みなさまの「どうする?」に応えるヒントが見つかります! JEED メルマガ で 検索 ※カメラで読み取ったリンク先がhttps://www.jeed.go.jp/general/merumaga/index.htmlであることを確認のうえアクセスしてください。 読者アンケートにご協力をお願いします! 回答はこちらから→ 公式X(旧Twitter)はこちら! 最新号発行のお知らせやコーナー紹介などをお届けします。 @JEED_hiroba 次号予告 ●特集  2024(令和6)年11月22日(金)〜24日(日)に愛知県で開催された第44回全国アビリンピックを取材。各都道府県から出場した選手たちの活躍の様子をレポートします。  また、全国アビリンピックの特集において、アビリンピックの概要や歴史などについて解説するコーナー「アビリンピックについて紹介します!(仮)」もお届けします。 ●特別企画  特別企画として、当機構(JEED)の障害者職業総合センターで発行している障害者雇用を進める際に役立つマニュアルを紹介します。 有料販売終了のお知らせ 2024年12月31日をもって、本誌の有料販売を終了いたしました。 また、本誌はホームページへ掲載しているデジタルブックでもご覧いただけますので、今後とも引き続きご愛読のほどよろしくお願いいたします。 編集委員 (五十音順) 株式会社FVP 代表取締役 大塚由紀子 NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク 副理事・統括施設長 金塚たかし 弘前大学教職大学院 教授 菊地一文 武庫川女子大学 准教授 諏訪田克彦 サントリービバレッジソリューション株式会社 人事本部 副部長 平岡典子 神奈川県立保健福祉大学 名誉教授 松爲信雄 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 筑波大学大学院 教授 八重田淳 国際医療福祉大学 准教授 若林功 あなたの原稿をお待ちしています ■声−−障害者雇用にかかわるお考えやご意見、行事やできごとなどを500字以内で編集部(企画部情報公開広報課)まで。 ●発行−−独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 鈴井秀彦 編集人−−企画部次長 綱川香代子 〒261-8558 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-2 電話 043-213-6200(企画部情報公開広報課) ホームページ https://www.jeed.go.jp メールアドレス hiroba@jeed.go.jp ●編集委託−株式会社労働調査会 〒170-0004 東京都豊島区北大塚2-4-5 電話 03-3915-6401 FAX 03-3918-8618 2月号 令和7年1月25日発行 無断転載を禁ずる ・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。また、本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。 【P33】 (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)各都道府県支部高齢・障害者業務課 所在地等一覧  JEEDでは、各都道府県支部高齢・障害者業務課等において高齢者・障害者の雇用支援のための業務(相談・援助、給付金・助成金の支給、障害者雇用納付金制度に基づく申告・申請の受付、啓発等)を実施しています。 2025年1月25日現在 ホームページはこちら 名称 所在地 電話番号(代表) 北海道支部高齢・障害者業務課 〒063-0804 札幌市西区二十四軒4条1-4-1 北海道職業能力開発促進センター内 011-622-3351 青森支部高齢・障害者業務課 〒030-0822 青森市中央3-20-2 青森職業能力開発促進センター内 017-721-2125 岩手支部高齢・障害者業務課 〒020-0024 盛岡市菜園1-12-18 盛岡菜園センタービル3階 019-654-2081 宮城支部高齢・障害者業務課 〒985-8550 多賀城市明月2-2-1 宮城職業能力開発促進センター内 022-361-6288 秋田支部高齢・障害者業務課 〒010-0101 潟上市天王字上北野4-143 秋田職業能力開発促進センター内 018-872-1801 山形支部高齢・障害者業務課 〒990-2161 山形市漆山1954 山形職業能力開発促進センター内 023-674-9567 福島支部高齢・障害者業務課 〒960-8054 福島市三河北町7-14 福島職業能力開発促進センター内 024-526-1510 茨城支部高齢・障害者業務課 〒310-0803 水戸市城南1-4-7 第5プリンスビル5階 029-300-1215 栃木支部高齢・障害者業務課 〒320-0072 宇都宮市若草1-4-23 栃木職業能力開発促進センター内 028-650-6226 群馬支部高齢・障害者業務課 〒379-2154 前橋市天川大島町130-1 ハローワーク前橋3階 027-287-1511 埼玉支部高齢・障害者業務課 〒336-0931 さいたま市緑区原山2-18-8 埼玉職業能力開発促進センター内 048-813-1112 千葉支部高齢・障害者業務課 〒263-0004 千葉市稲毛区六方町274 千葉職業能力開発促進センター内 043-304-7730 東京支部高齢・障害者業務課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2794 東京支部高齢・障害者窓口サービス課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2284 神奈川支部高齢・障害者業務課 〒241-0824 横浜市旭区南希望が丘78 関東職業能力開発促進センター内 045-360-6010 新潟支部高齢・障害者業務課 〒951-8061 新潟市中央区西堀通6-866 NEXT21ビル12階 025-226-6011 富山支部高齢・障害者業務課 〒933-0982 高岡市八ケ55 富山職業能力開発促進センター内 0766-26-1881 石川支部高齢・障害者業務課 〒920-0352 金沢市観音堂町へ1 石川職業能力開発促進センター内 076-267-6001 福井支部高齢・障害者業務課 〒915-0853 越前市行松町25-10 福井職業能力開発促進センター内 0778-23-1021 山梨支部高齢・障害者業務課 〒400-0854 甲府市中小河原町403-1 山梨職業能力開発促進センター内 055-242-3723 長野支部高齢・障害者業務課 〒381-0043 長野市吉田4-25-12 長野職業能力開発促進センター内 026-258-6001 岐阜支部高齢・障害者業務課 〒500-8842 岐阜市金町5-25 G-frontU7階 058-265-5823 静岡支部高齢・障害者業務課 〒422-8033 静岡市駿河区登呂3-1-35 静岡職業能力開発促進センター内 054-280-3622 愛知支部高齢・障害者業務課 〒460-0003 名古屋市中区錦1-10-1 MIテラス名古屋伏見4階 052-218-3385 三重支部高齢・障害者業務課 〒514-0002 津市島崎町327-1 ハローワーク津2階 059-213-9255 滋賀支部高齢・障害者業務課 〒520-0856 大津市光が丘町3-13 滋賀職業能力開発促進センター内 077-537-1214 京都支部高齢・障害者業務課 〒617-0843 長岡京市友岡1-2-1 京都職業能力開発促進センター内 075-951-7481 大阪支部高齢・障害者業務課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0782 大阪支部高齢・障害者窓口サービス課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0722 兵庫支部高齢・障害者業務課 〒661-0045 尼崎市武庫豊町3-1-50 兵庫職業能力開発促進センター内 06-6431-8201 奈良支部高齢・障害者業務課 〒634-0033 橿原市城殿町433 奈良職業能力開発促進センター内 0744-22-5232 和歌山支部高齢・障害者業務課 〒640-8483 和歌山市園部1276 和歌山職業能力開発促進センター内 073-462-6900 鳥取支部高齢・障害者業務課 〒689-1112 鳥取市若葉台南7-1-11 鳥取職業能力開発促進センター内 0857-52-8803 島根支部高齢・障害者業務課 〒690-0001 松江市東朝日町267 島根職業能力開発促進センター内 0852-60-1677 岡山支部高齢・障害者業務課 〒700-0951 岡山市北区田中580 岡山職業能力開発促進センター内 086-241-0166 広島支部高齢・障害者業務課 〒730-0825 広島市中区光南5-2-65 広島職業能力開発促進センター内 082-545-7150 山口支部高齢・障害者業務課 〒753-0861 山口市矢原1284-1 山口職業能力開発促進センター内 083-995-2050 徳島支部高齢・障害者業務課 〒770-0823 徳島市出来島本町1-5 ハローワーク徳島5階 088-611-2388 香川支部高齢・障害者業務課 〒761-8063 高松市花ノ宮町2-4-3 香川職業能力開発促進センター内 087-814-3791 愛媛支部高齢・障害者業務課 〒791-8044 松山市西垣生町2184 愛媛職業能力開発促進センター内 089-905-6780 高知支部高齢・障害者業務課 〒781-8010 高知市桟橋通4-15-68 高知職業能力開発促進センター内 088-837-1160 福岡支部高齢・障害者業務課 〒810-0042 福岡市中央区赤坂1-10-17 しんくみ赤坂ビル6階 092-718-1310 佐賀支部高齢・障害者業務課 〒849-0911 佐賀市兵庫町若宮1042-2 佐賀職業能力開発促進センター内 0952-37-9117 長崎支部高齢・障害者業務課 〒854-0062 諫早市小船越町1113 長崎職業能力開発促進センター内 0957-35-4721 熊本支部高齢・障害者業務課 〒861-1102 合志市須屋2505-3 熊本職業能力開発促進センター内 096-249-1888 大分支部高齢・障害者業務課 〒870-0131 大分市皆春1483-1 大分職業能力開発促進センター内 097-522-7255 宮崎支部高齢・障害者業務課 〒880-0916 宮崎市大字恒久4241 宮崎職業能力開発促進センター内 0985-51-1556 鹿児島支部高齢・障害者業務課 〒890-0068 鹿児島市東郡元町14-3 鹿児島職業能力開発促進センター内 099-813-0132 沖縄支部高齢・障害者業務課 〒900-0006 那覇市おもろまち1-3-25 沖縄職業総合庁舎4階 098-941-3301 【裏表紙】 作品募集! 令和7年度 「絵画コンテスト 働くすがた〜今そして未来〜」「写真コンテスト 職場で輝く障害者〜今その瞬間〜」  毎年9月1日〜30日は、「障害者雇用支援月間」です。国民のみなさまに障害者雇用への理解と関心を深めていただけるよう、障害のある児童・生徒や働く障害のある方々をおもな対象に「働くこと」をテーマとする「絵画コンテスト 働くすがた〜今そして未来〜」と、障害のある方の仕事をテーマとする「写真コンテスト 職場で輝く障害者〜今その瞬間〜」を実施します。厚生労働大臣賞受賞作品は、障害者雇用支援月間ポスターに使用し、全国のハローワークなどに掲示します。ここでは、令和6年度高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長賞受賞作品をご紹介します。 募集期間 3/1(土)〜6/16(月) 当日消印有効 詳しくは2月以降にJEED ホームページに掲載する募集要項をご覧ください。 https://www.jeed.go.jp/disability/activity/contest/index.html ★過去のポスターや入賞作品などもご覧いただけます。 JEED 絵画写真 検索 【絵画コンテスト】中学生の部 「タイヤ交換」 渡邉 佳那多さん(長野県) 長野県長野ろう学校3年 【絵画コンテスト】小学生の部 「にじいろドーナツがおすすめですのドーナツやさん」 石津谷 和尊さん(静岡県) 静岡県浜松市立雄踏小学校2年 【写真コンテスト】 「入社2週目!マシンについて勉強中」 田中 彩賀さん(岡山県) 株式会社グロップサンセリテ 【絵画コンテスト】高校生・一般の部 「工事、着々と」 杉本 有里さん(静岡県) お問合せ先 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 障害者雇用開発推進部 雇用開発課 TEL 043-297-9515 Email tkkike@jeed.go.jp 写真コンテストは、プロのカメラマン以外の方であればどなたでもご応募いただけます。 シンボルキャラクター“ピクチャノサウルス” (かおはカメラ、つのは絵筆をイメージしています) たくさんのご応募お待ちしています。 2月号 令和7年1月25日発行 通巻568号(毎月1回25日発行)