クローズアップ マンガでわかる! わが社の障害者雇用物語 第3回 職場実習をやってみよう!  本格的な採用の前に、職場で実習を行い、障害のある人を実習生として受け入れることで、企業も「障害のある人と働く」という経験をすることができます。障害のある人も、就労への不安を抱えていたり、「環境に慣れるための実習をしたい」という要望があったりします。職場における実習は、企業と障害のある人双方にメリットがあり、相互理解が育まれるよい機会にもなります。 監修:三鴨(みかも)岐子(みちこ) (『働く広場』編集委員)  名刺や冊子などのデザインを手がける「有限会社まるみ」の取締役社長。精神保健福祉士。  障害のある社員の雇用をきっかけに「中小企業の障害者雇用推進」に関する活動を精力的に行っている。 実習を設定する  障害のある人を雇用したことがなく、どのような対応や配慮をすべきかわからないという不安がある場合は、本格的に採用する前に、「職場実習」を設定し、受け入れてみるとよいでしょう。実習を通して、企業は障害のある人と一緒に働く経験を得ることができます。また障害のある人にとっても、「環境に慣れる」、「自分に合う仕事や作業を探せる」といったメリットがあります。  その場合、当機構(JEED)の地域障害者職業センター(※1)や、障害者就業・生活支援センター(※2)などに相談し、利用者のなかからその企業に合った実習希望の人を紹介してもらう方法があります。また、就労移行支援事業所や特別支援学校の職場実習を受け入れる方法もあります。特別支援学校は年間計画で実習時期が決まっていることが多いので、その点に注意しましょう。 実習前の準備  採用を前提とした実習ではないため採用面接は行いませんが、事前の打合せは必要です。打合せでは、実習する人に任せる作業や実習時間帯などの検討、作業をするにあたり会社が配慮すべきことなどを確認し、すり合わせていきます。また、打合せ時に実際の職場を見てもらうのもよいでしょう。  実習において、企業側としては「障害のある人の特性を知り、障害への理解を深める」という目的があるように、実習する人や支援機関側も「実際の職場環境で、どのくらい本人が実務にたずさわれるのかを知る」という目的があります。そのため、実習の結果をふり返る機会をつくることを支援機関側から依頼される場合があります。  【表】は、地域障害者職業センターで使用している実習時のチェックリストの項目の一例です。リストは、各支援機関で独自のものがありますが、実習の際は、項目にあるような視点で実習する人の様子を確認し、相互理解を進めましょう。 実習後のふり返りが大事  職場実習のふり返りは、面談形式で、本人や支援機関の担当者も交えて行います。  この場では、感想を伝え合うだけで終わりにせず、できなかった作業があれば、その原因は作業が本人に合っていなかったからなのか、会社側の配慮や工夫が足りなかったからなのか、といった検証をして課題を洗い出し、改善策を検討します。このふり返りによって、障害のある人と働くことについての多くの気づきを得られるでしょう。 ※1 「地域障害者職業センター」の所在地一覧:https://www.jeed.go.jp/location/chiiki/index.html ※2 「障害者就業・生活支援センター」の所在地一覧:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_18012.html 表 実習時のチェックリスト 評価項目(例) (1)作業的側面 □ 熱心に作業に取り組む □ 集中して作業に取り組む □ 終日コンスタントに作業に取り組む □ 正確に作業する □ 指示どおりに作業する □ 自分で工夫して作業に取り組む □ 道具・機械・部品などをていねいに扱う □ 作業に慣れるに従って習熟する □ 作業終了、事故・異常時に報告する □ 指示が分からないときには質問する □ 作業の準備・後片づけをする □ 危険(物・箇所)に配慮し、対応する □ 自分の仕事に責任を持つ (2)社会的側面 〈勤労習慣〉 □ 欠勤・遅刻・早退をしない □ 欠勤・遅刻・早退の場合に連絡する □ 勤務時間等職場の規則・規律を守る □ 清潔な身なりをする 〈社会性・対人態度〉 □ 日常の挨拶や返事をする □ 指示や注意に従う □ 他人の迷惑になることはしない 〈労働の理解など〉 □ 仕事や作業への興味・関心がある □ 働くことの意義を理解している □ 自分で健康管理ができている マンガでわかる! わが社の障害者雇用物語 第3回 「職場実習をやってみよう!」