ミニコラム 第40回 編集委員のひとこと ※今号の「編集委員が行く」(20〜25ページ)は金塚委員が執筆しています。  ご一読ください。 育つ環境、育てる環境 NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク 副理事・統括施設長 金塚たかし  30代の初めのころに、障害のある人を積極的に雇用している中小企業の社長と一献交わす機会に恵まれた。お酒が進むなか、突然「なぁ金塚、人が育つ環境、育てる環境ってどんな環境かわかるか」と社長に問われた。「……」ぱっと言葉が出なかった。「そんなこともわからんと就労支援やってるんや」と一刀両断。それまでの私の支援とは直接支援が中心で、間接支援について深く考えていなかったのかもしれない。そのことがあって以来、支援の視点が環境やシステムなどの間接的支援にも重きを置くように変化していったのは間違いない。企業の人と話す機会があれば「育つ環境、育てる環境」をテーマに意見交換させてもらうようにしている。「一緒に汗を流す」、「ルールをつくる」、「合理的配慮の提供」、「育成プログラム」、「評価制度」、「フィードバック」などなど、その企業の人財育成についての考え方が表れるな、と思いながら参考にさせてもらっているし、視野が広がるよい機会であり楽しい時間でもある。  今回、「編集委員が行く」で取材させていただいたハミューレ株式会社にも「育つ環境、育てる環境」のポイントが揃っているが、まずは店舗運営部部長の齊藤(さいとう)浩二(こうじ)さんの存在が大きいのだろうと感じた。いろいろとお話をしていて、にっこりと微笑みながら誠実にていねいに受け答えされる姿に、人見知りの私がもっと話を聞いてみたいと思った。クロスジョブ札幌所長の伊藤(いとう)真由美(まゆみ)さんが「ハミューレに見学に行くと、利用者が齊藤部長のファンになって帰ってくる」と話していた。人が成長するための環境、および育てるための環境については、多様な要因があるが、真に成長してもらいたいと「本気で思い続ける気持ち」がとても重要であると、あらためて感じた。ちなみに一刀両断の社長とは、現在も定期的に一献の場を設けてもらい、人生の先輩としてアドバイスをもらっている。