省庁だより 農福連携の推進について 農林水産省 農村振興局 都市農村交流課 1 広がりを見せる農福連携  農福連携は、農業と福祉が連携し、障害者の農業分野での活躍を通じて、農業経営の発展とともに、障害者の自信や生きがいを創出し、社会参画を実現する取組です。  農業の労働力確保という課題を抱えている農業・農村分野、障害者の働く場の確保という課題を抱えている福祉分野、その両者が連携することで、双方の課題を解決できるのではないかとの考えから、農福連携の取組が推進されてきており、現在、様々な形で取組が広がっています。  さらに、地域で暮らす一人ひとりの社会参画を図る観点から、農福連携を、ユニバーサルな取組として、障害者のみならず、高齢者、生活困窮者、ひきこもりの状態にある者等の就労・社会参画支援、犯罪をした者等の立ち直り支援等にも対象を広げ、また、その分野も農業のみならず林業や水産業に広げる農福連携等も推進されてきています。  農福連携と聞くと、農業者が障害者を雇用する形、障害者就労施設が農業生産や農産物加工に取り組む形をイメージするのではないかと思いますが、それ以外にも、障害者就労施設が農業者の元に出向き、農作業の一部を請け負う事例、特例子会社が農業に参入する、もしくは地域の農作業を請け負う事例など、地域の実情や課題に則した様々な農福連携の形が生まれてきています。  また、2019(令和元)年に官房長官を議長とする「農福連携等推進会議」において決定された「農福連携等推進ビジョン」に基づき、これまで、@官民が連携する農福連携等応援コンソーシアムが実施するノウフク・アワードの選定・公表による優良事例の横展開、A障害特性等を踏まえた農福連携の実践手法を現場でアドバイスする専門人材の育成、B障害者が農作業を行うために必要な生産施設や休憩所、トイレ等の整備等の支援、を行ってきたところ、農福連携に取り組む主体は、令和2年度からの4年間で3062件増加し、令和5年度末時点で7179件となっており、農福連携の取組は着実に広がっています。 2 農福連携推進の方向性  「農福連携等推進ビジョン」の決定から5年が経過し、農福連携を取り巻く現状や課題が変化していることを踏まえ、2024年に農福連携等推進会議が開催され、「農福連携等推進ビジョン(2024改訂版)」が決定されました。新たなビジョンでは、「地域で広げる」、「未来に広げる」、「絆を広げる」を新たなスローガンとして、政府一体となって、厚生労働省、農林水産省のほか、法務省、文部科学省の関係4省庁で連携して取組を進めていくこととしています。また、新たに、令和12年度末までに農福連携等に取り組む主体数を12000以上、地域協議会に参加する市町村数を200以上とする目標が設定されました。  今後は、新たなビジョンに基づき、@地域協議会等の活動を通じた地域単位での推進体制づくりの後押し、A11月29日を「ノウフクの日」に制定し、企業・消費者も巻き込んだ農福連携等の更なる展開や普及、B世代や障害の有無を超えた多様な者の交流・参画の場としてのユニバーサル農園の普及・拡大などの取組を推進することとしています(図)。 3 農福連携の更なる展開や普及に向けた取組  初めてのノウフクの日となる令和6年11月29日には、総理官邸において、「ノウフクの日」制定記念交流会が開催されたほか、企業をメインターゲットとした「ノウフクの日」制定記念イベントを開催するなど、全国43カ所でノウフクの日の関連イベントが開催されました。また、令和7年1月22日には、農福連携に取り組む団体、企業等の優良事例22団体を農福連携等応援コンソーシアムが主催する「ノウフク・アワード2024」において表彰しました。これまでの5年間で延べ109団体(44都道府県)の優良事例を表彰し、各地に横展開すること等を通じて認知度の向上に努めています。ノウフクの日の制定を契機として、今後も消費者や企業を巻き込みながら、国民的運動として農福連携を推進していきます。  農福連携等応援コンソーシアムでは、農福連携の活動趣旨に賛同し、参加いただける企業・団体の方を随時募集しております。詳細については、農林水産省HPを御確認ください。また、農福連携の推進に向けては、今後も様々な取組を進めてまいりますので、WEBの情報も是非御参照下さい。 農福連携等応援コンソーシアム(農林水産省HP) 農福連携の取組事例(農林水産省HP) 農福連携に関する支援制度(農林水産省HP) 4 農福連携による障害者雇用の事例  農福連携に取り組み、障害者雇用を行っている事例を紹介いたします。ノウフク・アワード2024で準グランプリを受賞された愛知県犬山市の「株式会社ココトモファーム」は、令和元年度に農業法人として設立され、設立当初から農福連携に取り組んでおり、米の生産・加工・販売を一貫して行うとともに、地域内外の企業や障害者就労施設等と連携したバウムクーヘンの開発・販売等を通じて、障害者の働く場を創出しています。障害者雇用に関しては、施設外就労として受け入れていた障害者を正社員として雇用するなどしており、令和5年度では11名の障害者を直接雇用しています。同社では、社内に職場適応援助者養成研修受講者や精神・発達障害者しごとサポーター養成講座受講者を配置し、個々の障害者の能力や適性に応じた作業選定等に取り組んでいるほか、地域内のJAが運営する産直市場に直売所・カフェおよび加工所を併設し、地産地消商品の開発を行うなど、地域の活性化にも取り組んでいます。 図 農福連携等推進ビジョン(2024改訂版)に基づく施策の推進方向について ○「農福連携等推進ビジョン(2024改訂版)」(令和6年6月5日農福連携等推進会議決定)に基づき、「地域で広げる」「未来に広げる」「絆を広げる」を新たなスローガンに、「農福連携等を通じた地域共生社会の実現」を目指して、法務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省が連携した施策を推進。 詳しくはこちら 農福連携等推進ビジョン(2024改訂版)の概要 地域で広げる ●地域協議会や伴走型コーディネーターの活動を通じて、地域単位 の推進体制づくりを後押し ●生産施設等の整備やスマート農業技術等の活用 ●地域での多様な連携やノウフク商品のブランド化 ●現場で農業と福祉をつなぐ専門人材の育成 未来に広げる ●農業の担い手や農業高校の生徒等への普及 ●特別支援学校の実技・実習要望に対する農業者による協力・支援 ●ノウフクの日(11月29日)等による企業・消費者も巻き込ん だ国民的運動の展開 絆を広げる ●社会的に支援が必要な人たちの農業での就労 ●世代や障害の有無を超えた多様な者の交流・参画の場としてのユニバーサル農園の拡大 ●林福・水福連携の推進 農福連携等を通じた地域共生社会の実現 ●地域協議会の体制イメージ 都道府県振興局、市町村、農業・福祉関係者、教育機関等が参画 ●地域協議会で想定される取組 ・農業と福祉のネットワークづくり(交流会、体験会等) ・地域内の農福連携のルールづくり(作業単価の設定等) ・マッチングや農業実習の受入れ ・事業者間で共同した販路開拓 等 ●ユニバーサル農園とは 世代や障害の有無を超えた多様な者の交流・参画、健康増進、生きがいづくり、職業訓練、立ち直りなど、農業体験活動を通じて多様な社会的課題の解決につながる場 KPI 2030年度までに、4省庁が連携して、農福連携等の取組主体数を12,000件以上、地域協議会に参加する市町村数を200以上とする 出典:農林水産省「農福連携をめぐる情勢」https://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/noufuku/attach/pdf/index-5.pdf 写真のキャプション 恵庭市農福連携ネットワーク(北海道) 大隅半島ノウフクコンソーシアム(鹿児島県) NPO法人土と風の舎こえどファーム(埼玉県)