クローズアップ 新連載! マンガでわかる! わが社の障害者雇用物語 第1回 障害者雇用、何から始める?  2024年4月から、障害者の法定雇用率が引き上げられ、今後も法定雇用率は上がることになっています。このようななか、どのように障害者雇用に取り組んだらよいのかお悩みの企業の方も多いのではないでしょうか。  そこで、初めて障害者雇用に取り組む中小企業を舞台に、まったく知識も経験もない社長と人事担当者が、障害者雇用の検討から募集、採用、定着まで行うマンガを通して、障害者雇用のイロハについて全5回にわたりご紹介します。 監修:三鴨(みかも)岐子(みちこ) (『働く広場』編集委員)  名刺や冊子などのデザインを手がける「有限会社まるみ」の取締役社長。精神保健福祉士。  障害のある社員の雇用をきっかけに「中小企業の障害者雇用推進」に関する活動を精力的に行っている。 法定雇用率の引上げ  障害者雇用促進法の改正で、これまで2.3%だった民間企業の障害者の法定雇用率は、2024(令和6)年4月から2.5%となり、2026年7月には2.7%へ引き上げられます。あわせて、いままでは43.5人以上の従業員がいる企業に障害者雇用の義務がありましたが、2024年4月からは従業員が40人以上の企業、2026年7月には同37.5人以上の企業と、対象範囲も広がります。雇用障害者数は、週の所定労働時間と障害の程度などによって、【表】のように算定します。また、障害者雇用率の算定方法については(※)をご参照ください。 障害者雇用の意義とメリット  法的義務はもちろんですが、障害のある人を雇用することは、企業の社会的責任やダイバーシティ&インクルージョンの観点などから見ても、率先して取り組む必要があります。  また、障害のある人が働きやすくなるように行った合理的配慮の結果、高齢の従業員や外国籍の従業員など、多くの人々が働きやすい職場環境の改善につながったという声もよく聞かれます。改善内容とその効果の例として次のようなことがあげられます。 @業務手順の伝え方  写真や図を多く使い、ひと目で見てわかりやすいものを用意する。 A備品の整理  在庫の定位置を決め、ラックや引き出しにラベリングし、使ったら戻すというルールを徹底。  これらの工夫により、すでに勤務している従業員からも「業務の流れがわかりやすくなった」、「だれでもわかるようになっていることで、担当者が不在でも、問い合わせる必要がなくなった」との声があります。また障害のある同僚に理解しやすいよう業務の手順を伝えたり、相手の状況を把握しようと努めたりすることで、伝える側のコミュニケ―ションスキルが向上したという話も聞かれます。  もうひとつ、大きなメリットは、障害のある人に仕事を任せるために行った「業務の切り出し」により、業務効率化が進んだというケースです。  この「業務の切り出し」については、第2回で詳しくご紹介します。 障害者雇用の情報収集  これまで、障害者雇用について考えたこともなかった企業が左ページのマンガのように、企業同士の集まりがきっかけで、障害者雇用に取り組み始めるケースもあるでしょう。そのような場で情報交換をするのもひとつの方法です。  また、ハローワークやJEEDの地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなどの支援機関へ相談し、より詳細な情報を集めるなど連携して、障害者雇用を進めていくのもよいでしょう。 表 雇用障害者数の算定方法 週の所定労働時間 30時間以上 20時間以上30時間未満(短時間労働) 10時間以上20時間未満(特定短時間労働)(注2) 身体障害者(重度以外) 1人を1人として算定 1人を0.5人として算定 ― 身体障害者(重度) 1人を2人として算定 1人を1人として算定 1人を0.5人として算定 知的障害者(重度以外) 1人を1人として算定 1人を0.5人として算定 ― 知的障害者(重度) 1人を2人として算定 1人を1人として算定 1人を0.5人として算定 精神障害者 1人を1人として算定 1人を1人として算定(注1) 1人を0.5人として算定 (注1)精神障害者である短時間労働者については、令和5年4月1日からの精神障害者の算定特例の延長に伴い、当面の間、雇入れからの期間等に関係なく、1人をもって1人とみなすこととしています。 (注2)令和6年度から、重度身体障害者、重度知的障害者及び精神障害者である特定短時間労働者(週の所定労働時間が10時間以上20時間未満である者)について、1人を0.5人として算定。 出典:JEED『はじめての障害者雇用〜事業主のためのQ&A〜』2024年、P129 ※https://www.jeed.go.jp/disability/data/handbook/q&a/#page=131 11ページは画像です。