【表紙】 令和6年8月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第563号 ISSN 0386-0159 障害者と雇用 2024/9 No.563 職場ルポ 土質試験業務やCAD操作などで能力を発揮 株式会社ダイワ技術サービス(宮城県) グラビア 令和6年度障害者雇用支援月間における絵画・写真コンテスト入賞作品 「絵画コンテスト 働くすがた〜今そして未来〜」 「写真コンテスト 職場で輝く障害者〜今その瞬間〜」 編集委員が行く 「きときと」こまつな こまつな菊ちゃんハウス(富山県) この人を訪ねて 一人暮らしをするダウン症の娘のこと 書家・随筆家/書家 金澤翔子さんの母 金澤泰子さん 「日本の平和を守る警察官」福岡県・今野(こんの)琳(りん)さん 9月は「障害者雇用支援月間」です 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) Japan Organization for Employment of the Elderly, Persons withD isabilities and Job Seekers 9月号 【表紙2】 画像の為、加工できませんでした。 【もくじ】 障害者と雇用 目次 2024年9月号 NO.563 「働く広場」は、障害者雇用の啓発・広報を目的として、ルポルタージュやグラビアなど写真を多く用いて、障害者雇用の現場とその魅力をわかりやすくお伝えします。 この人を訪ねて 2 一人暮らしをするダウン症の娘のこと 書家・随筆家/書家 金澤翔子さんの母 金澤泰子さん 職場ルポ 4 土質試験業務やCAD操作などで能力を発揮 株式会社ダイワ技術サービス(宮城県) 文:豊浦美紀/写真:官野 貴 クローズアップ 10 マンガでわかる! わが社の障害者雇用物語 第1回 障害者雇用、何から始める? JEEDインフォメーション 12 国立職業リハビリテーションセンター国立吉備高原職業リハビリテーションセンター企業担当者向けセミナーのご案内/障害者職業訓練推進交流プラザのご案内/2024(令和6)年度就業支援課題別セミナーのご案内 グラビア 15 33 令和6年度障害者雇用支援月間における絵画・写真コンテスト入賞作品 「絵画コンテスト 働くすがた〜今そして未来〜」 「写真コンテスト 職場で輝く障害者〜今その瞬間〜」 エッセイ 19 てんかんとともに 第3回 ありのままの自分で生きていく シンガー 水野 佳 編集委員が行く 20 「きときと」こまつな こまつな菊ちゃんハウス(富山県) 編集委員 諏訪田克彦 省庁だより 26 特別支援教育における就労支援の取組み 文部科学省初等中等教育局 特別支援教育課 研究開発レポート 28 高次脳機能障害者の就労に役立つ視聴覚教材の開発 障害者職業総合センター職業センター ニュースファイル 30 編集委員のひとこと 31 掲示板・次号予告 32 JEEDメールマガジン登録受付中! ※「心のアート」は休載します 表紙絵の説明 「日本の平和が保てるように、警察官をテーマに選びました。法律を守っていない人に対して、もう悪いことをしてほしくないという思いで描きました。背景の道を描くのがむずかしかったです。白バイのランプが反射しているところがいいなと思います。同級生もこのコンクールで受賞していたので、なおさらうれしかったです」 (令和5年度 障害者雇用支援月間絵画コンテスト 中学校の部 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長奨励賞) ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。 (https://www.jeed.go.jp/disability/data/works/index.html) 【P2-3】 この人を訪ねて 一人暮らしをするダウン症の娘のこと 書家・随筆家/書家 金澤翔子さんの母 金澤泰子さん かなざわ やすこ 書家。随筆家。ダウン症の書家と知られる金澤翔子の母。明治大学卒業。柳田流家元に師事。東京都大田区に「久が原書道教室」を開設。ダウン症の娘を授かり絶望の淵から「希望」を探し続けた母娘二人三脚の軌跡をはじめ、地域とのかかわりや、娘の一人暮らしの様子から障害者の自立をテーマにした講演は高い定評がある。現在はテレビやラジオを中心に多数のメディアに出演する傍ら、随筆家としても活躍し執筆著書は30タイトルを超える。東京芸術大学評議員、日本福祉大学客員教授。 「30歳で一人暮らし」宣言 ――金澤(かなざわ)泰子(やすこ)さんの娘・金澤(かなざわ)翔子(しょうこ)さんは、ダウン症の書家として国内外で大活躍する一方、8年前から一人暮らしをされているそうですね。 金澤 翔子は20歳のとき、周囲に「30歳になったら一人暮らしします」と宣言してしまいました。本当に30歳になって「一人暮らしは?」という質問が周りの方からきて、「やるだけやってみよう」と私も重い腰を上げました。当然不安でした。ダウン症の子の一人暮らしなんて聞いたことがありませんでしたから。  大きな不動産屋さんに相談したところ、「障害者の一人暮らしに貸せる部屋はありません」といわれました。あきらめかけていたら、近所の不動産屋さんが「翔子ちゃんのことは任せて」と、運よく実家から徒歩5分のところに見つけてくれたのです。台車で引っ越し作業をすませ、キャリーバッグで玄関を出るとき、私が「行ってらっしゃい」といったら、「お母さま、行ってらっしゃいじゃないでしょ、サヨナラでしょ」といって、それっきり本当に戻ってきませんでしたね。知合いのカメラマンの女性と一緒に日用品をそろえ、お隣さんがごみ出しを教えてくれました。いまは一人で買い物をし、料理や家事をこなしています。  一人暮らしの翔子にとって、この街は、本当によかったと感じます。私たちは翔子が3歳のとき、亡き夫(翔子さんが14歳のときに急逝)にすすめられてここに越してきました。駅前から続く商店街の長さや道幅の距離がほどよく、近所の方とも気軽に声をかけ合える心地よいところです。  翔子は毎日わずかなお金を握りしめて、この街をひた走ります。おじいちゃんおばあちゃん、いろいろな人の店に通います。毎日通ううちに、みんなが「翔子ちゃん」っていいながらいろいろ助けてくれるようになりました。  一人暮らしの孤独な部分もどうやり過ごしてきたのかなと思いますが、彼女なりに8年間やってきたなかで心が深くなった気がします。幼少期から肌身離さず持ち歩いている人形の「メメちゃん」も、大きな心の支えになっているでしょうね。なんでも話せる大事な相棒のようで、ボロボロになるたびに買い替え、いまは4代目です。 「できないだろう」と思わないで ――翔子さんが、文字通り自立生活を成功させた理由は何でしょうか。 金澤 まず翔子自身が幼少期からなんでも一人でやろうとしてきたことです。これは感受性の強い翔子が、母親の気持ちをくみ取っていたからかもしれません。  障害のある子を持つ親は生涯で二度、大きく苦しむと思います。最初は障害児を授かったと知ったとき、「障害は治らないどころか悪くなるかもしれない」といわれ絶望しました。私たち親子は長い間暗いところをウロウロしてきましたが、だんだん脱却できて、やっと幸せだと思えるようになりました。でも今度は、私が彼女を残して死んでいかなくちゃいけない。これが二度目の苦悩で、障害者の親に与えられる大きな問題といえます。  「なんとか自立させなければ」という私の思いを翔子が感じ取り、幼少期からなんでも一人でやろうとしていました。私は料理を教えたことはありませんが、自分から台所に来て私の様子を観察し、そのうち自分でつくるようになりました。時間はかかります。私は一切手出しをせず、別の部屋でひたすら待ちました。そしてできあがった料理は必ず「美味しいね」と一緒に喜んで食べました。いま翔子は料理が大好きで、YouTubeなどを参考につくっているようです。スマートフォンもパソコンも自由自在に操作しています。自転車は小学生のとき、とりあえず買って置いていたところ、ある日一人で乗っていました。  みなさんに伝えたいのは、障害者、特にダウン症の子は「できないだろう」と勝手に思わないでほしいということです。時間はゆっくりでもできる力があります。やってあげることは優しさかもしれませんが、途中で手を出されたら「やられちゃった」って気持ち、私たちにもありますよね。じっくりと待って、そして励ましてください。 「涙の般若心経」 ――あらためて翔子さんが書家になった経緯を教えてください。 金澤 きっかけは10歳の翔子が、後に「涙の般若心経」と呼ばれるようになった276文字の心経を20組くらい、5000〜6000字を書き上げたことです。当時、小学校4年生から特別支援学級のある学校に移るようにいわれた私は、たくさんの友だちと離れて遠くの学校に行かせることがつらく、翔子と引きこもってしまいました。昔から書道に没頭することが多かった私は、10歳の翔子にも般若心経を書かせました。それしか苦しい時間をしのぐ手立てがありませんでした。結果として、翔子が書家になる基礎をつくっていたようです。翔子の書の根本にあるのは、親子の愛です。  ですから、書家への道は偶然です。いまは一人暮らしの成功が、翔子の最大の功績だと思っています。ほかのダウン症児のお母さんたちから「夢にも思わなかったけど、うちの子も希望が持てた」といわれ、実現した人もいます。約40年前、翔子みたいな元気な子が一人でもいたら、当時の私はあんなに苦しまなかったかもしれません。 ――2年前からは、同じ屋根の下に住んでいるそうですね。 金澤 自宅を売却して、この商店街に見つけた土地に家を建てました。1階が画廊、2階が書道教室、3階が倉庫、4階に翔子が住み、5階に私が住んでいます。  じつは、ここの1階を喫茶店にすることを決めたところです。80歳を超えた私の、親としての最後の大きな決断です。翔子はお客さん、特に高齢者が大好きです。以前あった近所の喫茶店でコーヒーを入れる練習をし、店に来る人たちに「いらっしゃいませ」と笑顔を見せていた姿に「これは翔子の天性だ」と感じていました。私たちの喫茶店は、「そこに行けばだれかいるよ」みたいに通えるオープンな雰囲気の場所にしようと思っています。これまで翔子を育ててくれた地域の人たちが「翔子ちゃんを応援するよ」といってくれることが何よりの支えです。  1階の入口の上には「共に生きる」という翔子の書の看板が掲げられています。この作品は東日本大震災の後、テレビで雪の降る被災地を見て「助けに行く」と泣く翔子に、「心で寄り添っていこうね」といい聞かせ、その思いを表現したものです。これからは翔子自身が、この街と喫茶店で「共に生きる」を体現していけると信じています。 【P4-9】 職場ルポ 土質試験業務やCAD操作などで能力を発揮 ―株式会社ダイワ技術サービス(宮城県)― 公共事業にかかわる測量や図面設計を手がける会社では、精神障害のある従業員が一定の配慮を受けながら、検査業務やCAD操作で能力を発揮している。 (文)豊浦美紀 (写真)官野 貴 取材先データ 株式会社ダイワ技術サービス 〒983-0842 宮城県仙台市宮城野区五輪(ごりん)1-8-3 TEL 022-298-5183 FAX 022-296-3431 Keyword:建設関連業、入札制度、精神障害、就労移行支援、運転業務、検査業務、CAD、就労定着支援 POINT 1 地域のセミナーや労働局への相談などで、現状や対応策を確認 2 求める能力や仕事内容をわかりやすく提示し、幅広く求人 3 就労支援機関との継続的な連携で、情報更新を図る 測量や地質調査  宮城県仙台市に本社を置く「株式会社ダイワ技術サービス」(以下、「ダイワ技術サービス」)は、1985(昭和60)年に設立された建設関連会社。おもに公共事業にかかわる測量や地質調査、設計などを手がけてきた。  同社では、2017(平成29)年から障害者雇用に取り組んでおり、いまでは全従業員61人のうち障害のある従業員は5人(身体障害1人、精神障害4人)、障害者雇用率は8.4%(2024〈令和6〉年6月1日現在)だという。  当初から障害者雇用の陣頭指揮をとってきた理事の小野寺(おのでら)伸(しん)さんは「何もわからない状態からのスタートでしたが、この6年間で採用してきた精神障害のある従業員4人全員が、大事な戦力として働き続けてくれています」と話す。  これまでの経緯とともに、現場で働く4人の仕事ぶりを紹介していきたい。 きっかけは入札制度の変更  ダイワ技術サービスが障害者雇用に本腰を入れることを決めたきっかけは、2017年8月に「宮城県の入札制度が変更される」と報道があったためだったそうだ。変更後の総合評価落札方式では、価格だけでなく技術力や社会性、地域性も加味されていた。当時、取締役営業部長を務めていた小野寺さんが説明する。  「具体的な項目に障害者雇用状況などが含まれていましたが、私たちの職場では当時、障害のある従業員がゼロでした。これだけで大きな劣勢になるとわかり、急いで部長会議で報告した私が、そのまま責任者として取り組むことになりました」  とはいえ障害者雇用について知識がなかったという小野寺さんは、インターネット検索で見つけた仙台市と仙台市障害者就労支援センター「はたらポート仙台」が共催するセミナーに参加した。当日一緒に行われた個別相談会のことを、いまも鮮明に覚えているそうだ。  「私が、担当者の方たちを前に『コンピューターサーバーが管理できる、35歳までの身体障害のある人が希望です』と伝えたところ、全員がポカンと口を開けたような表情になり、『あれ、何かまずかったかな』と思ったぐらいの理解度しかありませんでした」  小野寺さんはその後も障害者雇用について自分なりに調べ、宮城労働局にも足を運んで相談したところ、次のようなアドバイスをもらったという。  「翌年度から障害者の法定雇用率のカウントに精神障害が加わること。また、私たちのような技術系の仕事は、集中力を持続できる特性を活かせるのではないかということ。さらに今後も法定雇用率は上がっていくだろうということでした」 「車を200q運転できる人」  持続性のある障害者雇用を見すえながら、どんな業務で求人票を出せるか検討した小野寺さんは、まず自分の仕事の一部を任せることを思いついた。  「週2〜3日かけて県内の官公庁を回って名刺を置いてくるという営業です。直接職員とは話ができないため、コミュニケーションの不得手を気にする必要がない代わりに、長距離の車の運転が必須です」  小野寺さんはあらためて「はたらポート仙台」に求人のマッチングを依頼し、仕事内容とともに条件として「自動車を200km運転できる人」と伝えた。  そこで紹介されたのがNさん(52歳)だった。もともと不動産系の会社に勤めていたというNさんは、ある日妻から「表情がひきつって手も震えている」と病院の受診をすすめられ、抑うつ状態と診断されて退職。約3年間の療養後に電話オペレーターの仕事に就いたが、2年半で職場が広島県に移転したため再び退職し、あらためてハローワークに通ったそうだ。  「自分のことを話すと『精神障害はむずかしい』と不採用になった会社がいくつかありました。そんなときにダイワ技術サービスを紹介されました。車の運転は好きなので応募してみました」  小野寺さんの指導を受けながら、1週間の職場実習であちこち運転して回ったNさんは「これなら働き続けられそうだ」と自信をつけ、2018年3月に入社した。1日10カ所以上を回って150km以上の運転をするNさんに、小野寺さんは「おかげで私の業務負担は相当軽くなりました」とねぎらう。  Nさんは気圧の変化で体調を崩すことがあるため、勤務はフルタイムの週3日から始めた。3年目には週4日に増やせたが少し無理をしたようで、翌年には再び週3日に戻してもらったという。「休んでしまうときは、別の曜日に振り替えるなど臨機応変に調整させてもらえるのも助かります」というNさんは、「この仕事を続けられるよう、安全運転と健康管理を心がけていきたいです」と話していた。 「土のう15kgを持てる人」  Nさんの働く様子が職場内に知られるようになると、今度は技術第二部の部長から「うちの部署でも採用できないだろうか」と小野寺さんに相談があった。業務は、土質(どしつ)試験だ。それまで担当していた従業員が定年退職するため一般求人を出したものの、なかなか採用に結びつかなかったという。ネックは、試験機に手作業で出し入れする土のうの重さが15kgもあることだった。  そこで、小野寺さんは再び、「はたらポート仙台」に相談をした。今度は「土のう15kgを持てる人」と伝えると、「作業系に強い」と宣伝している就労移行支援事業所からEさん(52歳)を紹介された。  陸上自衛官として20年以上勤務したというEさんは、双極性障害のため40代なかばで3年間の休職を経て辞めた。主治医の紹介で就労移行支援事業所に通っていたEさんは、「パソコン操作などは苦手なので、土のうを運ぶ仕事なら大丈夫だと思いました」と話す。計2週間程度の職場実習を経て、2019年12月に入社した。 作業内容の見える化  まずEさんは、水浸膨張試験と呼ばれる検査業務から覚えた。15kgの土のうを運び入れるだけでなく、吸水・変位計の記録、加熱管理や重量計測などの作業も加わる。  2020年からEさんの指導役として技術第二部の係長を務める宮ア(みやざき)健太郎(けんたろう)さんは、「Eさんは自分の気持ちをなかなか言葉に出さない方なので、私の話をどこまで理解してくれているか把握しにくい状況でした」と明かす。  そもそも土質試験の業務は、取引先から依頼される試験内容が異なっており、定期的な試験だけで12種類もある。作業内容は毎日変わり、それぞれの作業内容や順番も多岐にわたる。  「私が異動してきたときは、現場に職人的な文化が残っていて、なんでも口頭で引き継いでいました」とふり返る宮アさんは、最初はやはり口頭で指示をしていたが、場合によってEさんの頭上に「はてな」マークが並んでいるような表情に気づいた。そこで毎朝、その日に行う作業内容をメモ書きして渡したところ、本人も「ああ!」といって明るい表情になり、スムーズに作業に移るようになったという。  そのうち宮アさんは、作業回数など細かいルールを含めた各試験内容を一覧表にまとめ、現場に貼ることにした。  「口頭だけの指示は、Eさんだけでなく私や新入社員もわかりづらいと感じていました。今後の職場全体のためにも、作業内容を“見える化”させてよかったと思います」  さらに宮アさんは、Eさんが覚えるべき業務として12試験40種ほどの作業をまとめた「習熟度確認表」も作成し、現場に掲示した。そして毎日、作業内容について「これは覚えた?」、「まだ1人でやるのはむずかしい?」などと一緒に確認してきた。宮アさんは「この表を2人で確認しながら、本人が何の作業に不安があるかも把握できますし、なにより日々のコミュニケーションのよいきっかけにもなりました」と話す。  一方で宮アさんはEさんの毎朝の反応を見ながら、その日の会話の仕方も変えていたそうだ。  「昨日はハキハキと話してくれていたのが、今日は別人のように話さなくなるということがあって、あとで薬の影響だと知りました。毎朝のあいさつの様子から『今日は調子がよさそうだな』とか、『今日はゆっくり話すようにしよう』と判断していました。現在は薬の調整もうまくいっているそうで、体調も安定しているようです」  5年経ったいまでは、習熟度確認表は使っていないという。「Eさんは、もうほぼパーフェクトに1人で作業できるようになっているので必要なくなりました」と宮アさんは話す。一方のEさんは、「まだ宮アさんに教わっていることもあるので、頼ることなく、なんでも自分の判断で作業できるようになりたいです」と話してくれた。 CAD未経験の2人  Nさん、Eさんの2人が順調に働き続けているなか、小野寺さんは会社全体の従業員が増加傾向にあることや、今後の段階的な障害者の法定雇用率アップを見すえ、再び部長会で「新たに1人の障害者雇用を進めたい」と提案した。  小野寺さんによると「これまでも部長会や社員向けの経営計画説明会で、障害者雇用の状況や効果を説明し、2人の事例も含めて理解が進んでいたので、部長会でもすんなり了承されました」という。会議では、測量部門からCADオペレーターとして育成できる人であれば採用してみようと了解を得た。  測量部門では、3次元測量機器などを使って集めた道路などの点群データを生成してCAD化し、図面作成を行っている。そこで小野寺さんたちは、「CADの操作ができるか、または興味がある人」という条件で「はたらポート仙台」に相談したところ、精神障害のある2人の応募者を紹介された。  「1週間の職場実習では、それぞれCAD未経験者ながらパソコンスキルが高く優秀だったため、部長会で検討した結果、1人ではなく2人そろって2022年10月から採用することになりました」と小野寺さん。さっそく2人の仕事ぶりを見せてもらった。 働き方の配慮で戦力化  二つのモニター画面を見ながら工事用の図面作成などを行っていたKさん(37歳)は、「職場実習で初めてCADを操作しましたが、使い慣れていたアドビ株式会社のイラストレーターやフォトショップなどのソフトと似た操作も多く、取り組みやすかったです」と笑顔で話す。  Kさんは専門学校で広告美術を学び、デザイン系の印刷会社などで8年ほど働いた経験がある。転機は33歳のころ。ある日突然、職場で倒れた。「当時は、仕事が忙しすぎて眠れない日々でした」とKさん。  「1カ月間休職して復職したものの、体調のすぐれない状態が続きました。複数の病院で検査しても原因が見つからず、最終的に心療内科で初めて不安障害と診断されました」  会社を辞めて1年間の療養生活を送ったKさんは、主治医のすすめもあって障害者手帳を取得、近所の就労移行支援事業所に通った。そこで認知行動療法を受けながら、ワードやエクセルなど一般的なパソコンスキルも習得したそうだ。また訓練期間中に、体調について自己理解が進んでいったという。  「体調が悪くなるときの統計を自分でとってみたら、天候や気圧変化に左右されているようでした。主治医からは、以前の過労による昼夜関係のない生活が続いたことで、自律神経に影響が出たのだろうともいわれました」とKさんはいう。  ダイワ技術サービスに入社するときには、職場の人たちに自己紹介として障害についても説明し、必要に応じた配慮を依頼したそうだ。  職場の指導役を務める1人、菅原(すがわら)由希子(ゆきこ)さんは「デザインソフトなどになじんでいたKさんは、CAD操作の理解も早かったですね。しかも、わからないときはすぐに質問してくれたり、自分でリストをつくって整理しながら聞いてくれたりしたので、とても教えやすかったです」とふり返る。  体調の波については、その都度Kさんから伝えてもらうことで対応できているそうだ。「場合によって外の現場に出ることもあるのですが、職場内のメッセージ機能を通じて『今日は体調がすぐれないので社内業務に専念させてほしい』などと、伝えてもらっています」と菅原さんはいう。  すっかり戦力の1人となったKさんに、菅原さんも「さらにスキルアップを続けて、今後は繁忙期に入ってくる派遣社員への指導役をになってくれるようになってほしいですね」と期待する。  Kさん自身も「日ごろから健康的な生活を送ることを心がけながら、スキルを磨き、測量関係の資格も取っていけたらと思っています」と語ってくれた。 職場の理解で正社員を目ざす  もう1人のCADオペレーターとして、この日は図面のトレース作業に取り組んでいたWさん(34歳)は、10代のころから困難な時期を過ごしてきた。  「県内トップの進学校に入学したのですが、勉強がたいへんだったせいか、小さなミスや忘れ物などが気になって仕方ないという強迫性障害の症状が出始めました。1年生の6月ぐらいから通院し、なんとか卒業したものの、2浪して大学に進みました」  入学後に統合失調症の診断を受け、3年次には1年間休学。主治医から「学業を優先させよう」と助言され、就活をしないまま大学を卒業した。その後、飲食店でアルバイトをしていたころ、自宅のポストに入っていた就労移行支援事業所のチラシを見つけ、「ITスキルに特化した訓練内容が魅力的に感じ、通ってみることにしました」という。  その訓練を受けて、フォトショップやイラストレーターを使ったDTPやウェブデザインのスキルを習得したWさん。ダイワ技術サービスの職場実習では、「CAD操作は感触が似ているなと手ごたえを感じました」という。  入社を希望した理由はほかにもある。「職場の雰囲気がよい意味で静かなので、仕事に集中できそうだということと、それから小野寺さんの人柄のよさというか、私たちのような障害がある者のことを理解してくれている人がいるのは、安心して働けそうだなと感じました」とWさんは話す。  入社後も体調の波はあったが「仕事の忙しさというよりも、家庭内の事情が原因でした。家族と衝突した翌日はガクッと体調を崩すことがありました」と明かす。それも昨年末から自宅を出たことでグンと改善したそうだ。月1回の通院と服薬を続けながら体調の安定に努めている。  最近、測量士補という資格の勉強を始めたというWさん。  「勉強の内容が現場の仕事に活かせるので一念発起しました。いまは週4日5時間勤務なので、体調を安定させながら勤務時間も延ばし、必要なスキルも身につけながら正社員を目ざしたいと考えています」 就労支援機関との連携  精神障害のある4人の雇用が比較的順調に進んできた理由について、小野寺さんは「本人たちの能力や得意なことをうまく仕事で活かせたこと、逆に体調の波などを調整しやすい職場環境だったことが大きいと思います」としたうえで、「なにより就労定着支援サービスによって、就労移行支援事業所との関係が継続してきたことも、私たちのような専門知識を持ち合わせていない会社にとっては非常に心強かったと実感しています」と話す。  面談はそれぞれ1〜3カ月に1回だが、そのときには、まず本人と支援担当者が話をして、その後は小野寺さんたちが加わり職場側からも現状と評価を伝え、本人が困っていることや課題について対応方法を検討する。「支援担当者と本人とのやり取りを聞きながら学ぶことも多いですし、毎回、新しい情報や知見を得られることも大きなメリットです。本人への就労定着支援サービスは最長3年までですが、その後も職場として支援機関と連携していけたらいいですね」と小野寺さん。  今後も、ダイワ技術サービスの規模拡大や障害者の法定雇用率も考慮しながら採用を進めていく必要性があると語る小野寺さんは、目下の課題についてこう話した。  「4人は時短勤務の契約社員なので、将来的に、正社員として雇用できるよう制度も整えたいと思っています。能力を無理なく発揮してもらいながら長く働き続けてもらうために、どんな方法や制度があればよいか考えていきたいですね」 写真のキャプション 株式会社ダイワ技術サービス理事の小野寺伸さん 営業業務を担当するNさんは、1日150km以上の運転を行う 技術第二部係長の宮ア健太郎さん 土質試験を担当するEさん。検査用に供試体を作製している様子 作業工程を打ち合わせるEさん(左)と宮アさん 習熟度確認表の一部。習熟度を示す記号が記されている 作成した図面を出力するCADオペレーターのKさん Kさんの指導役を務める菅原由希子さ Kさんは菅原さんの指導を受けスキルアップを目ざす 図面のトレース作業に取り組むCADオペレーターのWさん 障害のある従業員と就労支援機関の面談の様子(写真提供:株式会社ダイワ技術サービス) 【P10-11】 クローズアップ 新連載! マンガでわかる! わが社の障害者雇用物語 第1回 障害者雇用、何から始める?  2024年4月から、障害者の法定雇用率が引き上げられ、今後も法定雇用率は上がることになっています。このようななか、どのように障害者雇用に取り組んだらよいのかお悩みの企業の方も多いのではないでしょうか。  そこで、初めて障害者雇用に取り組む中小企業を舞台に、まったく知識も経験もない社長と人事担当者が、障害者雇用の検討から募集、採用、定着まで行うマンガを通して、障害者雇用のイロハについて全5回にわたりご紹介します。 監修:三鴨(みかも)岐子(みちこ) (『働く広場』編集委員)  名刺や冊子などのデザインを手がける「有限会社まるみ」の取締役社長。精神保健福祉士。  障害のある社員の雇用をきっかけに「中小企業の障害者雇用推進」に関する活動を精力的に行っている。 法定雇用率の引上げ  障害者雇用促進法の改正で、これまで2.3%だった民間企業の障害者の法定雇用率は、2024(令和6)年4月から2.5%となり、2026年7月には2.7%へ引き上げられます。あわせて、いままでは43.5人以上の従業員がいる企業に障害者雇用の義務がありましたが、2024年4月からは従業員が40人以上の企業、2026年7月には同37.5人以上の企業と、対象範囲も広がります。雇用障害者数は、週の所定労働時間と障害の程度などによって、【表】のように算定します。また、障害者雇用率の算定方法については(※)をご参照ください。 障害者雇用の意義とメリット  法的義務はもちろんですが、障害のある人を雇用することは、企業の社会的責任やダイバーシティ&インクルージョンの観点などから見ても、率先して取り組む必要があります。  また、障害のある人が働きやすくなるように行った合理的配慮の結果、高齢の従業員や外国籍の従業員など、多くの人々が働きやすい職場環境の改善につながったという声もよく聞かれます。改善内容とその効果の例として次のようなことがあげられます。 @業務手順の伝え方  写真や図を多く使い、ひと目で見てわかりやすいものを用意する。 A備品の整理  在庫の定位置を決め、ラックや引き出しにラベリングし、使ったら戻すというルールを徹底。  これらの工夫により、すでに勤務している従業員からも「業務の流れがわかりやすくなった」、「だれでもわかるようになっていることで、担当者が不在でも、問い合わせる必要がなくなった」との声があります。また障害のある同僚に理解しやすいよう業務の手順を伝えたり、相手の状況を把握しようと努めたりすることで、伝える側のコミュニケ―ションスキルが向上したという話も聞かれます。  もうひとつ、大きなメリットは、障害のある人に仕事を任せるために行った「業務の切り出し」により、業務効率化が進んだというケースです。  この「業務の切り出し」については、第2回で詳しくご紹介します。 障害者雇用の情報収集  これまで、障害者雇用について考えたこともなかった企業が左ページのマンガのように、企業同士の集まりがきっかけで、障害者雇用に取り組み始めるケースもあるでしょう。そのような場で情報交換をするのもひとつの方法です。  また、ハローワークやJEEDの地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなどの支援機関へ相談し、より詳細な情報を集めるなど連携して、障害者雇用を進めていくのもよいでしょう。 表 雇用障害者数の算定方法 週の所定労働時間 30時間以上 20時間以上30時間未満(短時間労働) 10時間以上20時間未満(特定短時間労働)(注2) 身体障害者(重度以外) 1人を1人として算定 1人を0.5人として算定 ― 身体障害者(重度) 1人を2人として算定 1人を1人として算定 1人を0.5人として算定 知的障害者(重度以外) 1人を1人として算定 1人を0.5人として算定 ― 知的障害者(重度) 1人を2人として算定 1人を1人として算定 1人を0.5人として算定 精神障害者 1人を1人として算定 1人を1人として算定(注1) 1人を0.5人として算定 (注1)精神障害者である短時間労働者については、令和5年4月1日からの精神障害者の算定特例の延長に伴い、当面の間、雇入れからの期間等に関係なく、1人をもって1人とみなすこととしています。 (注2)令和6年度から、重度身体障害者、重度知的障害者及び精神障害者である特定短時間労働者(週の所定労働時間が10時間以上20時間未満である者)について、1人を0.5人として算定。 出典:JEED『はじめての障害者雇用〜事業主のためのQ&A〜』2024年、P129 ※https://www.jeed.go.jp/disability/data/handbook/q&a/#page=131 11ページは画像です。 【P12-14】 JEED インフォメーション 〜高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)からのお知らせ〜 国立職業リハビリテーションセンター 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 企業担当者向けセミナーのご案内  国立職業リハビリテーションセンターと国立吉備高原職業リハビリテーションセンターでは、障害のある人に対して、就職に必要な専門知識・技能を習得していただくための職業訓練を行っており、その一環としてすでに障害者を雇用している企業の担当者を対象に障害者の採用や雇用管理、職業訓練などについて理解を深めることを目的としたセミナーを開催しています。 開催日時 国立職業リハビリテーションセンター:2024(令和6)年10月24日(木)13:30〜16:30 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター:2024(令和6)年11月19日(火)10:00〜16:00 内容 @施設紹介 業務概要の説明および職業訓練現場の見学 A障害者雇用の取組み紹介 各企業の障害者雇用の取組み事例等の発表 B参加者の交流/情報交換 グループに分かれ、全員参加型のグループディスカッション方式にて実施 参加者の声 訓練生の発表を聴いて ・いろいろな問題について解決策を試行錯誤している様子が伝わった。 ・車いすの方がどんなことで困り、どうすれば働けるようになるのかわかりやすい説明だった。 ・訓練生のレベルの高さに驚いた。次は上司を連れて参加したい。 訓練場面を見学して ・具体的な訓練内容を見学し、受入れ部署の検討に役立つ情報を得られた。 ・きめ細かいトレーニング、スキルアップに取り組んでいる様子を見られてよかった。 企業の事例発表・意見交換を経て ・他社の受入事例を学んだことがなかったので参考になった。 ・同じ悩みを持った方が多くいらっしゃり、相談できたことがよかった。 講演を聴いて ・具体的な取組事例があり、たいへん参考になった。 ・いままでなかなか雇用の継続がむずかしかった理由が見えたと思う。 ◎お問合せ先 国立職業リハビリテーションセンター職業指導課 埼玉県所沢市並木4-2 TEL:04-2995-1207 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター職業指導課 岡山県加賀郡吉備中央町吉川7520 TEL:0866-56-9002 写真のキャプション セミナーの風景 施設見学の風景 障害者職業訓練推進交流プラザのご案内 会場参加とオンライン参加を選べます。 参加費は無料です! 日時:2024(令和6)年11月1日(金)10:00〜16:30 会場:東京都内の外部会場 ※東京駅または品川駅から徒歩圏内の会場予定 オンライン:Web会議システム「Zoom」  厚生労働省および当機構(JEED)では、障害のある方の公共職業訓練を実施している、または、障害のある方の受入れを検討している職業能力開発施設などの方を対象に、精神障害や発達障害、高次脳機能障害のある方などに対する職業訓練技法の普及を行っています。  その一環として、厚生労働省主催の「障害者職業訓練指導員経験交流会」とJEED主催の「障害者能力開発指導者交流集会」をあわせて「障害者職業訓練推進交流プラザ」として共同開催しています。  みなさまのご参加を心よりお待ちしております! 【内容】 行政説明(厚生労働省 人材開発統括官) 障害者人材開発施策の現状と今後の課題について ・事例発表、訓練技法等の紹介 職業能力開発校における取組み等について ・グループ別検討会 就職支援や関係機関との連携方法等について ◎対象者  障害のある方の職業訓練を実施している、または、障害のある方の受入れを検討している施設など(障害者職業能力開発校、一般の職業能力開発校、民間の障害者職業能力開発施設、障害者委託訓練受託施設、都道府県人材開発主管課)の方 ◎お申込み方法  JEEDホームページから申込書をダウンロードできます。申込書に入力のうえ、JEED職業リハビリテーション部指導課広域・職業訓練係あて、メールまたは郵送でお申込みください。 締切:2024年9月27日(金)必着 障害者職業訓練推進交流プラザ 検索 ◎お問合せ先 厚生労働省 人材開発統括官付参事官(人材開発政策担当)付特別支援室 障害者企画係 〒100-8916 東京都千代田区霞が関1-2-2 TEL:03-5253-1111(内線5962) ◎お問合せ・お申込み先 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 職業リハビリテーション部 指導課 広域・職業訓練係 〒261-0014 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-3 TEL:043-297-9030 E-mail:ssgrp@jeed.go.jp 【受講者募集!】 2024(令和6)年度 就業支援課題別セミナーのご案内 受講料 無料  当機構(JEED)では労働、福祉、医療、教育などの分野で障害のある方の就業支援を担当している方を対象として、新たな課題やニーズに対応した知識・技術の向上を図るため、「就業支援課題別セミナー」を実施しています。  2024年度のテーマは、「AI等の技術進展に伴う障害者の職域変化と就業支援」です。  みなさまの受講を心よりお待ちしています。 内容  働く現場においては、AI等の技術進展により、業務の時間短縮や負担軽減が図られているところです。また、生産年齢人口の減少を補うため、産業ロボットやRPAを積極的に導入する企業が増えています。  これらは障害者雇用の現場においても同様です。例えば、デジタル化により紙を扱う作業が減少していることやRPAの導入により定型的な入力作業が減少していることが一例です。  これらの技術進展により、障害者の職務や雇用にどのような変化が生じているのか、障害者や企業担当者に対してどのような支援が求められているのか等について考えるきっかけとして、次の内容を取り扱います。 「AI等の技術進展に伴う障害者の職域変化等に関する調査研究」について 技術進展に伴い障害者の職務を見直した事例について 対象者 労働、福祉、医療・保健、教育等の関係機関において、障害者の就労や雇用に関する支援を担当しており、就業支援の実務経験を有する方 日程等 2024年11月8日(金) 開催方法:オンライン形式 定員:50名 お申込み ◎申込受付期間:2024年8月30日(金)〜10月4日(金) ◎申込方法:今年度の受講申込みは、従来の郵送・メールではなく、JEED研修電子申請・予約サービスにて行いますので、ご注意ください ※JEED電子申請・予約サービスは、株式会社NTTデータ関西が提供する「e-TUMO」を利用します ※申込方法の詳細については、ホームページに掲載しています ◎受講決定の通知:申込受付期間終了後、受講の可否について申込者あてに通知します ※定員を超えた時点で受付を終了します 就業支援課題別セミナー 検索 URL:https://www.jeed.go.jp/disability/supporter/seminar/kadaibetsu.html 検索 ◎お問合せ先 職業リハビリテーション部 人材育成企画課 TEL:043-297-9095 E-mail:stgrp@jeed.go.jp 【P15-18】 令和6年度 障害者雇用支援月間における絵画・写真コンテスト入賞作品 「絵画コンテスト 働くすがた〜今そして未来〜」 「写真コンテスト 職場で輝く障害者〜今その瞬間〜」  当機構(JEED)では、広く障害者雇用への理解と関心を深めていただくため、障害のある方々などから絵画と写真を募集し、優秀な作品をもとに9月の「障害者雇用支援月間」にあわせてポスターを作成しています。  募集は絵画コンテスト3部門と写真コンテストに分けて行い、全国から寄せられた1、810点(絵画1、459点、写真351点)の応募作品のなかから、審査の結果、ポスターに採用する厚生労働大臣賞4点のほか当機構理事長賞4点、同理事長奨励賞72点がそれぞれ選ばれました。  厚生労働大臣賞を受賞した4作品をもとに作成したポスターは、障害者雇用支援月間中、全国のハローワークなどに掲示されます。 厚生労働大臣賞 ◆絵画コンテスト 小学生の部◆ 「すいぞくかんのインストラクター」 瀬川 奏愛(せがわ かんな 鹿児島県) ◆絵画コンテスト 高校生・一般の部◆ 「おやつの時間」 池田 佳子(いけだ かこ 東京都) ◆絵画コンテスト 中学生の部◆ 「一生けんめい荷物を運ぶドライバー」 デラクルス クライス チェスター シブノ (でらくるす くらいす ちぇすたー しぶの 静岡県) ◆写真コンテスト◆ 「鉄資源再生」 篠田 光雄(しのだ みつお 愛知県) 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長賞 ◆絵画コンテスト 小学生の部◆ 「にじいろドーナツがおすすめですのドーナツやさん」 石津谷 和尊(いしづや かずたか 静岡県) ◆絵画コンテスト 中学生の部◆ 「タイヤ交換」 渡邉 佳那多(わたなべ かなた 長野県) ◆絵画コンテスト 高校生・一般の部◆ 「工事、着々と」 杉本 有里(すぎもと ゆり 静岡県) ◆写真コンテスト◆ 「入社2週目!マシンについて勉強中」 田中 彩賀(たなか さやか 岡山県) 今年度も力作がそろいました! シンボルキャラクター ピクチャノサウルス 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長奨励賞 絵画コンテスト 小学生の部 「サンマバス、あたらしいバス、でんどうバス」 西村 浩希(にしむら こうき 東京都) 「エンジニア」 ラッジョ アハナフ タジュワル (らっじょ あはなふ たじゅわる 東京都) 「かっこいいパイロット」 上田 修史(うえだ しゅうじ 東京都) 「りんごの摘花をする農家さん」 米内山 愛夏(よないやま まなか 青森県) 「消防士」 酒井 琉生(さかい るい 福岡県) 「しんかんせんのうんてんし」 大元 崇巨(おおもと たかなお 福岡県) 「カラフルなショベルカーの操縦士」 村松 輝哉(むらまつ てるや 静岡県) 「いつも笑顔な駅員さん」 手島 大慈(てしま まさちか 静岡県) 「やさしいばすのうんてんしゅ」 開 心煌(ひらく しおん 鹿児島県) 「ふうふですし職人」 有薗 志音(ありぞの しおん 鹿児島県) 絵画コンテスト 中学生の部 「はちゅうるいショップ店員」 天野 好惺(あまの こうせい 愛知県) 「安全のために、トラックのメンテナンス」 木元 日向(きもと ひゅうが 静岡県) 「受付の仕事」 小林 愛心(こばやし あこ 長野県) 「調理をする私」 吉田 芽生(よしだ めい 千葉県) 「天下一品のすし屋」 梅澤 晴輝(うめざわ はるき 愛知県) 「ゲームをしているプロゲーマー」 村松 蒼(むらまつ そう 愛知県) 「慎重に…」 木佐貫 真裕(きさぬき まひろ 福岡県) 「オリンピック選手のためにサーフボードを作るシェイパー」 岩ア 翔琉(いわさき かいり 福岡県) 絵画コンテスト 中学生の部 「小説を書く人」 若松 愛莉(わかまつ あいり 鹿児島県) 「生活に役立つロボットの研究者」 彦田 旺助(ひこだ おうすけ 福岡県) 入賞作品展示会のお知らせ 全国5カ所で入賞作品展示会を開催します。 【東京】9/10(火)〜9/14(土) PORTAL POINT Ebisu 【大阪】9/18(水)〜9/20(金) 大阪市役所 【札幌】10/15(火)〜10/17(木) 札幌駅前通地下広場 【愛知】11/7(木)〜11/9(土) GLOBAL GATE 【福岡】11/20(水)〜11/22(金) 福岡市役所 詳しくはJEEDホームページをご覧ください。 絵画コンテスト 高校生・一般の部 「鉱物鑑定士」 樋口 光一(ひぐち こういち 北海道) 「ひとつひとつ丁寧に」 石戸谷 有記(いしどや ゆき 青森県) 「解体作業」 長田 慧太(おさだ けいた 宮城県) 「みんな一生懸命。おいしいを届ける。」 岩澤 奏穂(いわさわ かなほ 福島県) 「主治医(精神科医)」 松木 貴美枝(まつき きみえ 福島県) 「新しいメンバーと楽しく働いている」 佐々木 亮介(ささき りょうすけ 東京都) 「阿波和紙の手すき」 三浦 聖弥(みうら せいや 千葉県) 「しっかり確認 間違いなしヨシ!」 番場 平(ばんば たいら 埼玉県) 「情熱・再生!」 小島 幸吉(こじま こうきち 神奈川県) 「玄関の床をキレイにするよ!」 吉田 遥奈(よしだ はるな 神奈川県) 「さあ!もうひとふんばり頑張るぞ」 山口 祐典(やまぐち ゆうすけ 石川県) 「良い商品を贈ろう 命の野菜 枝豆出荷作業」 荻原 有里(おぎわら ゆり 長野県) 「ぬりたま」 神戸 陽子(かんべ ようこ 長野県) 「車掌さんたち」 難波 岳雄(なんば たけお 岐阜県) 「『自然との共生』花粉交配用ミツバチの飼育」 高橋 璃沙(たかはし りさ 岐阜県) 「色づきぐあいをよく見比べて」 加藤 利和(かとう としかず 岐阜県) 絵画コンテスト 高校生・一般の部 「仕事に集中する飴細工師」 伊藤 裕一(いとう ゆういち 愛知県) 「想いの花束 花屋さん」 大村 麻子(おおむら あさこ 愛知県) 「パソコンを頑張る」 戸苅 宏二(とがり こうじ 愛知県) 「箱をつくる僕」 長井 耀大(ながい あきひろ 愛知県) 「ゴム靴の脱気包装シール」 前田 伊吹樹(まえだ いぶき 滋賀県) 「社内便の仕分け」 政所 明日香(まんどころ あすか 大阪府) 「想い描いた未来」 山口 蓮(やまぐち れん 大阪府) 「大阪・関西万博 大屋根リングをつくる人」 松本 郁子(まつもと いくこ 大阪府) 「データに命を与えるお仕事」 小林 弘典(こばやし ひろのり 奈良県) 「ピアノを弾く仕事〜ピアニスト」 高島 智昭(たかしま ともあき 奈良県) 「スーパーマーケットのお兄さん」 赤江 由衣(あかえ ゆい 島根県) 「保存食パン作りの1コマ」 藤永 茜(ふじなが あかね 島根県) 「鉄板に美味さを託して」 松井 沙織(まつい さおり 岡山県) 「徳山動物園の飼育員さんにゾウになっている」 徳原 望(とくはら のぞみ 山口県) 「バーテンダー」 石川 嵩馬(いしかわ しゅうま 福岡県) 「子どものためにきれいにします!」 村嶋 那南(むらしま ななみ 福岡県) 「画面で繋がる明るい職場」 沖 里緒奈(おき りおな 福岡県) 「一つ一つ 丁寧に 納期に向けて」 真崎 乃里佳(まさき のりか 福岡県) 「福祉事業所でのインターンシップ」 住 喜敦(すみ よしあつ 鹿児島県) 「海が見える配達ルート」 大濱 静弥(おおはま せいや 沖縄県) 【P19】 エッセイ てんかんとともに 公益社団法人日本てんかん協会にご協力いただき、「てんかんとともに」と題して全5回シリーズでお一人ずつ語っていただきます。 第3回 ありのままの自分で生きていく  1988(昭和63)年北海道苫小牧(とまこまい)市生まれのパワフル・ソウルフル・ハートフルシンガー。中学生のころ、はじめててんかん発作が起きる。幼少期からアイスホッケー、バスケットボール、ウエイトリフティングを経験し、日本体育大学卒業後、音楽活動をスタート。「日比谷音楽祭2022」にて、二大音楽プロデューサーの亀田(かめだ)誠治(せいじ)氏、武部(たけべ)聡志(さとし)氏とセッションを果たす。苫小牧市を拠点とする、オリンピック選手も輩出している強豪女子アイスホッケーチーム「道路建設ペリグリン」の応援歌を担当。現在は東京都、千葉県をメインに活動中。 シンガー 水野 佳 (みずの けい)  私は北海道苫小牧市で生まれ、幼少期からスポーツばかりをしていた。スカートをはいても「ぼく」と呼ばれる短髪ガールだった私は、兄の影響でアイスホッケーを始めた。当時は、オリンピック選手を目ざしていた。  そんなスポーツ漬けの中学生時代に、私はいきなり倒れ、気がつけば保健室だった。それが、初めてのてんかん発作だった。  それからは、自宅や通学途中でも発作を起こすこともあり、泡をふいたり白目を剥いたりする私に、母も怖く感じていたことと思う。  高校生になると、発作は起きなかった。このころは体育教諭を目ざし、アイスホッケーに加えウエイトリフティングにも没頭していた。当時の北海道記録も出し、日本体育大学進学のため上京した。このとき主治医と話し、服薬治療をやめた。  そして、不安と憧れのなかで東京生活が始まった。蒸し暑い環境、厳しい寮生活、初めての自炊…。辛いことも多く、忙しい生活のなかで再びてんかん発作が起きた。また、服薬生活がスタートした。  ある日、友だちと行ったカラオケで、私が歌ったSuperflyの「愛を込めて花束を」で、友だちが泣いた。“コレだ!”と感じた。“自分の歌で人を感動させたい!”。元々、歌うことは好きだった。私のやりたいことが「音楽」に変わった瞬間だった。  大学を卒業し、右も左もわからないまま「歌わせてください!」と、六本木のライブバーに飛び込んだ。14年前の夏のことだ。ここで、たくさんの音楽仲間ができた。  そして、音楽活動のためのバイト漬け生活のなかで悪夢が起きた。8年前の夕方、いつも通り駅のホームでベンチに座り電車を待っていた。次の瞬間、警察官、救急隊員、駅員が私を囲んで見下ろしていた。私は、“やってしまった…”と罪悪感でいっぱいになった。てんかん発作が起きたのだ。あろうことか、フラフラ歩き出し、ホームから線路に落ちてしまったのだ。運よく電車と線路の間に身体が入り助かったが、顎から落ちたため顎は真っ二つ、顎(あご)の両関節や足、前歯も折れた。  発作がおさまると、いつも意識がもうろうとし、軽いパニック状態になり、前後の記憶がなくなる。少し経つと頭が割れるほど痛く、嘔吐をする。もう地獄だ。  意識がもうろうとするなかで、警察官がいった。「本当は死のうとしたんじゃないの?」。“それ、いまじゃねーだろ。”と心のなかで呟いた。発作中は、自分の意思ではない行動をすることが多い。日ごろの生活が、心では「大丈夫」と思っていても、身体はパンク寸前だったのかもしれない。  数週間の入院生活中に、メンタルがズタボロにやられた。周りに迷惑をかけた罪悪感。口が上手く開かず、これまで通り歌えるかの不安。一方で、メロディーは降ってくる。音楽はいつも近くにいてくれた。そして、それは私の生きがいとなった。  私は、無理しなければ普通に日常を暮らせる。ところが、私は「あれもやりたい!これもやりたい! この瞬間を大事にしたい!」と思うタイプで、自分で自分のコントロールがむずかしい。繊細に感じる部分もあり、こだわりの強いところがある。  考えすぎて睡眠が浅くなる→身体が休まらない→発作が起きる。てんかん発作の誘因は心理的な要素が少なくないと思う。家族、恋人、友だちなど、身近な存在でも程よい距離感が大切。そして、自分にもっと寛大になって、自分もてんかんを受け入れることが大切。  この事故で薬を変え、いまは発作も起きていない。リハビリをがんばり、歌えるまでにもなった。これも多くの人からのサポートがあったからこそ。てんかんがあることを隠していたときもあったが、いまはありのままの私をみんなに伝えたい。スポーツで鍛えた根性で、音楽を通してすべての人にてんかんと生きる私を表現していく。 【P20-25】 編集委員が行く 「きときと」こまつな こまつな菊ちゃんハウス(富山県) 武庫川女子大学 准教授 諏訪田克彦 取材先データ こまつな菊ちゃんハウス 〒939-0411 富山県射水(いみず)市円池(つぶらいけ)46-2 TEL 0766-53-0078 FAX 0766-53-1101 編集委員から  今回は、2013(平成25)年以降「編集委員が行く」の取材を行っていなかった富山県を選んだ。そのなかで、「とやま障害者フレンドリー企業(富山県障害者雇用推進企業)」として認証されている「こまつな菊ちゃんハウス」を訪問した。  ちなみに、タイトルの「きときと」とは、富山県の方言で「新鮮な、意欲的な」という意味だ。こまつな菊ちゃんハウスは、じつに「きときと」な現場だった。 Keyword:農福連携、農業、ハローワーク、障害者就業・生活支援センター、職業体験、職場実習、障害者トライアル雇用制度 POINT 1 障害だけにとらわれず、「人」として理解する 2 体験を通して、働く自信と楽しさをともに見つける 3 自然に向き合った労働のなかで、その人の変化や成長を育んでいく  富山県では、障害者の雇用に積極的に取り組んでいる民間企業を「とやま障害者フレンドリー企業(富山県障害者雇用推進企業)」として認証している。そのなかで「こまつな菊ちゃんハウス」という事業所名に目が留まった。事業内容はビニールハウスにおける小松菜の周年栽培が紹介されていて、「農福連携」の現場が取材できる期待もあり、取材を申し込んだ。  電話に出られたのは、こまつな菊ちゃんハウス代表の坂口(さかぐち)いづみさん。突然の電話による取材依頼に、「富山県内には障害者雇用に努めている企業がほかにもありますが、どうしてうちを選んだのでしょうか」と、やや当惑気味の返事だったが、『働く広場』の取材目的について説明し、取材の了解を得ることができた。 こまつな菊ちゃんハウス  こまつな菊ちゃんハウスは、富山県のほぼ中央に位置する射水(いみず)市の、農業中心の地域、円池(つぶらいけ)にある。アクセスは、北陸新幹線富山駅で「あいの風とやま鉄道」に乗り換え、小杉駅で下車。駅からはタクシーで約15分の距離だ。取材日は梅雨入り前の好天に恵まれ、さわやかな風と、ほのかな土の香りが漂う「農業」を実感する取材となった。  こまつな菊ちゃんハウスは、小松菜を育成するビニールハウス、土造りの堆肥(たいひ)を置く堆肥舎、小松菜を袋詰めする選果場、事務所が広大な敷地のなかに点在していた。こまつな菊ちゃんハウスの看板がかけられた事務所に入ると、代表の坂口いづみさん、従業員の菊岡(きくおか)進(すすむ)さんらが「暑いなか、こんな遠方までようこそおいでになりました」と、満面の笑顔で出迎えてくれた。事務所は平屋建て、屋内は仕切りのないオープンスペース。従業員が休憩するコーナーと、応接台や椅子が置かれたコーナーに分かれていた。  事務所の机を囲み、少し緊張気味の坂口さん、軽快な語りのなかに実直さを感じる菊岡さんへのインタビューから取材が始まった。  まずは名称についてたずねた。  坂口さんは「いまの代表は私が務めていますが、じつは私は二代目で、初代は私の隣に座っている菊岡さんなんです。菊岡さんがこの事業を始めるときに、みんなに親しみを感じてもらえる事業所にしたいという思いから、菊岡さんの菊から一字をとって『こまつな菊ちゃんハウス』になりました」と事業所名の由来を説明してくれた。  菊岡さんは若いとき愛知県豊田市で自動車の整備を習い、高岡市内で修理をしていたが、40代後半に「年を取ってもできる仕事は何かな」と考え、お客さまに「農業をやれば」といわれたのがきっかけで転職を決意。しかし、農業に関する知識や技術はなく、2003(平成15)年から農作業の手伝いをしながら約1年かけてハウス11棟を自分で建て準備を行った。そして2004年に「こまつな菊ちゃんハウス」が創業された。  創業当初は、菊岡さんとパート従業員2人の計3人で、小松菜の育成を始めた。小松菜を選んだのは、@冬菜(ふゆな)、鶯菜(うぐいすな)と呼ばれるように1年を通して収穫できる野菜であること、Aほかの野菜と比べて、初心者でもつくりやすいこと、Bビタミンや鉄分、カルシウムが豊富な緑黄色野菜でさまざまな料理に使えることが、その理由だったようだ。  農業初体験の菊岡さんは、手探り状態で試行錯誤をくり返しながら徐々に小松菜づくりにも慣れ、人手を増やそうとハローワークに求人を出した。するとある日、障害者就業・生活支援センターの人が訪ねて来て、「障害のある人の職業体験をお願いできないか」と相談を受けた。  菊岡さんは「これまで障害者と接したことがなかったので最初はお断りしましたが、何度も来られるので、『まずは1週間、職業体験として受けましょう』と、障害者就業・生活支援センターのスタッフの熱意を感じて、実習を受け入れました」と話す。  この実習は、後に菊岡さんにとって貴重な経験になったようで、「とにかくまじめに仕事に取り組む姿が強く印象に残りました。働くということに障害の有無は関係ないと思えるようになりました」、「最初は実習だけのつもりでしたが、一緒に働くうちにこれなら十分戦力になってくれるのでは、と思うようになりました」と、当時のことを思い出しながら語ってくれた。  その後も障害者就業・生活支援センターの紹介でここを訪ねてくる人が増え、障害者トライアル雇用制度を利用しながら、これまでに6人の障害者雇用が実現している。  二代目代表の坂口さんは、2012年にこまつな菊ちゃんハウスに就農した。就農するまでの経緯を聞くと、坂口さんは「高校生のときにたまたま県外のぶどう園で障害のある人たちが働いているニュースを見て、活き活きしていていいなあと思ったんです」と話してくれた。その後、「富山県外の大学の農学部で農業について学んでいましたが、卒業後すぐに就農はせず、まずは新潟県の農業職での臨時職員として働きました。しかし、昔から抱いていた『障害者の力になれるような仕事がしたい』という想いが強くなり、高岡市の障害者就業・生活支援センターに転職しました。そこで『こまつな菊ちゃんハウス』が障害者の方を雇用していることを知ったんです。ここなら自分の目ざしていた夢にぴったりだと思って、就農しました」とその動機について語ってくれた。  菊岡さんと坂口さんの話に共通するキーワードは「農業」、「障害」であり、「障害者の方と農業をやってみたいという思い」から2人の出会いが実現したのだと思った。  こまつな菊ちゃんハウスの現在の従業員数は20人。うち、障害のある従業員は5人が働いている。2017年には「とやま障害者フレンドリー企業」に認証され、2019(令和元)年には「とやま食の匠」に認定された。現在はビニールハウスで小松菜を中心に、梨、大かぶ、中小かぶ、にんじんなども栽培している。  障害のある従業員の作業内容は、土づくりのための堆肥や有機肥料の散布、機械を使った耕うんや播種(はしゅ)、草取り、生育管理、収穫や出荷調整まで、先輩の障害のある従業員が後輩に作業手順を指導しながら、ほぼすべての工程にたずさわっている。  身体障害、知的障害、精神障害など、それぞれの障害の程度や、本人の適性を見きわめながら各作業に配置し、自分のペースで一定の作業に専念できるようにしている。常時、ベテラン従業員が一緒に作業をしていて、 障害のある従業員を温かく見守る環境を構築している。  11棟から始めた小松菜栽培は、年々規模を拡大し、現在はハウス36棟で年間9〜10回転しており、2022年は約83トン出荷した。これまで、若い従業員は就農してもすぐに辞めてしまうことがあったが、現在雇用している障害のある従業員たちは、長期にわたり働き、重要な戦力となっている。まじめで、段取りから作業終了まで、きちんと仕事をしている。また、暑さ寒さが厳しい日でも遅れることなく出勤してくれるので、経営者側としても、障害に対する理解、行動や考え方を見直すきっかけとなった。 こまつな菊ちゃんハウス部署探訪  こまつな菊ちゃんハウスの各部署を、坂口さんと菊岡さんがゆっくりと案内してくれた。 【36棟のビニールハウス】  2004年の創業から20年が経過し、36棟までになったハウスの広さは約50坪。一つずつ見せていただいたが、収穫前の青々とした小松菜が育っているハウス、従業員が小松菜をていねいに収穫しているハウス、収穫が終わり土だけになっているハウスなど、見学しながら小松菜の成長過程を理解できた。収穫しているハウスでは、創業時からパート従業員として働いているAさん(76歳)にインタビューすることができた。  「これまで続けてこられたのは気ままに働けること、それが楽しい」と笑顔で答えてくれた。Aさんと笑顔の会話を通して、70歳を過ぎても働く場や人と触れ合える場があることの大切さをあらためて感じた。  こまつな菊ちゃんハウスは、農福連携だけでなく“老福連携”の顔も垣間見えた。また、菊岡さんは「小松菜は育てやすい野菜だが単価が安いので、収益を上げるには出荷数量を増やす必要があり、そのためにハウスを増築、それにともない人を増やす、それらが連動する1年1年でした」と、これまでの苦労を笑顔で語ってくれた。 【堆肥舎】  創業からこれまで菊岡さんが特に力を注いできたのは「土造り」だった。ここはもともと田んぼだったので、牛糞、菌床、米ぬか、竹パウダーなどをブレンドし堆肥にしたものを入れて、畑の土になるようにしているという。  菊岡さんは「農業を手探りで始めてわかったことは、土が何よりも大切だということ。農業は土がいのちです」と力強くいい切る。  考えてみれば、植物は自ら移動することができず、与えられた土地で根を張ってその場所で成長するしかない。農業関係者は、土地の力を「地力を高める」と表現するそうだが、小松菜に適した土造りは創業から20年かけてつくりあげた菊岡さん、坂口さんの努力の結晶ともいえる。  堆肥舎には3種類の土や肥料がそれぞれ仕切られて保管されていた。「どんな堆肥や肥料を使っているんですか」とたずねると、「それは企業秘密です」と菊岡さん。ビニールハウスで青々と育っている小松菜がすべてをもの語っていると感じた。 【選果場】  選果場は、収穫した小松菜を計量し、袋詰めをするところである。ここでは、ベルトコンベヤーで流れてくる小松菜をビニール袋に詰め、箱詰めし、製品を出荷用トラックに積み込む作業を6人の従業員(うち4人は障害のある従業員)で分担して行っていた。  以前はハウス内で小松菜の袋詰め作業を行っていたそうだが、暑さで体調を崩す人もいたため、袋詰め作業を屋内でできるように選果場を設置し、袋詰め用の機械も導入したという。小松菜の収穫や袋詰めを一緒に行う従業員が常時、障害のある従業員を温かく見守っており、何かトラブルがあれば、菊岡さん、坂口さんへただちに連絡が入る体制となっている。 従業員へのインタビュー  取材当日は、選果場で働いていた4人のうち、2人の従業員にインタビューすることができた。 黒田(くろだ)大輔(だいすけ)さん(45歳)  黒田さんは選果場で、1袋220gになるように小松菜の重さを手作業で調整する業務を担当している。黒田さんは、学校を卒業して何か自分にできる仕事はないかといろいろなところを回り、自らここを訪れ10年になる。農業の仕事は初めてで、働くことがリハビリになると思い、この仕事を選んだという。仕事ができるように体づくりから始めて、毎日35分の自転車通勤を現在も続けている。選果場の仕事にも慣れてきたとのこと。  「てんかんがあるので、無理をすると疲れます。そのことを言葉で伝えられず、以前は人とのコミュニケーションに苦労しました。いまは、職場の人間関係を通して、仕事がしんどいときは作業をほかの人にお願いすることができるようになりました。また、他人のことを少し考えられるようになりました」と、仕事を始めてからの自分の変化について淡々と話してくれた。職場では「黒田さんはまじめに働く人」という評価を受けている。 浅田(あさだ)欣之(よしゆき)さん  浅田さんは、障害者就業・生活支援センターの紹介でこまつな菊ちゃんハウスに就農。高校卒業後に自動車免許を取得し、いくつかの会社の経験を経て、ここが3番目の職場だそうだ。浅田さんも農業の仕事は初めてで、慣れるまではたいへんだったそうだが、今年で就農して14年目になる。収穫した小松菜をハウスから選果場まで運んだり、出荷用のトラックに積み込むといった業務を担当している。浅田さんは、以前は介護の仕事などをしていたが、「農業の仕事は楽しい。いい人たちと巡り会えました。これからも続けていきたい」と、元気な声で話してくれた。  「休みのときは何をしてますか」とたずねると、横から菊岡さんが「ゲームセンターよね」と話すと、「余計なことをいわんでいい」と、笑いながら話す2人のやり取りに、何でも語り合えるお互いの信頼関係の深さを感じた。  選果場では、黒田さんと浅田さんのほかに、2人が小松菜の袋詰め作業を黙々と行っていた。また、別のもう1人の従業員について「袋詰め用の機械への関心が強く、いつも作業を見ていたらいつのまにか操作を覚えてしまった人もいます」と菊岡さんが教えてくれた。  障害のある従業員5人の障害種別と担当業務は次の通りだ。  身体障害のある1人は梨の栽培管理を、知的障害のある2人は小松菜の袋詰めや収穫作業補佐などを、精神障害のある2人のうち1人は小松菜の播種前準備作業および播種(機械作業)を行っている。この人は耕うん機や播種機といった機械を時間をかけながら使いこなせるようになり、いまではトラクターの運転もできるようになった。もう1人は小松菜の袋詰めなどを行っている。  こまつな菊ちゃんハウスでの障害者雇用の考え方は、障害者だからといって特別扱いせず、一人ひとりを尊重し、その人の個性に応じてできる仕事を見つけ、責任をもって行えるように、全従業員でサポートする「ナチュラルサポート」を心がけている。 インタビューを終えて  再び事務所に戻り、菊岡さん、坂口さんと見学後の感想などしばし懇談した。現在の代表である坂口さんに、障害者雇用で工夫されている取組みなどについてお話をうかがった。  採用に至るまでのプロセスとして、こまつな菊ちゃんハウスでは、福祉施設の施設外就労や特別支援学校などからの職場実習の受入れを行っている。  坂口さんは実習を貴重な機会と考えていて、「農業は初めての人が多く、いろいろな作業を体験しながら覚えてもらうことが大切だと考えています。そのなかで本人が農業を理解し、私たちも本人の適性を見つけているので、必ず職場実習を経て採用しています」とのこと。菊岡さんも「正社員になるまで1年から1年半はかかりますかね」との話に、従業員を育てる姿勢を感じた。  また、採用時には家族の方とも面談を行い、職場と本人について理解し合う場を設けている。何か問題があった場合は、家族と連絡を取り合えるよう本人と家族との信頼関係の構築にも努めている。  採用後の作業内容については、従業員の体調や体力などを考慮しながら、休日や勤務時間(週30時間勤務が基本)を設定している。坂口さんは、仕事を覚えるプロセスを段階ごとに説明してくれた。  採用時は、@作業のやり方の手本を実際に見せて仕事を覚えてもらう。慣れるのに時間はかかるが、一つの業務に慣れてくれば、別の業務も経験してもらい、できる仕事の内容を増やしていくようにすること、A仕事量は個人の能力に合わせて決して無理はさせず、一定の仕事を任せるようにすることが大事だと、一人ひとりの成長に合わせた指導ポイントを語った。  最初は仕事について言葉で伝えるよりも、一緒に作業するなかで覚えてもらうようにすることを大切にしていると話してくれた。  このあと、だんだんと仕事に慣れてきたら「1人で任せられる作業を増やしていきます。すると、農業への関心や意欲が深まり外部の栽培技術の講習会に率先して参加するようになります。講習会などでの人との出会いや技術の習得により、仕事への取組みがさらに意欲的になり、達成感や責任感をもって働くようになります」とのことだ。この段階では仕事に関する学びの機会を保障することが、本人の就労意欲につながると感じた。  仕事の分担は、「同じ作業ができる人を2人以上配置している」とのこと。作業ができる人が1人しかいなかった場合、その人が体調を崩して休んでしまうと予定通りに進まなくなるので、代わりにできる人を必ず配置し、互助体制を取っている。この配慮は、何か困ったときはお互いが協力するという仲間意識にもつながっていると思われる。  菊岡さんからは「農業は1年を通じて行われるため、四季の変化に耐えうる体づくりが必要です。雇用時期も夏と冬は避けて春か秋からにしました」とのコメントがあり、自然と向き合う環境のなかで働く人に求められる現実をあらためて認識した。  職場環境などについて、坂口さんは「障害の内容も一人ひとり異なり、その日の気分も多少の波はあるが、本人は一生懸命に働いていてなんらかの声がけが必要と思っています」と語る。その思いは従業員にも伝わっているようで、選果場での作業や昼休みなどに従業員が声がけをして、障害のある従業員をいつも温かく見守っている。  さらに、「従業員のみなさんが働きやすい環境を整えていくことをつねに心がけています。年代もさまざまですし、子育て中の方もいたり、いろいろな個性をもって働いているので、それぞれが希望される働き方に対応できるよう、気をつけています。農業にはその選択肢があることも魅力かもしれません」との発言に、こまつな菊ちゃんハウスの代表としての責任感と意欲を感じた。  今後の目標や抱負について、坂口さんや菊岡さんには、北陸の冬(12月〜2月)は農業が困難になるので、「一年を通して安定して生産できるようにしたい」という目標がある。  これまで小松菜のほかに、かぶら寿司用の大かぶと小かぶ、梨づくりを始めたり、加工品にも挑戦した。小松菜の加工品は、漬物を委託してつくっている。梨の加工品は特別支援学校に依頼して干し梨をつくってもらうなど、地域交流を行っている。「これからは、こういった加工品をもっとたくさんつくりたいと思っています。農業は冬の間はどうしても仕事量が減ってしまいがちですが、せっかく働きに来ている人たちにもっと仕事を出せるようにしたいんです」と、2人の思いは熱い。 まとめ  「編集委員が行く」で、私は農業の取材は初めてだった。農業には多様な形態があり、@耕種農業、A果樹・花き農業、B畜産農業、C観光農業の四つに分けられる。  今回取材したこまつな菊ちゃんハウスは、このなかの@耕種農業になるが、農業は自然と向き合い、自然のなかで行われている労働(生産活動)であることを再認識した。  菊岡さんからは取材のなかで「農業は毎年生産と収穫のくり返しだが、なぜか一つのハウスの小松菜が育たないことがある。そのときは原因を必ず見つけなければならない。野菜づくりは商品として一定した量と質がつねに求められる」というプロとしての責任感あふれるコメントがあった。  農業は、天候によって質が変化することもあれば、社会情勢によって左右される場合もあるなど、自然環境と時代の変化を見すえて、育てる農産物の種類を検討したり、出荷量を調整したり、栽培方法を見直したりといった工夫が求められる。こまつな菊ちゃんハウスの20年間の歩みは、自然と向き合うなかで続けられた障害者雇用の歴史そのものであったと考えられる。  また、農業における障害者雇用について、坂口さんは「一人ひとりの障害に留意することはあるが、ふだんの仕事のなかで障害の有無を意識することは、ほとんどありません。農業は自然と触れ合い、体を動かす仕事であることがその人にとっても、よい作用となっていると感じています。5人の障害のある従業員たちは、仕事を覚えてもらうまで多少の我慢と時間は必要でしたが、慣れれば自分自身で努力し、いまでは十分戦力になってくれています」と話す。さらに、「こまつな菊ちゃんハウスは、障害者に働く場を提供してきましたが、従業員たちの暮らしの場もつくっていきたいと考えています。この地域(円池)では空き家や高齢者が一人で暮らしている家が増えていて、それらをグループホームとして利用して従業員が安心して暮らせる家を今後つくっていきたいと思っています」という新たな構想もある。  菊岡さんはインタビューのなかで「障害者雇用は人造り」と語ったが、こまつな菊ちゃんハウスは今後も障害のある人の雇用を継続して、よりよい職場環境を整えながら、ここで働く人たち全員が自分の仕事にやりがいと生きがいをもって働いてもらえる職場づくりを目ざしている。 写真のキャプション 諏訪田(すわだ)克彦(かつひこ) ビニールハウスの一角にある事務所でお話をうかがった こまつな菊ちゃんハウスの代表を務める坂口いづみさん こまつな菊ちゃんハウス初代代表の菊岡進さん ハウス内で収穫作業にあたるパート従業員のAさん 堆肥舎には、特製の肥料が保管されていた 選果場では、小松菜の袋詰め作業が行われていた 田園風景のなかに36棟のビニールハウスが並ぶ(写真提供:こまつな菊ちゃんハウス) 選果場で働く黒田大輔さん 小松菜を一袋分の220gに調整し、ベルトコンベヤーに流す黒田さん 小松菜の搬送を担当する浅田欣之さん 収穫された小松菜を選果場に運ぶため、トラックに積み込む浅田さん ベルトコンベヤーで運ばれてきた小松菜を袋詰め機に投入する 袋詰めされ出荷を待つ小松菜 こまつな菊ちゃんハウスで生産された小松菜 【P26-27】 省庁だより 特別支援教育における就労支援の取組み 文部科学省初等中等教育局 特別支援教育課  改正障害者雇用促進法などの法的整備を背景に障害者の社会参加が進むなか、特別支援教育の教育現場でも、障害のある生徒の就職や職場定着を促進するための教育の充実に力が注がれています。ここでは、特別支援教育における就労支援の取組みの現状について紹介します。 1 就職する特別支援学校卒業生が増加  特別支援学校の卒業生の進路として、直近10年間を概観すると、企業に就職する生徒が増加傾向にあります(図1)。  背景としては、障害者を積極的に採用しようとする企業が増えていること等が考えられ、最近はそうした雇用ニーズに呼応して、企業就労も目指した特別支援学校高等部を設ける学校も見られるようになりました。 2 キャリア教育・職業教育の推進  文部科学省においても、障害者の社会参加が進み続ける現状をふまえ、障害者の就労支援に向けたキャリア教育・職業教育の充実に取り組んでいます。  平成31年2月に公示された特別支援学校高等部学習指導要領では、キャリア教育・職業教育の充実を目指して、次の点が示されています。 キャリア教育及び職業教育に関して配慮すべき事項 ●学校においては、キャリア教育及び職業教育を推進するために、生徒の障害の状態や特性及び心身の発達の段階等、学校や地域の実態等を考慮し、地域及び産業界や労働等の業務を行う関係機関との連携を図り、産業現場等における長期間の実習を取り入れるなどの就業体験活動の機会を積極的に設ける。 ●地域及び産業界や労働等の業務を行う関係機関の人々の協力を積極的に得るよう配慮する。 キャリア教育の充実 ●生徒が、学ぶことと自己の将来とのつながりを見通しながら、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力を身に付けていくことができるよう、特別活動を要としつつ各教科・科目等又は各教科等の特質に応じて、キャリア教育の充実を図る。 ●その中で、生徒が自己の在り方や生き方を考え主体的に進路を選択することができるよう、学校の教育活動全体を通じ、組織的かつ計画的な進路指導を行う。その際、家庭及び地域や福祉、労働等の業務を行う関係機関との連携を十分に図る。  また、テレワーク、在宅勤務など、働き方も大きく変化しており、障害のある生徒等に対して新しい働き方を踏まえた指導や支援が求められています。このため、文部科学省では、令和5年度から6年度にかけて、特別支援学校が企業等と連携して、将来の職業生活において求められるICT活用に係る知識や技能等を習得するために必要な指導方法等の開発を行い効果的な指導の在り方についての調査研究を実施しているところです。 3 教育・労働などの関連機関・部局の連携  障害者の就労支援をさらに推し進めていくためにいま、教育・労働などの関連機関・部局の連携強化が強く求められています。  厚生労働省においては、障害者の雇用に関する労働関係機関と教育、福祉、医療など関係機関の連携について、都道府県労働局や公共職業安定所などにおいて特別支援学校などとの連携を一層強化するよう、厚生労働省職業安定局長より通知が出されました(平成25年3月29日に通知、平成30年4月2日改正)。これを受けて、文部科学省では、教育委員会などに対し、労働関係機関との一層の連携のもとに、障害のある生徒の就労に向けた支援の充実を図るよう周知しました。 4 共生社会の実現に向けた生涯学習の推進  障害の有無にかかわらず共に学び、生きる共生社会の実現とともに、障害者が生涯にわたり自らの可能性を追求でき、地域の一員として豊かな人生を送ることができる環境を整えていくことが求められています。  文部科学省では、障害者が生涯を通じて教育、文化、スポーツなどのさまざまな機会に親しむことができるよう、次のような事業を実施しています。 ●学校卒業後における障害者の学びの支援推進事業 ・都道府県を中心とした地域コンソーシアム形成による持続可能な生涯学習支援モデルの構築や、地方公共団体と民間団体等の連携による障害者の生涯学習機会の拡大促進、大学・専門学校等における生涯学習機会創出・運営体制のモデル構築を目指す取組みを実施 ・生涯学習の担い手の育成や学習環境の実質的な整備につなげるための研究成果発信・実践交流等を行うコンファレンスを実施 ●特別支援学校等における障害者スポーツの充実 ・特別支援学校等を活用した地域における障害者スポーツの拠点づくり等を実施 ・特別支援学校の児童生徒等を対象とした全国大会の開催 ●障害者の文化芸術活動の充実 ・障害のある生徒による作品の展示や実演芸術の発表の場の提供 ・障害のある生徒に対する文化芸術の鑑賞・体験機会の提供 ・障害の種別や年齢にかかわらず、鑑賞・創造・発表等の文化芸術活動に取り組むことができる機会の提供 ●障害のある学生の修学・就職支援促進事業 ・先進的な取組みや知見を持つ複数の大学等が中心となり、国公私立大学等や関係機関等が参加・連携するプラットフォームを形成し、組織的なアプローチにより、高等教育機関全体における障害学生支援体制を充実させることを目的とした「障害のある学生の修学・就職支援促進事業」を実施 ※本誌では通常西暦で表記していますが、この記事では元号で表記しています 図1 特別支援学校高等部(本科)卒業後の状況 (令和5年3月卒業者) 区分 卒業者 進学者 教育訓練機関等 就職者等 社会福祉施設等入所・通所者 その他 計 21,023人 360人(1.7%) 352人(1.7%) 6,165人(29.3%) 13,182人(62.7%) 964人(4.6%) (学校基本調査より) 社会福祉施設等入所・通所者 就職者等 平成24 4,420人 25.0% 平成25 平成26 平成27 平成28 平成29 平成30 平成31 令和2 令和3 令和4 令和5 6,165人 29.3% 進学者・教育訓練機関等 その他 (各年3月時点) ※「就職者等」について、令和2年度の学校基本調査で就職状況の区分が細かく分類されたことから、令和2年度以降においては「就職者等」の数を、平成31年度以前は「就職者」の数を学校基本調査から抽出することとした。 【P28-29】 研究開発レポート 高次脳機能障害者の就労に役立つ視聴覚教材の開発 障害者職業総合センター職業センター  当機構(JEED)の障害者職業総合センター職業センターでは、高次脳機能障害者を対象とした支援プログラムの実施を通じ、障害特性や事業主ニーズに対応した先駆的な職業リハビリテーション技法の開発に取り組んでいます。  本プログラムは、個別相談や作業体験、グループワークで構成されています。これまでプログラムを実施してきたなかで、高次脳機能障害者同士のグループ(集団)による体験ワークや意見交換の機会が、対象者の気づきや対処手段の活用につながるなどの効果が上がりやすいことがわかってきました。  しかし、JEEDの地域障害者職業センターの支援現場からは、高次脳機能障害者同士のグループを形成するための人数が集まらない場合があることから、個別の相談や支援で活用できる教材、映像や画像を見ながら対象者と支援者が一緒に学べる教材の開発を期待する声が寄せられました。こうした状況をふまえ、これまでプログラムで実施してきた内容を整理し、個別支援で活用できる視聴覚教材の開発に取り組むこととしました。  以下、2024(令和6)年3月末に発行した支援マニュアルNo.27「高次脳機能障害者の就労に役立つ視聴覚教材の開発」(※)についてご紹介します。 【視聴覚教材の構成】  視聴覚教材は、八つの動画から構成されています。各動画は、支援マニュアルの別冊「高次脳機能障害者の就労に役立つ視聴覚教材活用ガイド」に添付された2枚のDVDに収録されています。 【教材の活用を想定している対象者】  高次脳機能障害者やそのご家族、高次脳機能障害者を雇用しているまたは雇用しようとしている会社の方、高次脳機能障害者を支援している支援者です。 【視聴覚教材の全体像】(図1)  視聴覚教材は、1st教材、2nd教材、3rd教材に分かれています。それぞれ独立していますが、各教材同士が補足し合っており、複数の教材を視聴することで理解が深まる効果があります。 ●1st教材「高次脳機能障害とは」  日常生活や仕事場面で起こりそうな困りごとを例示し、「自分にも同じことはないか」という観点から、高次脳機能障害の特性についての認識を確認し、対処できるようになるきっかけを得ることを目的としています。また、ご家族や会社の方、支援者にとっては、障害への理解を深め、能力を発揮できるよう配慮し、環境を調整することにつなげていただくことを目的としています。 ●2nd教材@「記憶の機能」  「記憶の機能」がどのようなものであるかについて知識を得て、記憶の対処手段の紹介や体験ワークを通し、記憶の機能に関する自分の特徴について知ることを目的としています。 ●2nd教材A「注意の機能」  注意の四つの機能(「続けられる力」、「見つけられる力」、「同時に注意を向ける力」、「切りかえる力」)について知識を得て、注意機能に関する自分の特徴について知ることを目的としています。 ●2nd教材B「感情のマネジメント」  感情は、まず刺激(状況)があって、それに対する評価(捉え方)を通して、感情が表出するという三段階になっていることについて知識を得て、刺激(状況)を変えたり避ける方法を考えたり、捉え方の体験ワークを通じ、感情のバランスが取れる方法を知ることを目的としています。 ●3rd教材@「メモの取り方」  メモの取り方を体験し、実際に必要な場面で活用できるようにすることを目的としています。 ●3rd教材A「対処手段」  マーカーや付箋などの対処手段について体験し、実際に必要な場面で活用できるようにすることを目的としています。プログラムで紹介している対処手段について網羅的に体験できる内容になっています。 ●3rd教材B「疲労」  疲労とは何かを知って、その対処方法を検討し、疲労をマネジメントしながら過ごせるようになることを目的としています。また、呼吸法・漸進的筋弛緩法(ぜんしんてききんしかんほう)を紹介しています。 ●3rd教材C「睡眠」  記憶や注意の機能を発揮しやすい内的環境をつくり、感情のバランスをとるために必要となる睡眠について、その役割や質の高い睡眠のためのポイントを知ることを目的としています。 【視聴覚教材を活用した事例紹介】  Aさんは、高次脳機能障害と診断され、記憶と注意の機能に特徴がある方でした。特に、記憶の機能は、30分前の出来事も忘れてしまい、その特徴について、Aさん自身も自覚していました。  プログラムでは、メモを取る練習や、手順書を作成するなど記憶の機能へ対処していましたが、手順書を読み飛ばして進んでしまうことやケアレスミスが続きました。支援者は、注意の機能への対処が必要なのではと考えていましたが、Aさんにたずねると、「受障前から集中力が切れることはたびたびあったので、大丈夫です」と返答されました。  そこで、支援者から「病気の前といまで変わったことがあるかもしれない。視聴覚教材(DVD)があるので、念のため一緒に見てみませんか?」と提案しました。Aさんからも同意をいただき、2nd教材A「注意の機能」を、一緒に視聴しました。  教材には、体験ワークがあります。体験後、Aさんは「情報を耳で聞くより目で追えた方が、注意が続いた」、「一度に二つ以上の情報に同時に注意を向ける体験はむずかしかった」と感想を語りました。「体験したことが、実際の場面でもそうなのかわからない」という発言も聞かれたため、作業場面で確認することを提案しました。  その後、作業場面で、起きたミスの内容をAさんと支援者で分析しました。その結果、ミスの起きた作業は、注意しなくてはならない範囲が広く、工程数が多いため、見落としが生じている可能性を考えました。そこで、穴あきの定規(図2)を作成し確認する箇所を絞ってみる、作業は一つずつ工程を分けて定規をあてる、作業を中断するときに付箋を用いるなどの対処手段を一緒に考え、実践しました。  この事例では、Aさんが取り入れると有効な対処について、支援者からの一方的な提案ではなく、視聴覚教材を見て体験したことや、作業場面での試行やその結果を一緒にふり返ることで、Aさん自身があるとよい対処に気づいて取り入れることができたことがポイントです。 ●実施上の留意点  本教材の内容は、視聴者が、高次脳機能障害者の特性への理解を深めたり、能力を発揮しやすくするための対処手段を体感できるような内容となっています。しかし、高次脳機能障害者が単独で視聴しただけでは、自分自身の状況と照らし合わせて考えることがむずかしい場合や、課題の正解・不正解にとらわれてしまうことがあります。  そのため、本教材は、支援者が一緒に視聴することを基本と考えています。一緒に視聴することがむずかしい場合は、視聴前後に相談やフィードバックをする時間を設けて一緒にふり返ることを想定しています。内容の理解だけでなく、教材の読み上げる速度で情報を追えていたか、後半まで集中が維持できたかなど、支援者がともに視聴することで対象者の特性を把握できる場面もあります。ぜひ一緒にご視聴のうえ、支援にご活用ください。 ●おわりに  支援マニュアルNo.27「高次脳機能障害者の就労に役立つ視聴覚教材の開発」は、障害者職業総合センター研究部門のホームページに掲載しています(※)。動画の視聴は支援マニュアル別冊に添付しているDVDが必要です。ご希望の場合は、下記(★)へご連絡ください。 ※支援マニュアルNo.27「高次脳機能障害者の就労に役立つ視聴覚教材の開発」は下記ホームページからご覧になれます。 https://www.nivr.jeed.go.jp/center/report/support27.html ★障害者職業総合センター職業センター TEL:043-297-9043 https://www.nivr.jeed.go.jp/center/center.html 図1 視聴覚教材の全体像 Disc1 1st教材 高次脳機能障害とは 2nd教材 記憶の機能 注意の機能 感情のマネジメント Disc2 3rd 教材 メモの取り方 対処手段 疲労 睡眠 図2 穴あきの定規(対処例) 【P30-31】 ニュースファイル 国の動き 厚生労働省 障害者の子育て支援を推進  厚生労働省は、令和5年度障害者総合福祉推進事業「障害者が希望する地域生活を送るための意思決定支援等の取組に関する調査研究」において支援事例などをとりまとめ、こども家庭庁と連名で、全国の自治体に支援の推進について通知した。  このなかで「結婚、出産、子育てを含め、障害者がどのような暮らしを送るかは、本人が決めることが前提であり、その意思決定の支援に配慮しつつ、障害者の希望を踏まえた生活の実現に向けた支援を推進する必要がある」と明記。  そのうえで共同生活援助(グループホーム)における留意事項として、「こどもを含め、障害者ではない家族が同居して支援を受けることは基本的には想定していない」が、「グループホームを利用する障害者が出産した場合であって、直ちに新たな住居等を確保することが困難な場合には、それまでの間、こどもとの同居を認めても差し支えない」とした。  さらにグループホーム事業者に対して、「こどもの適切な養育環境の確保を図る観点を踏まえて、新たな住居の確保等の必要な支援を行うとともに、相談支援事業者と連携の下、こども家庭センター等の関係機関による適切な支援体制の確保に努めること」を求めている。 https://www.mhlw.go.jp/content/001262137.pdf 外務省 国連障害者権利委員会委員に日本人  外務省は、このほどアメリカ合衆国ニューヨークの国連本部で開催された「第17回障害者権利条約締約国会合」において障害者権利委員会委員選挙が行われ、日本政府が擁立した田門(たもん)浩(ひろし)弁護士が選出されたと発表した。日本から障害者権利委員会に委員を輩出するのは、静岡県立大学名誉教授の石川(いしかわ)准(じゅん)さんに次いで2人目。  外務省によると田門さんは、自身もろうあ者として国内外における障害者の権利保護・促進について広く活動を行うとともに、25年以上にわたり弁護士として障害のある人を含む弱い立場にある人たちの権利の保護・促進に尽力してきたという。  「障害者の権利に関する条約(通称:障害者権利条約)」は、障害者の人権や基本的自由の享有を確保し、障害者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的として、障害者の権利を実現するための措置等について規定している障害者に関する初めての国際条約のこと。2006(平成18)年の国連総会で採択され、日本は2014年1月に批准、同年2月に発効している。 地方の動き 東京 都施設に音声表示ディスプレイ設置  東京都は、音声を多言語で表示する透明ディスプレイ(35cm×20cm)を都の施設38カ所に設置した。  専用機器が会話をリアルタイムに文字に変換し、ディスプレイに投影するとともに、32カ国語での表示が可能。声を発することがむずかしい聴覚障害のある人などは、付属のタブレットで文字入力を行うことでディスプレイに表示できる。設置場所は、都庁舎総合案内や都民情報ルームほか、味の素スタジアムなどのスポーツ施設、障害者施設、消費生活総合センター、観光情報センター、都立図書館、ろう学校など。  今回の設置について都は、「東京2025世界陸上」や「東京2025デフリンピック」を機に、デジタル技術を活用し「いつでも・どこでも・誰とでも」つながるインクルーシブな街・東京の実現に向けた取組みの一環としている。 https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2024/06/06/15.html 働く 全国 重度障害者の就労中の支援に関する調査報告と好事例集  PwCコンサルティング合同会社(東京都)が、厚生労働省の令和5年度障害者総合福祉推進事業「重度障害者の就労中の支援の推進方策の検討に関する調査研究」についての事業報告書と好事例集を発表した。  研究は、重度訪問介護を利用している障害者の就労の実態や就労中の課題について、重度訪問介護事業所の7602事業所を対象に調査。これによると、利用者の働き方については自宅で仕事をしている人が多く、障害支援区分が重くなるほどその割合は高くなることや、企業からさまざまな合理的配慮を受けて働いていることなどが明らかになった。また、厚生労働省が2020(令和2)年10月から始めている特別事業(雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業)の利用によって就労が可能になった、利用せずに働いている人よりも就労中の課題が少なかったなどの効果のほか、企業の合理的配慮を推進している点も確認できたという。  一方で、重度訪問介護事業所への調査や検討委員会における議論では、特別事業等の手続きの煩雑さや実施自治体の少なさ、認知度の低さ、事業所への報酬単価・企業への助成金支給のサイクル、通勤支援の改善点など、特別事業等の具体的な課題が指摘された。  「重度訪問介護利用者の働き方と企業による配慮の好事例集」では、当事者5人の働き方と雇用する4企業が行う就労中の配慮について掲載している。事業報告書と好事例集は同社のホームページから閲覧できる。 https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/track-record/welfare-promotion-business2024.html 本紹介 『不自由な脳は続く: 高次脳機能障害に対する支援再考』  高次脳機能障害を抱えるルポライターの鈴木(すずき)大介(だいすけ)さんと、長年リハビリテーションセンターに勤務していた臨床心理士の山口(やまぐち)加代子(かよこ)さんが、『不自由な脳は続く:高次脳機能障害に対する支援再考』(金剛出版刊)を出版した。  2015(平成27)年に脳梗塞を発症した鈴木さんの、高次脳機能障害の診断を受けて8年が経ったこれまでの経過をたどり、長年この領域にかかわってきた山口さんとの対話のなかで、症状そのものだけではなく症状にともなう不自由感、心理面を重視した支援について考えることの必要性を説く。  自身の障害理解と対策・工夫にたどり着くまでの思考、多くの当事者たちと交流するなかで発見した視点で、医療職や援助職をはじめ当事者と家族を含む多くの人がこの障害の回復と支援について考えることにも役立つ。四六判250ページ、2860円(税込)。 アビリンピック マスコットキャラクター アビリス 2024年度地方アビリンピック開催予定 9月〜11月上旬 北海道、青森県、神奈川県、新潟県、石川県、山梨県、広島県、山口県、徳島県、大分県 *開催地によっては、開催日や種目ごとに会場が異なります *  は開催終了 地方アビリンピック 検索 ※日程や会場については、変更となる場合があります。 ※全国アビリンピックは11月22日(金)〜11月24日(日)に、愛知県で開催されます。 写真のキャプション 北海道 青森県 神奈川県 新潟県 石川県 山梨県 広島県 山口県 徳島県 大分県 ミニコラム 第38回 編集委員のひとこと ※今号の「編集委員が行く」(20〜25ページ)は諏訪田委員が執筆しています。 ご一読ください。 農福連携再考 武庫川女子大学 准教授 諏訪田克彦  今回の取材先「こまつな菊ちゃんハウス」は、富山県射水(いみず)市(人口約9万人)の農業エリア円池(つぶらいけ)にあり、障害のある人や中高年の女性が多く働いていた。隣のビニールハウスでは外国人従業員の姿も見られ、この地域でも「人手不足」の現状を感じた。日本における農業就業人口は、農林水産省の発表によると2010(平成22)年で約260万人、その後毎年10〜50万人ほど減り続け、2019年には約168万人にまで減少している。このようななかで、農林水産省が取り組んでいる「農福連携」は人手不足を補う一策になるのではと考える。農福連携は、2010年に農林水産政策研究所が「農業と福祉の連携」の必要性を訴えたことをきっかけに、全国的に広まってきた。2023年度の農林水産省の調査によると、農福連携の取組み主体数は、3年間で2226件増加し6343件になっている。  さらに、一般社団法人日本基金「農福連携に関するアンケート調査結果」(令和5年3月)によると、農福連携の効果について、福祉事業所の回答では利用者へのプラス効果として、@「体力が付き長い時間働けるようになった」(80.5%)、A「表情が明るくなった」(58.3%)、B「コミュニケーション力が高まった」(46.5%)となっている。さらに、農業経営体の回答では障害者等を受け入れることの効果として、@「障がい者等が貴重な戦力となっている」(56.4%)、A「労働力確保で営業等の時間が増えた」(55.7%)、B「品質の向上や収量の増加につながった」(31.6%)との報告もある。  農福連携は「障害者の農業分野での活躍を通じて自信や生きが いを創出し、社会参画を促す」ことを目的としている。この取組 みは「人手不足」が追い風となって、今後さらにさまざまな農業 事業体、福祉事業体に広まっていくことを期待したい。 【P32】 掲示板 JEEDメールマガジン 登録受付中!  独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)では、JEEDが全国で実施する高齢者や障害者の雇用支援、従業員の人材育成(職業能力開発)などの情報を、毎月月末に配信しています。 雇用管理や人材育成の「いま」・「これから」を考える人事労務担当者のみなさま、必読! 高齢 定年延長や廃止・再雇用 障害 障害のある従業員の新規・継続雇用 求職 ものづくり技能開発・向上の手段 みなさまの「どうする?」に応えるヒント、見つかります! JEED メルマガ で 検索 ※カメラで読み取ったリンク先がhttps://www.jeed.go.jp/general/merumaga/index.htmlであることを確認のうえアクセスしてください。 読者アンケートにご協力をお願いします! ※カメラで読み取ったリンク先が「https://krs.bz/jeed/m/hiroba_enquete」であることをご確認ください。 回答はこちらから→ 次号予告 ●私のひとこと  自身もCODA(聴覚障害のある親をもつ聞こえる子ども)という立場で、脚本家の米内山陽子さんに、マイノリティな立場の人々についての想いなどを、ご執筆いただきます。 ●職場ルポ  知的障害のある人の雇用に力を入れてきた印刷会社、株式会社大風印刷(山形県)を訪問。インターンシップの受入れや、障害のある社員が活躍できる職場環境の整備などの様子を取材します。 ●グラビア  製材業を営む堀長木材商店(和歌山県)を取材。体調や季節に合わせて勤務を調整しながら職場定着を図る現場を紹介します。 ●編集委員が行く  松爲信雄編集委員が、岐阜県内を中心に各種警備サービスを提供する株式会社名岐サービス(岐阜県)と支援機関を訪問。支援機関と連携し障害者雇用を進める取組みについて取材します。 公式X(旧Twitter)はこちら! 最新号発行のお知らせやコーナー紹介などをお届けします。 @JEED_hiroba 本誌購入方法 定期購読のほか、最新号やバックナンバーのご購入は、下記へお申し込みください。 1冊からのご購入も受けつけています。 ◆インターネットでのお申し込み 富士山マガジンサービス 検索 ◆お電話、FAXでのお申し込み 株式会社広済堂ネクストまでご連絡ください。 TEL 03-5484-8821 FAX 03-5484-8822 あなたの原稿をお待ちしています ■声−−障害者雇用にかかわるお考えやご意見、行事やできごとなどを500字以内で編集部(企画部情報公開広報課)まで。 ●発行−−独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 鈴井秀彦 編集人−−企画部次長 綱川香代子 〒261-8558 千葉県千葉市美浜区若葉3−1−2 電話 043-213-6200(企画部情報公開広報課) ホームページ https://www.jeed.go.jp メールアドレス hiroba@jeed.go.jp ●発売所−−株式会社広済堂ネクスト 〒105-8318 東京都港区芝浦1−2−3 シーバンスS館13階 電話 03-5484-8821 FAX 03-5484-8822 9月号 定価141円(本体129円+税)送料別 令和6年8月25日発行 無断転載を禁ずる ・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。また、本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。 編集委員 (五十音順) 株式会社FVP 代表取締役 大塚由紀子 トヨタループス株式会社 管理部次長 金井渉 NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク 副理事・統括施設長 金塚たかし 弘前大学教職大学院 教授 菊地一文 武庫川女子大学 准教授 諏訪田克彦 サントリービバレッジソリューション株式会社 人事本部 副部長 平岡典子 神奈川県立保健福祉大学 名誉教授 松爲信雄 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 筑波大学大学院 教授 八重田淳 国際医療福祉大学 准教授 若林功 【P33】 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長奨励賞 写真コンテスト 「さつまいも掘り」 野口 瑞季(のぐち みずき 茨城県) 「よ〜く見て 正確な作業が自慢です」 佐藤 みゆき(さとう みゆき 埼玉県) 「筆談は、スマホアプリで!」 渡辺 啓仁(わたなべ けいと 埼玉県) 「花との対話」 根上 美香(ねがみ みか 千葉県) 「グラウンド整備〜マウンドを見つめる〜」 室井 謙一(むろい けんいち 東京都) 「枝豆いっぱい採れたよ」 松岡 伸仁(まつおか のぶひと 岐阜県) 「解体のプロ」 古畑 匠(こばた しょう 愛知県) 「二次元バーコード!!忘れずに読み取るぞ!!」 小杉 和正(こすぎ かずまさ 滋賀県) 「手選別のスペシャリストたち!」 丹野 麻衣(たんの まい 京都府) 「野菜のおていれは大切!」 古藤 樹(ことう いつき 大阪府) 「二人で協力作業」 庄司 千景(しょうじ ちかげ 兵庫県) 「白ネギ定植」 田中 菜穂子(たなか なほこ 鳥取県) 「初めての作業で緊張してます。」 横山 聡香(よこやま さとか 岡山県) 「防備具よし!」 川上 美晴(かわかみ みはる 福岡県) 「やっと 終わりました」 小仲 邦生(こなか くにお 熊本県) 「公演に向けて練習だ!」 郷 恵理子(ごう えりこ 大分県) 審査委員 永関和雄(委員長) 元 全国造形教育連盟委員長 絵画コンテスト 清水満久 昭和女子大学 教職専門指導員 竹内とも子 東京都新宿区立柏木小学校 指導教諭 松永かおり 東京都世田谷区立砧南中学校 校長 写真コンテスト 官野貴 日本写真家協会会員 桑原史成 日本写真家協会名誉会員 佐藤仁重 日本写真家協会会員 (委員長を除き50音順) 両コンテスト 安蒜孝至 厚生労働省 職業安定局 障害者雇用対策課 地域就労支援室長 輪島忍 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長 【裏表紙】 令和6年度 障害者雇用支援月間ポスター このポスターの原画は、障害のある方々などから募集したものです。絵画・写真コンテストの入賞作品は、本誌グラビアで紹介しています。 9月号 令和6年8月25日発行 通巻563号 毎月1回25日発行 定価141円(本体129円+税)