ミニコラム 第36回 編集委員のひとこと ※今号の「編集委員が行く」(20〜25ページ)は若林委員が執筆しています。  ご一読ください。 障害者職業能力開発・職業訓練にもっと着目を 国際医療福祉大学准教授 若林功  障害者就労支援、雇用支援というと、障害者雇用促進法に基づく支援機関(地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなど)や、障害者総合支援法に基づく施設(就労移行支援事業所など)が着目されることが多い。 そのほか、特別支援学校の進路指導には就労支援も含まれるし、病院でも就労支援に取り組んでいるところもある。これらと同様に職業能力開発促進法に基づく職業能力開発校(職業訓練校)も、実践上重要な役割をになっているし、 さまざまな工夫も行われており、その実践には非常に魅力的な面がある。職業リハビリテーションの歴史の上で欠かせない存在でもある。一方で、先述した諸組織・機関に比べ、職業能力開発は障害者就労支援分野において、なかなか 着目されていなかったり、十分に知られていないのではないかという想いが私にはある。障害者を支援する支援者側であっても、就労支援と直接は関係していない(場合がある)市町村の福祉窓口担当者や相談支援事業所などの担当職 員に、障害者職業能力開発があまり知られていない場合が少なくないように感じている。そこで今回は、職業能力開発の取組みについてもっと世の中に知ってもらいたいと考え、取り上げたという面もある。  一方で、職業能力開発分野側からすると(障害者職業能力開発も含め)、自分たちはあくまでも職業能力開発分野の人間であり、障害者就労支援分野ではない、という意識、矜持(きょうじ)を持っておられる場合もあるようである。 職業能力開発は、法制度上の職業リハビリテーション分野とは別に発展してきたという経緯のある制度であるからかもしれない。ただし、利用者(障害者や企業等)にとってみればそうした区分はどうでもよいことであり、いずれの機関 を利用しようとも、障害者が就職して充実した職業生活が送れるようになることが一番の関心事であろう。利用者中心・主体のサービスであることを前提に、職業能力開発、それ以外の障害者支援分野、それぞれの考え方を尊重しつつも、 職業能力開発を含んだよい就労支援の実践が世の中により普及していくことを願うものである。