ミニコラム 第39回 編集委員のひとこと ※今号の「編集委員が行く」(20~25ページ)は松爲委員が執筆しています。 ご一読ください。 障害者雇用の近未来 神奈川県立保健福祉大学 名誉教授 松爲信雄 8月に上梓した「キャリア支援に基づく職業リハビリテーション学―雇用・就労支援の基盤―」(ジアース教育新社)のなかで、私は、社会的環境の変化が企業経営に及ぼす影響と、それに対応して企業は障害者雇用をどのように進めていくべきかについて、少し触れました。 社会全体の変化に対応して企業が障害者雇用を展開させていくには、①企業の存在価値を明確にした「パーパス」を設定してそれに対応しながら業務を遂行していくこと、②D&Iの深化と定着が促進することから、一人ひとりの障害者の特性をさらに鮮明に把握してその特性を伸ばすこと、③障害者雇用の現場では、特例子会社や障害者雇用組織の大型化とそれにともなうマネジメント手法の変化、超短時間労働者などの障害者雇用率制度への追加、副業や複業・起業などの新しい働き方の展開、などが必要とされています。また、障害のある人から企業への要望として、①障害特性に対応した法定雇用率算入の仕方の細分化、②仕事の内容や成果に応じた賃金や昇進・昇給等制度の整備、③個人特性の的確な把握と研修などによる能力向上の支援、などがあり、特に多様な働き方やキャリアを提供して「選ばれる組織」になることを求めています。 今回の取材から、障害のある人の雇用に際しては、当事者のさまざまな不安の解消と安心して働くことができる職場環境が、求職者の企業選択の重要な基準の一つとなっていることがわかりました。また、研修を通して能力が向上して戦力化されると、同僚との関係性が変化してお互いに支援し合う組織風土が育成され、ウェルビーイングな社風が形成されてダイバーシティにつながることも示唆されました。 取材を通して、著書で言及したことをあらためてふり返る機会になりました。