省庁だより 令和6年版 障害者白書概要@ 内閣府ホームページより抜粋  障害者白書は、障害者基本法第13条に基づき、障害者のために講じた施策の概況について、毎年国会に報告しているものです。  今号と次号の2回にわたり、「令和6年版障害者白書」の概要を紹介します。 第1章  改正障害者差別解消法の施行  2021年6月、事業者に対し合理的配慮の提供を義務付けること等を内容とする「改正障害者差別解消法」が公布され、2024年4月1日に施行された。  本章では、第1節で「改正障害者差別解消法」等の概要を説明する。  第2節では、@関係府省庁や地方公共団体が定める「対応要領」の策定・改定の概要、A関係府省庁における「対応指針」の改定の概要、B内閣府による相談窓口試行事業「つなぐ窓口」の設置、C政府による周知・啓発の取組等の「改正障害者差別解消法」の施行に向けた政府・地方公共団体における取組について報告する。 第1節 改正障害者差別解消法等の概要 1.障害者差別解消法の制定背景及び経過  「障害者差別解消法」の施行3年後の検討規定による見直しの検討を経て、2021年6月に「改正障害者差別解消法」が公布され、2024年4月1日に施行された。また、施行に向けて改定した「改定基本方針」が2023年3月14日に閣議決定された。 2.障害者差別解消法等の概要 (1)障害者差別解消法の趣旨  行政機関等や事業者に対して、障害者への「障害を理由とする不当な差別的取扱い」を禁止するとともに「合理的配慮の提供」を求め、これらの措置等を通じて、障害者が社会で提供されている様々なサービスや機会にアクセスし、社会に参加できるようにすることで、共生社会の実現を目指す。 (2)対象となる障害者  対象となる障害者は、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害及び高次脳機能障害を含む。)その他の心身の機能の障害(難病等に起因する障害を含む。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいい、いわゆる障害の「社会モデル」の考え方を踏まえている。したがって、いわゆる障害者手帳の所持者に限られない。 〈障害の「社会モデル」とは〉  「障害者差別解消法」は、障害の「社会モデル」の考え方を踏まえている。これは障害者が日常生活又は社会生活で受ける様々な制限は、心身の機能の障害のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生じるものという考え方である。 (3)対象となる事業者及び分野  対象となる事業者は、商業その他の事業を行う者(地方公共団体が経営する企業及び公営企業型地方独立行政法人を含む。)であり、個人事業主やボランティアなどの対価を得ない無報酬の事業を行う者、非営利事業を行う社会福祉法人や特定非営利活動法人なども、同種の行為を反復継続する意思をもって行っている場合は事業者として扱われ、また対面やオンラインなどサービス等の提供形態の別も問わない。  分野としては、日常生活及び社会生活全般に係る分野が広く対象となるが、雇用分野についての差別を解消するための具体的な措置に関しては「障害者の雇用の促進等に関する法律」の定めるところによる。 (4)「不当な差別的取扱いの禁止」・「合理的配慮の提供」 @不当な差別的取扱いの禁止  不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否する又は提供に当たって場所・時間帯などを制限すること、障害者でない者に対しては付さない条件を付けることなどにより、障害者の権利利益を侵害する行為である。「改定基本方針」では、社会的障壁を解消するための手段(車椅子、補助犬その他の支援機器等の利用や介助者の付添い等)の利用等を理由として行われる不当な差別的取扱いも、障害を理由とする不当な差別的取扱いに該当することを明記。 A合理的配慮の提供  障害者やその家族、介助者等、コミュニケーションを支援する者から何らかの配慮を求める意思の表明があった場合には、その実施に伴う負担が過重でない範囲で、社会的障壁を取り除くために必要かつ合理的な配慮を行うことが求められる。  2024年4月1日に施行された「改正障害者差別解消法」により、事業者による「合理的配慮の提供」は、努力義務から義務へと改められた。  ※上記@又はAに反した取扱いを繰り返し、自主的な改善を期待することが困難である場合など、特に必要があると認められるときは、主務大臣等は、事業者に対し、報告を求め、又は助言、指導、勧告をすることができる。 ※建設的対話の重要性  合理的配慮の提供に当たっては、社会的障壁を取り除くために必要な対応について、障害者と行政機関等・事業者双方が対話を重ね、共に解決策を検討していくことが重要となる。このような双方のやり取りを「建設的対話」という。「改定基本方針」では、双方がお互いの状況の理解に努めることが重要であること等、建設的対話を行うに当たっての考え方を示している。 (5)環境の整備  「障害者差別解消法」は、合理的配慮を的確に行うための不特定多数の障害者を主な対象として行われる事前的改善措置(バリアフリー化、コミュニケーションを支援するためのサービス・介助者等の人的支援、情報アクセシビリティの向上等)を行政機関等及び事業者の努力義務としている。これには、ハード面のみならず、職員に対する研修や、規定の整備等の対応も含まれる。  障害を理由とする差別の解消のための取組は、環境の整備と合理的配慮の提供を両輪として進めることが重要である。 第2節 改正障害者差別解消法の施行に向けた取組 1.「国等職員対応要領」の関係府省庁の改定概要及び「地方公共団体等職員対応要領」の策定状況 〇「障害者差別解消法」第9条に基づき、国の行政機関の長等(※)はその職員が適切に対応するために必要な要領(以下「国等職員対応要領」という。)を定めることとされている。国の行政機関等においては「改正障害者差別解消法」の施行前に、障害者団体や事業者団体等からヒアリングを行った後、パブリックコメントを経て「国等職員対応要領」の改定を行った。  ※「等」には、独立行政法人などが含まれる。 〇「障害者差別解消法」第10条において、地方公共団体の機関等(※)はその職員が適切に対応するために必要な要領(以下「地方公共団体等職員対応要領」という。)を定めるよう努めるものとされている。2023年4月1日時点において、全ての都道府県及び指定都市が「地方公共団体等職員対応要領」を策定しているほか、中核市等においては99%、一般市においては90%、町村においては66%が策定しており、一般市や町村における策定割合についても増加傾向にある。  ※「等」には、地方独立行政法人(一部を除く)が含まれる。 2.関係府省庁における「対応指針」の改定概要 〇「障害者差別解消法」第11条第1項において、主務大臣は、事業者における不当な差別的取扱いの禁止や合理的配慮の提供に関し、事業者が適切に対応するために必要な指針(以下「対応指針」という。)を定めることとされている。 〇「国等職員対応要領」と同様、各主務大臣においては、「改正障害者差別解消法」の施行前に、障害者団体や事業者団体等からヒアリングを行った後、パブリックコメントを経て、「対応指針」の改定を行った。 〇各主務大臣が定めた「対応指針」には、主務大臣や事業分野ごとに、障害種別ごとの障害特性や事業内容等を踏まえ、不当な差別的取扱いや合理的配慮の提供等に関する様々な事例が記載されている。  「令和6年版障害者白書」では、そうした事例の一部について、関係すると考えられる障害種別ごとに「障害特性と主な配慮事項」と併せて整理し、紹介している。 3.相談体制の整備 〇「改正障害者差別解消法」において、事業者による合理的配慮の提供が義務化されるとともに、国及び地方公共団体の連携協力や相談対応等を担う人材の育成及び確保のための措置等が明確化された。 〇「改正障害者差別解消法」や「改定基本方針」の内容を踏まえ、内閣府では以下のような取組を行っている。 ・関係省庁に働きかけ、各事業分野における国の相談窓口を整理・一覧化し、内閣府ホームページで公表 ・2023年10月から、障害のある人や事業者、都道府県・市区町村等からの障害者差別に関する相談に対して、法令の説明や適切な相談窓口等につなぐ役割を担う「つなぐ窓口」を試行的に実施 ・国や地方公共団体における相談対応や相談対応を担う人材の育成に資するようなケーススタディ集や相談対応マニュアルを作成 相談窓口試行事業「つなぐ窓口」について(2023年10月設置) 〇「つなぐ窓口」による相談対応の基本的な流れ  「つなぐ窓口」では、「障害者差別解消法」に関する説明を行うとともに、相談者の希望等に応じて、適切な自治体・各府省庁等の相談窓口と調整を行い、事案の取次を行っている。 〇「つなぐ窓口」での相談件数 @相談対応件数(2023年10月16日〜2024年3月31日:1163件)  (うち、障害のある人やその家族等817件、事業者209件、自治体等52件、その他85件) A@のうち、自治体等取次案件:121件(※)  (※)2024年3月31日現在において、国や自治体等に取り次いだ案件及び取り次ぐこととしている案件の合計件数 〇障害者差別に関する主な相談内容の例  「つなぐ窓口」に寄せられる相談の内容は様々であるが、比較的多くみられる相談内容としては、以下のようなものがあげられる。 ▼障害のある人からの相談 ・事業者から差別的な対応をされたため、対応を改め謝罪を求めたい。 ・事業者に合理的配慮の提供を求めたが、対応してもらえなかったため、対応するよう事業者と調整してほしい。 ▼事業者からの相談 ・「改正障害者差別解消法」の施行により合理的配慮の提供が義務化されると聞いたが、具体的に何をすればよいのか教えてほしい。 4.障害者の差別解消に向けたその他の取組等 (1)周知・啓発 〇政府においては、障害者の差別解消に向けた国民各層の関心と理解を深めるとともに、建設的対話による相互理解を通じた合理的配慮の提供等を推進するため、必要な周知・啓発活動を行うこととしており、例えば、内閣府では以下のような周知・啓発活動に取り組んでいる。 @事業者を対象に「改正障害者差別解消法」のオンライン説明会を実施 A事業者団体、障害者団体等が主催する講演会等において、「改正障害者差別解消法」の説明・周知を実施 B地方公共団体職員等を対象に「障害者差別解消支援地域協議会に係る体制整備・強化ブロック研修会」を実施 C「改正障害者差別解消法」に関する政府広報を実施(新聞突出し広告、インターネット広告、政府広報オンライン) D「合理的配慮の提供等事例集」を取りまとめ、内閣府ホームページに掲載 E「障害者の差別解消に向けた理解促進ポータルサイト」を公開(2023年には同サイト上で「障害者差別解消に関する事例データベース」も公開) F「改正障害者差別解消法」や「つなぐ窓口」に関するリーフレットやチラシを制作し、内閣府ホームページに掲載 (2)障害者差別解消支援地域協議会の設置の促進 〇「障害者差別解消法」において、国及び地方公共団体の機関は、「障害者差別解消支援地域協議会」(以下「地域協議会」という。)を組織することができるとされている。  2023年4月1日時点において、全ての都道府県及び指定都市が「地域協議会」を設置しているほか、中核市等においては88%、一般市においては74%、町村においては51%が「地域協議会」を設置しており、一般市や町村における設置割合についても増加傾向にある。 第2章 障害のある人に対する理解を深めるための基盤づくり 広報・啓発等の推進 〇「障害者週間」(毎年12月3日〜9日)  「障害者基本法」第9条に基づき、全ての国民が、相互に人格と個性を尊重し支え合う「共生社会」の理念の普及を図り、障害及び障害者に対する国民の関心と理解を一層深めることを目的として、実施している。 ○各種の広報・啓発活動  「第75回人権週間」においては、「『誰か』のこと じゃない。」をテーマに掲げ、障害のある人の人権問題を含め、様々な人権問題をテーマにした人権啓発動画の配信や講演会の開催等の各種広報・啓発活動を行った。 ○教育・福祉における取組  2023年4月、「発達障害ナビポータル」(※)内に、「発達障害のある人やその家族が、必要な情報を得て、適切な支援につながれる」というコンセプトの下、当事者・家族向け情報検索ツール「ココみて(KOKOMITE)」を開設し、医療機関に関する情報や当事者会・親の会等の社会資源に関する情報等、利用者ニーズが高い情報を掲載した。  「ココみて(KOKOMITE)」には1800件を超える情報を掲載しており、内容、地域、ライフステージごとに情報を検索できる。  (※)文部科学省と厚生労働省の協力の下、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所と国立障害者リハビリテーションセンターが共同運用。 (次号では、第3章、第4章、第5章、第6章について紹介します) ★「障害者白書」は、内閣府ホームページに掲載しています。https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/index-w.html