【表紙】 令和5年11月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第554号 ISSN 0386-0159 障害者と雇用 2023/12 No.554 職場ルポ 医療・介護の現場を支える“ケアメイト” 特定医療法人財団博愛会(福岡県) グラビア 得意を活かしてワインづくりにたずさわる 有限会社ココ・ファーム・ワイナリー(栃木県) 編集委員が行く 「人を大切にする会社」への変化 さらなる障害者雇用へ 株式会社共同物流サービス、医療法人清照会障害者就業・生活支援センターみなと、障害者就労移行支援事業所わーくみなと(青森県) 私のひとこと 自分の正しさを手放すことで得られる信頼 大阪・京都こころの発達研究所 葉 代表 浜内彩乃さん 「りょうり人のわたし」愛知県・脇山(わきやま)蒼唯(あおい)さん 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) Japan Organization for Employment of the Elderly, Persons withD isabilities and Job Seekers 12月号 【前ページ】 心のアート ピアノ 堀井 銀次 (社会福祉法人ロングラン カフェみるく) 画材:画用紙、水性ペン/サイズ:257mm×364mm  おもな画材は水性ペンを使用。最初はさまざまなペンや画材に挑戦したこともあるが、現在は水性ペンに落ち着いた。  特に下描きをすることもなく、ペンを使い一発描きで輪郭線を引いていく。以前は単色で着色していたが、現在では色彩豊かな作品が多く、色の配置も自ら決めている。  初期作品「ピアノ」など、楽器や生き物がモチーフのときにはあらゆる部分にトゲトゲがついている作品もある。それは彼の絵を描く喜びがそのまま表現されているようにも思えるが、実際トゲトゲが何故描かれているのか真相はわからない。色彩豊かな配色センスで、隙間なくていねいに塗っている。細かなタッチをじっくり鑑賞していただきたい。 (文:まちごと美術館 cotocoto(ことこと) 伊保橋(いぼはし)匠哉(たくや)) 堀井 銀次(ほりい・ぎんじ)  1998(平成10)年生まれ。新潟県柏崎市在住。2017年4月に特別支援学校を卒業後、「社会福祉法人ロングラン カフェみるく」に通所。2017年より「アール・ブリュット展in上越」に出展。2020年「Beyond the canvas〜障がい者アート全国公募展〜」で、作品「ピアノ」が優秀賞受賞。2021年には、「モスバーガー原宿表参道店」の店舗装飾に採用される。 協力:まちごと美術館 cotocoto 【もくじ】 障害者と雇用 目次 2023年12月号 NO.554 「働く広場」は、障害者雇用の啓発・広報を目的として、ルポルタージュやグラビアなど写真を多く用いて、障害者雇用の現場とその魅力をわかりやすくお伝えします。 心のアート 前頁 ピアノ 作者:堀井銀次(社会福祉法人ロングラン カフェみるく) 私のひとこと 2 自分の正しさを手放すことで得られる信頼 大阪・京都こころの発達研究所 葉 代表 浜内彩乃さん 職場ルポ 4 医療・介護の現場を支える“ケアメイト” 特定医療法人財団博愛会(福岡県) 文:豊浦美紀/写真:官野 貴 研究開発レポート 10 就労支援機関における人材育成の現状・課題と就労支援力向上のポイント 障害者職業総合センター研究部門 社会的支援部門 JEEDインフォメーション 12 障害者雇用を進める事業主のみなさまへ 就労支援機器をご活用ください!/障害者雇用のためのマニュアル・好事例集などのごあんない/ JEEDメールマガジン(登録無料) 新規登録者募集中!! グラビア 15 得意を活かしてワインづくりにたずさわる 有限会社ココ・ファーム・ワイナリー(栃木県) 写真/文:官野 貴 エッセイ 19 相談員の苦悩と心得 第4回 日本相談支援専門員協会 顧問 福岡寿 編集委員が行く 20 「人を大切にする会社」への変化 さらなる障害者雇用へ 株式会社共同物流サービス、医療法人清照会障害者就業・生活支援センターみなと、障害者就労移行支援事業所わーくみなと(青森県) 編集委員 金塚たかし 省庁だより 26 令和5年版 障害者白書概要 内閣府ホームページより抜粋 ニュースファイル 30 編集委員のひとこと 31 中央障害者雇用情報センターのご案内 32 ※「クローズアップ」は休載します 表紙絵の説明 「調理している自分だけでなく、冷蔵庫や、料理を運ぶワゴン、ピザを焼く釜など、普段から細かく観察していることが表れています。中心となる自分の大きさをイメージするのが、いちばんむずかしかったようです。それが決まるとイメージがわき、楽しそうに描いていました」 (令和5年度 障害者雇用支援月間絵画コンテスト 小学校の部 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長奨励賞) ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。 (https://www.jeed.go.jp/disability/data/works/index.html) 【P2-3】 私のひとこと 自分の正しさを手放すことで得られる信頼 大阪・京都こころの発達研究所葉(よう)代表 浜内彩乃  私がクライアントとかかわる際に大切にしていることは、@「違う」を否定しないこと、A間違えたときは素直に謝ることです。これらについて説明をしていきますが、その前に、いまから少し実験をしてみたいと思います。紙とペンを手元に用意し、次の指示にしたがって図を描いてみてください。指示は三つです。まず丸を二つ描いてください。次に四角を描いてください。最後に丸と四角を線でつないでください。  みなさん、どのような図が描けたでしょうか。最初に描いてもらった二つの丸を、縦に並べた人、横に並べた人、二重丸のように重ねて描いた人などがいるでしょう。丸の大きさが異なっている人、同じ大きさで描いた人、丸同士がくっついている人、離れている人がいるでしょう。四角はどのように描いたでしょうか。正方形、長方形、台形、ひし形などさまざまな四角があります。四角の数は指定していませんので、丸と同じように二つ描いた人、一つしか描かなかった人、たくさん描いた人もいるでしょう。線は、まっすぐ引いている人、曲がって描いている人、ほとんど描くスペースがない人など、これもさまざまでしょう。三つの指示にしたがって図を描いてもらいましたが、どの指示も一つひとつは非常に簡単なことです。しかし、描きあがった図は、一人ひとり異なるものになったはずです。  ここから伝えたいことは、同じ言葉でも一人ひとり、思い浮かべることが違うということです。「丸を二つ」といわれたとき、同じ大きさの丸が二つ並んでいるものを思い浮かべても、二重丸を思い浮かべても、間違ってはいません。これを複数の人がいる場でやってもらい、最後にお互いが描いた図を見せ合ってもらうと、「普通は横に並べるでしょ」、「どうしてそうなるの?」と驚きと笑いが入り混じった声が多くあがります。多くの人は、自分が思い浮かべたものを「普通」と思う傾向にあります。そのため、自分が想像していなかったものをほかの人が表出すると驚き、「普通はそうしない」と否定したくなります。人と人がかかわると、こうした事象は非常によく起こります。しかし、そうしたときに違いを否定せず、「違う」ということを確認し、そのうえでどうしたらよいかを話し合うことが大切だと私は考えています。  具体例をあげます。仕事の報告が遅れた人がいたとき、その人は「後でよいと思った」と答え、自分は「先にしてほしかった」とします。後でよいと思った、その人なりの理由(例:上司が忙しそうだった)を確認し、それが自分の考えと異なっていたとしても(例:忙しそうにしていても声をかけるべき)、どちらが合っている・間違っていると判断するのではなく、考え方や判断の基準が違ったのだと考えます。そうすると、相手を否定することなく、自分の考えや判断基準について伝え、どこがズレたのか(例:報告の優先度)を確認することができるでしょう。  相手も自分なりに考えて行動したことに対して、一方的に「そうではない」と否定されてしまうと、次から自分で考えて行動することに意欲が持てなくなります。もし、相手がルールを知らなかったり、わからなかったりした場合には、相手がルールを理解できるように伝えることが重要です。例えば、「赤信号はわたる」だと勘違いしていた人がいたときに「それは間違っている!」と怒っても(命の危険がある場合に大声を出して動きを止めることは必要ですが)、その人のなかでは「赤信号はわたる」という認識をしていたわけですから、理解と行動は一致しています。「そう思っていたのならわたりますね。でも赤信号はとまれ≠フサインですよ」と相手の認識を受け入れた後にルールを伝えたらよいのです。ときには自分では想定しないような考え方をしている人もいるでしょう。そうしたときこそ、なぜそうした考えになるのかをていねいに聴くことが大切です。  日常生活において、自分の考えが「正しい」と信じていなければ行動が困難になりますので、そう思うこと自体は自然なことです。だからこそ、人とかかわるときには気をつけなければなりません。立場が異なる人とかかわる際には、よりそのことを注意する必要があります。また、上司、指導者、相談員など「教える」、「指示する」といった役割をになっていると、「正しいことを教えなければ」という気負いが加わり、さらに自分の考えが正しく、それを相手に伝えなければいけないという思いが強くなります。しかし、先述したように相手の考えや判断を聴かずに、自分が「正しい」と思っていることを一方的に伝えようとすれば、相手の意欲を削ぐだけでなく、どこがズレているかを明らかにすることができず、適切な修正もできなくなってしまいます。  そして自分が相手の考えや判断を誤って認識してしまうことや、自分の考えよりも相手の考えの方が場に適していることに後から気づくときなどがあります。そうしたときに、素直に間違いを認め、謝罪をすることが大切です。そんなことはあたり前だと思う方が多いかもしれませんが、意外とこれがむずかしい方も多いという印象です。特に立場が上にある人の場合、立場が下の人に対して間違いを認めることへの抵抗感が強くなります。それはきっと立場上「間違えてはいけない」、「威厳を保たなければならない」といったプレッシャーがあるのでしょう。しかし、間違えない人はいません。それはどの立場であっても同じことです。どのような立場であっても、間違えたときには率直に謝り、その責任を自分に置くことを明示することは、人と人との信頼関係においては非常に重要です。  「クライアントとかかわる際に大切にしていること」という書き出しをしましたが、結局のところ、人とかかわる際に大切にしていることと同じです。お互いの違いを尊重し、ズレについて話し合うことが、クライアントの障害理解にもつながっていくでしょう。 浜内 彩乃 (はまうち あやの)  大阪・京都こころの発達研究所 葉 代表。京都光華女子大学健康科学部准教授。臨床心理士・公認心理師・社会福祉士・精神保健福祉士。兵庫教育大学大学院修士課程修了後、教育センターや発達障害者支援センター、精神科医療機関などで勤務。2018(平成30)年9月に「大阪・京都こころの発達研究所 葉」を立ち上げ、クライアントへのカウンセリングや心理検査、企業や医療・福祉機関への研修、専門職へのスーパーヴィジョンなどを行っている。  著書に『発達障害に関わる人が知っておきたいサービスの基本と利用のしかた』(2021年)、『発達障害に関わる人が知っておきたい「相談援助」のコツがわかる本』(2022年)、『精神科の受診や特徴までがわかる 発達障害・メンタル不調などに気づいたときに読む本』(2022年、すべてソシム刊)がある。 【P4-9】 職場ルポ 医療・介護の現場を支える“ケアメイト” ―特定医療法人財団博愛会(福岡県)― 病院や介護老人保健施設・介護施設などの現場では、「障がい者雇用推進室」を軸にしたこまやかな支援のもとで、周辺業務をになう“ケアメイト”が活躍している。 (文)豊浦美紀 (写真)官野 貴 取材先データ 特定医療法人財団博愛会(はくあいかい) 〒810-0034 福岡県福岡市中央区笹丘1-28-25 TEL 092-741-2626(代表) FAX 092-741-2627 Keyword:医療、看護、介護、除外率、知的障害、精神障害、障害者職業センター、企業在籍型ジョブコーチ、職場実習 POINT 1 現場でスムーズに進められるように、「障がい者雇用推進室」を軸に業務を調整 2 医療業の障害者雇用に知見のある人を「外部アドバイザー」に 3 企業在籍型ジョブコーチを専任で配置、よりこまやかな支援へ 医療分野で雇用率5.2%  1982(昭和57)年に創設された「特定医療法人財団博愛会」(以下、「博愛会」)は、「博愛会病院」を中心に、介護老人保健施設や在宅介護支援事業所、リハビリテーションセンターなどの地域包括ケア事業や、人間ドックセンター、生活習慣病センターなどのヘルスケア事業を多角的に運営している。  障害者雇用率制度の除外率設定業種とされる医療分野でありつつ、いまでは職員数551人のうち障害のある職員が20人(身体障害3人、知的障害14人、精神障害3人)で、障害者雇用率は5.2%(2023〈令和5〉年6月1日現在)だという。20人のうち16人は、看護・介護の周辺業務を行う“ケアメイト”と呼ばれている。この10年で着実に雇用を進めてきた現場の支援体制と、働くみなさんの様子を取材させてもらった。 「やりたいこと、できること」  博愛会はこれまで、事務部門で身体障害のある職員を中心に採用していたが、2013(平成25)年の退職者によって障害者雇用率がゼロになった。その後、当機構(JEED)の福岡障害者職業センターが、障害者雇用に取り組もうとしている企業の障害者雇用担当者向けに主催している「事業主支援ワークショップ」(※1)に参加。また、福岡市立障がい者就労支援センターなどから助言をもらい、2015年、精神障害のある人と知的障害のある人の2人を採用したそうだ。  配属先は病院のリハビリ室と老健センターだったが、うち1人が半年ほどで辞めてしまったという。当時を知る、法人事務部副部長の中島(なかしま)毅彦(たけひこ)さんが話す。  「仕事はリハビリ室の清掃がメインでしたが、本人にはもの足りなかったようです。マッチングがうまくいっていなかったのだと反省しました」  一方の老健センター(100床)では、本人が前職で経験していたシーツ交換業務を柱に、仕事の幅を広げていった。ほかの職員から「とても助かる」との声もあがり、以降は年1人ずつ採用。いまは10〜40代の7人が働いている。  2017年にはデイサービスセンター(定員50人)での雇用も決まった。担当業務は、利用者の昼食のつぎ分けや洗い物、おやつの準備と夕方の清掃で、それまでシニア人材派遣機関やビル清掃会社に外注していた内容だ。正職員が行っていた入浴室・トイレの清掃も加わり、現在、20〜30代の4人が配属されている。  定着に向けた工夫について当時、介護事業部門で事務長を務めていた呼子(よぶこ)修一(しゅういち)さんが説明する。  「特に中途採用の場合は、本人から『できること、やりたいこと』を聴き取り、現場の『してもらいたいこと』とすり合わせました。現場からの依頼業務が多いため、本人の希望を優先させながら1日の業務スケジュールを組み立てます。慣れていくと任せることができる業務も増え、本人もモチベーションを維持して働き続けていけることがわかりました」  これは、社会福祉士・精神保健福祉士でもある呼子さんが別の病院の障害者就労支援にかかわったとき、「企業側から提案された画一的な業務をやってもらうだけでは続かないという事例をいくつも見てきた」との苦い経験をふまえた対応だった。  最初は、現場でいつのまにか業務が増えていたことも少なくなかった。老健センターの看護師長を務める松本(まつもと)孝子(たかこ)さんが話す。  「いつも笑顔で応じてくれる彼らについ、いろいろと頼んでしまったことがあり、それが負担になっていたようでした。現場の職員には『勝手に業務内容を変えないこと』を徹底させました」  また受入れ部署では、それぞれ2人の職員に障害者職業生活相談員の資格認定講習を受けてもらい、現場ごとに可能な指導や支援も行うようにしたという。 外部からアドバイザー  介護事業での雇用が拡大するなか、博愛会は2019年に「障がい者雇用推進室」を設置。呼子さんが室長を務めることになった。  まだ準備段階だった2017年、呼子さんたちは博愛会の理事長を務める那須(なす)繁(しげる)さんから、「先進的な施設を見学してみよう」とすすめられた。それが熊本市にある社会福祉法人恩賜財団済生会(さいせいかい)熊本福祉センターだった。そこで就労継続支援B型事業と生活介護事業を行う多機能型事業所の管理者だった成松(なりまつ)隆一(りゅういち)さんにアドバイスをもらい、センターを退任後、2019年に博愛会の「障がい者就労推進アドバイザー」になってもらったそうだ。  成松さんは月1回、会議や現場巡回、ケアメイト全員との個人面談などに参加している。会議には看護部長や看護師長らも出席し、現場から上がってきた課題や情報の共有をしながらトップダウン式に現場へと理解を広げてきた。成松さんは「最初に理事長から『病院も含めグループ全体に、障害のある人の雇用を広げたい』との思いを聞き、この4年間で医療現場にまで職域を拡大できたのは大きな成果でした」と話す。一方の呼子さんも「同じ医療分野の障害者雇用で豊富な知見を持つ成松さんに、第三者的な視点で、内部では気づきにくい課題や改善点も見つけてもらっています。一連の取組みについて、理事長がバックアップする意思をいろいろな形で伝えていただけたことも心強かったです」とふり返る。  また博愛会は、2019年4月に依田(よだ)晶男(あきお)さんが代表を務める「医療機関の障害者雇用ネットワーク」(※2)に入会した。同ネットワークで情報交換とノウハウの共有が行われており、ホームページの閲覧や依田さんとの交流を通して学んだ知識や見解は、博愛会の障害者雇用を進めるうえで、なくてはならないものとなっている。 専任のジョブコーチ  2021年に病棟(145床)への配属をスタートさせたときは、まず1人の実習生を迎え現場から「よかった」との高評価を得て、それから3年間でケアメイトを5人に増やした。スムーズに進んだ背景について、看護部長を務める田中(たなか)素子(もとこ)さんが説明する。  「病棟では2012年から、ケアサポーターと呼ばれる70〜80代の派遣職員の方たちが周辺業務をになってくれていたので、その実績をもとに業務を切り分けました。現場ではケアサポーターがケアメイトと一緒に取り組みながら、自然な形でサポートし合う関係もできました」  ただ日々刻々と状況が変わる医療現場だけに、ケアメイトたちの担当業務も、つねに交通整理をする必要がある。その役割を果たすのが、障がい者雇用推進室の主任で企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)である仲西(なかにし)千絵(ちえ)さんだ。2020年6月からジョブコーチ専任となった。  「私は13年前の入職後から病棟クラーク、訪問部門、老健センターなど各部署を経験したので、ケアメイトたちの仕事の調整面では、一緒に仕事をしてきた同僚とのつながりが大きな支えです」  いまでは田中さんも「仲西さんのような専任者がいなければ、現場はスムーズに回らないと思います」と頼りにしている存在だ。 家庭と手紙のやりとりも  仲西さんは「私たちは、ケアメイトのみなさんの近い未来ではなく、遠い未来を想い描きながら支援することを、つねに心がけています」と語る。そんな障がい者雇用推進室の支援エピソードを一つ紹介したい。  ある10代の男性は、入職3カ月ほどで精神的に不安定になった。朝、母親から「本人が職場に行きたくないようなので休ませる」との連絡があったが、呼子さんは「体調に問題がなく、気分が乗らないという理由で仕事を休むことは本来NGであることを伝えてほしい」と依頼したという。こうした家庭とのやり取りができるのは、特別支援学校在籍時の職場実習中に保護者と何度も面会していることもあったからのようだ。「本人が成人するまでは、ご家庭の協力もお願いしますと伝えています」と呼子さん。  翌日、職場に来た本人と面談し、気持ちを聞いたうえで、社会人として働くことの責任についてもじっくり話し合った。その後は、仲西さんと母親の間で、何度か手紙のやり取りもあったそうだ。「少しでも日ごろの働きぶりを知ってほしくて、業務内容や現場の職員たちの声も伝えました。家庭からは家での本人の様子を伝えてもらいました」と仲西さんはいう。男性はその後、実習生の指導役を務めるようになり、「社会人として大きく成長しています」と呼子さん。  仲西さんは、特別支援学校からの職場実習生のフォローにも力を入れている。1回あたり最大9人、2〜14日間にわたる実習期間中は、具体的な作業内容や、食堂でとった昼食メニューなど、日誌のような報告書を学校と家庭に渡している。また、教員向けの職場実習や保護者向けの職場見学も開催し、「医療機関で働くとはどういうものか、広く理解してもらう場にしている」と呼子さんは話す。 医療・介護現場のケアメイト  続いて、病棟や老健センターで働くケアメイトのみなさんを取材した。  4階病棟の病室でベッド周りを整える作業をしていたのは、入職4年目のAさん(21歳)。特別支援学校の作業学習でシーツ交換などを練習したかいもあり、最初からスムーズにできたようだ。「現場で『ありがとう』といわれるのがうれしいです。たまに無駄な動きが多くなるようなので、考えながら取り組む努力をしています」と話してくれた。田中さんはAさんについて、「ときどき私が患者さんの排せつ介助をしていると『今日は応援ですか?』と声をかけてくれて、よく見てくれているなと感心します。患者さんの入院が重なるときも、職員たちから『今日はAさんがいてくれるから大丈夫』と頼りにされる存在です」と評価する。  入職当初よりフルタイム勤務のAさんは、将来について「学校の教員補助にも興味があります。人材不足の現場を支えられるような仕事をしていきたいです」と意欲的に答えてくれた。  5階病棟で病衣の配布作業をしていたのは、入職5年目のBさん(23歳)。「学校の文化祭で福祉をテーマに発表したのを機に興味がわきました」というBさんだが、最初は業務スケジュールを覚えるのに苦労して不安を抱えたこともあった。面談で呼子さんたちに「だれにでも相談してください」とうながされ、自分から質問できるようになったそうだ。  上司で5階病棟介護主任の伊藤(いとう)隆(たかし)さんは、「配膳の片づけや車いすの清掃などの周辺業務を行ってくれるので、私たちは本来の介護業務に力を注げられ助かっています。彼は、細かいところにも気づいて報告してくれますし、学ぶ姿勢もよいですね」と評価する。Bさんは介護福祉士を目ざしており、先日、介護職員初任者研修に合格。次の実務者研修を目ざし、伊藤さんたちにアドバイスをもらいながら勉強中だ。  医事課に配属されているCさん(21歳)は、「おじいちゃん、おばあちゃんと接するのが好きなので」と入職し4年目になる。事務補助や書類の受け渡し、病棟内のごみ回収や外来フロアの待合室のいすの除菌作業などを担当している。  「いろいろな業務がありますが、困ったときは周りの職員さんに声をかけ助けてもらっています。仲西さんは、いつも安心させてくれる、信頼できる方です」  夢は介護福祉士。「考え過ぎるところがあるので、うまく自分をコントロールできるようになりたいです」と語るCさんについて、仲西さんは「彼女は人間関係で悩むことがありますが、これまでいくつか異動してきた結果として、部署をまたいで多様な業務をこなせるようになりました」と見守っている。 こまやかに接する  病棟に隣接する老健センターの5階フロアで、シーツの交換作業をしていたのは入職2年目のDさん(19歳)。特別支援学校の職場見学で、「ケアメイトさんたちが、周囲の患者さんや入居者さんを気遣いながら働く姿を見てかっこいいなあと。仕事をしながら人としても成長できそうだと感じました」とふり返る。そんな彼も今年は実習生に教える立場だ。  「一人ひとり伝わり方が違うので、なるべくていねいに説明しています。呼子さんに『教えるのが上手だね』といってもらえて自信もつきました」  Dさんの上司で5階フロアの介護主任を務める水野(みずの)宏一(こういち)さんも「利用者さんにこまやかに接していて信頼も厚いです。今後は後輩を指導しながら成長していってほしいですね」と激励する。 ケアメイトという職種  博愛会がケアメイトという職種名をつくったのは2022年だ。経緯について呼子さんが説明してくれた。  「現場では○○さんと名前で呼びますが、全体では『障がい者雇用の方』と表現していました。するとある実習生から『学校で障害者という呼び方を受け入れるよういわれたが、本当は好きじゃないです』といわれました。将来だれかに仕事を聞かれたときも堂々と誇りを持っていえる呼び方にしようと案を募りました」  すると、ある男性職員から「ケアメイト」と書かれたメモが届いた。「ケアは、ほかの人のためにしてあげたいという気持ち、メイトは仲間、私たちは職場のみなさんの支えになりたいという気持ちで働いています」との理由も添えられていた。すぐに会議を経て決定し、博愛会として公式に使うことになった。最近はほかの医療機関の担当者から、「うちでも“ケアメイト”という呼び名を採用しました」との連絡が来ることもあるという。  名づけ親は、入職6年目のEさん(47歳)だ。以前は和菓子店で製造販売の仕事をしていたが、「もっと人と接する仕事がしたい」と転職を決意。いまは老健センターでシーツ交換から配膳・下膳、利用者の手指消毒、物品補充のほか、趣味でたしなんでいたパソコンを使ったデータ入力なども担当している。「吃音(きつおん)があり、うまく伝えるのが苦手です」と明かすが、上司の水野さんは「急な業務依頼にも対応しつつ、いつもにこやかで周囲をなごませてくれます。私も見習いたい存在です」と伝えてくれた。  「周りから『ありがとう』といわれ、新しい業務を依頼されると、自分が必要とされていると感じますし、挑戦できることもうれしいです」と語るEさんは、昨年ケアメイトで唯一の「キャリアアップ職員」になった。その前年の2021年に、博愛会はケアメイトのキャリアアップの道筋を明確化したのだ。  入職時は非常勤・パートタイム勤務でのスタートだが、年1回の評価と本人の希望をもとに、80点以上でフルタイム勤務・月給制のキャリアアップ職員(嘱託)、そこから1年以上の勤務で90点以上の評価を得ると正職員になることを選べるようになった。今後はスキルアップの環境整備に力を入れていくという。成松さんが説明する。  「職場内で外部資格の取得を支援したり、リーダーなどの役職を設けたりするほか、社内独自の資格もあってよいと思います。一定のスキルについて社内認定する仕組みがあれば、ケアメイトのみなさんが車いすを押せるとか、身体介護や排せつ介助の一部を手伝えるようにもなり、より戦力化が進むと考えます」  こうした博愛会の一連の取組みは、福岡労働局と福岡障害者職業センターが共同で6月に開催したワークショップで、参加した医療業の障害者雇用担当者に紹介され好評だったそうだ。また、2024年3月に、「医療機関の障害者雇用ネットワーク」と福岡障害者職業センターが福岡市内で開催する医療業向けのセミナーにおいて、博愛会などの取組みが紹介される予定だという。 「健康経営」にもつながる  博愛会では、障害者雇用とともに「健康経営○R」(★)の取組みも積極的に推し進め、今年も経済産業省の「健康経営優良法人(大規模法人部門)」に認定され、7年連続となった。  呼子さんは「障害者雇用にかかわる取組みが、職場のメンタルヘルス環境の改善にもつながるという外部の研究結果を知り、私たちも実感しています」と説明したうえで、こう断言する。  「採用活動においても、健康経営の取組みは大きなアピールポイントになっています。とくに最近は、特別支援学校の新卒採用で企業の参入数が増えてきています。ほかの企業に負けないよう、いかに働きやすい環境を整えるかが重要です」  今後の目標は、ケアメイトを50人まで増やすことだと呼子さんはいう。  「いまも現場から増員してほしいとのリクエストが途切れませんし、業務の幅も広げていきたいと思います。人材不足が叫ばれている医療・介護の現場だからこそ、みんなで支え合い、一人ひとりがやりがいを持ちながら、だれもが『ここで働いてよかった』と思える職場にしていくことが大切だと考えています」 ※1 事業主支援ワークショップ:各地域の障害者職業センターが障害者雇用担当者をサポートすることを目的に行っている支援メニューの一つ。「雇用管理サポート講座」等の名称で開催している地域もある。「はじめての障害者雇用」、「精神障害者の雇用管理」といったテーマを毎回設定し、グループワークによる意見交換等で自社の問題解決の糸口をつかんでもらうことを目的とする ※2 「医療機関の障害者雇用ネットワーク」ホームページhttps://medi-em.net/ ★「健康経営R」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。 写真のキャプション (写真提供:特定医療法人財団博愛会) 博愛会病院(写真提供:特定医療法人財団博愛会) (後列左から)成松隆一さん、呼子修一さん、中島毅彦さん、(前列左から)松本孝子さん、田中素子さん、仲西千絵さん 学校や家庭に渡される資料には、実習風景の写真や作業のポイントが記載されている(左3枚)。ケアメイトとの交換日記には、ていねいなフォローが書かれている ベッド周りの清掃に使用する器具が積まれたカートを押すAさん Bさんは、リストを確認しながら病衣の配布作業を行っていた Bさんと打ち合わせを行う、5階病棟介護主任の伊藤隆さん(右) 外来フロアで手すりの除菌作業を行うCさん Dさんは、細部まで注意を払いベッドシーツの交換作業を行っていた 5階フロア介護主任の水野宏一さん アンケートのパソコン入力を行うEさん 【P10-11】 研究開発レポート 就労支援機関における人材育成の現状・課題と就労支援力向上のポイント 障害者職業総合センター研究部門 社会的支援部門 1 はじめに  近年、地域の就労支援機関には多様な障害者の就労支援ニーズに応えることが求められています。加えて、医療や福祉等の関係分野まで就労支援の取組みの裾野が広がるなか、就労支援機関の就労支援力の向上のための効果的な人材育成が喫緊の課題となっています。そこで当センター研究部門では、全国の就労支援機関への就労支援担当者の人材育成等に関するアンケート調査を行いました。本レポートではその調査分析結果から、@就労支援機関の支援実施状況や知識・スキルなどの充足状況、A就労支援機関における人材育成の多様な取組み状況、B就労支援機関の就労支援力向上のポイントとなる要因についてご紹介します。 2 調査の方法  全国の就労支援機関(障害者就業・生活支援センター〈以下、「就業・生活支援センター」〉336事業所、地方自治体が単独で設置する障害者就労支援機関〈以下、「自治体の就労支援機関」〉128事業所、就労移行支援事業または就労定着支援事業を実施する機関〈以下、「就労移行等」〉2536事業所)における、組織管理者を対象とした「組織管理者調査」と支援実務者(各機関2名以上)を対象とした「支援実務者調査」の2種類を行いました。 3 調査の結果 (1)回答者の概要  「組織管理者調査」の全回答数は1542件(就業・生活支援センター205件、自治体の就労支援機関71件、就労移行等1266件)、「支援実務者調査」の全回答数は2305件(就業・生活支援センター369件、自治体の就労支援機関136件、就労移行等1800件)でした。 (2)就労支援機関の知識・スキルなどの充足状況  就労支援機関における知識・スキルなどの充足状況をみると、いずれの内容についても組織によってばらつきがありましたが、不足傾向にある知識・スキルなどの内容が明らかになりました。以下に例として就労移行等の結果を示します(図1、図2参照)。 ア 知識・経験の充足状況(図1)  組織管理者に対して自機関の就労支援担当者の知識・経験の充足の程度を質問したところ、最も充足(「充足」または「やや充足」)が少なかったものは、「企業経営、雇用管理」に関するものでした。次いで、「雇用施策と福祉施策の連携」、「障害者雇用施策の体系や各種制度」といった雇用施策に関する内容や「家族支援・生活支援、ライフステージに対応した支援、ケースマネジメント」といった知識・経験も充足が比較的少ない傾向でした。 イ 資質・能力・スキルのある就労支援担当者の充足状況(図2)  組織管理者に対する「自機関の就労支援担当者には、次のような資質、能力、スキルを有している者がどれくらいいますか?」という質問に対して、「該当者は全くいない」、「該当者は少ない」との回答が比較的多かった内容は、「最新の就労支援手法や支援機器等、関連情報を収集して効果的に活用できる知識とスキル」、「企業の人材採用・育成や雇用管理・経営のニーズに対応した就労支援ができる知識とスキル」を有する者という結果でした。 (3)就労支援機関における人材育成の取組み状況  組織管理者に対して、人材育成の組織的取組みの実施状況を質問したところ、支援事例・記録の共有が最も多い取組みでしたが、人員不足や多忙により、業務に手一杯で後回しになりがちなため、重要と思うが実施は少ないという取組みも多くありました。特に、支援ノウハウの言語化・共有の取組みは、組織によって実施状況のばらつきが大きい取組みでした。 ア 重視して実施している取組み  「各支援者が支援で困ったことがあれば、いつでも他の支援者やスーパーバイザーが相談に乗る」、「支援事例は組織内のケースミーティングで検討し共有する」、「支援内容と支援成果の記録により、組織での効果的な支援の蓄積・共有と改善に取り組む」はいずれの機関種別でも「重視して実施している」が60%を超えており、実施率が高いという結果でした。 イ 重要と思うが実施は少ない取組み  「学会や研究・実践発表会、論文投稿などで、専門職としての支援ノウハウの整理や共有化を積極的に進める」、「人事評価等で、就労支援者のキャリアの段階や達成目標を明示して計画的に人材育成を進める」取組みは、いずれの機関種別でも「重要と思うが実施は少ない」が60%を超えていました。 ウ 組織によって実施状況のばらつきが大きい取組み  「組織内だけでなく、地域関係機関とケースマネジメントの連携体制で事例検討やノウハウの共有を図る」、「組織内の支援ノウハウなどを言語化・文書化して、支援者同士で共有し、引き継ぎをスムーズに行えるようにする」、「地域関係機関との連携や役割分担の進め方を言語化・文書化して、関係機関の人事異動があっても引き継げるようにする」など、組織内や地域の機関との間で役割や支援ノウハウを共有する取組み(以下、「支援ノウハウの言語化・共有」)は、組織によって実施状況のばらつきが特に大きくなっていました。 (4)就労支援機関の就労支援力向上のポイント  各組織の知識・スキルなどの充足状況と就労支援の実績(一般就労移行者数や就職後定着率)や各組織の支援者が感じる課題解決状況との関係を明らかにしました。ここで、実績や課題解決の実感の向上との関係が明らかになった知識・スキルなどを「効果的支援ノウハウ」と定義し、この「効果的支援ノウハウ」向上に関係する要因(研修の受講、資格などの取得、人材育成の組織的取組み、就労支援経験年数、人事異動の頻度、離転職者の多さなど)を統計的に分析しました。  その結果、人材育成の組織的取組み(なかでも「支援ノウハウの言語化・共有」の取組みと「支援事例・記録の共有」の取組み)の実施状況が、効果的支援ノウハウの向上に強く関係していることが明らかになりました。 4 まとめ  障害者の就労可能性を広げるために、地域の就労支援機関による就労支援の質の向上がますます重要となるなか、現状では、就労支援機関における知識・スキルなどの充足には組織間の格差が認められました。特に企業経営や雇用管理といった企業に関する知識や企業ニーズに対応した支援スキルの充足、最新の情報の収集と活用などが課題で、これらの底上げが重要です。  また、就労支援機関の就労支援力向上には、組織として体系的にノウハウを共有する場をつくることやケースミーティングなどを行い事例を共有する取組みを行うことなどが重要であることも明確となり、そのような取組みを促進することも重要です。 5 おわりに  本レポートの元となる「調査研究報告書bP67」(※)では、今回ご紹介した内容以外にも、就労支援機関の人材育成に関連する様々なデータを掲載しています。また、就労支援関係者から「効果的支援ノウハウ」にかかる事例を収集し、その内容をわかりやすくまとめた「様々な関係者による職業リハビリテーションの事例集」(※)を作成しています。ご関心があれば、障害者職業総合センターのホームページからご覧ください。 ※「調査研究報告書No.167」、「様々な関係者による職業リハビリテーションの事例集」は、下記ホームページからご覧いただけます。 https://www.nivr.jeed.go.jp/research/report/houkoku/houkoku167.html ◇お問合せ先:研究企画部 企画調整室(TEL:043-297-9067 E-mail:kikakubu@jeed.go.jp) 図1 就労支援担当者の知識・経験の充足状況(就労移行等の回答) 身体・知的・精神障害等の特性に即した支援方法(n=1,235) 不足2% やや不足14% どちらとも言えない21% やや充足42% 充足20% 福祉的就労と一般就労で共通する就労支援の理念と目的(n=1,225) 不足3% やや不足12% どちらとも言えない26% やや充足37% 充足22% 障害者福祉施策や就労系障害福祉サービス(n=1,236) 不足4% やや不足19% どちらとも言えない22% やや充足35% 充足20% 障害者就労支援の全体プロセスと多様な支援手法(n=1,229) 不足4% やや不足15% どちらとも言えない29% やや充足34% 充足19% 労働契約(時間、休日、賃金、解雇等)、労働保険・社会保険(n=1,228) 不足4% やや不足17% どちらとも言えない27% やや充足33% 充足19% 家族支援・生活支援、ライフステージに対応した支援、ケースマネジメント(n=1,227) 不足3% やや不足17% どちらとも言えない31% やや充足35% 充足14% 障害者雇用施策の体系や各種制度(n=1,233) 不足5% やや不足21% どちらとも言えない26% やや充足34% 充足14% 雇用施策と福祉施策の連携(n=1,227) 不足6% やや不足22% どちらとも言えない29% やや充足31% 充足12% 企業経営、雇用管理(n=1,219) 不足8% やや不足24% どちらとも言えない34% やや充足23% 充足11% 図2 資質・能力・スキルのある就労支援担当者の充足状況(就労移行等の回答) 各障害者の生活・人生の支援ニーズに様々な工夫をして対応しようとする資質・能力(n=1,240) 該当者は全くいない1% 該当者は少ない14% 半数程度が該当29% 該当者は多い39% ほぼ全員が該当18% 様々な仕事をうまく整理、組織立てて、手際よく、抜かりなく業務を遂行できる資質・能力(n=1,240) 該当者は全くいない1% 該当者は少ない14% 半数程度が該当36% 該当者は多い37% ほぼ全員が該当13% 先行きが見えない状況や多様な意見がある状況でも精神的に安定して対処できる資質・能力(n=1,238) 該当者は全くいない1% 該当者は少ない16% 半数程度が該当35% 該当者は多い35% ほぼ全員が該当14% 様々な関連制度やサービスを個別支援ニーズに合わせて活用できる知識とスキル(n=1,236) 該当者は全くいない1% 該当者は少ない25% 半数程度が該当35% 該当者は多い30% ほぼ全員が該当10% 障害者各人が活躍できる仕事や職場の調整や開発ができる知識とスキル(n=1,235) 該当者は全くいない1% 該当者は少ない23% 半数程度が該当37% 該当者は多い28% ほぼ全員が該当10% 様々な関係分野の支援者等と効果的に連携して就労支援ができる知識とスキル(n=1,234) 該当者は全くいない2% 該当者は少ない27% 半数程度が該当33% 該当者は多い28% ほぼ全員が該当9% 企業の人材採用・育成や雇用管理・経営のニーズに対応した就労支援ができる知識とスキル(n=1,233) 該当者は全くいない4% 該当者は少ない32% 半数程度が該当35% 該当者は多い23% ほぼ全員が該当7% 最新の就労支援手法や支援機器等、関連情報を収集して効果的に活用できる知識とスキル(n=1,228) 該当者は全くいない5% 該当者は少ない37% 半数程度が該当31% 該当者は多い22% ほぼ全員が該当6% 【P12-14】 JEED インフォメーション 〜高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)からのお知らせ〜 障害者雇用を進める事業主のみなさまへ 就労支援機器をご活用ください! 当機構(JEED)の中央障害者雇用情報センターでは、障害者を雇用している、または雇用しようとする事業主に無料で就労支援機器の貸出しを行っています。 「就労支援機器」とは障害者の就労を容易にするための機器のことで、例えば視覚障害者を対象とした拡大読書器や、聴覚障害者を対象とした補聴システム(集音システム)等があります。 (例) 拡大読書器 ●書類や写真などを拡大表示する機器です。 ●コントラストや色調の変更も可能なためより見やすく調整することができます。 ●卓上型、携帯型など活用シーンに合わせて選択できます。 補聴システム(集音システム) 受信機 マイク送信機 ●マイク(送信機)が拾った音を直接、補聴器や人工内耳に届けるシステムです。 ●聞きたい音を大きくできるので就労のさまざまな場面で有効に使用できます。 ノイズキャンセラー パーテーション ●視覚的・聴覚的環境刺激を低減させることで、周囲の状況に影響されずに集中できる環境を整えます。 貸出しの対象 障害者を雇用している、または雇用しようとしている事業主 ※国、地方公共団体、独立行政法人などは対象外です 貸出し期間 原則、6カ月以内 ※職場実習やトライアル雇用の場合も利用できます (正当な理由がある場合にかぎり、1回のみ延長可能) 貸出しの流れ 申請書の提出 申請書を記入し、メールまたは郵送でご提出ください ※申請書はJEEDホームページよりダウンロードできます 貸出し決定 申請のあった事業主に対し、申請内容を確認のうえ決定内容を通知し、機器を配送します〔無料〕 貸出しの終了・回収 JEEDが契約している業者が回収にうかがいます〔無料〕 ※申請前に対象機器の貸出し状況等について下記までご照会ください お問合せ 中央障害者雇用情報センター ※32ページ「掲示板」でご紹介しています 〒130-0022 東京都墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 TEL:03-5638-2792 E-mail:kiki@jeed.go.jp 就労支援機器を展示しているほか、導入に関する相談も行っています 就労支援機器はJEEDホームページで詳しくご紹介しています https://www.kiki.jeed.go.jp/ 就労支援機器のページ 検索 障害者雇用のためのマニュアル・好事例集などのごあんない  当機構(JEED)ホームページでご覧いただけます。また、ダウンロードにより全文もしくは必要箇所の印刷等をすることも可能です。ぜひご活用ください! NIVR マニュアル 事業主 検索 https://www.nivr.jeed.go.jp/manual.html 紹介ページはこちら 基本から知りたい方へ はじめての障害者雇用 〜事業主のためのQ&A〜  障害者雇用を進めるにあたって直面する職務の選定や労働条件の検討、職場環境の整備などに不安や悩みを抱える企業の方に向けて、具体的な方策や関連情報をQ&A形式で解説。 障害者雇用マニュアル コミック版1〜6  具体的な雇用事例や障害者雇用に関する課題を解決するためのノウハウを障害別(視覚障害、知的障害、聴覚障害、精神障害、発達障害、高次脳機能障害)にコミック形式で紹介。 動画で知りたい方へ 障害者の雇用ノウハウに関する動画・DVD  障害者雇用を積極的に進めている企業の取組みや雇用管理などに関するさまざまなノウハウを動画でわかりやすく解説。DVDを無料で貸出し。 事例から知りたい方へ 障害者雇用があまり進んでいない業種における雇用事例  障害者雇用があまり進んでいない業種に着目し、おもに中小企業における雇用事例を掲載。経営者の声や障害者雇用のメリット、職場定着などを紹介。 職場改善好事例集  障害者の雇用管理や雇用形態、職場環境、職域開発などについて、事業所が創意工夫を重ねて実践している取組みをテーマ別に紹介。  2020年度の募集事例はJEEDホームページ「障害者の労働安全衛生対策」で紹介しています。 紹介ページはこちら お問合せ 障害者雇用開発推進部 雇用開発課 TEL:043-297-9513 FAX:043-297-9547 登録無料 JEEDメールマガジン 新規登録者募集中!! 当機構(JEED)では、JEEDが全国で実施する高齢者雇用や障害者の雇用支援、従業員の人材育成(職業能力開発)などの情報を、毎月月末に配信しています。 おもな特徴 ◇毎号特集を組んでJEEDの業務内容を紹介 ◆JEEDの制度やサービス内容がよくわかる ◇マイエリア情報で地元情報をチェック! ◆セミナーやイベント情報が満載 雇用管理や人材育成の「いま」「これから」を考える、人事労務担当者や就労支援担当者のみなさま、必読! 障害のある従業員の新規・継続雇用… 定年延長・廃止に再雇用… 技能開発・向上の手段… そのお悩みのヒント見つかります!! 登録方法 JEED メルマガ で 検索 または から! お問合せ 企画部情報公開広報課 TEL:043-213-6215 【P15-18】 グラビア 得意を活かしてワインづくりにたずさわる 有限会社ココ・ファーム・ワイナリー(栃木県) 取材先データ 有限会社ココ・ファーム・ワイナリー 〒326-0061 栃木県足利市田島町611 TEL 0284-42-1194 FAX 0284-42-2166 写真・文:官野 貴  栃木県足利(あしかが)市の「有限会社ココ・ファーム・ワイナリー」 は、「社会福祉法人こころみる会」が運営する「指定障害者支援施設こころみ学園」で暮らす園生(利用者)の父兄らの出資によって設立されたワイン醸造所(じょうぞうしょ)だ。  ワイナリー東側の急斜面に開かれた葡萄(ぶどう)畑は、1958(昭和33)年、中学校の特殊学級(当時)に通う生徒と担任教師の川田(かわた)昇(のぼる)さんによって開墾された。現在は、こころみ学園の葡萄畑として、知的障害などのある園生がワインの原料となる葡萄を育てている。この急斜面の畑は葡萄の生育に適しているだけでなく、園生の心身を鍛えるためにも重要な役割を果たしているという。  園生は、日中活動としてそれぞれの得意なことを活かし、椎茸(しいたけ)の原木栽培、工芸品づくり、洗濯などの作業にあたる。葡萄栽培では、つる切り、傘かけ、摘粒(てきりゅう)、収穫などさまざまな作業を園生がになう。園生は「働きたい」という意欲が強いため、年齢を重ねてこれまで担当してきた作業が行えなくなっても、負荷の軽い作業に参加することが精神的な安定につながっているという。園生にとって働くことが喜びなのだ。  秋、ワイナリーは仕込みの最盛期を迎える。契約農家から届いた葡萄をトラックから降ろす作業は、力自慢の園生が大活躍。選果台に葡萄を流す作業では、スタッフが行う選別作業の様子を見ながら、適量の葡萄を流す。選果台の上流で、枝や葉などを取り除き、葡萄を均一にすることで、スタッフが選別に集中できる。瓶詰めやラベル貼り、出荷などの工程においても園生が活躍する。  ワイナリーで醸造されたワインは、2000(平成12)年に開かれた九州・沖縄サミットの晩餐会をはじめ、さまざまな場面に採用されるなど、高い評価を受けている。また、園生の活動は、近隣の休耕田の草刈り、耕作放棄地を借り受けての葡萄栽培など、地域へと広がっており、近隣住民にとっても、園生は欠かすことのできない存在となっている。 写真のキャプション ワイナリーに併設されたカフェからは葡萄畑が一望できる 「摘粒」。傷んでしまった実を一粒ずつていねいに取り除く 「カラス番」は、色づいた葡萄を狙うカラスを音で追い払う 葡萄畑の「草刈り」。園生がそれぞれのペースで作業を進める 葡萄の詰まったコンテナをトラックから降ろして運ぶ 奥の2人が適量の葡萄をベルトコンベアに流し、手前の2人が押しならす 仕込まれた葡萄は、ステンレスタンクやオークタンクで、自生酵母により発酵する 発酵によって生じた澱(おり)をボトルの口に集める「ルミアージュ」。決められた角度にボトルを回転させる繊細な作業であり、正確に同じ作業をくり返すことが得意な園生が担当している 瓶詰めされたワインにラベルを貼りつける。治具を使用しミスを防ぐ 出荷作業の一コマ。荷崩れを防ぐためにフィルムを巻きつける ワイナリーに併設されたワインショップ。こだわりのワインには多くのファンがいる 寄付されたマスクをパッケージから取り出す。高齢の園生が参加できる作業の一つ 工芸班の園生による「紙漉(かみす)き」。職人的こだわりで一枚一枚ていねいに漉いていく こころみ学園の洗濯をになう「洗濯班」。約100人分の洗濯物を、間違えずに本人に渡す 近隣住民から依頼された休耕田の草刈り作業。高齢化が進む地域にとって、園生は貴重な働き手だ 「椎茸の原木運び」。原木を抱え山道を歩くことで心身が鍛えられる 浸水した原木を山で休ませる。移動による刺激も椎茸の発生をうながすきっかけとなる 収穫された椎茸はワイナリーのショップで販売される。原木栽培は山林保全にもつながっている 【P19】 エッセイ 第4回 相談員の苦悩と心得 日本相談支援専門員協会顧問 福岡寿 福岡寿(ふくおか ひさし)  金八先生にあこがれて中学校教師になるも、4年で挫折。その後、知的障害者施設指導員、生活支援センター所長、社会福祉法人常務理事を経て、2015(平成27)年退職。田中康夫長野県政のころ、大規模コロニーの地域生活移行の取組みのため、5年間県庁に在籍。  現在は「NPO法人日本相談支援専門員協会」顧問、厚生労働省障害支援区分管理事業検討会座長。  著書に、『施設と地域のあいだで考えた』(ぶどう社)、『相談支援の実践力』(中央法規)、『気になる子の「できる!」を引き出すクラスづくり』(中央法規)などがある。  「相談支援専門員は障害のある方の伴走者として…」とはいっても、障害そのものもさまざまです。  一人の相談支援専門員が統合失調症から自閉症、難病、高次脳機能障害、あるいは医療的ケアなど、多種多様な障害それぞれに詳しいわけではありません。そんなスーパーマンのような人はいません。  そのため、ご本人と会い、さまざまな生活の様子や、そこにともなう困りごとなどを聴きとる「一次アセスメント」のほかに、その方の障害特性に詳しい専門家からの聴き取りとなる「二次アセスメント」も欠かせません。  相談支援専門員はどれだけ多くの障害に精通し、他職種の方とつながれているかが、業務を進めていくうえで大切な資質です。  一つの事例をご紹介します。とても人当たりがよく会話も弾む方なのに、「仕事が長続きしない」という相談者がいました。ハローワークで紹介を受け、採用が決まり、「よかったな」と思う間もなく、しばらくすると「離職しました」という報告とともに相談に来られた方でした。  離職といっても、職場からの解雇もあれば、自ら退職を申し出ることもあり、職種もさまざまで、職場も二十数件を超えていました。就職期間も、半年間続いた職場もありましたが、多くは、数週間から数カ月間程度でした。  離職の理由としても、気力低下であったり、自信喪失、欠勤・遅刻、体力不足など、その都度一様ではなく、もし自分が職場の採用にあたる面接官なら「即、採用」と即決したいほどにコミュニケーション能力のある方だったので、「なぜ長続きしないんだろう」とその背景を探りかねていました。  そこで、心理士に二次アセスメントとして心理検査をお願いしました。  受けられた検査は、成人向けのWAIS(ウェイス)(成人の知能を測定するための個別検査法)検査のほかに四種類ほどでした。  心理士からは、言語理解やコミュニケーション能力は非常に高い方だが、全体を見すえつつ、部分にも着目し適切な行動につなげていくという統合が苦手なため、細部にこだわりすぎて仕事が停滞したり、優先的に取り組むべき重要な業務を後回しにしてしまう傾向があるのではないか、と教えていただきました。  そこから、高いコミュニケーション能力が評価され、面接を経て就職を果たすも、仕事に慣れてきたころに、より重要であったり、煩雑な業務が課されてくると負担になってくるのではないか、と推察しました。  その後、職場ではご本人に業務を課す際、業務を「急ぐ・急がない」、「重要・軽微」と分けることにしました。重要で急ぐ業務は上司とペアで業務にあたり、失敗経験につなげない、軽微で急ぐ業務はリスト化し一つ終えるごとに斜線で消し、達成感を得ていく、などの配慮がなされるようになりました。  「福岡さんもWAISの検査を受けてみますか」と職場の同僚である心理職から誘われ、こわごわ受けてみました。「言語性のIQは高いが、動作性のIQは低い」という結果でした。特に、絵画完成や積木模様などの問題はほとんど完成できず、苦手なことがわかりました。これまで、人に何かを教えたり、一緒に考えたりするなど、言語性IQでこなせる仕事が多く、結果として職場で不適応にはならず、何とかやってこれたことに胸をなでおろしました。  ちなみに、私の末娘が心理職として産業カウンセリングなどの現場で働いていますが、夏に帰省したときに、「お父さん、ロールシャッハテスト〈インクの染みで作成された左右対称の図版が何に見えるかで、その人の考え方や心のありようをとらえる性格検査〉やってあげる」と誘ってきましたが、「娘に自分の心の底を知られては」と思い、即、断ることにしました。 【P20-25】 編集委員が行く 「人を大切にする会社」への変化さらなる障害者雇用へ 株式会社共同物流サービス、医療法人清照会障害者就業・生活支援センターみなと、障害者就労移行支援事業所わーくみなと(青森県) NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク 副理事・統括施設長 金塚たかし 取材先データ 株式会社共同物流サービス 八戸低温物流センター 〒039-1121 青森県八戸市卸センター1-3-1 TEL 0178-28-1299(代表) 医療法人清照会(せいしょうかい) 障害者就業・生活支援センターみなと 障害者就労移行支援事業所わーくみなと 〒031-0041 青森県八戸市廿三日町(じゅうさんにちまち)18番地 TEL&FAX 0178-44-0201(みなと) TEL&FAX 0178-22-3837(わーくみなと) 編集委員から  「トレーナー制度」や「採用教育部門」を設置し、職場環境改善を行ったことが法定雇用率達成のみで終わらず、障害のある人を戦力化する土壌を生み出した。支援機関と一体となり障害者雇用を進めるなか、意識改革があり、新たな障害者雇用のマッチングを目ざす企業の変化を紹介したい。 写真:官野 貴 Keyword:障害者就業・生活支援センター、就労移行支援事業所、職場実習、障害者トライアル雇用制度、障害者委託訓練制度 POINT 1 2018(平成30)年度に民間企業の法定雇用率が2.2%となり、本格的に取り組み始める 2 社会的責任から始めた障害者雇用において、障害のある人の戦力化に取り組む 3 送り出す側の支援機関と一体になり、人を育て、さらなるマッチングを見すえる はじめに  この10年間に「編集委員が行く」で、東北6県のうち唯一訪れていなかった青森県での取材である。八戸(はちのへ)市で障害のある人の就労支援に伴走型で取り組んでいる「障害者就業・生活支援センターみなと」(以下、「みなと」)、「障害者就労移行支援事業所わーくみなと」(以下、「わーくみなと」)のみなさんにご協力いただき、スムーズに「株式会社共同物流サービス」(以下、「共同物流」)の取材が実現した。同社は、新鮮な海産物を味わうことができる港町の八戸市に拠点を置く、文字通り物流センターを運営する会社である。従業員数は約830人。青森県ではだれもが知る、スーパーマーケットやホームセンターの物流をになっている。今回、訪問させてもらったのは、八戸市内に七つある物流センターの一つである八戸低温物流センター。こちらで働く障害のある社員、柳杭田(やなぐいだ)宏行(ひろゆき)さん(46歳)と、佐藤(さとう)良考(よしたか)さん(34歳)、取締役で管理本部長の盛田(もりた)正洋(まさひろ)さん、人事教育部部長の山田(やまだ)勇太郎(ゆうたろう)さん、八戸低温物流課課長の鈴木(すずき)一真(かずなお)さんにお話をうかがった。 法定雇用率を割り込み障害者雇用に取り組む  障害者雇用に本格的に取り組み始めたのは数年前。人事教育部部長の山田さんはこう打ち明けてくれた。「法定雇用率を割り込んで、障害者雇用納付金を納めたことがきっかけです」。その後、障害者雇用を強化すべく、さまざまな方を紹介してもらい、雇用した。その過程で、「障害のある人が安定して働くための基盤は職場にある。職場はそうした場を提供する義務がある」と感じ始めたそうだ。また、人材不足の折、「戦力としてもありがたい」と実感。社会的責任から始めた障害者雇用において、真剣に「戦力化」を考えるようになった。  ちなみに、法定雇用率を割り込んだのは、2018(平成30)年度に法定雇用率が2.0%から2.2%に引き上げられたとき。それまでは、ハローワークなどを通して採用した障害のある人が働いており、未達成になることはなかった。  そして現在は、16人の障害者(身体障害者4人、知的障害者7人、精神障害者5人)が働いている。  障害のある人を採用するにあたって、さまざまな支援機関とのつながりが生まれた。特に精神障害者の採用に際しては、「わーくみなと」からの紹介がメインである。障害者雇用の担当者に就任したとき、山田さんはどのように感じていたのだろうか。  「当初は問題意識が薄かったのですが、障害者雇用納付金の額を見て、『取り組まなくては』と思ったことを覚えています。最初、障害者雇用についてはハードルの高さを感じており、いろいろな不安もありました。しかし、全社をあげて取り組まなければならないと思い、上司である取締役の盛田に相談しました」  盛田さんは、「私は会社の規模を考えると、CSR(企業の社会的責任)として障害者雇用を重要視しなければならない、と感じました。また、働く機会を提供するのはわれわれの使命だとも思いました」と、ふり返る。  しかし、ハードルとなったのはやはり、現場で働く従業員からの理解を得ることだった。 支援機関のサポートを受け、戦力化。周囲の理解も進む  八戸低温物流課課長として現場を担当する鈴木さんも、「最初は不安でしかなかった」と打ち明ける。また、「どんどん受け入れて、仮に生産性が落ちて収益が悪化したとしても、そこは会社がフォローしてほしい」という思いを抱いていたそうだ。  「まずは、『どのように仕事を教えていこうか』と考えました。しかし、『みなと』のジョブコーチさんが横について一緒に仕事を見てくださるというので、とても安心しました」  ある程度仕事を覚えたところで、職場適応援助者(ジョブコーチ)は職場から徐々に離れていく。「いまでもよく覚えているのは、コンテナを洗浄する作業で使う機械の非常用ボタンが、とても小さくてわかりづらかったんです。そこで『みなと』のジョブコーチさんが、わかりやすい大きな表示を自作してきてくれました。本人の障害特性に応じて、どうすれば働きやすくなるかを考え、工夫してくれました」と、鈴木さんは当時の様子を教えてくれた。  提案を受け入れて、即座に対応してくれる企業担当者がそう多くはいないということを、われわれ支援者はよく知っている。しかし、「山田さんをはじめ共同物流のみなさんは柔軟に物事をとらえてくれる」と、「みなと」のスタッフは口をそろえていう。そして、鈴木さんは「適切な指示で教えれば、間違いなく仕事をしてくれる人たちだな」という手応えを、だんだんと感じるようになったという。  さまざまな部門で障害のある人が働くようになった同社を、山田さんはどのように取りまとめていったのだろうか。  「どの部門も最初はやはり不安があるため、抵抗感もあるのだろうな、ということは感じていました。鈴木が在籍している物流部門も、約120人の従業員がおり、そこに『2人受け入れてください』と割と強引にお願いしました。一つ心強かったのはやはり、『みなと』さんからジョブコーチが入ってくださったこと。不安や悩みは抱え込まず、『みなと』さんのアドバイスをもとに進めていけばよいと伝えました」  もう一つ、助けになったのは「マッチングの期間」があったことだ。この期間に生産性を落とさずに働けることがわかれば、正式に採用する。「例えばミスが多いとか、作業がとても遅い場合は、採用できない可能性もある。その前提で始めたのですが、こうした『障害者トライアル雇用制度』や『障害者委託訓練制度』を利用して入社した障害のある人は優秀な方ばかりで、全員がいまも働き続けています」。  鈴木さんは障害のある人とともに働くなかで、「作業も早く、何が課題なのかわからないな」と感じるようになり、少しずつ任せる仕事の量を増やしていった。その空気は、周囲で働く人たちからも感じられた。各部門で働く障害のある人が増えるごとに、不安や抵抗感はどんどんなくなっていった。  「それからは、賛同者が徐々に増えてきたのです」と盛田さんはふり返る。  「そのおかげで会社が変わり始めました。どこの会社も数字を追いかけ、人は二の次。それではダメじゃないかと。人を大事にしてこそ、数字がついてくるのです。人も数字も、バランスを取りながら利益を上げていく会社にしたいと思っていました」 各部門に相談係を配置発信しやすい環境に  柳杭田宏行さんは、「わーくみなと」から入社した一人だ。2週間の実習を経て、半年間のトライアル雇用へ。その後、正式に入社して3年になる。  「最初に『焦らなくていいよ』といわれたことが印象に残っています。『みなと』からジョブコーチの方がつきそってくださったのと、実習やトライアル期間があったことで、普通に就職するよりも安心感がありました」とふり返る。やはり、一番不安だったのは、社内の人たちとのコミュニケーションだった。困ったことがあるときに、だれに相談すればよいのか特に心配したが、「困ったときは職場のこの先輩に相談してください」と、あらかじめ声をかけてもらえたそうだ。  鈴木さんは「柳杭田さんがいると、仕事がどんどん進んでいく」と、その活躍ぶりを評価している。それを聞いた柳杭田さんは「直接その言葉を聞けてうれしいです」と照れる。やはり直属の上司からプラスの評価を受けるのはうれしいものだ。  「働くうえではまだまだ不安なこともありますが、作業のイメージを自分のなかで組み立てられるようになり、作業に集中して時間が早く過ぎていくときがあります」との言葉からは、3年目の成長が感じられる。  どうしたら、困ったときに当事者から発信がしやすくなるだろうか。  共同物流では、各部門に「相談係」を指名し、「困ったらこの人に声をかけてもらう」という工夫をしているそうだ。また、リーダー役はわかりやすいように「赤い帽子をかぶる」などの目印があり、いつでも相談できるようにしている。ある物流センターでは、腕章を巻いている人に相談するなどのルールがあるようだ。  もう一人、働き始めて6年目になる佐藤良考さんにもお話をうかがった。  「私も入社当時は、『人間関係がうまくできるかな』ということがとても不安でした。幅広い年齢層の方が働いている職場ですが、歳の近い方がいませんでした。それに私以外は女性ばかりなので、最初は『うまくやっていけるかな』と思ったのですが、おかげさまで助けていただきながら働いています」  佐藤さんの働きぶりを見ていると、テキパキと業務をこなしており、とてもすがすがしい。「どう動けば周りがうまく回るかと、つねに気を配っています。先を読みながら動くことを心がけています」。  佐藤さんが入社して以来、職場の雰囲気も少し変わった。鈴木さんは「周りは佐藤さんのお母さん世代ばかり。みんながやさしくなった、という話を聞いたことがあります。周りも最初は不安だったかもしれませんが、佐藤さんはしっかりとあいさつができる人。あいさつを大切にする年代の従業員からも受け入れられやすかったのだと思います。障害のある人に対するイメージも、変わったと感じます」と教えてくれた。  お母さん世代の先輩たちは、作業に関しては、ときに厳しく注意することもあったという。それについて悩んだ時期もあったそうだが、知らず知らずのうちに鍛えられたのかもしれない。  「自分一人だけで働いているわけではないので、周りに合わせる努力をしています」という佐藤さん。不安があるときは一人で抱え込まず、周りの人に相談することも心がけている。  同社には複数の物流センターがあり、職種も多岐にわたっている。そしてそれが、障害者雇用を進めるうえでのアドバンテージにもなっているようだ。山田さんは「バスで通勤しやすい立地の物流センターを中心に採用を行っています。また、働く障害のある人の生活リズムに配慮して、深夜時間帯での勤務を避けて募集しています」と教えてくれた。  また、さまざまな職種があるということは、シフトによりフレキシブルな働き方ができるという強みにもなる。はじめからフルタイムでの勤務は避け、短時間からスタートして徐々に時間を延ばしていく方法を、障害の有無にかかわらず採り入れている。体力がいる仕事であるため、障害のない人も含めて「いきなりフルタイムはキツい」という方も多いだろう。全従業員にとって、非常にありがたい取組みである。 年間200人が退職していたが地道に労働環境を改善  ここまで配慮の行き届いた職場になるまでには、紆余曲折もあった。2017年度からは「トレーナー制度」や「採用教育部門」が整備されたが、その経緯についてもたずねてみた。  「じつはトレーナー制度などができた背景には、『離職率を下げたい』という思いがありました。お恥ずかしい話ですが」と、山田さんが口を開く。元々物流センターというのは、人の出入りが激しい業種だそうだ。共同物流でも7〜8年前は、年間約200人が退職し、同じ人数が入社していた。月に約15人が退職するということが常態化していたのだ。  退職の大きな理由の一つが人間関係。具体的には、新しく入社した人を教える際、感情的に叱ったりするケースが多く見受けられた。教える側も「教えるための教育」を受けていないので、当然のことでもある。  「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。」という山本(やまもと)五十六(いそろく)の名言がある。この考え方を体現できるように、教育を担当する社員がコーチングや傾聴について学ぶ環境を整えていった。教育担当の社員は、全社で約150人。ベテランの社員やスキルの高い社員を推薦し、研修を受けたうえで新人教育にたずさわってもらう。  複数の教育担当者を部下に持つ鈴木さんも、現場で毎日、「どうすれば人が辞めない職場になるのか」をつねに意識していたという。いまも「今日の作業はどうだった?」と、新しく入った社員に声をかけ、部下のリーダーたちとも積極的にコミュニケーションをとるよう心がけている。  こうした努力が実を結び、現在では退職者は年間80人ほどまで減ったそうだ。加えて、「会社の労働環境が改善された」と山田さんはいう。じつは10年ほど前は残業も多く、整った労働環境の会社とはとてもいえなかった。しかし、盛田さんが取締役として同社に来てからは、さまざまな改革が行われた。  まずは採用を強化して人材不足を解消。その結果、残業が減り、少しずつ現場の意識も変わっていった。年次有給休暇も遠慮せずに取れるようになったという。  「制度を一つずつ見直して、規程を大幅に変えました。社長も全面的に協力してくださったことで、改革は進めやすかったです」と盛田さんはふり返る。  組織が変革していくには一度に大きく変わるということではなく、従業員一人ひとりの意識の改革が必要なのだろうと話を聞いて感じた。 障害のある人のさらなる活躍に向けマッチングを広げる  こうしていま、障害のある人が活躍する同社の姿があるわけだが、周囲の人たちからはどのように見えているのだろうか。  「支援者としては、とても信頼できる会社です。私たちの利用者さんを大事にしてくれるので、安心して送り出せます」と、「みなと」のセンター長で、「わーくみなと」管理者の工藤(くどう)玲子(れいこ)さんはいう。先に紹介した佐藤さんも、「一人ひとりを大切にしてくれます」と言葉を添える。  障害のある人が多く働く会社となり、山田さんはこう考えるようになった。「弊社のように従業員数が多い会社になると、考え方や感じ方が違う人とともに働くことになります。自分と違う考え方の人と一緒に、職場という小さなコミュニティを育んでいく。障害者雇用を通して、価値観を認め合える職場になれるよう、取組みを続けていきたいです」。  最後に、今後の障害者雇用については、どのような展開を考えているのだろうか。  「先ほども少し触れましたが、弊社にはさまざまな作業があるため、一般的な物流業界で求められる『短時間ですばやく正確に』という基準以外の仕事もたくさんあります。つまり、例えば四肢に障害のある人や、理解に時間がかかるという人にとっても、活躍できる場があります。いまはまだ、そういった仕事を求めている障害のある人とのマッチングが十分にできている状態ではないのですが、今後は広げていきたいと考えています」と、山田さんはいう。  それを聞いた工藤さんは、「支援者としてすごくうれしい話です。柳杭田さんも佐藤さんも、会社の戦力となり、なくてはならない存在に会社が育ててくださいました。マッチングについては、私たちも送り出す側の責任≠ニして、さらに会社を知る努力をし、頼りにしてもらえるような支援機関になりたいです」と話してくれた。  柳杭田さんも佐藤さんも、夢は「旅行をする」ことだという。柳杭田さんは南の島へ、佐藤さんは東京へ行きたいそうだ。お給料を貯めて、年次有給休暇を使って、近い将来ぜひその夢を実現してほしい。 ● ● ●  共同物流が本格的に障害者雇用に取り組むきっかけとなったのは、法定雇用率である。しかし、同社は法定雇用率の達成のみに終わらず、戦力化することを目ざした。そのためにはマッチングが重要であり、障害者トライアル雇用制度や障害者委託訓練制度をうまく活用している。制度利用については、ハローワークなどで確認しながら進める必要があるが、このように、ハローワークが中心になってチーム支援を実践しているところにも魅力を感じた。「戦力化」についても、当事者の働きたい意欲や能力はもちろんであるが、企業の戦力化へ向けての取組み、そして行政を含めた地域の支援者、この三つのベクトルが一つになっている結果であろうと思う。  また、会社のピンチをチャンスに変えて「トレーナー制度」や「採用教育部門」を整備した結果、職場環境が改善され、多様な人たちを受け入れる土壌をつくれたことが、共同物流が障害者雇用を成功させた大きな要因である。これからも障害者雇用の枠を広げようとする同社の取組みを楽しみにしたい。 写真のキャプション 取締役で管理本部長の盛田正洋さん 人事教育部部長の山田勇太郎さん 八戸低温物流課課長の鈴木一真さん 株式会社共同物流サービス八戸低温物流センター(写真提供:株式会社共同物流サービス) 八戸低温物流センターで働く柳杭田宏行さん 柳杭田さんは、ラベルの発行やカートの準備などを担当している 八戸低温物流センターで働く佐藤良考さん 袋詰めされた玉ねぎをカートに積み込む佐藤さん 障害者就業・生活支援センターみなとのセンター長で、障害者就労移行支援事業所わーくみなと管理者の工藤玲子さん 障害者就業・生活支援センターみなと、障害者就労移行支援事業所わーくみなとのみなさんにお話をうかがった 障害者就業・生活支援センターみなと、障害者就労移行支援事業所わーくみなと 【P26-29】 省庁だより 令和5年版 障害者白書概要 内閣府ホームページより抜粋  障害者白書は、障害者基本法第13条に基づき、障害者のために講じた施策の概況について、毎年国会に報告しているものです。  「令和5年版障害者白書」の概要を紹介します。 第1章 障害の有無により分け隔てられることのない共生社会の実現に向けた取組 第1節 改正障害者差別解消法の施行に向けて ○障害者差別解消法の経過  「障害者差別解消法」の施行3年後の検討規定による見直しの検討を経て、2021年6月に「改正障害者差別解消法」が公布。施行は2024年4月1日。施行に向けて改定した「基本方針」が2023年3月14日に閣議決定。 ○「障害者差別解消法」の概要  全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するためには、日常生活や社会生活における障害者の活動を制限し、社会への参加を制約している社会的障壁を取り除くことが重要である。 ○「改正障害者差別解消法」の概要 ・政府は、障害者差別解消法の施行(平成28年4月)3年経過後において、事業者による合理的配慮の在り方やその他の施行状況について検討し、所要の見直しを行うとの規定(附則第7条)を踏まえ、内閣府の障害者政策委員会における議論や団体ヒアリング等を通じて、検討を実施。 ・障害を理由とする差別の解消の一層の推進を図るため、事業者に対し社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をすることを義務付けるとともに、国・地方公共団体相互の連携の強化を図るほか、障害を理由とする差別を解消するための支援措置を強化する措置を講ずる。 ○障害者の差別解消に向けた取組等 ▼国や地方公共団体の相談窓口等担当者が相談対応業務で参考とする相談対応ケーススタディ集を公表 ▼「改正障害者差別解消法」の周知啓発のためのリーフレットを作成して、内閣府ホームページで提供 ▼「障害者差別解消法」の理解促進を目的とした「障害者の差別解消に向けた理解促進ポータルサイト」を開設。ポータルサイト内に「合理的配慮の提供」等の具体例を障害の種類などに応じて検索できる「障害者差別解消に関する事例データベース」を公開 ▼【北九州市の取組】  障害者差別解消条例及び合理的配慮の提供の周知のために主に事業者に対してリーフレットを配布 ▼【株式会社ミライロの取組】  障害者手帳をスマートフォン上でデジタル化するデジタル障害者手帳を運営 第2節 障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策の総合的かつ計画的な推進 ○第5次基本計画の位置付け及び策定  政府が講ずる障害者のための施策の最も基本的な計画である「障害者基本計画(第5次)」(以下「第5次基本計画」という。)について、政府において障害者政策委員会の意見に即した案が作成され、2023年3月14日に閣議決定した。対象期間は2023年度から2027年度までの5年間。 ○第5次基本計画の構成  「第5次基本計画」は、「T 障害者基本計画(第5次)について」、「U 基本的な考え方」及び「V 各分野における障害者施策の基本的な方向」で構成されている。「U 基本的な考え方」では、計画全体の基本理念及び基本原則を示すとともに、各分野に共通する横断的視点や、計画を実施するに当たり留意すべき社会情勢の変化、施策の円滑な推進に向けた考え方を示している。「V 各分野における障害者施策の基本的な方向」では、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を11の分野に整理し、それぞれの分野について、第5次基本計画の対象期間に政府が講ずる施策の基本的な方向を示すとともに、関連する施策を記載している。 第2章 障害のある人に対する理解を深めるための基盤づくり 広報・啓発等の推進 ○「障害者週間」(毎年12月3日〜9日)及び「各種の広報・啓発活動」  2022年度は天皇皇后両陛下の御臨席の下で「障害者週間」関係表彰式を実施。天皇陛下よりおことばを賜るとともに、岸田内閣総理大臣からおおむね5年に1度の障害者関係功労者表彰を含む3つの表彰制度の受賞者に対して表彰状を授与。このほか各種の週間・月間等の活動の中でも、障害のある人への理解を深めるための広報・啓発活動を展開した。 ○教育・福祉における取組  教育や福祉の分野における発達障害者の支援に当たる教育関係者と福祉関係者が連携するに当たり、共通に身につけておくべき専門性について整理した初級者向けのモデル研修(eラーニング)動画集を独立行政法人国立特別支援教育総合研究所と国立障害者リハビリテーションセンターで運用する発達障害に関するポータルサイト「発達障害ナビポータル」で2022年4月より公開している。 ○公共サービス従事者等に対する障害者理解の促進  障害のある人が地域において安全に安心して生活していく上では、公務員を始め公共サービス従事者等が障害及び障害のある人について理解していることが重要であり、各種取組を行っている。  警察では、新たに採用された警察職員に対する採用時教育の段階から、障害のある人とのコミュニケーション方法に係る研修や、有識者による講話等、障害のある人の特性への理解を深めるための取組を実施。  法務省の人権擁護機関では、中央省庁等の職員を対象とした「人権に関する国家公務員等研修会」や、都道府県及び市区町村の人権啓発行政に携わる職員を対象とした「人権啓発指導者養成研修会」等を実施。 第3章 社会参加へ向けた自立の基盤づくり 第1節 障害のある子供の教育・育成に関する施策 ○特別支援教育の充実  障害のある子供については、その能力や可能性を最大限に伸ばし、自立や社会参加に必要な力を培うために個々の教育的ニーズに応じ、特別支援学校や小・中学校の特別支援学級、通級による指導、通常の学級における指導といった多様な学びの場において適切な指導・支援を行っている。  また、障害のある児童生徒の教科書・教材を充実させる取組が行われており、2022年度に特別支援学校及び特別支援学級を含む全国全ての小・中学校等を対象として、英語等の学習者用デジタル教科書提供や普及促進を図る事業等を実施した。さらに、同年7月の「教育職員免許法施行規則」改正により特別支援教育を担う教師の専門性の向上を図ったほか、国の定める整備目標に到達していない公立小・中学校等の各学校設置者に対して、バリアフリー化の取組を加速するよう要請し、学校施設のバリアフリー化の推進等を行った。 ○障害のある子供に対する福祉の推進  障害児保育の推進や放課後児童クラブにおける障害のある児童の受入促進に努めており、障害児受入施設数や障害児受入放課後児童クラブ数及び利用する児童数は増加傾向にある。2022年度は、障害のある児童が放課後児童クラブを適切に利用できるようにする支援として、職員が加配できるようにする補助の拡充などを行った。  また、療育体制の整備では、2024年度から2026年度までを計画期間とする「第3期障害児福祉計画」において、児童発達支援センターを中核とした重層的な地域支援体制の構築などを内容とする基本方針を策定した。 第2節 雇用・就労の促進施策 ○障害のある人の雇用の場の拡大  2022年の民間企業(常用雇用労働者数43.5人以上規模の企業:法定雇用率2.3%)が雇用している障害者の数(2022年6月1日現在、以下同じ)は61.4万人(前年同日59.8万人)で、19年連続で過去最高となり、雇用している障害者の割合は2.25%(前年同日2.20%)であった。  また、国の機関(法定雇用率2.6%)に在職している障害者の割合、勤務している障害者数はそれぞれ2.85%、9.7千人で、全ての機関において法定雇用率を達成している。  雇用の質の向上の推進や、多様な就労ニーズに対する支援を図る観点から、事業主が障害者の職業能力の開発等を行うことや、特に短い労働時間で働く精神障害者等について特例的に実雇用率に算定できるようにすること等を改正内容とする障害者雇用促進法の一部改正を含む「障害者総合支援法等一部改正法」が2022年12月に成立した。 ○総合的支援施策の推進  障害のある人が地域で自立した日常生活又は社会生活を送るための基盤として就労支援は重要であり、福祉的就労から一般就労への移行等の支援、在宅就業への支援、就労に向けた各種訓練、農福連携、福祉施設等における仕事の確保に向けた取組など、障害のある人の就労等に係る総合的支援施策を推進している。 第4章 日々の暮らしの基盤づくり 第1節 生活安定のための施策 ○利用者本位の生活支援体制の整備  障害保健福祉施策については、障害のある人の地域における自立した生活を支援する「地域生活支援」を主題に、身体に障害のある人、知的障害のある人及び精神障害のある人それぞれについて、住民に最も身近な市町村を中心にサービスを提供する体制の構築に向けて、法制度の整備を行っている。  2022年には、障害者等の地域生活や就労の支援の強化等により、障害者等の希望する生活を実現するため、障害者等の地域生活の支援体制の充実等を内容とする「障害者総合支援法等一部改正法」が成立した。  また、権利擁護の推進として、日常生活自立支援事業を実施するとともに成年後見制度の利用促進については、2022年3月に「第二期成年後見制度利用促進基本計画」を閣議決定した。 ○在宅サービス等の充実  障害のある人が地域で暮らしていくためには、在宅で必要な支援を受けられることが必要となる。このため、市町村において、「障害者総合支援法」に基づき、利用者の障害の程度や必要な支援の内容等に応じ、居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護及び重度障害者等包括支援を実施している。  発達障害児者支援については、2022年度は、市町村や事業所等が抱える発達障害者に係る困難事例への対応を更に促進するため、発達障害者地域支援マネジャーの配置体制強化等を行った。 ○スポーツ・文化芸術活動の推進  地域における障害者スポーツの振興体制の強化や障害の有無を問わず身近な場所でスポーツを実施できる環境の整備を通して、地域における障害者スポーツの一層の普及促進を図るとともに障害者スポーツ団体の体制の強化につなげている。あわせて、障害者スポーツの競技力向上に取り組んでいる。  障害のある人による文化芸術活動の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、2023年3月に「障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な計画(第2期)」を策定し、計画期間において目指す姿として、「障害のある人による幅広い文化芸術活動の更なる促進や展開」、「関係団体・機関等の連携による取組の充実」、「地域における推進体制の構築」の3つの目標を定めている。 第2節 保健・医療施策 ○障害の原因となる疾病等の予防・治療  リスクの早期発見のための健康診査、障害の原因となる疾病等を予防して健康の保持増進を図るための保健指導、自立支援医療の充実、難病患者に対する保健医療サービスの提供の推進などの取組を行っている。 ○精神保健・医療施策の推進  心の健康づくりとして、うつ対策の推進、精神疾患に関する情報提供、自殺対策の推進、依存症対策の強化などの取組を行っている。精神保健医療福祉施策の取組としては、2022年に、「精神保健福祉法」の改正を含む「障害者総合支援法等一部改正法」が成立し、精神障害のある人の希望やニーズに応じた支援体制を整備するための包括的な支援の確保が明確化されたほか、権利擁護等の観点から、医療保護入院制度の見直しや虐待防止のための取組、「入院者訪問支援事業」の創設等について定められた。 第5章 住みよい環境の基盤づくり 第1節 障害のある人の住みよいまちづくりと安全・安心のための施策 ○移動等の円滑化の一層の促進  公共交通事業者など施設設置管理者におけるソフト対策の取組強化、優先席・車椅子使用者用駐車施設等の適正な利用の推進、市町村等による「心のバリアフリー」の推進等の措置を講ずること等を内容とした、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(以下、「バリアフリー法」という。)の一部を改正する法律」が2021年4月に全面施行された。 ○ユニバーサルデザインの考え方を踏まえたバリアフリー施策の推進  「バリアフリー法」に基づく「移動等円滑化の促進に関する基本方針」を改正し、2025年度末までの5年間の新たなバリアフリー整備目標に取り組んでいる。  また、「バリアフリー法」に基づき、駅などのハード面の整備に加え、高齢者、障害のある人等の移動等円滑化の促進に関する国民の理解及び協力を求めること、いわゆる「心のバリアフリー」を国の責務として推進している。これまでに、介助の擬似体験等を通じバリアフリーに対する国民の理解増進を図る「バリアフリー教室」の全国各地での開催や、鉄道利用者への声かけキャンペーン等の啓発活動の推進を行っている。 ○バリアフリー化の推進  住宅、建築物、公共交通機関、歩行空間等のバリアフリー化を推進している。  2022年3月には「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行規則」を改正し、「劇場、観覧場、映画館、演芸場、集会場又は公会堂の客席」をバリアフリー法の対象施設に追加した(2022年10月施行)。  また、「高齢者、障害者等が円滑に利用できるようにするために誘導すべき建築物特定施設の構造及び配置に関する基準を定める省令」を改正し、劇場等の客席に対する建築物移動等円滑化誘導基準を設定した。 ○防災、防犯対策の推進  障害のある人が地域社会において安全に安心して生活することができるよう、災害に強い地域づくりを推進するとともに、災害発生時に、障害特性に配慮した適切な支援や避難所・応急仮設住宅の確保等を行うことができるよう、防災や復興に向けた取組を推進している。また、障害のある人を犯罪被害等から守るため、防犯対策の取組を推進している。 第2節 障害のある人の情報アクセシビリティを向上するための施策 ○情報アクセシビリティの向上  障害のある人の情報通信技術(ICT)の利用・活用の機会の拡大を図るための支援、障害のある人に配慮した機器・システムの研究開発や、情報アクセシビリティに関する標準化、ホームページ等のバリアフリー化等の推進に取り組んでいる。 ○情報提供の充実  障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策を総合的に推進し、共生社会の実現に資することを目的とする「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律」が2022年5月に施行された。  本法の趣旨を踏まえ、2023年3月に「第5次基本計画」が閣議決定され、本法に基づき、障害のある人による情報取得等に資する機器等の開発及び普及の促進並びに質の向上に関する協議の場が開催されている。また、字幕放送、解説放送、手話放送等の普及を推進している。 ○コミュニケーション支援体制の充実  意思疎通を図ることに支障がある人に、手話通訳者や要約筆記者、盲ろう者向け通訳・介助員等の派遣を行う意思疎通支援事業等や電話リレーサービスの提供などが実施されている。 第6章 国際的な取組 我が国の国際的地位にふさわしい国際協力に関する施策 ○障害者に関する国際的な取組  障害者の権利及び尊厳を保護し、促進すること等を目的とする「障害者の権利に関する条約」(以下「障害者権利条約」という。)は、2014年2月19日に我が国について発効した。  「障害者権利条約」では、「条約に基づく義務を履行するためにとった措置及びこれらの措置によりもたらされた進歩に関する包括的な報告」を「障害者の権利に関する委員会」(以下「障害者権利委員会」という。)に提出することを定めており、2022年8月に第1回政府報告の対面審査が行われた。対面審査を踏まえた障害者権利委員会による総括所見については、2022年10月7日に公表された。今般示された同委員会の勧告等については、関係府省庁において内容を十分に検討していく考えである。 ○国際協力等の推進  障害者施策は、福祉、保健・医療、教育、雇用等の広範な分野にわたっているが、我が国がこれらの分野で蓄積してきた技術・経験などを政府開発援助(ODA)やNGOとの連携等を通じて開発途上国の障害者施策に役立てることは、極めて有効であり、かつ、重要である。我が国は、有償資金協力、無償資金協力、技術協力のほか、国際機関等を通じた協力等を行っている。 「障害者白書」は、内閣府ホームページに掲載しています(※) ※https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/index-w.html 【P30-31】 ニュースファイル 国の動き 厚生労働省 職場の障害者虐待3割増  厚生労働省は、都道府県からの報告や労働局への相談、そのほかの経緯で把握した「令和4年度使用者による障害者虐待の状況等」を公表した。これによると、虐待が認められた事業所数は、前年度と比べ9.7%増の430事業所で、虐待が認められた障害者数は、前年度と比べ30.7%増の656人だった。  認められた虐待種別の延べ人数は、賃金の未払いや最低賃金を下回る賃金しか支払わないなどの経済的虐待が600人(87.3%)で最多。暴言や差別的発言などの心理的虐待が47人(6.8%)、暴力をふるうなどの身体的虐待は24人(3.5%)だった。  虐待が認められた事業所の業種別では、多い順に製造業25.3%、医療・福祉21.2%、卸売業・小売業14.4%。事業所の規模別では5〜29人が47.7%、5人未満が15.3%、100〜299人が10.2%だった。  各都道府県の労働局では、「障害者虐待防止法」に基づき地方公共団体と連携し、障害者を雇用する事業主や職場の上司など、いわゆる「使用者」による障害者への虐待の防止や、虐待が行われた場合の関係法令に基づく是正指導などに取り組んでいる。 https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000172598_00009.html 生活情報 東京 無料の手話学習アプリ  日本財団(港区)は、9月23日の「手話言語の国際デー」に合わせて手話学習アプリ「手話タウンハンドブック」を公開した。ウェブ版とモバイルアプリがあり、スマートフォンやタブレットでも無料で利用できる。  このアプリは、Googleおよび関西学院大学の協力のもと、香港中文大学と共同で開発。手話を検索・練習できる簡易辞書として活用してもらう。日本手話、香港手話、ヤンゴン手話を収録し、現時点で登録単語数は800以上。「感情」、「食べ物」などテーマごとに構成している。 ◆ウェブ版:https://handbook.sign.town/ ◆iPhone・iPad:https://apps.apple.com/bh/app/signtown-handbook/id1643644150 ◆Android:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.thebitstudio.shuwa&pcampaignid=web_share 東京 障害者当事者団体と東京大学大学院が協定  障害者当事者団体の認定NPO法人「DPI日本会議」(千代田区)と東京大学大学院教育学研究科(文京区)は、障害の有無に関係なくともに学ぶ「フルインクルーシブ教育事業」の実現に向けた連携協定を締結した。大学生向けの障害理解カリキュラムや、小・中学校での授業カリキュラムや教員研修を開発するとしている。  協定は、(1)日本的な共生の思想についての国際的発信、(2)大学生向け教育カリキュラムの開発、(3)政策提言の強化への反映、(4)小・中学校向け研修カリキュラムの開発、の四つが軸。学術組織と障害者団体が互いの強みを活かしながら協力し、障害者権利条約が目ざすインクルーシブ教育を広げる大きなうねりをつくり、障害の有無によって分け隔てられることのない共生社会=インクルーシブ社会の実現を目ざす。 働く 長崎 駅業務も行うカフェ  「社会福祉法人ながよ光彩会」(西彼杵郡(にしそのぎぐん)長与町(ながよちょう))が、JR九州、長与町と協働し、JR長崎本線長与駅内でカフェ機能や駅業務の一部をになう「GOOOOOOOD STATION(グッドステーション)」をオープンした。  駅構内のコミュニティホールに開設されたグッドステーションでは、JR九州の駅員が不在となる午後の改集札や清掃、乗降介助などの業務をになう。乗降介助は原則、JR九州への事前連絡が必要。さらにカフェとして自家焙煎(ばいせん)のコーヒーを提供し、地域の製材所で出た端材を活用して障害のある人がつくった木工品なども販売。コミュニティホールではイベントや展示会なども開催し、障害のある人の働く場の創出や、地域のにぎわいづくりに取り組む。営業時間は11時〜19時。 本紹介 『職場の発達障害』  「発達障害外来」があることで知られる昭和大学附属烏山(からすやま)病院の病院長で、昭和大学医学部精神医学講座主任教授を務める岩波(いわなみ)明(あきら)さんが、『職場の発達障害』(PHP研究所刊)を出版した。  ADHD(注意欠如・多動性障害)、ASD(自 閉症スペクトラム障害)をめぐる最新の知見、治療法を解説。幼いころから積み重なった「周囲となじめない」負の記憶や、職場で浮いてしまうという悩み、問題行動による解雇などに苦しみ、自らの人生を何とかしたいと考えている当事者たちの現状とともに、発達障害の特性にマッチした職場環境、薬物療法の効果、就労支援の制度や社会復帰のトレーニングの活用法を解説。「止まらない仕事のミスと対人関係の問題」、「ADHDをめぐる誤解――職場でどう接するか」、「仕事とNeurodiversity」といったテーマで、本人・周囲にとって最適な就労への道を示す。新書判232ページ、1034円(税込)。 『障がいを恵みとして、社会を創る 近藤秀夫と樋口恵子』  東京家政大学人文学部教育福祉学科の教授を務める田中(たなか)恵美子(えみこ)さんが、『障がいを恵みとして、社会を創る 近藤秀夫と樋口恵子』(現代書館刊)を出版した。近藤(こんどう)秀夫(ひでお)さんは16歳のときに事故で脊髄を損傷し、1964(昭和39)年東京パラ五輪に車いすバスケットボール選手などとして出場。その後、町田市職員になり「車いす公務員」と呼ばれながらケースワーカーとして地域を変革してきた。今年9月に逝去した妻の樋口恵子さんは、日本の自立生活運動のリーダーとして基礎を形成し、国政にも挑んだ。二人のライフ・ヒストリーとインタビューを題材に、戦後障害福祉と自立生活運動の歴史を描きつつ、二人の当事者活動を「ソーシャルワーク実践」と位置づけて、その今日的な意義を探っている。四六判320ページ、2750円(税込)。 アビリンピック マスコットキャラクター アビリス 2023年度地方アビリンピック開催予定 1月 広島県、佐賀県 *開催地によっては、開催日や種目ごとに会場が異なります *  は開催終了 地方アビリンピック 検索 ※日程や会場については、変更となる場合があります。 写真のキャプション 広島 佐賀 ミニコラム 第30回 編集委員のひとこと ※今号の「編集委員が行く」(20〜25ページ)は金塚委員が執筆しています。 ご一読ください。 「働き続ける」を支える力 NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク副理事・統括施設長 金塚たかし  今回の取材で「働き続けるためのポイント」を、あらためて確認することができた。まずは障害のある人、企業、地域、支援者の力をひとつにする必要がある。  障害のある人は、障害・病状に対する理解や仕事をするうえでの配慮事項、得意なことなどを把握していることが、継続就労するための絶対的要件になる。  企業は、障害者雇用の価値をどのように位置づけるかが重要であり、組織のなかで戦力化するための分岐点になる。障害のある人を人財≠ニして育てるには「仲間として認めてくれる同僚」、「評価してくれる上司」がいることで、孤立感からくる離職を防ぐことができる。そしてそれは自身の弱さを暴露できる環境であり、障害のある人に対し安心感を提供することになり、困ったときに迷いなく相談できる雰囲気をつくることになる。障害のある人に相談する力を私たちは求めるが、気軽に相談できる雰囲気がなければむずかしいと考える。そのためには、上司のコミュニケーション力とマネージメント力が問われることになる。今回のように、部署で初めて障害のある人を雇用するときは、現場に不安や戸惑いがあるのは当然である。それを払拭するために支援者の力が必要になる。  支援者は、企業の文化を知り、キーパーソンの困りごとに対して具体的な「提案」をすることが求められる。  障害のある人の仕事に対して「過度に負担のかかる仕事は避けた方がよい」といわれるが、この負担は決して量だけの問題ではなく、やりがいや精神状態をさしていることが多い。取材をさせていただいたお二人は時間をかけて業務範囲を広げ、その結果、ほかの従業員から認められる存在になり、それが従業員の意識変革につながった大きな要因である。これを契機に、さらなる多様な人財の受入れを経営戦略として進めていけるように感じた。 【P32】 掲示板 事業主のみなさまへ 中央障害者雇用情報センターのご案内 障害者雇用に関する相談・援助 企業の規模・業種の特性に応じた障害者の雇用管理に関する相談に応じます。 中央障害者雇用情報センターの詳しい情報はこちら。 障害者雇用管理サポーターによる支援 障害者の雇用管理にかかる専門的な支援を必要とする事業所へ専門家(障害者雇用管理サポーター)の派遣に関する相談を行います。 登録サポーターの専用検索サイトはこちら。 就労支援機器の展示・相談・貸出し 障害者の就労を支援する機器の活用事例の紹介やデモンストレーション、導入・貸出しに関する相談を行います。 貸出対象機器、貸出申請書類はこちら。 ※就労支援機器について、12ページでご紹介しています ◆お問合せ先 中央障害者雇用情報センター 住所:〒130-0022 東京都墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 TEL:03-5638-2792 E-mail:syougai-soudan@jeed.go.jp 利用時間:月〜金(8時45分〜17時) ※祝日および12月29日〜1月3日を除く 読者アンケートにご協力をお願いします! 回答はこちらから→ メールマガジン好評配信中! 詳しくは JEED メルマガ 検索 次号予告 ●リーダーズトーク  三菱商事株式会社(東京都)人事部健康推進・DE&Iチーム担当シニアマネージャーの福元邦雄さんに、これまでの自身の経験を活かした障害者雇用についてお話しいただきました。 ●職場ルポ  株式会社キューサイファーム島根(島根県)を訪問。支援機関との連携や、社内理解を深めながら障害者雇用を進める現場を取材しました。 ●グラビア  盛岡冷麺や中華麺などの製造を行う株式会社中野製麺(岩手県)を取材。障害のある従業員の活躍の様子をご紹介します。 ●編集委員が行く  金井渉編集委員が、学校法人名古屋学園名古屋情報専門学校(愛知県)を訪問。障害のある生徒の就労支援や職場実習など、学校独自の取組みについてお伝えします。 公式X(旧Twitter)はこちら! 最新号発行のお知らせやコーナー紹介などをお届けします。 @JEED_hiroba 本誌購入方法 定期購読のほか、最新号やバックナンバーのご購入は、下記へお申し込みください。 1冊からのご購入も受けつけています。 ◆インターネットでのお申し込み 富士山マガジンサービス 検索 ◆お電話、FAXでのお申し込み 株式会社広済堂ネクストまでご連絡ください。 TEL 03-5484-8821 FAX 03-5484-8822 編集委員 (五十音順) 株式会社FVP代表取締役 大塚由紀子 トヨタループス株式会社 管理部次長 金井渉 NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク 副理事・統括施設長 金塚たかし 弘前大学教職大学院 教授 菊地一文 岡山障害者文化芸術協会 代表理事 阪本文雄 武庫川女子大学 准教授 諏訪田克彦 サントリービバレッジソリューション株式会社 人事本部 副部長 平岡典子 神奈川県立保健福祉大学 名誉教授 松爲信雄 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 筑波大学大学院 教授 八重田淳 常磐大学 准教授 若林功 あなたの原稿をお待ちしています 声−−障害者雇用にかかわるお考えやご意見、行事やできごとなどを500字以内で編集部(企画部情報公開広報課)まで。 ●発行−−独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 境 伸栄 編集人−−企画部次長 中上英二 〒261−8558 千葉県千葉市美浜区若葉3−1−2 電話 043−213−6526(企画部情報公開広報課) ホームページ https://www.jeed.go.jp メールアドレス hiroba@jeed.go.jp ●発売所−−株式会社広済堂ネクスト 〒105−8318 東京都港区芝浦1−2−3 シーバンスS館13階 電話 03−5484−8821 FAX 03−5484−8822 12月号 定価141円(本体129円+税)送料別 令和5年11月25日発行 無断転載を禁ずる ・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。また、本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。 【P33】 ◆広域センター・地域センター一覧◆ 2023年11月25日現在 広域障害者職業センター 全国の広範な地域から障害者を受け入れ、職業評価、職業指導、職業訓練などの職業リハビリテーションを実施し、その成果に基づく指導技法などを能力開発施設へ提供しています 国立職業リハビリテーションセンター(中央障害者職業能力開発校) 〒359-0042 埼玉県所沢市並木4-2 04-2995-1711 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター(吉備高原障害者職業能力開発校) 〒716-1241 岡山県加賀郡吉備中央町吉川7520 0866-56-9000 地域障害者職業センター 障害者に対する専門的な職業リハビリテーションサービス、事業主に対する障害者の雇用管理に関する相談・援助、地域の関係機関に対する助言・援助を実施しています 北海道障害者職業センター 〒001-0024 札幌市北区北二十四条西5-1-1札幌サンプラザ5階 011-747-8231 旭川支所 〒070-0034 旭川市四条通8丁目右1号LEE旭川ビル5階 0166-26-8231 青森障害者職業センター 〒030-0845 青森市緑2-17-2 017-774-7123 岩手障害者職業センター 〒020-0133 盛岡市青山4-12-30 019-646-4117 宮城障害者職業センター 〒983-0836 仙台市宮城野区幸町4-6-1 022-257-5601 秋田障害者職業センター 〒010-0944 秋田市川尻若葉町4-48 018-864-3608 山形障害者職業センター 〒990-0021 山形市小白川町2-3-68 023-624-2102 福島障害者職業センター 〒960-8054 福島市三河北町7-14福島職業能力開発促進センター内 024-526-1005 茨城障害者職業センター 〒309-1703 笠間市鯉淵6528-66 0296-77-7373 栃木障害者職業センター 〒320-0865 宇都宮市睦町3-8 028-637-3216 群馬障害者職業センター 〒379-2154 前橋市天川大島町130-1ハローワーク前橋3階 027-290-2540 埼玉障害者職業センター 〒338-0825 さいたま市桜区下大久保136-1 048-854-3222 千葉障害者職業センター 〒261-0001 千葉市美浜区幸町1-1-3ハローワーク千葉4階 043-204-2080 東京障害者職業センター 〒110-0015 台東区東上野4-27-3上野トーセイビル3階 03-6673-3938 多摩支所 〒190-0012 立川市曙町2-38-5立川ビジネスセンタービル5階 042-529-3341 神奈川障害者職業センター 〒252-0315 相模原市南区桜台13-1 042-745-3131 新潟障害者職業センター 〒950-0067 新潟市東区大山2-13-1 025-271-0333 富山障害者職業センター 〒930-0004 富山市桜橋通り1-18北日本桜橋ビル7階 076-413-5515 石川障害者職業センター 〒920-0901 金沢市彦三町1-2-1アソルティ金沢彦三2階 076-225-5011 福井障害者職業センター 〒910-0026 福井市光陽2-3-32 0776-25-3685 山梨障害者職業センター 〒400-0864 甲府市湯田2-17-14 055-232-7069 長野障害者職業センター 〒380-0935 長野市中御所3-2-4 026-227-9774 岐阜障害者職業センター 〒502-0933 岐阜市日光町6-30 058-231-1222 静岡障害者職業センター 〒420-0851 静岡市葵区黒金町59-6大同生命静岡ビル7階 054-652-3322 愛知障害者職業センター 〒460-0003 名古屋市中区錦1-10-1MIテラス名古屋伏見5階 052-218-2380 豊橋支所 〒440-0888 豊橋市駅前大通1-27MUS豊橋ビル6階 0532-56-3861 三重障害者職業センター 〒514-0002 津市島崎町327-1ハローワーク津3階 059-224-4726 滋賀障害者職業センター 〒525-0027 草津市野村2-20-5 077-564-1641 京都障害者職業センター 〒600-8235 京都市下京区西洞院通塩小路下る東油小路町803ハローワーク京都七条5階 075-341-2666 大阪障害者職業センター 〒541-0056 大阪市中央区久太郎町2-4-11クラボウアネックスビル4階 06-6261-7005 南大阪支所 〒591-8025 堺市北区長曽根町130-23堺商工会議所会館5階 072-258-7137 兵庫障害者職業センター 〒657-0833 神戸市灘区大内通5-2-2ハローワーク灘3階 078-881-6776 奈良障害者職業センター 〒630-8014 奈良市四条大路4-2-4 0742-34-5335 和歌山障害者職業センター 〒640-8323 和歌山市太田130-3 073-472-3233 鳥取障害者職業センター 〒680-0842 鳥取市吉方189 0857-22-0260 島根障害者職業センター 〒690-0877 松江市春日町532 0852-21-0900 岡山障害者職業センター 〒700-0821 岡山市北区中山下1-8-45NTTクレド岡山ビル17階 086-235-0830 広島障害者職業センター 〒730-0004 広島市中区東白島町14-15NTTクレド白島ビル12階 082-502-4795 山口障害者職業センター 〒747-0803 防府市岡村町3-1 0835-21-0520 徳島障害者職業センター 〒770-0823 徳島市出来島本町1-5ハローワーク徳島4・5階 088-611-8111 香川障害者職業センター 〒760-0055 高松市観光通2-5-20 087-861-6868 愛媛障害者職業センター 〒790-0808 松山市若草町7-2 089-921-1213 高知障害者職業センター 〒781-5102 高知市大津甲770-3 088-866-2111 福岡障害者職業センター 〒810-0042 福岡市中央区赤坂1-6-19ワークプラザ赤坂5階 092-752-5801 北九州支所 〒802-0066 北九州市小倉北区萩崎町1-27 093-941-8521 佐賀障害者職業センター 〒840-0851 佐賀市天祐1-8-5 0952-24-8030 長崎障害者職業センター 〒852-8104 長崎市茂里町3-26 095-844-3431 熊本障害者職業センター 〒862-0971 熊本市中央区大江6-1-38ハローワーク熊本4階 096-371-8333 大分障害者職業センター 〒870-0131 大分市皆春1483-1大分職業能力開発促進センター内第1教室棟3・4階 097-503-6600 宮崎障害者職業センター 〒880-0014 宮崎市鶴島2-14-17 0985-26-5226 鹿児島障害者職業センター 〒890-0063 鹿児島市鴨池2-30-10 099-257-9240 沖縄障害者職業センター 〒900-0006 那覇市おもろまち1-3-25沖縄職業総合庁舎5階 098-861-1254 【裏表紙】 障害のある社員のスキルアップや職場復帰をお考えの事業主のみなさまへ 〜職業訓練のご案内〜 国立職業リハビリテーションセンター(中央障害者職業能力開発校)および国立吉備高原職業リハビリテーションセンター(吉備高原障害者職業能力開発校)では、在職中の障害のある方々がより職場で活躍できるよう、以下のような訓練を実施しております。 スキルアップを目ざす訓練 *新たな技能・知識の習得により、職務内容の変化に対応できるようにするための訓練です。 *レディメイド訓練とオーダーメイド訓練があります。 職場復帰を目ざす訓練 *疾病、事故等により受障した休職中の方が職場復帰するにあたり必要な技術を身につけるための訓練です。 *オーダーメイド訓練となります。 オーダーメイド訓練は、社員や企業の状況に応じて訓練内容や期間を調整できます。 訓練場面の見学も可能です。まずは、お気軽にご相談ください。 訓練内容の一例 ●レディメイド訓練(2〜4日) パソコン関連…ワープロソフト、表計算ソフト、表計算ソフト(マクロ)、プレゼンテーションソフト、データベース 経理事務関連…簿記基礎 情報処理関連…ネットワーク基礎、情報セキュリティ基礎 ●オーダーメイド訓練(6カ月以内) ものづくり関連…機械製図・加工、建築設計、電気・電子機器の設計・組立・検査・修理等 情報処理関連…システム開発・管理・保守、Web・広告デザイン等 事務関連…経理事務・OA事務等 アビリンピック (障害者技能競技大会) マスコットキャラクター アビリス 求職中の障害のある方を対象に、専門的な知識や技能の習得を目ざす訓練も実施しております。 新規の採用をお考えの事業主のみなさまもぜひご相談ください。 お問合せ先 国立職業リハビリテーションセンター 〒359-0042 埼玉県所沢市並木4-2 Tel:(スキルアップ)04-2995-1135 (復職)04-2995-1201 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 〒716-1241 岡山県加賀郡吉備中央町吉川7520 Tel:0866-56-9003 12月号 令和5年11月25日発行 通巻554号 毎月1回25日発行 定価141円(本体129円+税)