【表紙】 令和6年6月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第561号 ISSN 0386-0159 障害者と雇用 2024/7 No.561 職場ルポ 効率的な分業、特性に応じた支援で戦力化 四国管財株式会社(高知県) グラビア 毎日やりがい感じる。働けることがうれしい 株式会社ワイビーエム(佐賀県) 編集委員が行く 職業能力開発校における 発達障害者と精神障害者への職業訓練 東京障害者職業能力開発校(東京都)、石川県立金沢産業技術専門校(石川県) メダリストを訪ねて 〜第10回国際アビリンピック〜 「不向きだった」ネイル施術、日々の積み重ねが結果に ネイリスト種目銀メダリスト 山下加代さん 「生きものの仕事」東京都・山本(やまもと)興忠(おきただ)さん 読者アンケートにご協力をお願いします! 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) Japan Organization for Employment of the Elderly, Persons withD isabilities and Job Seekers 7月号 【前頁】 心のアート シリーズ工作 たくま (一般社団法人アートスペースからふる) 素材:画用紙、色画用紙/サイズ:縦25.7cm×横36.4cm  2023(令和5)年制作。短冊状の色画用紙を切って両面テープで貼りつけた作品。同様の手法で100枚以上の作品を制作している。「一列は同じ色で統一したい」といったこだわりがある。使用する色画用紙の枚数が年々多くなり、現在は鱗うろこのようになっている。 (文:一般社団法人アートスペースからふる 妹尾(せのお)恵依子(えいこ)) たくま  1999(平成11)年生まれ。ほとんど絵を描いたことがなかったが、描くことに次第に慣れ、色とりどりの円の作品や貼り絵、ほかにも勢いのある良い字で「書」の作品も制作している。 【もくじ】 障害者と雇用 目次 2024年7月号 NO.561 「働く広場」は、障害者雇用の啓発・広報を目的として、ルポルタージュやグラビアなど写真を多く用いて、障害者雇用の現場とその魅力をわかりやすくお伝えします。 心のアート 前頁 シリーズ工作 作者:たくま(一般社団法人アートスペースからふる) メダリストを訪ねて 〜第10回国際アビリンピック〜 2 最終回 「不向きだった」ネイル施術、日々の積み重ねが結果に ネイリスト種目銀メダリスト 山下加代さん 文:豊浦美紀/写真:官野 貴 職場ルポ 6 効率的な分業、特性に応じた支援で戦力化 四国管財株式会社(高知県) 文:豊浦美紀/写真:官野 貴 JEEDインフォメーション 12 令和6年度 就業支援実践研修のご案内/令和6年度「地方アビリンピック」開催地一覧/障害者職業総合センター職業センター 2023(令和5)年度成果物のご案内 グラビア 15 毎日やりがい感じる。働けることがうれしい 株式会社ワイビーエム(佐賀県) 写真/文:官野 貴 エッセイ 19 てんかんとともに 第1回 彩りのある楽園をつくっていく 楽園画家 長沼 慧 編集委員が行く 20 職業能力開発校における発達障害者と精神障害者への職業訓練 東京障害者職業能力開発校(東京都)、石川県立金沢産業技術専門校(石川県) 編集委員 若林 功 クローズアップ 26 障害のある人とスポーツ(最終回) 〜だれもがスポーツを楽しめる社会に向けて〜 研究開発レポート 28 テレワークにおける職場適応のための支援技法の開発 障害者職業総合センター職業センター ニュースファイル 30 編集委員のひとこと 31 掲示板・次号予告 32 読者の声 ※「省庁だより」は休載します 表紙絵の説明 「危険な生きものが好きなので描きました。すみずみまでクレヨンで色を塗るのがたいへんでしたが、図かんで生きものを見ながら描けたので楽しかったです。いまも生きものが好きで、たくさん動物園や水族館に行っています。将来は、危険な生きものの毒やかみつくことなどの危険性を知って、人を助けたいです」 (令和5年度 障害者雇用支援月間絵画コンテスト 小学校の部 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長奨励賞) ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。 (https://www.jeed.go.jp/disability/data/works/index.html) 【P2-5】 メダリストを訪ねて 〜第10回国際アビリンピック〜 最終回 「不向きだった」ネイル施術、日々の積み重ねが結果に ネイリスト種目銀メダリスト 山下加代さん (株式会社JALサンライト勤務) やました・かよ 1983(昭和58)年、北海道生まれ。23歳のときに関節リウマチと診断される。2010(平成22)年、ヒューマンアカデミー札幌校ネイリストプロフェッショナルコース卒業。2019年、第39回全国アビリンピック(愛知県)のネイル施術種目で金賞。2021(令和3)年、株式会社JALサンライト入社。2023年、第10回国際アビリンピックフランス・メッス大会のネイリスト種目で銀賞受賞。  2023(令和5)年3月、フランスのメッス市で開催された「第10回国際アビリンピック」には、日本選手30人が17種目に出場、8人がメダルを獲得した(※1)。  最終回は、ネイリスト種目で銀メダルを手にした山下(やました)加代(かよ)さん(東京都)に、独自の工夫や職場経験などを活かして結果につなげたこれまでをふり返っていただいた。 (文)豊浦美紀 (写真)官野貴 23歳のときに診断 ――山下さんがネイリストになったきっかけや経緯を教えてください。 山下 私は北海道に住んでいた高校3年生のとき、急に肩やほかの部位が痛くなり、医師からは原因不明といわれ続けて、病院をいくつも転々としました。高校卒業後も、体の痛みを抱えながら通常の社会生活を送ることはむずかしく、短時間のアルバイトをくり返す日々でした。そうして6年ほど経った23歳のとき、ようやく北海道大学病院で関節リウマチと診断されました。その後に障害者手帳を取得しています。  投薬治療によって症状が少しずつやわらいできた私は、きちんと働きたいと思うようになりました。何かスキルを身につけたいと資格取得のための学校へ見学に行き、そこでネイル施術に出会いました。もともと創作という分野が好きだった私は当時、実演してくださった先生のスムーズな動きを見て「私にもできるかもしれない」と勘違いをしてしまったように思います。その後、ネイルサロンで働くために必要なネイリスト技能検定2級合格を目ざし、週1回の講座に2年ほど通いました。  実際に学び始めてから認識したのが「ネイル施術は、私の体の障がいには不向きだ」ということでした。手に腫(は)れがあるうえに関節が不自由なため、繊細な動きができないからです。それでも私は、指の力の入れ具合や、施術する手首の角度を調節して自然に誘導する方法などを研究し、何回も自分の動きを録画し、それを見直して修正しました。自宅で1日12時間連続で練習をしたこともあります。結果的に、ほかの人より何倍も練習していたことになり、そこで障がいのハンディキャップをカバーできていたのかなと思っています。  ただ、無事に資格は取ったものの、仕事としてネイル施術をすることに不安を感じていました。そこで私はいったんネイルから離れ、就労継続支援A型事業所の施設外就労として、飲食店でホールと接客の業務に取り組みました。数年後、再び「このままでいいのだろうか」と思い悩んだ末、ハローワークに行ったところ、ちょうど障がい者雇用の求人を出していた札幌のネイルサロンを見つけ、採用されました。 アビリンピックに出場し、決心 ――どのようにしてアビリンピック(※2)に挑戦することになったのですか。 山下 アビリンピック自体も知らなかった私が出場することになったきっかけは、お客さまとしてネイルサロンに来ていた独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の職員の方のひと言でした。その日はたまたまサロンでその方と2人きりだったので、自分の障がいのことなどを話したところ、「アビリンピックにネイル施術種目が加わるので挑戦してみませんか」とすすめられたのです。  じつはその話を聞いたとき、私は2年近く働いたサロンの退職を決めたところでした。ほかのスタッフと比べ、作業に時間がかかることに自信をなくし始めていたのです。私は「結果が出なかったらネイルの仕事を辞めよう」という覚悟で、アビリンピックへの挑戦を決めました。  サロン退職後は時間がたっぷりあったので、事前に公表された課題内容に沿って、また、ネイリスト検定の内容とも照らし合わせて忠実に練習しました。迎えた本番の第39回全国アビリンピック(愛知県)で金賞がとれたときは、講評のなかで審査員の方から「サロンワークに近いやり方で大丈夫ですよ」との助言も受け、「検定とは違い、あくまで仕事の技術力が問われているのだ」と気づかされました。私はネイルの仕事を続けることを決心し、故郷の北海道で1年間準備してネイルサロンを開業しました。 JALサンライトでネイルサロン立ち上げ ――その後、株式会社JALサンライト(以下、「JALサンライト」)に入社されたのですね。 山下 すでに常連のお客さまがいて、お店のチラシもつくり本格的に取り組もうとした矢先、アビリンピックの成績を見たJALサンライトから連絡がありました。地元のお客さま一人ひとりにご理解いただいたものの、それでも申し訳ない気持ちがあり悩みましたが、障がいのある人で実務経験のあるネイリストが少ない現状も知っていたので、業界全体のためにと思い上京を決めました。2021(令和3)年3月の社内ネイルサロン立ち上げに向け、一緒に入社した坂角(さかずみ)ゆかりさん(※3)と2人でゼロからつくりあげていきました。  羽田空港の近くにあるJAL施設内にオープンしたのですが、コロナ禍の制約のなか、施術を受けに来る社員もかぎられていました。いまでは成田空港や本社にもサロンができ、ネイリストは4人に増えました。社員から「なかなか予約できないね」といわれるほど稼働率が高く、お礼の声を聞くと、一定の役割を果たせているようで、うれしくなります。 社員が競技内容を翻訳 ――第10回国際アビリンピック「ネイリスト」種目の代表選手には、第41回全国アビリンピックで金賞受賞後にJALサンライトに入社した荒山(あらやま)美夢(みむ)さんと2人が選ばれました。その後は、どのように準備されましたか。 山下 国際アビリンピックについて何もわからなかったところ、JEEDから過去の国際アビリンピックの様子などを細かく教えてもらい、「国際大会では事前課題からの変更があるのが当然で、その対応力が求められる」、「選手が持ち込む器具や資材についても、主催者指定の範囲に限定せず思いつくかぎりのものを持参したほうがよい」といったアドバイスが役立ちました。強化練習の機会もつくっていただき、全国アビリンピックの専門委員を務める大江(おおえ)身奈(みな)先生に海外向けの表現方法などを教わりました。ただ、当時の自分は日々の仕事のほうで手いっぱいで、アドバイスを十分に消化する心の余裕がなかったというのが本音です。  職場からのサポートとして一番助けられたのは、翻訳です。本番課題の最終的な翻訳文は渡仏直前までもらうことができませんでしたが、その前に、国際アビリンピックのホームページに掲載されている英文の説明を、語学堪能(たんのう)な社員が訳してくれました。また、サロンの予約が入っていない時間は練習時間にあてさせてもらえたこともありがたかったです。また競技に向けて渡仏してからも、JALサンライト前社長の宮坂(みやさか)久美子(くみこ)さんから激励の連絡をいただき、現社長の城田(しろた)純子(じゅんこ)さんたちが会場に応援に来てくださったのも心強かったです。 競技でも“お客さまを優先” ――国際大会での実際の競技は、いかがでしたか。 山下 ネイル施術は3課題あって、それぞれ120分、80分、80分だったのですが、競技前日の説明会で120分の課題にハンドマッサージが加えられたことを知りました。組み立てていた競技の流れがガラリと変わってしまう大きな変更点で、時間配分に苦労しましたね。一方で、札幌のネイルサロンで働いていたときにハンドマッサージのようなメニューもこなしていたので、その経験を活かすことができました。  メイン課題のネイルアートのテーマは競技前日、事前に示されていた3候補のなかから「トロピカル」と発表されました。競技中は写真やイラストなどを掲げて制作するきまりになっていたので、テーマ発表後に宿泊ホテルの近くのショッピングセンターに駆け込んで絵の具や筆を購入し、即興でイメージイラストを描きました。私は幼少期からエメラルドグリーンの海やイルカが好きだったので、それをモチーフにしました。  当日は、主催者が手配したネイルモデルの方の手から少し血が出ていたり爪が折れていたりするなど、施術しにくい条件が重なり落ち込みましたが、「やれることをやるしかない」と覚悟を決めました。さらに競技途中にはモデルの方が「腕が痛い」というので、「いま使用している台の幅を広げれば腕の痛みが和らぐと思う」と審査員に提案しました。施術するうえでは非常に不利な提案でしたが、お客さまであるモデルの方を優先するほうが大事だと考えたからです。審査員の方たちも迅速に動いてくださり、ティッシュボックスにタオルを巻いたもので台の幅を広げました。  そんなハプニングも乗り越えて銀賞を獲得できたのは、日々、ネイル施術の仕事を一生懸命に続け、スキルを積み重ねてきた結果だと実感しています。やはり最後に頼れるのは、それまでの経験に尽きると思っています。そういう意味では「私はまだ銀賞」ともいえるかもしれません。 ほかの選手に励まされる ――アビリンピックを通して印象に残ったこと、今後の目標について教えてください。 山下 これまでをふり返ると、初めて出場した全国アビリンピックの会場でほかの選手たちを見て、「こんなにがんばっている人たちがいたのか」と驚いたのを覚えています。私など比べものにならないほど、ハードルが高い競技に何年も立ち向かい続けている選手がたくさんいることを知り、逆に自分自身が奮い立たされ、励まされました。  国際アビリンピック後は、新たな社内育成にもたずさわらせてもらっています。JALサンライトで知的障がいのあるスタッフに、ネイルの基礎的なスキル研修を行っています。研修を受けた数人はさっそく、ファミリーデーや見学ツアーといった社内イベントのネイル体験会で来場者に施術してくれています。私自身も引き続きスキルを磨きながら、施術や指導などを通じて、少しでも職場や社会のお役に立っていきたいと思っています。  今後の目標は「安定感を持って施術していく」に尽きます。日々の仕事での積み重ねが私にとっては重要であり、技術者・専門職として求められていることだと再認識しています。 ――最後に、アビリンピックに関心のある人たちへのメッセージをお願いします。 山下 これまで経験してきて、アビリンピックというのはとても大がかりで、審査基準も厳しい、高レベルな大会なのだと実感しています。障がいの有無に関係なく多くの人に興味を持っていただけたらと思います。  私自身は、アビリンピックをきっかけにネイルの仕事というものを大切に思えるようになったのだと思います。自分の実力を測るだけではなく、ほかの選手のがんばる姿を見ることで励まされ、大きな刺激にもなります。いくつになっても本人のやる気さえあれば出場できますので、興味のある方はまずアビリンピックのホームページ(※2)を見て、ぜひ一歩ふみ出してみてください。 職場の方より 株式会社JALサンライト マーケティング企画室 北村(きたむら)克紀(かつのり)さん  アビリンピックは職業能力の大会ですから、働くなかで高めてきたスキルを競い合い、そこでの経験をまた職場で活かしていくPDCAサイクル(※4)のよい場だと思います。  山下さんは、持ち前の集中力と探求心を活かしながら、日ごろの顧客への施術という仕事を着実に積み重ねていったことが、銀賞につながったと感じています。今後は育成者の立場でも活躍することを期待しています ※1 本誌2023年6月号で「第10回国際アビリンピック」を特集 しています。 https://www.jeed.go.jp/disability/data/works/202306.html ※2 https://www.jeed.go.jp/disability/activity/abilympics/index.html ※3 坂角さんは2023年の第43回全国アビリンピック(愛知県)で金賞受賞 ※4 PDCAサイクル:Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)をくり返しながら業務改善をはかる方法 (注)所属先、役職など、記載した内容は取材日時点(2024年4月)のものです ★本誌では通常「障害」と表記しますが、株式会社JALサンライト様のご意向により「障がい」としています 写真のキャプション JAL本社内のサロンで施術を行う山下加代さん 第10回国際アビリンピックにおいて課題に取り組む山下さん(右) 関係者が寄せ書きをした国旗とともに競技に臨んだ 銀賞に輝いた山下さん(左)、同僚の荒山美夢さん(右)は銅賞を受賞した 第10回国際アビリンピックで山下さんが獲得した銀メダル 【P6-11】 職場ルポ 効率的な分業、特性に応じた支援で戦力化 ―四国管財株式会社(高知県)― 病院の清掃業務などをになう職場では、従業員の特性を活かした分業と戦力化、家庭との連携などによって、安心して働きやすい環境づくりを目ざしている。 (文)豊浦美紀 (写真)官野 貴 取材先データ 四国管財株式会社 〒780-0833 高知県高知市南はりまや町2-4-15 TEL 088-884-3777 FAX 088-883-0872 Keyword:知的障害、精神障害、聴覚障害、病院、清掃、分業、ミーティング、コミュニケーション POINT 1 作業負担の高い清掃業務を分業、効率化と戦力化を図る 2 家庭との緊密な連携、こまやかな声がけが安心感に 3 独自の報・連・相システムで働きやすい環境づくり ビルメンテナンスからハト対策まで  高知県高知市に本社を構える「四国管財株式会社」(以下、「四国管財」)は、1962(昭和37)年の設立以来、ビルメンテナンスから病院サポート業務、マンション管理、害虫駆除、ハト対策まで幅広い事業を展開してきた。なかでも病院現場の清掃・衛生管理業務には、2000(平成12)年ごろから障害のある従業員もたずさわるようになり、大事な戦力として定着しているという。  いまでは従業員340人のうち障害のある従業員は8人(身体障害3人、知的障害3人、精神障害2人)で、障害者雇用率は2.79%(2023〈令和5〉年6月1日現在)にのぼるそうだ。  今回は、取引先の病院現場で働く従業員のみなさんを中心に、四国管財の社風を活かした障害者雇用の取組みについて紹介していきたい。 1日150枚のダスター洗浄  JR高知駅から徒歩5分、街なかの川沿いにある「社会医療法人近森(ちかもり)会近森病院」は、年間の救急車搬入が約7千件超という地域の中核病院だ。ここで四国管財は、クラークやアテンダント、警備、清掃、設備管理などの業務を請け負い、180人ほどの従業員が働いている。  このうち清掃部門(約70人)には障害のある従業員3人が所属している。四国管財の事業部第1事業課長とお客様係を務める筒井(つつい)潤(じゅん)さんに職場を案内してもらった。ちなみに四国管財では、代表取締役社長の森下(もりした)幸雄(ゆきお)さんをはじめ、主要な管理職は「お客様係」の肩書きも持っているそうだ。  最初に見学させてもらったのは、同病院の職員と四国管財の従業員の休憩場所や事務所が入っている病院管理棟。1階の敷地内に、ずらりと洗濯機が並ぶ一角がある。院内の清掃で使われたダスタークロスを洗浄している場所で、毎日150枚ほどが集まってくるという。ここでの作業は、業務用の掃除機で小さなごみなどを吸い取り、消毒液につけ込んだあと、洗濯機で洗ってから干していくという流れだ。  テーブルに乗せたダスタークロスに、1枚ずつ掃除機ノズルをあてて吸引作業をしていたのは山ア(やまさき)功喜(こうき)さん(23歳)。特別支援学校2年次、3年次の職場実習を経て2019年に入社した。学校の先生から四国管財に、「会話はむずかしいが、いわれたことはしっかりやれる生徒です」との推薦があったそうだ。  事業部第1事業課主任の中平(なかひら)美香(みか)さんは、実習生の指導をするなかで「一度教えた作業のやり方を守っていた山アさんの様子を見て、少しずつ作業の幅を広げても大丈夫だと感じました」とふり返る。  「食堂の掃除でテーブル拭きまでこなしたので、次にベッドメイキングなども試したところ、ペアを組めばできるとわかりました。双方向の会話がむずかしいので、一緒に組む人との息が合うかどうかがポイントでした」  この日も、ダスター洗浄作業を終えた山アさんは、先輩従業員と一緒に院内にある宿直室の清掃に向かった。先輩の声がけに合わせて黙々とシーツ交換をする姿に、筒井さんは「教えた作業を忘れず、いつもきっちり取り組むので驚かされます。大事な業務を任せられる、大事な戦力であることは間違いありません」と教えてくれた。 なくてはならない戦力  病院本館1階に併設されている医療廃棄物の回収場所では、水拭き掃除に使われるモップの先の替え糸部分の洗浄作業が行われていた。中平さんによると「各現場で使った従業員が、それぞれ消毒液入りの大きな専用器に入れていきます。それを担当者が引き上げ、高圧洗浄ホースを使って一つひとつ汚れを洗い落とし、洗濯機と脱水機を経たものを、棚に重ねていきます。1日300〜500枚ほど、干す間もなくどんどん使われます」とのことだ。  長靴を履き防水エプロンなどで身を固め、てきぱきと洗浄作業をしていたのは半田(はんだ)育大(いくひろ)さん(35歳)。入社13年になるベテランだ。  朝7時半に出勤し、病院職員向けの食堂や休憩所の清掃を担当したあと、休憩をはさみ15時半までモップの洗浄作業に従事している。以前は、南国市内の福祉作業所に通い、菓子箱の組立て作業に取り組んでいたそうだ。  仕事でたいへんなことは「ないです」と即答してくれた半田さんに、ここで働いていてよかったと思うことをたずねたところ、「みんなに『いつもきれいに洗ってくれてありがとう』と、ほめてもらえることが一番うれしいです」と教えてくれた。  筒井さんは「先日、半田さんが体調を崩して数日休んでいたときは、病院の職員さんたちに『どうかしたの?』と心配されるほど欠かすことのできない存在です。半田さんの代わりを務めた従業員は作業に苦労していましたね。あらためて半田さんは、なくてはならない戦力だと実感しています」と話してくれた。  モップ洗浄作業は、もともと専任の業務ではなかったそうだ。現場でモップを使う従業員が、それぞれ手作業で1本ずつ洗浄していたが時間と手間がかかっていた。そこで高圧洗浄機が使える場所を確保し、モップ洗浄だけの業務をつくったことで、全体の作業効率が大幅にアップしたという。筒井さんが話す。  「こうした分業は、障害者雇用のためというのではなく、さまざまな作業で実践されてきました。広い院内を回ってごみ回収だけをする従業員もいますし、逆に、掃き掃除やダスター干しなどを互いに手伝うこともあります。病棟の清掃業務は、ごみ回収から掃除機、拭き作業、モップ洗いまで1人で担当すると結構な重労働なので、分業を効率よく組み合わせていくようにしています」 声がけが安心感に  聴覚障害のある岡野(おかの)智子(ともこ)さん(33歳)も、半田さんと同じく入社13年になる。地元の聾学校を卒業したあと、父親の勤務先でもあったという四国管財に入社した。最初は、障害のない人たちとのコミュニケーションや指示内容がわかりにくかったことに苦労したそうだが、いまでは相手の口の動きを読み取り、いつも持ち歩いているメモを使って筆談も交えながら意思疎通を図っているそうだ。  朝は病院職員向け食堂の掃き・拭き掃除などをしてから、休憩室や病棟内の清掃の応援に向かう。その後は宿直室の清掃とベッドメイキングをこなし、午後は職員更衣室の掃き・拭き掃除、病棟内のごみ回収、建物の外回りの掃除まで行う。「さらに時間が余ったときは、私にメモで『なにか手伝えることありますか?』と伝えてくれます」と中平さん。  ちなみに岡野さんは毎日、業務が一つ終わるごとにメモに「済」マークをつけて中平さんに見せて確認してもらっている。「彼女にとっては、作業の一つひとつを目に見える形で確認してもらうことが、精神的な安心感につながっているようです」と話す中平さんは、全体として職場で心がけていることも「声がけ」だという。  「なかでも障害のある従業員には、たびたび声がけをします。特に1人で作業をしているときに近くにいる人が『お疲れさま』、『大丈夫?』、『何かあったらいってね』などと一言かけるだけで、安心して働けるようですね」  この日は、病棟の宿直室(4部屋)の清掃業務を見せてもらった。基本は1人での作業だという。まず部屋のごみ箱を廊下のドア脇に置く。何かの理由で作業中の従業員がその場から離れても、まだ掃除が終わっていないことを知らせる目印だという。  その一方、もしドアが閉まった状態で「在室中」の表示になっている清掃予定の部屋があった場合、岡野さんはほかの部屋の固定電話から中平さんに連絡を入れる。  「電話がかかってきた時点で場所がわかるので、現場に行くなどして確認します。そういうフォロー体制さえ取れば、岡野さんに1人での作業を任せられるので、とても助かっています」と中平さんはいう。  そんな岡野さんは2014年に初めて地方アビリンピック(高知県)のビルクリーニング種目に出場した。筒井さんによると、「たまたま職場にアビリンピックのお知らせが回ってきて、岡野さんに『出てみる?』と声をかけたらすぐに『出ます!』と返ってきました。なにごとにも意欲的なところが彼女のよいところでもあります」とのことだ。  ほかの従業員にも協力してもらって練習を重ね、競技当日は、職場の同僚たちが本人に内緒で作成した横断幕とともに応援にかけつけたそうだ。2017年と2018年には念願の全国アビリンピックにも出場し、2018年は努力賞を受賞した。「アビリンピックに参加できてうれしかったです。今後も楽しく仕事ができるようになりたいです」と伝えてくれた岡野さんは、いまは手話サークルや卓球の活動も楽しんでいるそうだ。 日ごろから家庭と連絡を取り合う  病院の清掃部門は、単独で作業に取り組む現場が多く、一人ひとりの心身の状況などを把握しにくいこともある。そのため筒井さんたちは、より意識的に、本人や家庭も含めて意思疎通と情報共有を図る機会をつくっているという。  山アさん、半田さん、岡野さんについても、日ごろから何かあれば家庭と連絡を取り合うなど連携し合っているそうだ。職場で本人に比較的大事なことを話したときは、必ず家庭に電話などで伝えるようにしている一方、家庭からも日常的にさまざまな連絡が入る。  例えば、山アさんの母親からは「今日はお弁当がないので売店で買わせてください」、「今日は別のルートでバスに乗ります」といったショートメールが届くそうだ。「基本的に本人が1人でできることですが、私たち周囲の従業員が『お金はちゃんと持った?』、『今日は別のバスだから時間違うよね』、『トイレは先に行った?』など家族のように声がけをしています」と中平さん。  筒井さんは「もともと私たちの職場では、障害の有無に関係なく、従業員に深くかかわってきました。入社まもない従業員に異変を感じたら、すぐに家族に連絡して事情を聞きますし、無断欠勤した場合は、本人の安否確認が取れるまで自宅まで行くこともあります」と説明する。  従業員一人ひとりと深くかかわる社風を象徴するのが、全従業員に渡されている「ドリームカード」だ。  名刺サイズに折りたためる細長いカードには、会社の経営理念やミッションなどがわかりやすい言葉で書かれているほか、表紙には「どんな小さな事でも…どんな悩み事でも…365日24時間お待ちしております。」との言葉とともにフリーダイヤルの電話番号が記載されている。  「会社ぐるみの多少おせっかいな職場で働いてきた私たちとしては、なんの違和感もなく3人の家庭とも親密にかかわってきました。逆にそうした日ごろからの意思疎通がなかったら、何かあったときに双方に誤解が生じやすくなります」と筒井さん。  従業員同士のちょっとした口喧嘩(げんか)などささいなトラブルがあったときは、家庭から心配する電話がかかってくることもあるが、筒井さんが事情を説明すると安心してもらえるという。  また職場では、毎日10分程度行われる全員参加のミーティングも重要だという。日によって指名された従業員が、入社時にドリームカードに記入した「私の夢」の進捗状況や身近な目標、新たに目ざしていることなどを自由に発表する場をつくっているそうだ。筒井さんが話す。  「コロナ禍で一時中止になっていましたが、予想以上に従業員同士の距離感ができてしまったようで、職場の雰囲気も悪くなり、実際に小さな行き違いも起きました。日中は各現場でそれぞれ働いているだけに、たとえ短い時間でも一堂に集まって、互いにコミュニケーションをとることが大事なのだと再認識しているところです」 「ラッキーコール」  職場内のコミュニケーションを大事にしているという四国管財は、独自の報連相(報告・連絡・相談)システムを「ラッキーコール」と呼び、取り組んでいる。現場で見つかった問題は改善できるラッキーなことだとプラスにとらえた考え方で、顧客からの報告だけでなく、従業員自ら現場での失敗やミスも申告するという仕組みだ。  年間300件ほどのラッキーコールのうち9割以上が従業員からだという。四国管財は「クレームを起こしたときに一番不安なのは従業員自身である」として、「どんな小さなことでも会社が対応することによって働きやすい環境をつくり、クレームに誠心誠意対応することで顧客との関係が深まり、会社として成長できる」としている。  筒井さんたちの現場でも、本人が少しでもいいやすい状況にするため、事前に「どんな失敗をしても、その先は会社側の問題なのだから、隠さず、ウソだけはつかないでほしい」と話しているそうだ。  実際に小さなものも含めて年間50件ほど上がってくるが、「多いのは道具などが壊れたケースで、ほとんど経年劣化が原因です。そういう小さなことも含めて申告しやすい環境が、安心して働きやすい職場につながっていると思います」とのことだ。  最後に、目下の課題について筒井さんにたずねたところ、「採用や雇用にかかわる一般的な知識が足りないなと感じ始めています」との答えが返ってきた。  いまも特別支援学校などからの依頼で職場実習を受け入れたり、就職希望者の実習を行ったりしているそうだが、「さまざまな障害特性を持った人たちに対応するなかで、やはり、コミュニケーションだけではカバーしきれない部分もあるなと思うようになりました」と筒井さん。まずは、当機構(JEED)が実施している障害者職業生活相談員資格認定講習(※1)や企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修(※2)の受講を検討しているという。  今後も、従業員一人ひとりの長所短所を見きわめ、職場のみんなで助け合いながら、業務全体の効率と質の向上を目ざしていくそうだ。 ※1 https://www.jeed.go.jp/disability/employer/employer04/koshu.html ※2 https://www.jeed.go.jp/disability/supporter/seminar/job_adapt02.html 写真のキャプション 四国管財株式会社事業部第1事業課長でお客様係の筒井潤さん 清掃部門で働く山ア功喜さん ダスターの洗浄作業にあたる山アさん 事業部第1事業課主任の中平美香さん 清掃部門で働く半田育大さん 山アさんは宿直室のベッドメイキングも担当している 半田さんはモップの洗浄作業をになう 清掃部門で働く岡野智子さん 宿直室のベッドメイキングを行う岡野さん 2017年に開催された第37回全国アビリンピック(栃木県)で競技に臨む岡野さん 「ドリームカード」には「私の夢」が記入されている 毎日行われるミーティングの様子。貴重なコミュニケーションの場にもなっている(写真提供:四国管財株式会社) 【P12-14】 JEED インフォメーション 〜高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)からのお知らせ〜 全国14エリアで開催します! 令和6年度 就業支援実践研修のご案内 受講料無料  当機構(JEED)では、医療・福祉等の関係機関で障害のある方の就業支援を担当している方を対象に、就業支援の実践力を高めるための「就業支援実践研修」を全国14エリアで開催します。  みなさまの受講を心よりお待ちしています。 ※「就業支援実践研修」は、令和7年度より「雇用と福祉の分野横断的な基礎的知識・スキルを付与する研修(基礎的研修)」を含む新たな研修体系へ移行するため、令和6年度で終了します。 対象者 労働、福祉、医療、教育などの関係機関の職員であって、2年以上の実務経験のある就業支援担当者 コース・カリキュラム 【障害別コース:3コース(各コース1日間)】 ■精神障害コース ■発達障害コース ■高次脳機能障害コース 【カリキュラム】各コースとも実務経験をふまえた演習やグループ討議を主としたカリキュラムです。 科目名 実施内容 全コース共通講座 企業へのアプローチ 【講義・演習】障害者雇用の取組み、就業支援者に求めることなどの講義および企業の視点・ニーズをふまえたアプローチ方法 コース別講座 就業支援の実際 〜相談・アセスメント場面における支援技法の活用〜 【講義・演習】インテークやふり返り、職業生活上の課題の把握などの相談・アセスメント場面における障害特性などに応じた支援技法・ツールの活用方法 ケーススタディ 地域障害者職業センターの支援事例をもとにしたグループでの事例検討 エリア・時期・定員・申込方法等 ■開催エリア:  @北海道 A北東北 B南東北 C南関東  D北関東 E甲信越 F北陸  G東海  H近畿  I中国  J四国  K北九州  L南九州 M沖縄 ■開催時期:令和6年10月〜12月 ■日程・会場・定員・申込方法等:  詳細は7月下旬にJEEDホームページに掲載しますので、ご確認ください。 ※お申込みが定員を超える場合は、人数の調整をさせていただくことがあります。 ステップアップ方式の研修体制となっています! ステップ1 初めて担当する方 就業支援基礎研修 就業支援の基礎づくり 全国の地域障害者職業センター ステップ2 2年以上実務経験のある方 今回ご案内している「就業支援実践研修」は、こちらです! 就業支援実践研修 アセスメント力と課題解決力の向上 精神障害/発達障害/高次脳機能障害 コース 全国14エリアの地域障害者職業センター ステップ3 3年以上実務経験のある方 就業支援スキル向上研修 障害特性に応じた支援スキルの向上 精神障害/発達障害/高次脳機能障害 コース 障害者職業総合センター (千葉県千葉市) 就業支援 課題別 セミナー 新たな課題やニーズに対応した知識・技術の向上 障害者職業総合センター (千葉県千葉市) お問合せ先 職業リハビリテーション部人材育成企画課 TEL:043-297-9095 E-mail:stgrp@jeed.go.jp 就業支援実践研修 検索 https://www.jeed.go.jp/disability/supporter/seminar/jissen.html ◆令和6年度「地方アビリンピック」開催地一覧◆ 各都道府県における障害者の技能競技大会「地方アビリンピック」が下記の日程で開催される予定です。 アビリンピック マスコットキャラクター アビリス 都道府県 開催日 会場 北海道 10月5日(土) 北海道職業能力開発促進センター 青森 10月下旬〜11月上旬 青森職業能力開発促進センターほか1カ所(予定) 岩手 7月27日(土) 岩手県立産業技術短期大学校 宮城 7月6日(土) 宮城職業能力開発促進センター 秋田 7月12日(金) 秋田市にぎわい交流館AU 山形 7月4日(木) 山形国際交流プラザ(山形ビッグウイング) 福島 7月6日(土) 福島職業能力開発促進センター 茨城 7月20日(土) 7月21日(日) 茨城県職業人材育成センター 栃木 7月6日(土) 栃木職業能力開発促進センターほか2カ所 群馬 7月6日(土) 群馬職業能力開発促進センター 埼玉 7月6日(土) 国立職業リハビリテーションセンター 千葉 11月頃 千葉職業能力開発促進センター(予定) 東京 2月中旬 東京障害者職業能力開発校ほか1カ所 神奈川 10月5日(土) 10月19日(土) 関東職業能力開発促進センターほか1カ所 新潟 9月7日(土) 新潟市総合福祉会館ほか1カ所 富山 7月20日(土) 富山市職業訓練センターほか1カ所 石川 10月20日(日) 石川職業能力開発促進センター 福井 6月22日(土) 7月6日(土) 福井県立産業技術専門学院ほか1カ所 山梨 10月6日(日) 山梨職業能力開発促進センター 長野 7月20日(土) 7月21日(日) 長野職業能力開発促進センター 岐阜 7月13日(土) ソフトピアジャパンセンター 静岡 6月30日(日) 7月6日(土) 7月13日(土) 静岡市東部勤労者福祉センター 清水テルサほか2カ所 愛知 6月8日(土) 6月16日(日) 6月23日(日) 6月29日(土) 中部職業能力開発促進センターほか3カ所 三重 6月29日(土) 三重職業能力開発促進センター 都道府県 開催日 会場 滋賀 11月30日(土) 近畿職業能力開発大学校附属滋賀職業能力開発短期大学校 京都 2月上旬 京都府立京都高等技術専門校ほか1カ所 大阪 6月22日(土) 7月6日(土) 関西職業能力開発促進センターほか2カ所 兵庫 6月15日(土) 6月22日(土) 兵庫職業能力開発促進センター 奈良 7月20日(土) 奈良職業能力開発促進センター 和歌山 6月29日(土) 和歌山職業能力開発促進センター 鳥取 6月28日(金) 鳥取県立福祉人材研修センター 島根 7月13日(土) 島根職業能力開発促進センター 岡山 7月6日(土) 7月20日(土) 岡山職業能力開発促進センター 広島 7月5日(金) 9月24日(火) 9月27日(金) 9月30日(月) 広島職業能力開発促進センター ほか※体験会として実施予定 山口 10月19日(土) 山口職業能力開発促進センター 徳島 9月14日(土) 徳島職業能力開発促進センターほか1カ所 香川 2月頃 未定 愛媛 7月6日(土) 愛媛職業能力開発促進センター 高知 6月29日(土) 7月6日(土) 高知職業能力開発促進センターほか1カ所 福岡 7月6日(土) 7月13日(土) 福岡職業能力開発促進センターほか1カ所 佐賀 1月頃 佐賀職業能力開発促進センター 長崎 7月6日(土) 長崎職業能力開発促進センター 熊本 6月22日(土) 6月23日(日) 熊本職業能力開発促進センター 大分 10月12日(土) 大分職業能力開発促進センター 宮崎 7月6日(土) 宮崎職業能力開発促進センターほか1カ所 鹿児島 7月6日(土) 7月8日(月) 鹿児島職業能力開発促進センターほか1カ所 沖縄 7月6日(土) 7月20日(土) 沖縄職業能力開発促進センターほか1カ所 ※2024年6月10日現在 詳細は、ホームページをご覧ください。 地方アビリンピック 検索 アクセスはこちら! ・開催地によっては、開催日や種目ごとに会場が異なります。 ・日程や会場については、変更となる場合があります。 障害者職業総合センター職業センター 2023(令和5)年度成果物のご案内  障害者職業総合センター職業センターでは、発達障害者、精神障害者、高次脳機能障害者それぞれの障害特性や事業主のニーズに応じた新たな職業リハビリテーション技法の開発と改良を行っています。また、その成果を支援マニュアルに取りまとめて、幅広い普及に努めています。2023(令和5)年度は、以下の三つの技法開発に取り組み、支援マニュアルを発行しました。 支援マニュアルNo.25 「テレワークにおける職場適応のための支援技法の開発」  感染症の拡大を契機に多様な働き方の一つとして注目された「テレワーク」をテーマに技法開発を行いました。テレワークに求められる基礎的な対応力のうち、特に自己発信力、作業および体調の自己管理力について、講習や演習等を通じて理解を深めることを目的とした「テレワークプログラム」を開発しました。  テレワークプログラムは、テレワークでの就職や復職を目ざす対象者にかぎらず、メールやWeb会議システムに関する知識付与が必要な対象者などに、部分的に活用していただくことができます。  講習の音声つき動画、各種資料を添付しています。(2024年3月発行) ※今号の「研究開発レポート」(P28-29)にて詳しくご紹介しています 支援マニュアルNo.26 「職場適応を促進するための相談技法の開発」  これまで職業センターにおいて開発してきた、生活習慣やストレス対処等の支援技法をもとに、職場適応を図るジョブコーチ等の支援者が相談支援場面で活用しやすいように、改良を加えたツールを作成、これらのツールを活用した職場適応を促進するための相談技法を開発し、支援マニュアルとして取りまとめました。  あわせて別冊として、職場定着を支える会社内での取組みや、それを支える就労支援において使いやすい各種資料を取りまとめた「職場適応を促進するための相談で活用できるツール集」も作成しました。(2024年3月発行) 支援マニュアルNo.27 「高次脳機能障害者の就労に役立つ視聴覚教材の開発」  高次脳機能障害のある方に対して職業センターで実施している、障害特性に対する理解を深めるグループワーク、対処手段の習得、自己管理能力の向上のためのメモリーノート訓練等の内容を整理し、個別支援においても実施できるように視聴覚教材を開発し、これら視聴覚教材を活用した支援技法を支援マニュアルとして取りまとめました。  あわせて別冊として、視聴覚教材の使い方を記載した活用ガイドも作成しました。 (2024年3月発行) ◎障害者職業総合センター(NIVR)ホームページから、本マニュアルの全文やすぐに使える資料等をダウンロードできます。https://www.nivr.jeed.go.jp/center/index.html <お問合せ先>職業センター 企画課 調整係 TEL:043-297-9043 【P15-18】 グラビア 毎日やりがい感じる。働けることがうれしい 株式会社ワイビーエム(佐賀県) 取材先データ 株式会社ワイビーエム 〒847-0031 佐賀県唐津(からつ)市原1534 TEL 0955-77-1121 FAX 0955-70-6010 写真・文:官野 貴  佐賀県唐津(からつ)市に本社を置く「株式会社ワイビーエム」(以下、「ワイビーエム」)は、建設や土木などの分野において使用される地盤改良機やボーリングマシンなどの製造を手がける機械メーカーだ。社会貢献の一環として障害者雇用にも積極的に取り組んでおり、現在5人の障害のある社員(精神障害4人、知的障害1人)が、製造や検査、清掃の分野において活躍している。  入社7年目で精神障害のある宗(たかむね)拓実(たくみ)さん(33歳)もその一人で、製造部の岸山第1工場に所属し、機械部品などの材料となる鋼材の切り出し作業を担当している。これは、製造工程のスタートラインとなる重要な作業であり、材質や形状、サイズなど、さまざまな種類のある鋼材のなかから指定の物を間違いなく選び出し、「高速切断機」や2種の「のこ盤」を使い分け、指定されたサイズに切り出していく。障害の特性に配慮し、決められた作業手順を自分のペースで行える職場環境となっている。  宗さんは、職業能力開発校である「佐賀県立産業技術学院」で機械加工を学んでおり、「ものづくりにたずさわることが夢でした。過去には症状が重くなり働きたくても働けないという経験をしており、いまは働けることがうれしく感じます」と語る。  宗さんは、つい考え過ぎてしまい不安な気持ちになることも多いというが、週1回を目安に労務管理担当者と面談し、相談や雑談などをすることにより不安が和らぎ、気持ちが楽になるという。今後、より大型の装置を担当することを目ざし、装置の扱い方や仕事の進め方を学んでいる最中だ。  ワイビーエムでは、当機構の「職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援(※1)」や「職場復帰(リワーク)支援(※2)」などの支援も活用し、障害のある社員のサポートを行っており、定着率の向上につなげている。 ※1 職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援:障害のある人が職場に適応できるよう、ジョブコーチが職場に直接出向いて行う支援 ※2 職場復帰(リワーク)支援:うつ病などにより休職している人や休職している社員の職場復帰を進めようとしている企業に対し、医師の助言を得ながら、円滑な職場復帰に向けて行う支援 写真のキャプション 朝礼の様子。業務連絡、危険予知活動などを行う 作業開始前、伝票を確認し手順を考える宗拓実さん さまざまな種類のある鋼材のなかから指定の物を選び、クレーンで吊り上げる 宗さんはクレーンの運転技能講習を修了しており、業務に活用している クレーンをリモコンで操作し鋼材を移動、「のこ盤」にセットする 宗さんは、2種の「のこ盤」を並行して稼働させ作業にあたっている 鋼材を固定後、加工前に再度長さを確認し、加工を行う 加工後、ノギスを使い長さを確認する。ここでの精度が製品の精度にもつながる、重要な作業 「高速切断機」で棒材を切断する。防護ゴーグル、防塵マスクを装着して作業にあたる ベルトサンダーでのバリ取り作業。切断時にできた意図しない突起(バリ)を除去する バリ取り、面取りを終えた棒材。後工程でのけがや破損を防ぐ 平材のバリ取り作業。手持ちのベルトサンダーで作業を行う 切り出しとバリ取りを終えた部材を後工程の作業エリアに届ける 休憩時間に、ほっと一息つく宗拓実さん 【P19】 エッセイ てんかんとともに 公益財団法人日本てんかん協会にご協力いただき、「てんかんとともに」と題して全5回シリーズでお一人ずつ語っていただきます。 楽園画家 長沼 慧 (ながぬま けい) 第1回 彩りのある楽園をつくっていく  1990(平成2)年神奈川県川崎市生まれ。小児てんかんを発症し、学校を休みがちな小中学生時代を過ごす。  家業を継ぐため鍼灸師となるが、恩師のすすめで、「ピースボート」で世界一周をするなかで、夢を諦めず画家を志すことを決める。  2010年から展覧会を始め、2016年から楽園をテーマに動物や植物を描く「楽園画家」に。また、ざらざらした下地を板につくった上に、雲母と顔料を混ぜた絵の具で、薄く滲ませ重ね描く“世界でたったひとつのオリジナル技法の絵画”「雲母壁面画(きらへきめんが)」という、独自の技法による新しいアート作品を生み出した。  横浜から出港する船に乗り、地中海を横切り世界一周したのが13年前。その当時から私は画家を目ざしていたが、父の「画家では食べていけないから手に職をつけて活動したら」というアドバイスのもと、美術大学への進学を諦め、鍼灸の学校に進学し鍼灸師の仕事をしていた。学校を卒業して臨床を1年していたときに、船内の治療院の運営を任されることになり、3カ月の船上生活が始まった。好奇心旺盛ではあるが、元々体力がなかった私は一度両親に反対されたが、どうしても世界一周をしたいという想いがあったため、両親を説得し乗船することになった。  船での生活は何もかも手探りでたいへんだった。しかし、毎日新しい空と海に出会えるのが楽しくて心が躍った。治療院は船の最上階の近くにあり、毎朝最下階近くの部屋から波によって揺れる階段を上っていくのが私の日課だった。船が動いているときは治療院を開けなければならなかったが、船が港に着く日は治療院も休みとなり、私はクルーとその国の世界遺産や名所を観光したり、港のマーケットで購入したフルーツを持ち寄って浜辺でピクニックをしたりした。休み中も動き回っていたけれど、不思議と日本にいるときよりも疲れは感じなかった。目に映る景色、体験するものがとても新鮮で、体と魂の奥底から生きている喜びを感じていた。  私は小学2年生のときに小児てんかんを発症し、完治をする中学2年生のころまで薬を飲んでいた。薬の影響か授業は頭に入らず、感情のコントロールも上手くできず、同級生と比べて体力がないことにつねに悔しい想いがあった。  家族からすれば私がいつ発作を起こすかわからない状況で、激しい運動や強い刺激を受けさせたくないという気持ちがあったのだと思う。自分がやりたいことに対して両親からの制限があり、そのたびに私は「自分の人生なのにやりたいことをできず終わってしまうのだろうか」と子どもながらに絶望していた。そして、その想いはてんかんが完治した後も、まるで呪縛のようにつきまとっていた。鍼灸師として乗船したときもそうだった。すばらしい体験や美しい景色を観ても「画家として生きたい」という想いが心の中につねにあった。  海外での最後の寄港地を出発して、日本に戻った後の進路をいろいろと考えていたときだった。船上で行方不明者が出た。その後見つからなかったためおそらく船から落ちたのだと聞いて、私は死はつねに身近にあるものなのだと意識した。「生きている時間には限りがある、私は自分が心からやりたいことをやり、自分の生を全うしたい」と強く想った。  船上で決意を固めて日本に帰国後は、鍼灸師を辞めて画家になる道を模索した。そのなかで、百貨店とギャラリーが主催する若手アーティストの育成オーディションに入選し、そこから画家としてデビューを果たした。最初は絵が売れずバイトとのかけ持ちで時間をつくりながら制作をしていたが、近年ようやくグループ展から個展になり、そして今年は、初めて私の絵が売れた百貨店の会場で、8年越しとなる個展が決まった。それが偶然なのか必然なのか、13年前に乗船した日は私の誕生日だったのだが、個展の開始日もまた私が生まれた日になった。  人生に無駄なことなどない。当時、自分がてんかんの薬の反動で悩んでいたことも、体力がなく悔しい想いをしたのも、いまの自分の力になっている。私の絵のテーマは「楽園」だ。どんなに凄いと思う人であっても他人の人生を生きることはできない。一度しかない人生をさまざまな理由をつけて諦めないでほしい。人は想いを具現化できる力がある。人生を謳歌して自分の世界を楽園にするのだ。そういう想いを込めてこのテーマに決めた。絵は、生きることに必要とされる衣食住には入らないが、私は心が満たされなければ生きているとは思わない。絵は空間を彩る窓になる。絵を飾ったことがないという人にも、ぜひ新しい景色を体験してほしい。私の作品たちが、だれかの日常に彩りをもたらす一場面になれたらと想いながらこれからも制作していく。 【P20-25】 編集委員が行く 職業能力開発校における発達障害者と精神障害者への職業訓練 東京障害者職業能力開発校(東京都)、石川県立金沢産業技術専門校(石川県) 国際医療福祉大学 准教授 若林 功 取材先データ 東京障害者職業能力開発校 〒187-0035 東京都小こ平だいら市小川西町2-34-1 TEL 042-341-1411(代表) FAX 042-341-1451 石川県立金沢産業技術専門校 〒920-0352 石川県金沢市観音堂町チ9 TEL 076-267-2221(代表) FAX 076-267-2295 若林(わかばやし)功(いさお) 編集委員から  障害者の法定雇用率は、2024(令和6)年度から2.5%、2026年度から2.7%と段階的に引き上げられることとなっているが、そのような量的要素だけでなく、障害者雇用の質を高めることも求められている。また、障害者のキャリア形成にも目を向ける必要があるといわれている。このような雇用の質を高めることを実現するための方策の一つとして、障害者の能力開発を行っている支援機関(職業能力開発校)と、企業、障害者就労支援機関の連携が、今後ますます重要となってくることが考えられる。そこで、このような状況において、企業の障害者雇用に対する取組みをスムーズに進めていくため、特に近年、求職者数の多い発達障害者と精神障害者に対する職業能力開発校の取組みを紹介することとしたい。 写真:官野 貴 Keyword:職業能力開発校、職業訓練、発達障害、精神障害、就労支援、職業準備性 POINT 1 発達障害者・精神障害者の特性に合わせた訓練プログラム 2 実際の職場を意識した実践的な職業訓練 3 障害者就労支援機関と連携し、地域で就職後もフォロー はじめに  職業能力開発校は、ほかの諸機関と並んで障害者雇用の質を高めるために重要な役割を果たしている。また、私の個人的な想いであるが、「職業能力開発校が障害者就労支援分野で、もっと着目されてもよいのでは」と、これまで感じ続けているところだ。  まずは障害のある人への職業能力開発(職業訓練)全般について概観をしておきたい。 ・今回の取材先の一つ、東京障害者職業能力開発校の前身である東京身体障害者公共職業補導所が終戦直後である1948(昭和23)年に開設されている。つまり障害者への職業訓練は日本の職業リハビリテーションの原点の一つといえる。 ・現在の障害者への職業訓練は、@国や都道府県が設置した障害者職業能力開発校と、A一般の職業能力開発校において障害者対象訓練科が設置されている場合での実施、また今回の取材対象ではないが、B「障害者の多様なニーズに対応した委託訓練」がある。 ・どのような種別の障害のある人が職業訓練を受講しているのか、については最新の統計がなかなかインターネット上では見あたらなかった。ただし、かつては身体障害者が中心であったが、現在は発達障害を含む精神障害者の割合が増えているものと推察される。 ・職業訓練というと、一般的にはいわゆる個々の職業で求められるスキル(プログラミング、建築設計、印刷など)について、訓練科・コースに分かれて高めるという印象があるかもしれないが、それだけではなく生活指導にも力が入れられている。つまり職業リハビリテーション分野の用語でいえば、職業準備性を高める指導も職業訓練では行われている。  そして障害のある人の職業能力開発でもさまざまな実践が行われるようになっており、現在は発達障害者や精神障害者を対象とする、あるいは多く在籍する訓練科・コースもある。また、国立職業リハビリテーションセンターなどでも優れた職業訓練が行われている(※1)。  それではそれ以外の職業能力開発校で、特に発達障害者・精神障害者に対し、どのような職業訓練が行われているのかということを把握したいと考え、今回は東京障害者職業能力開発校を訪問し、石川県立金沢産業技術専門校はオンラインで取材を行った。 東京障害者職業能力開発校を訪問して  2023(令和5)年度末に、まずは東京障害者職業能力開発校(以下、「東障校」)を訪問し、能力開発課長の菊地(きくち)将司(まさし)さん、課長代理で就職・生活指導担当の栗原(くりはら)裕美(ひろみ)さんにお話をうかがった。  東障校は国が設置し、東京都が受託運営する職業訓練施設である。1948年の開設以来、修了生は1万人を超え、直近の就職率は80%を超えているとのこと。訓練科目は、3カ月訓練の就業支援科、6カ月訓練は職域開発科などの三つの科、1年訓練はビジネスアプリ開発科などの八つの科がある(図)。  全般的な入校の状況については、2024年4月に入校した人は65人、東障校は東京都小平(こだいら)市に位置していることもあり、都内在住の人が7割程度と最も多く、次いで埼玉県在住者らで、9割以上が関東在住者である。一方、東障校には寮もあり、全国から応募可能とのこと。  科によって受け入れる障害種別が設定されている場合(例えば知的障害者のみを受け入れる実務作業科など)もあるが、全般的には、身体障害のある人、精神障害や発達障害のある人を各科で受け入れている。現状、東障校の入校者は発達障害を含めた精神障害のある人が多くなっているとのこと。また障害者手帳上は、身体障害者の手帳を所持していても、精神的な側面にも課題のある人が多いと感じているようだ。そして、その職業に必要とされる技術を高めるためだけに訓練する、というタイプの訓練生は少なくなっており、現在は、職業準備性ピラミッドの土台部分へのアプローチが重要になっているとのことである。  各科が設定した一日6〜8時限の訓練を継続して受講してもらうため、入校に際しては選考がある。応募は必ずハローワーク経由となるが、入校につながるきっかけとして障害者就業・生活支援センターや、区市町村の就労支援センターなどがすすめる場合も少なくないとのことだ。 ものづくり技術科の見学  概要をうかがった後、「ものづくり技術科」を見学させていただいた。ものづくり技術科は技術スタッフとしてものづくりを中心とした企業への就職を目ざすための科であり、訓練では3Dプリンタを用いるなど、設計から製造までのプロセスを学ぶことができる。なお、ものづくり技術科は、身体障害者手帳の所持者か、発達障害者・精神障害者で精神障害者保健福祉手帳を所持し心身の状態が安定している人を応募対象者としている。  訪問した際には、パソコンを用いた授業が行われていた。また、これまでに製作した生徒の作品も展示されていた。訪問時点では3人の訓練生がおり、みなさん就職は決まっているとのことであった。訓練生の方たちへ個別にお話をうかがうことはしなかったが、指導を担当されている、職業訓練指導員で主任の高岡(たかおか)幸三(こうぞう)さんによれば、入校当初に比べて、技術面でも、また社会人としても非常に成長しているとのことであった。 発達障害者・精神障害者への職業訓練の実際  見学後は発達障害者・精神障害者への訓練および支援に焦点をあてて、菊地さん、栗原さんに加え、就業支援科の職業訓練指導員で課長代理の小林(こばやし)克子(かつこ)さんも交えてお話をうかがった。  東障校にはさまざまなコースがあるが、発達障害、精神障害のある人への職業訓練という観点から設計された科の一つに、「就業支援科」がある。  就業支援科は、訓練期間が3カ月と短く、毎日通うことに自信がない人や就業経験の浅い人に適したコースとなっている。内容としては、ビジネスマナー、コミュニケーションスキルなど、社会生活に必要なスキルを学び、また事務、調理、清掃などの実習も行っている。応募対象者は精神障害者、発達障害者、身体障害者であり、入校月は4月、7月、10月、1月と年4回設定されている。  また、この就業支援科自体は3カ月で終わるが、修了後、6カ月訓練の調理・清掃サービス科とオフィスワーク科のいずれかへの連続受講も可能となっている。なかには就業支援科のみで就職する人もいるものの、ほとんどの人が調理・清掃サービス科やオフィスワーク科に進むようである。  具体的な訓練内容としては、標準時限数が定められており、社会生活スキル演習(コミュニケーション、ロールプレイ)や問題解決技法などを行う社会生活技能実習(120時限)、事務作業・調理作業・清掃作業を行う適応実習(124時限)などで構成され、計300時限となっている。SST(Social Skills Training:社会生活技能訓練)も訓練の一環として行われているなか、毎日、心身の状態を確認する「健康チェック」も実施している。このように職業準備性を高めることを意識した訓練となっている。  この就業支援科を経て、調理・清掃サービス科やオフィスワーク科に進む場合は、その科の担当指導員へ、就業支援科の指導員からきちんと申し送りを行っているとのこと。就業支援科には、ここから訓練をスタートさせる「導入訓練」の側面があり、東障校側としては当該訓練生のアセスメントをする場ともなっているようである。 ビジネスアプリ開発科における最終段階でのグループ活動  一方で、精神障害や発達障害のある訓練生はほかの科にもいる。そのような科では、職業準備性は扱われないのか。興味深いエピソードを、ビジネスアプリ開発科の職業訓練指導員で課長代理の山口(やまぐち)智充(ともみつ)さんからお話をうかがうことができ た。  ビジネスアプリ開発科はIT(情報技術)を活用できる事務職を目ざすために、事務に必要なオフィスソフトやプログラム作成まで幅広く学習するとともに、パソコンをその仕組みから理解することや、実践的なコミュニケーション能力を体得することを目標とする1年間(訓練時間1560時限)のコースである。具体的には4月の入校後、9カ月程度は基礎的なことを学習し、最後の時期である1月以降では、4〜5人で一つのグループをつくり、お互いに意見を出し合いながらアプリケーションをつくりあげるという活動を行っている。  東障校側としてはグループは組むものの、基本的には、グループ内での役割分担やディスカッションの方法などは、方法論として授業で教えたうえで、あとは自分たちで進めてもらうそうだ。  以前のグループ活動において、精神障害のある訓練生のなかに、リーダー役となったものの、「ほかの人に仕事を割りふって本当によかったのだろうか」と、後悔をしてしまう人がいたそうである。つまり、自分を責めてしまうような形になってしまう場合があるようだ。そのような場合、訓練生に基本的には任せつつも、「こういうときの議論はこういうふうに持っていったほうがいいんじゃない」、「言い方をこういうふうにしてみたらいいんじゃない」と本人が気づけるようにアドバイスを行っていくという。そのようなアドバイスは、そのグループのメンバーがいるなかで行うのではなく、休憩時間などにタイミングを見計らって、「ではリーダーの人は来てください」というような形で話すようにしているとのこと。  このエピソードを聞き、これはまさに職業能力開発校ならではの強みであると感じた。訓練基準で定めたカリキュラムに基づき、習得してもらいたい内容(学習課題)がきちんと設定されていること。そして、グループでのアプリケーション開発活動という自然な流れのなかで、ロールプレイやふり返りが巧みに設定されている。また職業訓練指導員のかかわり方も一方的に教えるというものではなく、考えさせるように誘導するものであり非常に絶妙である。  山口さんが、ある修了生に一番印象に残った授業は何かをたずねたところ、このグループ活動だという回答があったとのことだ。グループ活動は、職業能力開発校という、ある意味落ち着いて取り組める場で練習を重ね必要なスキルを身につけることができるため、就職してからもその経験を活用することができたということであろう。非常に納得できるエピソードである。 石川県立金沢産業技術専門校をオンライン取材  続いて別の日に、発達障害者の訓練コースを設置している一般の職業能力開発校においてはどのような状況なのかを知りたいと考え、石川県立金沢産業技術専門校ワークサポート科の職業訓練指導員である西田(にしだ)信一(しんいち)さんに、オンラインで取材させていただいた。 ワークサポート科の概要  石川県立金沢産業技術専門校(以下、「専門校」)は、石川県金沢市に位置しており、総合建築科、メカトロニクス科、電気工事科、ワークサポート科の四つの学科がある。このうち、総合建築科、メカトロニクス科、電気工事科は特に障害者対象ということではなく一般的な職業訓練が行われている。一方、ワークサポート科では知的障害をともなわない発達障害者を対象とした職業訓練が行われている。なお、このワークサポート科は発達障害者を対象とした職業訓練としては県内唯一のものである。  もともとワークサポート科は、2009(平成21)年度から厚生労働省のモデル事業として開始され、当初は9カ月の訓練であったが、2012年度からは6カ月の訓練となって現在に至っている。前期・後期の年間2回の入校となり、各期の定員は5人(年間10 人)である。  訓練生は、職業能力開発校であるため、ハローワークからの紹介で応募する。実際に入ってくる訓練生は、西田さんの印象としては、高校や大学などを卒業してすぐに入校する人は少なく、一度、障害があることを明かさずに(あるいは自覚せずに)一般就労をしたもののうまくいかなかったという経験を経て、ワークサポート科に入校するという人が多いとのことであった。なお、ワークサポート科の対象地域は県内全エリアであるが、金沢市や加賀市といったエリアからの入校者が多いとのことであった。  ワークサポート科の目標は、知的障害をともなわない発達障害者を対象に、一人ひとりの能力や特性に配慮しながら、技能訓練および社会訓練を行い、その人に合った就労と社会的自立を支援するというものであり、具体的には「職場で必要なパソコンの基礎知識・技能の習得」、「物流管理における基本知識・技能の習得」、「コミュニケーションスキルやビジネスマナーの向上」、「社会生活に必要な基本知識や技能を学び、自立をめざす」という内容だ。またこれらの目標達成のために、東障校と同様、標準時間が定められており、導入訓練20時間、基礎訓練378時間、応用訓練316時間となっている。  知的障害をともなわない発達障害者が訓練の対象となっているが、精神障害者保健福祉手帳の所持は必須の応募要件とはなっておらず、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)など発達障害として医師に診断された人を対象としている。 ワークサポート科における訓練の実際  職務遂行技能を高める内容としては、「パソコン訓練」や、外部講師による指導のもと「清掃訓練」、「筆耕実務(美しい字の書き方の練習など)」などが行われている。一方、「基礎体力養成(2〜3kmのウォーキングなど)」(115時間)、「コミュニケーション訓練」(51時間)、ワークサンプル幕張版(※2)などを用いたアセスメント・作業体験である「個別指導」(50時間)なども行われており、職務遂行技能だけでなく職業準備性を高めるような指導も行われていることがわかる。また履歴書の書き方や職場実習などの就職支援活動にも力を入れており、職場実習については10日間のうち、4回は巡回に指導員が出向くとのことであった。このような取組みで訓練するなかで、多くの訓練生が対人面などでの対応力がついていっていると感じていると西田さんは語っていた。  一方で、6カ月の訓練で、例えば、訓練生の自己理解などがどの訓練生でも十分に深まるかというと、むずかしい場合もあるとのこと。これまでむずかしかったケースとして、障害があることを開示しない(クローズ)で就職することを希望した人もいて、就職活動支援に苦慮したことがあったそうである。専門校としては、先述したように訓練生のなかには障害があることを明かさずに(あるいは自覚せずに)一般就労をしたもののうまくいかなかったという経験がある人も少なくないため、なるべく障害を開示して企業にきちんと伝え、合理的配慮を受けながら働くことをすすめているとのことである。 就職後の支援および地域支援ネットワークについて  このようなこともあり、西田さんは「6カ月間の訓練ではこの人には短いかな」と感じる場合もあるそうだ。とはいえ、訓練を修了したら、専門校を卒業し就職を決めていかなくてはならない。そこで力を入れているのが、訓練を修了して就職した場合の他機関との連携である。ハローワークとの連携はもとより、地域障害者職業センターの配置型職場適応援助者や、訪問型職場適応援助者、また障害者就業・生活支援センターとも連携を図っている。具体的には「就職支援連絡会議」を開き、地域障害者職業センターや障害者就業・生活支援センター、専門校で集まり、就職後のフォローアップについて検討をしているそうである。またそのほか、専門校は障害者就業・生活支援センター主催のネットワーク会議にも参加しており、積極的にいろいろな情報を入手しようと努力をされているとのことであった。 二つの訓練校の取材を終えて  2校の取材を終え、発達障害者・精神障害者の職業訓練における、職業能力開発校の強みとは何か考えてみた。なんといっても、きちんと時間数や科目などの構造を持ち、具体的にスキルアップするためのノウハウを持っていること、またそれは硬直的なものではなく、訓練生の特性や状況を見きわめつつ、柔軟に行われる面もあることがあげられるだろう。また受講する訓練生に対して、指導員や支援員の人数などの面からも手厚い支援があるのも魅力の一つである。そして、コンピュータ技能など、職務遂行に必要な技能に加え、対人技能や自己理解などの職業準備性を高めるための訓練にも力を入れており、就職後の戦力化や、障害のある人自身のキャリア形成におおいに寄与していると感じられた。  一方で、認知度がまだ十分とはいえないことと関連するかもしれないが、障害者職業能力開発校の利用希望者は全国的に減少傾向にあるとの情報も私の耳に入ってきている。職業能力開発校に入校するためには、訓練時間に耐えられる体力が必要といった前提もあることなどからも、すべての障害のある人に適しているものではないかもしれないが、それでも職業能力開発校側や指導者側もかなりの努力や工夫をされており、職業能力開発校での実践は非常に魅力的であることを今回の取材を通じて、あらためて知ることができた。このような職業能力開発校の実践が行われていることは、もっと世の中に拡がってよいものであろう。本稿もささやかながらその一助となることを願いたい。 ※1 本誌2023年4月号の「クローズアップ」で紹介しています https://www.jeed.go.jp/disability/data/works/book/hiroba_202304/index.html#page=12 ※2 ワークサンプル幕張版(MWS):JEEDの研究部門が開発した、障害のある人の職業能力を評価したり、作業上必要となるスキルや補完手段の方法などを把握し支援したりするためのツール 図 訓練科目 3カ月訓練 就業支援科 6カ月訓練 職域開発科 調理・清掃サービス科 オフィスワーク科 1年訓練 ビジネスアプリ開発科 グラフィックDTP科 ビジネス総合事務科 ものづくり技術科 建築CAD科 製パン科 実務作業科 OA実務科 (資料提供:東京障害者職業能力開発校) 写真のキャプション 東京障害者職業能力開発校 東京障害者職業能力開発校能力開発課長の菊地将司さん 能力開発課課長代理で就職・生活指導担当の栗原裕美さん ものづくり技術科の授業の様子 ものづくり技術科では、3Dプリンタで製作された作品が展示されていた。作品が置かれている溶接台も授業で製作したもの ものづくり技術科の職業訓練指導員で主任の高岡幸三さん 就業支援科の職業訓練指導員で課長代理の小林克子さん ビジネスアプリ開発科の職業訓練指導員で課長代理の山口智充さん 石川県立金沢産業技術専門校(写真提供:石川県立金沢産業技術専門校) 石川県立金沢産業技術専門校ワークサポート科職業訓練指導員の西田信一さん(写真提供:石川県立金沢産業技術専門校) インターネットを利用したWeb会議システムで、お話をうかがった(左より、西田さん、筆者) 物流管理訓練の様子(写真提供:石川県立金沢産業技術専門校) パソコン訓練の様子(写真提供:石川県立金沢産業技術専門校) 【P26-27】 クローズアップ 障害のある人とスポーツ 最終回 〜だれもがスポーツを楽しめる社会に向けて〜  これまで5回にわたり、「障害のある人とスポーツ」についての連載をお届けしてきました。そして8月28日からは、フランス・パリで夏季パラリンピックが開催されます。最終回となる今回は、これまでの記事をふり返りながら、今後のパラスポーツがさらに推進されるための課題について、日本福祉大学スポーツ科学部教授の藤田紀昭さんに執筆していただきました。 執筆者プロフィール 日本福祉大学 スポーツ科学部教授 公益財団法人 日本パラスポーツ協会 技術委員会副委員長 藤田(ふじた)紀昭(もとあき)さん  1962(昭和37)年香川県生まれ。筑波大学大学院修士課程修了。2017(平成29)年より、日本福祉大学スポーツ科学部。研究分野は、体育学・障害者スポーツ論。文部科学省スポーツ庁「オリンピック・パラリンピック教育に関する有識者会議」委員などを歴任。 パラスポーツをめぐる現在の状況  本連載は、障害のある人のスポーツを通しての社会参加と効用といった幅広い視点を持つものでした。  第1回で、パラスポーツの言葉の意味と現状や歴史について触れた後、第2回ではパラアスリートの職場での実際、働く会社の支援について紹介しました。トップレベルの選手がパラリンピックなどの国際大会でよい成績を収めるうえで、生活を安定させることは何より大きな課題です。企業とパラスポーツの関係はこれにとどまらず、競技団体への経済的支援や人的支援、大会スポンサーなど幅広いものがあります。  公益財団法人ヤマハ発動機スポーツ振興財団(静岡県)の調べ(※1)によれば、障害者スポーツの競技団体登録者数の平均は499人で、公益財団法人笹川スポーツ財団(東京都)の調査(※2)による障害のない人の競技団体の一団体あたりの平均登録者数10万2986人と比較して非常に少なく、経営基盤は極めて脆弱です。それゆえ競技団体の運営は公的な補助金や企業からの支援に頼らざるを得ない状況です。企業と被雇用者、スポンサーとスポンサードという関係のあり方だけでは企業の業績や社会状況により支援の打ち切りがいつくるともかぎりません。そうならないためにも選手や競技団体と企業が互いにメリットのある関係性を構築し、また、互いをさまざまな社会課題を協力し合って解決していくパートナーとして位置づける必要があります。そうした関係を土台として、企業も選手も競技団体も成長していけると考えられます。第4回で紹介されている特定非営利活動法人日本ブラインドサッカー協会は、そうした企業との関係を持っている好事例といえます。  第3回はパラアスリートを支える装具についてのレポートでした。義足や車いすなどの発展は選手のパフォーマンスの向上につながるだけでなく、その技術や素材は日常で使用する車いすや義足などにも汎用されています。本連載のなかでも触れられたチタン合金やカーボンファイバーは軽くて丈夫な素材として日常生活用の装具や車いすにも使われるようになりました。また、身体を正確に素早く計測し、選手の負担を軽減する技術やスポーツ時の安定した動きを実現するための義足や車いすの構造なども同様です。トップ選手のために開発された技術は一般の車いすや義肢、装具に活かされているのです。こうして開発された技術の恩恵に成長期にある子どもたちも与(あずか)れることを願っています。成長に合わせて高価な装具などを買い替えていくことはむずかしく、そのことが子どもたちのスポーツ参加の機会を奪っていると考えます。もっとも運動の欲求やニーズが高い青少年期の子どもたちがこうした補助具を簡単に利用できる仕組みがあれば、さらにパラスポーツの強化と普及に、そして何より子どもたちの成長に貢献できるはずです。  第4回と第5回では肢体不自由、視覚障害、聴覚障害、知的障害のある人のスポーツ実践とそれを支える競技団体や障害者スポーツセンターなどを紹介しました。第2回と第3回の報告も含め、障害のある人のスポーツにはさまざまな人がかかわっていることがわかります。サポートする人の幅広さは障害のない人のそれよりも大きいと思われます。それでもなお、障害のある人のスポーツ実施率は障害のない人に比べて低い傾向が続いています(図1)。 障害のある人がスポーツを継続するために  さて、障害のある人がスポーツを始め、継続するためには次の七つの条件が揃う必要があることが近年わかってきました(※3)。@〜Bまではスポーツにアクセスするための条件、C〜Fはスポーツを継続するための条件です。 @スポーツを始める前の状況(スポーツに関心があるか否かなど) A障害者スポーツに関する情報を得ている B障害者スポーツの場へのファーストアクセスがある Cチームやクラブなど障害者スポーツを継続するための受け皿がある D継続的な障害者スポーツの場へのアクセス方法が確保されている E競技レベルに応じた社会的支援(家族、職場などの支援)、経済的支援(海外遠征、合宿、用具の購入など)がある F何らかの形(ロールモデルの存在、指導者、ライバルの存在、パラリンピックなどの大会、目標となる記録や成績など)で競技に対するモチベーションが維持されている  2021(令和3)年にパラリンピックが東京で開催されたことから、開催前から、多くの人々がパラスポーツに注目し、相当量の報道がなされました(図2)。また、小・中学校を中心にオリンピック・パラリンピックに関する教育が全国各地で展開され、子どもたちもパラスポーツについて学んだり、体験したりしました。その結果、国民の多くがパラスポーツに関する知識を得るようになり、障害のある人もパラスポーツに関する情報をさまざまなルートで得られるようになりました。七つの条件のうち、Aに関して大きな進歩が見られたといえます。国際大会で活躍するようなトップレベルの選手たちについてはアスリート雇用が促進されたり、各種助成金が支払われたりするようになり、条件のEが改善され、競技に集中できる環境も整ってきたといえます。  しかしながら障害のある人がスポーツを実施しやすい環境が十分であるとはまだいえません。ここでは特に条件@について触れておきたいと思います。2023年度のスポーツ庁の調査(※4)で障害のある人が運動・スポーツを実施しない理由の上位三つは(複数回答)「運動・スポーツが嫌いである」(33.4%)、次に「特に理由はない」(24.0%)、3番目が「運動・スポーツに興味がない」(23.0%)でした。運動・スポーツへの関心のなさが大きな要因になっていることがわかります。過去に運動・スポーツを実施する機会が少なかったり、うまくできないことが原因で嫌いになったり、興味を失うことがあったのではないかと推察されます。このようなことを減らすため、まずは運動やスポーツに関心を持てるような環境をつくる必要があります。学校、地域あるいは職場などのスポーツの現場において、どのように障害のある人にスポーツに参加してもらうのかを考え、さまざまな取組みがなされることが必要です。  2025年にはデフリンピック大会が東京で、2026年にはアジア・アジアパラ競技大会が愛知・名古屋で開催されることが決まっています。東京パラリンピックに続き、パラスポーツの国際大会が国内で開催されることは人々に障害のある人やパラスポーツに関心を持ち続けてもらうためのよい機会だといえます。こうした大会のレガシーとして多くの障害のある人がスポーツを通じて日々の楽しみや自己実現ができ、障害のある人もない人も、ともにスポーツを楽しめる社会、すなわち共生社会が実現することを期待したいと思います。 ※1 公益財団法人ヤマハ発動機スポーツ振興財団「2023(令和5)年度障害者スポーツを取巻く社会的環境に関する調査研究」 ※2 公益財団法人笹川スポーツ財団「中央競技団体現況調査 2022年度報告書」 ※3 公益財団法人ヤマハ発動機スポーツ振興財団「2022(令和4)年度障害者スポーツを取り巻く社会的環境に関する調査研究」 ※4 スポーツ庁「障害児・者のスポーツライフに関する調査(令和5年度)」 図1 週1回以上スポーツを実施した人の割合(%) 2013年 障害者:20歳以上で週に1日以上実施18.2 2015年 障害者:20歳以上で週に1日以上実施19.2 国民全体:20歳以上で週に1日以上実施40.4 2017年 障害者:20歳以上で週に1日以上実施20.8 国民全体:20歳以上で週に1日以上実施51.5 2019年 障害者:20歳以上で週に1日以上実施25.3 国民全体:20歳以上で週に1日以上実施53.6 2020年 障害者:20歳以上で週に1日以上実施24.9 国民全体:20歳以上で週に1日以上実施59.9 2021年 障害者:20歳以上で週に1日以上実施31 国民全体:20歳以上で週に1日以上実施56.4 2022年 障害者:20歳以上で週に1日以上実施30.9 国民全体:20歳以上で週に1日以上実施52.3 2023年 障害者:20歳以上で週に1日以上実施32.5 国民全体:20歳以上で週に1日以上実施52 「スポーツの実施状況等に関する世論調査」および「障害児・者のスポーツライフに関する調査」(いずれもスポーツ庁)より筆者作成 図2 2004年以降の障害者スポーツ関連の記事数 夏季パラリンピック開催年 2004年1778 2008年1815 2012年1867 2016年8437 2021年13767 冬季パラリンピック開催年 2006年1075 2010年1195 2014年3972 2018年7913 パラリンピック未開催年 2005年762 2007年642 2009年783 2011年571 2013年2029 2015年4714 2017年6817 2019年8398 2020年7646 (2004年〜2021年の朝日新聞、毎日新聞、読売新聞に掲載されたスポーツ関連の記事数。各社データベースにて「パラスポーツ」など関連キーワードとして検索した記事の合計。筆者作成) 【P28-29】 研究開発レポート テレワークにおける職場適応のための支援技法の開発 障害者職業総合センター職業センター  当機構(JEED)の障害者職業総合センター職業センター(以下、「職業センター」)では、発達障害者、精神障害者、高次脳機能障害者の方々や事業主などに対し、よりよい支援を提供するために、職業リハビリテーション技法の開発、改良および普及を行っています。  テレワークは、新型コロナウイルス感染症の拡大やそれにともなう緊急事態宣言を契機に、各企業がクラウドサービスを導入したことなどにより、広がりを見せました。自宅や移動先においても出社時と同等の環境で仕事ができるようになったことや、働く場所や時間に縛られない多様な働き方として、現在においても、一定のニーズがあると考えられます。また、障害者にとっても「通勤負担の軽減」や「体調に合わせた働き方」といったテレワークのメリットは、働き続けるために重要な要素といえます。  一方、JEEDの地域障害者職業センターなどからは、テレワークに関する知識や効果的な支援ノウハウの不足など、急速に広がったテレワークに関連する相談に苦慮しているとの意見があげられました。このような新しい就労支援ニーズに対応するため、テレワークにおける職場適応に求められる基礎的な対応力の習得を目的としたプログラム(以下、「テレワークプログラム」)を開発し、2023(令和5)年度末に支援マニュアルNo.25「テレワークにおける職場適応のための支援技法の開発」(※1)を取りまとめましたので、その概要について紹介します。 【テレワークプログラムの概要】  テレワークプログラムは、おもに会社に雇用されている「雇用型テレワーカー」が、自宅でテレワークを行うことを想定して開発しました。  テレワークプログラムでは、テレワークに求められる基礎的な対応力を表の通り整理しました。このうち、特に「自己発信力」、「作業の自己管理力」、「体調の自己管理力」について講習や演習、実践を通じて理解を深めることを目的としています。  テレワークプログラムは、三つの「ユニット」とテレワークでの働き方を想定した「ナビゲーションブックの作成」から構成されます。受講者のテレワークの実施経験や知識の有無などによって、必要なユニットを取り出して実施することも可能です。  また、テレワークプログラムの対象はテレワークでの就職や復職を目ざす方だけではなく、Web会議システムなどにおけるコミュニケーションスキルの確認をしたい方、支援者と離れた場所にいても自律的に作業ができるか確認したい方にも、ご活用いただけます。 【テレワークプログラム 各ユニットの内容】 ●ユニット1  テレワークという働き方の特徴や、テレワークで求められる力について確認するユニットです。ユニット1は「【講習】テレワークとは?」、「【講習】テレワーカーに求められること」の二つの講習から成ります。テレワークの経験がない方、テレワークで求められるスキルを確認したい方を対象としています。 ●ユニット2  テレワークで求められる力のうち、コミュニケーションに焦点をあて、ポイントを確認するユニットです。ユニット2は「【講習】テレワークで使うコミュニケーションツール」、「【講習】テレワークでのコミュニケーションに必要な力」の二つの講習と、「【演習】Web会議システム上で『報告する』〜テレワークプログラム版JST〜」(※2)、「【演習】Web会議システム上で『画面共有しながら説明する』」の二つの演習からなります。演習では実際にWeb会議システムを操作しながら、報告や画面共有のポイントを確認します。メールやWeb会議システムなどのオンラインツールを使用したコミュニケーションの特徴や留意点を知りたいという方を対象としています。 ●ユニット3  テレワークで求められるスキルを実践するためのユニットです。対象者と支援者が離れた場所で作業を実施し、テレワークに求められる基礎的な対応力のうち、特に「自己発信力」、「作業の自己管理力」、「体調の自己管理力」を重点的に確認します。実施場所は自宅や、施設内で実施する場合は個室など支援者と離れた環境を設定します。  ユニット3を実施後、ふりかえりシート(図)を用いたふり返りを行い、テレワークに求められる基礎的な対応力がどこまでできていたかを確認し、ナビゲーションブックに反映させる内容を検討・整理します。 【ナビゲーションブックの作成】  テレワークプログラムを通じて気づいた得意なことや苦手なこと、その対処方法について、具体的な内容をナビゲーションブックに取りまとめます。ナビゲーションブックの作成は、特にテレワークでの就職や復職を希望している受講者を対象としています。 【実施上の留意事項】  テレワークプログラムの実施前には、オリエンテーションを行い、受講目的や進め方について支援者と受講者で確認します。また、講習・演習・作業を実施した後は、必ずふり返りを行います。  テレワークプログラムは、テレワークの性質上、オンラインでの支援を前提として開発しましたが、ユニット2の【演習】を除き、実施方法はオンラインでも対面でも可能です。  また、支援マニュアルにはユニット1、2の【講習】の音声つき映像資料が収録されたDVDを添付しています。講習を実施する際や、自学習教材として活用いただけます。  支援マニュアルNo.25「テレワークにおける職場適応のための支援技法の開発」は、今号の14ページでも紹介しています。また、冊子の配付を希望される場合は、職業センターに直接ご連絡ください(★)。 ※1 「支援マニュアルNo.25」は、https://www.nivr.jeed.go.jp/center/report/support25.htmlよりダウンロードできます ※2 JSTの詳細は、支援マニュアルNo.6「発達障害者のための職場対人技能トレーニング(JST)」をご参照ください https://www.nivr.jeed.go.jp/center/report/support06.html ★障害者職業総合センター職業センター TEL:043-297-9043 https://www.nivr.jeed.go.jp/center/center.html 表 テレワークに求められる基礎的な対応力 テレワークの基礎知識 作業環境の整備 情報管理能力 パソコンの基本スキル コミュニケーション 自己発信力 自己管理 作業の自己管理力 体調の自己管理力 自己理解 テレワークに必要な力を踏まえた自らの得意・不得意の理解 図 テレワークプログラム【ふりかえりシート】 【P30-31】 ニュースファイル 地方の動き 神奈川 障害のある職員がフリマ出品作業  横須賀(よこすか)市では、株式会社メルカリ(東京都)がサービスを提供するフリーマーケットアプリ「メルカリ」内に仮想店舗を開設し、その出品作業の一部を、障害のある職員が担当している。本庁舎で雇用されている「障害者ワークステーション」の会計年度任用職員(雇用期間最大3年)で、これまでシール貼りや文書の仕分けなどの軽作業に従事していた。新たにパソコンを使ったデジタル業務にたずさわり、出品商品の説明文をパソコンで入力したり、写真データをアップしたりしている。  同ステーションには現在8人が在籍し、ジョブコーチによる支援を受けながら作業に従事している。市は、定型的な作業から「一歩踏み出した」業務にチャレンジし、パソコンやインターネットを活用した業務のスキルアップを図り、業務に対する自信を深め、次のステップである一般就労につなげていくとしている。 兵庫 事業者に合理的配慮アドバイザーを派遣  兵庫県は、障害者支援や障害者雇用に精通した専門家「合理的配慮アドバイザー」を無料で派遣し、事業者の悩みについてサポートする事業を始めた。障害者差別解消法により2024(令和6)年4月から事業者による障害のある人への合理的配慮の提供が義務化されたことによるもので、「事業者」とは企業や団体、店舗のことであり、個人事業主やボランティア活動をするグループも「事業者」に含まれる。  県では、個人や団体、営利目的か非営利目的かを問わずサポート対象とし、障害者支援の専門家を派遣する。派遣地域は県内で、1回につき2時間程度。  アドバイスを求められる事例と派遣する専門家は、例えば、@接客研修で障害者への対応を学ぶ(障害者相談支援事業所管理者クラス)、Aユニバーサル化投資の留意点を知る(特例子会社マネージャークラス)、B障害者差別解消法により事業者等に求められる対応を学ぶ(障害者地域生活支援センター管理者クラス)などを想定している。専門家の派遣を希望する場合は、兵庫県福祉部障害福祉課に問合せのうえ、申請をする。 電話:078−362−9104 生活情報 全国 精神障害者の運賃割引へ  JR6社と一部の大手私鉄は、障害者を対象とする割引制度について、新たに精神障害者と介護者の運賃を一定の条件で半額に割り引く制度を2025年4月1日から開始すると発表した。今後、各自治体で精神障害者保健福祉手帳に旅客鉄道株式会社旅客運賃減額欄を設け、第1種または第2種の別が表記される予定。  JR6社によると、第1種精神障害者と介護者1人の普通乗車券や定期乗車券などが5割引に、12歳未満の第2種精神障害者は本人と介護者1人の定期乗車券が5割引になる。また、当事者が1人で利用する際は片道100kmを超える場合にかぎり、第1種、第2種ともに普通乗車券が5割引になる。 全国 盲導犬利用者の4割超が「受入れ拒否」を経験  公益財団法人日本盲導犬協会(神奈川県)は、盲導犬のユーザー237人に行った聞き取り調査において、2023(令和5)年の1年間で盲導犬同伴を理由とした「受入れ拒否にあった」と回答した人が103人と、全体の44%にのぼったと発表した。  本調査によると、拒否された件数は全体で208件。拒否された施設は、飲食店が114件(55%)、交通機関が25件(12%)、宿泊施設18件(9%)などだった。拒否の原因として、「従業員の教育不足」や「受け入れの義務を知らない」など、法律の認識不足が70%以上を占めたという。  あるケースでは、駅前ロータリーで、ユーザーがタクシーを利用しようとしたところ乗務員が「盲導犬とはいえ、犬は乗せられない」と拒否。次に待つタクシー乗務員にたずねたところ問題なく乗車でき、後日タクシー会社に問い合わせると「乗務員の教育不足だった」との謝罪があったという。  同協会では、ホームページで「盲導犬受け入れ拒否対応事例集」を公開しているほか、公式YouTube チャンネルで動画を公開し、盲導犬や視覚障害の基礎知識、法律や障害のとらえ方、サポート方法などをわかりやすく紹介している。 ホームページ:https://www.moudouken.net/special/case-study/ 公式YouTubeチャンネル:https://youtube.com/watch?v=wj3P-JhyzF4 全国 「読書バリアフリー推進」3団体が声明  作家らでつくる「公益社団法人日本文藝家協会(東京都)」、「一般社団法人日本推理作家協会(東京都)」、「一般社団法人日本ペンクラブ(東京都)」の3団体が、「読書バリアフリーに関する三団体共同声明」を発表した。  「すべての人に表現を届けるために、そして誰もが自由に表現できるように」として、「読書バリアフリー法」(視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律、2019〈令和元〉年6月施行)、改正「障害者差別解消法」(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律、2024年4月施行)、「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」(障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律、2022年5月施行)に賛同し、「私たちは出版界、図書館界とも歩調をあわせ読書環境整備施策の推進に協力を惜しみません」と述べている。 全国 就労障害者の保険引受け範囲拡大  「ぜんち共済株式会社」(東京都)は、就労している障害者に向けて、保険引受け範囲を拡大した。  ぜんち共済は、全国の知的障害者とその関係者を対象に福利厚生制度を行うために設立された全国知的障害者共済会を前身としており、おもな対象を知的障害や発達障害、ダウン症、てんかんのある人としていた。今回、段階的な取組みとして、就労者にかぎり、障害者手帳の種類に関係なく保険に加入できるようにした。  対象の就労者は、@一般就労をしている人(正社員・契約社員・パート・アルバイトなど)、A就労継続支援A型・B型事業所で働いている人、B就労移行支援事業所に在籍している人とし、これまで個人賠償責任補償では対象外となっていた職業従事中の「他人にケガをさせたとき、他人の物を壊したとき」に補償できる「就労応援プラン」も用意した。 本紹介 『きょうだいの進路・結婚・親亡きあと50の疑問・不安に弁護士できょうだいの私が答えます』  弁護士の藤木(ふじき)和子(かずこ)さんが、『きょうだいの進路・結婚・親亡きあと50の疑問・不安に弁護士できょうだいの私が答えます』(中央法規出版刊)を出版した。  藤木さんは5歳のとき、3歳下の弟の聴覚障害がわかったという。幼少期から「弟と私は将来どうなるのだろう」、「私は実家や地元を出てよいのか」などと悩みながら弁護士になった藤木さんは、2010(平成22)年ころから当事者団体「きょうだいの会」に参加。先輩の体験談からヒントを得るとともに、きょうだい特有の悩みの幅広さとむずかしさを痛感したことから、きょうだいの立場の弁護士として、発信や相談などの活動を行っている。  本では「一生、障害のある弟の世話をしなくてはいけない?」、「結婚相手にはいつ・どう話す?」、「親亡きあとはどうする?」など、きょうだいが抱く悩みや疑問、不安などについて50項目をQ&A形式でまとめている。A5判162ページ、1980円(税込)。 ミニコラム 第36回 編集委員のひとこと ※今号の「編集委員が行く」(20〜25ページ)は若林委員が執筆しています。  ご一読ください。 障害者職業能力開発・職業訓練にもっと着目を 国際医療福祉大学准教授 若林功  障害者就労支援、雇用支援というと、障害者雇用促進法に基づく支援機関(地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなど)や、障害者総合支援法に基づく施設(就労移行支援事業所など)が着目されることが多い。そのほか、特別支援学校の進路指導には就労支援も含まれるし、病院でも就労支援に取り組んでいるところもある。これらと同様に職業能力開発促進法に基づく職業能力開発校(職業訓練校)も、実践上重要な役割をになっているし、さまざまな工夫も行われており、その実践には非常に魅力的な面がある。職業リハビリテーションの歴史の上で欠かせない存在でもある。一方で、先述した諸組織・機関に比べ、職業能力開発は障害者就労支援分野において、なかなか着目されていなかったり、十分に知られていないのではないかという想いが私にはある。障害者を支援する支援者側であっても、就労支援と直接は関係していない(場合がある)市町村の福祉窓口担当者や相談支援事業所などの担当職員に、障害者職業能力開発があまり知られていない場合が少なくないように感じている。そこで今回は、職業能力開発の取組みについてもっと世の中に知ってもらいたいと考え、取り上げたという面もある。  一方で、職業能力開発分野側からすると(障害者職業能力開発も含め)、自分たちはあくまでも職業能力開発分野の人間であり、障害者就労支援分野ではない、という意識、矜持(きょうじ)を持っておられる場合もあるようである。職業能力開発は、法制度上の職業リハビリテーション分野とは別に発展してきたという経緯のある制度であるからかもしれない。ただし、利用者(障害者や企業等)にとってみればそうした区分はどうでもよいことであり、いずれの機関を利用しようとも、障害者が就職して充実した職業生活が送れるようになることが一番の関心事であろう。利用者中心・主体のサービスであることを前提に、職業能力開発、それ以外の障害者支援分野、それぞれの考え方を尊重しつつも、職業能力開発を含んだよい就労支援の実践が世の中により普及していくことを願うものである。 【P32】 掲示板 読者の声 製造の第一線で活躍する山口さん 株式会社いけうち西脇市堀工場 飛田(ひだ)平(たいら)  株式会社いけうち西脇市堀工場では、霧を生み出すノズルおよびその技術を応用した各種製品を製造しており、また、近隣農場では、霧を利用したトマト栽培なども行っています。  山口さんは、兵庫県立北はりま特別支援学校の3年生のときに職場見学および実習を行い、2020(令和2)年4月に採用となりました。  当時の山口さんはたいへんな人見知りで、職場見学のときには先生の陰に隠れているし、面談をしてもほとんど何も話さない、という状況でした。どう対応すればよいのか戸惑ったものの、補助的な業務ならできると判断し、採用することになりました。  しかし、入社後の山口さんは意欲的に業務に取り組み、翌年にはステンレス鋼溶接技能者の資格も取得し、現在は溶接工として製造の第一線で活躍しています。また、新しい知識や技術を積極的に習得していますし、溶接技術を活かして、作業用治具や防護用の衝立などを自ら考えて製作するなど、職場環境の改善活動にも力を入れています。  このように、機会を与えることで、障害のある従業員はどんどん力を発揮し、そのことが企業の成長につながるのではないでしょうか。山口さんの仕事ぶりから、そのようなことを考えさせられています。 雇用管理や人材育成の「いま」・「これから」を考える人事労務担当の方、ぜひご覧ください! メールマガジン好評配信中! 詳しくは JEED メルマガ 検索 次号予告 ●私のひとこと  京都大学医学部附属病院精神科神経科客員研究員で精神科医の亀井士郎さんに、強迫症について、ご自身の強迫症の治療経験などもふまえ、ご執筆いただきます。 ●職場ルポ  障害者雇用を社会貢献の一環として積極的に取り組んできた静清信用金庫(静岡県)を訪問。ハローワークや地域の支援機関と連携して定着を図る職場の様子を取材しました。 ●グラビア  小田原市を中心にスーパーマーケット「Pantry(パントリー)」をチェーン展開する株式会社小田原百貨店(神奈川県)で、個々の能力を活かし職場で活躍する従業員の様子を紹介します。 ●編集委員が行く  大塚由紀子編集委員が、株式会社王将フードサービスの特例子会社、株式会社王将ハートフル(京都府)を取材。リーダー制度など、一人ひとりのキャリア形成の工夫や、その取組みについてお伝えします。 公式X(旧Twitter)はこちら! 最新号発行のお知らせやコーナー紹介などをお届けします。 @JEED_hiroba 本誌購入方法  定期購読のほか、最新号やバックナンバーのご購入は、下記へお申し込みください。  1冊からのご購入も受けつけています。 ◆インターネットでのお申し込み 富士山マガジンサービス 検索 ◆お電話、FAXでのお申し込み 株式会社広済堂ネクストまでご連絡ください。 TEL 03-5484-8821 FAX 03-5484-8822 あなたの原稿をお待ちしています ■声−−障害者雇用にかかわるお考えやご意見、行事やできごとなどを500字以内で編集部(企画部情報公開広報課)まで。 ●発行−−独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 境 伸栄 編集人−−企画部次長 綱川香代子 〒261−8558 千葉県千葉市美浜区若葉3−1−2 電話 043−213−6200(企画部情報公開広報課) ホームページ https://www.jeed.go.jp メールアドレス hiroba@jeed.go.jp ●発売所−−株式会社広済堂ネクスト 〒105−8318 東京都港区芝浦1−2−3 シーバンスS館13階 電話 03−5484−8821 FAX 03−5484−8822 7月号 定価141円(本体129円+税)送料別 令和6年6月25日発行 無断転載を禁ずる ・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。また、本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。 編集委員 (五十音順) 株式会社FVP代表取締役 大塚由紀子 トヨタループス株式会社 管理部次長 金井渉 NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク 副理事・統括施設長 金塚たかし 弘前大学教職大学院 教授 菊地一文 武庫川女子大学 准教授 諏訪田克彦 サントリービバレッジソリューション株式会社 人事本部 副部長 平岡典子 神奈川県立保健福祉大学 名誉教授 松爲信雄 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 筑波大学大学院 教授 八重田淳 国際医療福祉大学 准教授 若林功 【P33】 読者アンケートにご協力をお願いします! いつもご愛読いただき、ありがとうございます。 「働く広場」では、よりよい誌面をつくるため、読者アンケートを実施しています。 ぜひみなさまの声をお聞かせください。 お待ちしています! 回答方法 今号に同封した「読者アンケート」用紙にご記入のうえ、FAXにてお寄せください。 FAX 番号はこちら→043-213-6556 Webでの回答も可能です。 コードはこちら ※カメラで読み取ったリンク先がhttps://krs.bz/jeed/m/hiroba_enquete であることを確認のうえアクセスしてください 【令和5年度読者アンケート結果の一部より】 ご回答者の所属先 民間企業61.9% 障害者福祉施設(就労支援機関を含む)・団体18.0% 学校・教育機関4.7% 医療機関4.1% 国、地方公共団体の機関4.4% 個人1.4% その他5.0% 無回答0.6% ※その他:社会福祉協議会、介護施設、NPO法人 など 「働く広場」は参考になっていますか? 非常に参考になる19.3% 参考になる66.3% あまり参考にならない7.2% 参考にならない1.7% 無回答5.5% 参考になったコーナーとその理由 【職場ルポ】実際の対応や工夫されているところなどがわかりやすい。/職場の生の声を聞くことができる。 【グラビア】さまざまな業種での活躍ぶりを知ることができる。/実際に行っている業務が写真でわかりやすい。 【編集委員が行く】他社の先進的事例などが学べ、自身の知識のアップデートができる。/企業、学校、病院などさまざまな視 点から、就労支援について話を聞けるので新たな発見がある。 企画部 情報公開広報課 TEL:043-213-6200 【裏表紙】 国立職業リハビリテーションセンター 中央障害者職業能力開発校 受講生募集 障害のある方の職業訓練校です 就職に必要な知識・技能を習得するための訓練を行っています 受講料無料 オープンキャンパス毎月開催 メカトロ系 機械製図科 電子機器科 テクニカルオペレーション科 物流系 物流・資材管理科 情報系 OAシステム科 DTP・Web技術科 ビジネス系 経理事務科 OA事務科 オフィスワーク科 建築系 建築設計科 職域開発系 アシスタントワーク科 職リハ ホームページで訓練内容や施設の説明がご覧になれます。 お問い合わせ先 職業指導部職業評価課(〒359-0042 埼玉県所沢市並木4丁目2番地) 電話:04-2995-1201 E-Mail:shokureha-hyokaka@jeed.go.jp Web:https://www.nvrcd.jeed.go.jp 7月号 令和6年6月25日発行 通巻561号 毎月1回25日発行 定価141円(本体129円+税)