研究開発レポート テレワークにおける職場適応のための支援技法の開発 障害者職業総合センター職業センター  当機構(JEED)の障害者職業総合センター職業センター(以下、「職業センター」)では、発達障害者、精神障害者、高次脳機能障害者の方々や事業主などに対し、よりよい支援を提供するために、職業リハビリテーション技法の開発、改良および普及を行っています。  テレワークは、新型コロナウイルス感染症の拡大やそれにともなう緊急事態宣言を契機に、各企業がクラウドサービスを導入したことなどにより、広がりを見せました。自宅や移動先においても出社時と同等の環境で仕事ができるようになったことや、働く場所や時間に縛られない多様な働き方として、現在においても、一定のニーズがあると考えられます。また、障害者にとっても「通勤負担の軽減」や「体調に合わせた働き方」といったテレワークのメリットは、働き続けるために重要な要素といえます。  一方、JEEDの地域障害者職業センターなどからは、テレワークに関する知識や効果的な支援ノウハウの不足など、急速に広がったテレワークに関連する相談に苦慮しているとの意見があげられました。このような新しい就労支援ニーズに対応するため、テレワークにおける職場適応に求められる基礎的な対応力の習得を目的としたプログラム(以下、「テレワークプログラム」)を開発し、2023(令和5)年度末に支援マニュアルNo.25「テレワークにおける職場適応のための支援技法の開発」(※1)を取りまとめましたので、その概要について紹介します。 【テレワークプログラムの概要】  テレワークプログラムは、おもに会社に雇用されている「雇用型テレワーカー」が、自宅でテレワークを行うことを想定して開発しました。  テレワークプログラムでは、テレワークに求められる基礎的な対応力を表の通り整理しました。このうち、特に「自己発信力」、「作業の自己管理力」、「体調の自己管理力」について講習や演習、実践を通じて理解を深めることを目的としています。  テレワークプログラムは、三つの「ユニット」とテレワークでの働き方を想定した「ナビゲーションブックの作成」から構成されます。受講者のテレワークの実施経験や知識の有無などによって、必要なユニットを取り出して実施することも可能です。  また、テレワークプログラムの対象はテレワークでの就職や復職を目ざす方だけではなく、Web会議システムなどにおけるコミュニケーションスキルの確認をしたい方、支援者と離れた場所にいても自律的に作業ができるか確認したい方にも、ご活用いただけます。 【テレワークプログラム 各ユニットの内容】 ●ユニット1  テレワークという働き方の特徴や、テレワークで求められる力について確認するユニットです。ユニット1は「【講習】テレワークとは?」、「【講習】テレワーカーに求められること」の二つの講習から成ります。テレワークの経験がない方、テレワークで求められるスキルを確認したい方を対象としています。 ●ユニット2  テレワークで求められる力のうち、コミュニケーションに焦点をあて、ポイントを確認するユニットです。ユニット2は「【講習】テレワークで使うコミュニケーションツール」、「【講習】テレワークでのコミュニケーションに必要な力」の二つの講習と、「【演習】Web会議システム上で『報告する』〜テレワークプログラム版JST〜」(※2)、「【演習】Web会議システム上で『画面共有しながら説明する』」の二つの演習からなります。演習では実際にWeb会議システムを操作しながら、報告や画面共有のポイントを確認します。メールやWeb会議システムなどのオンラインツールを使用したコミュニケーションの特徴や留意点を知りたいという方を対象としています。 ●ユニット3  テレワークで求められるスキルを実践するためのユニットです。対象者と支援者が離れた場所で作業を実施し、テレワークに求められる基礎的な対応力のうち、特に「自己発信力」、「作業の自己管理力」、「体調の自己管理力」を重点的に確認します。実施場所は自宅や、施設内で実施する場合は個室など支援者と離れた環境を設定します。  ユニット3を実施後、ふりかえりシート(図)を用いたふり返りを行い、テレワークに求められる基礎的な対応力がどこまでできていたかを確認し、ナビゲーションブックに反映させる内容を検討・整理します。 【ナビゲーションブックの作成】  テレワークプログラムを通じて気づいた得意なことや苦手なこと、その対処方法について、具体的な内容をナビゲーションブックに取りまとめます。ナビゲーションブックの作成は、特にテレワークでの就職や復職を希望している受講者を対象としています。 【実施上の留意事項】  テレワークプログラムの実施前には、オリエンテーションを行い、受講目的や進め方について支援者と受講者で確認します。また、講習・演習・作業を実施した後は、必ずふり返りを行います。  テレワークプログラムは、テレワークの性質上、オンラインでの支援を前提として開発しましたが、ユニット2の【演習】を除き、実施方法はオンラインでも対面でも可能です。  また、支援マニュアルにはユニット1、2の【講習】の音声つき映像資料が収録されたDVDを添付しています。講習を実施する際や、自学習教材として活用いただけます。  支援マニュアルNo.25「テレワークにおける職場適応のための支援技法の開発」は、今号の14ページでも紹介しています。また、冊子の配付を希望される場合は、職業センターに直接ご連絡ください(★)。 ※1 「支援マニュアルNo.25」は、https://www.nivr.jeed.go.jp/center/report/support25.htmlよりダウンロードできます ※2 JSTの詳細は、支援マニュアルNo.6「発達障害者のための職場対人技能トレーニング(JST)」をご参照ください https://www.nivr.jeed.go.jp/center/report/support06.html ★障害者職業総合センター職業センター TEL:043-297-9043 https://www.nivr.jeed.go.jp/center/center.html 表 テレワークに求められる基礎的な対応力 テレワークの基礎知識 作業環境の整備 情報管理能力 パソコンの基本スキル コミュニケーション 自己発信力 自己管理 作業の自己管理力 体調の自己管理力 自己理解 テレワークに必要な力を踏まえた自らの得意・不得意の理解 図 テレワークプログラム【ふりかえりシート】