【表紙】 令和5年12月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第555号 ISSN 0386-0159 障害者と雇用 2024 1 No.555 リーダーズトーク 企業に求められる「雇用準備性」 三菱商事株式会社 人事部健康推進・DE&Iチーム 障がい者雇用担当 (前三菱商事太陽株式会社 代表取締役社長) 福元邦雄さん 職場ルポ 農薬・化学肥料不使用栽培の農場で、戦力として働く 株式会社キューサイファーム島根(島根県) グラビア 地域の食文化を支える 株式会社中野製麺(岩手県) 編集委員が行く 専修学校での障がい者の受入れ、教育、就職への取組み 学校法人名古屋学園 名古屋情報専門学校(愛知県) 「赤いでんしゃのうんてんしゅ」福岡県・大元(おおもと)崇巨(たかなお)さん 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) Japan Organization for Employment of the Elderly, Persons withD isabilities and Job Seekers 1月号 【前頁】 心のアート 無題 斎藤 誠 (あさひ共同作業所) 画材:画用紙、水性サインペン サイズ:A4(297mm×210mm)  用紙の外側から中心に向かって、ペンでていねいに「L字のような形」を細かく描き続け、直線や丸などの一つの線にする。普通の線のようにも見えるが、独特な模様にも見える。おもな画材は水性サインペンで、色は青や紫などの寒色系が好きなようだ。  少し前までは点描でボコボコにした画用紙にL字を描いていたが、現在は色紙にペンで描いた作品を制作している。点描の用紙は、制作中に細かく手でちぎっていたころもあり、それを何故ちぎっていたのかはわからない。現在、点描の用紙は大切にテーブルの脇に置いてある。  施設では、箸の袋入れ作業をしているが、完成した箸袋はカゴにていねいに立てて陳列されている。どんなことにも直線にこだわり、それを感じられる作品をゆったり鑑賞していただきたい。 (文:まちごと美術館cotocoto(ことこと)伊保橋(いぼはし)匠哉(たくや)) 斎藤 誠(さいとう・まこと)  1983(昭和58)年生まれ。新潟県新潟市在住。2002(平成14)年4月から、「特定非営利活動法人新潟あさひの会 あさひ共同作業所」に通所し就労。  作業所での楽しみの一つは、昼食の日替わり弁当。千切りキャベツを1本1本、サラダのコーンを1粒1粒、素材の味をとことん吟味しながら食べていくのが誠流。食事時間をオーバーしてしまう日もあるが、そんな日こそインスピレーションが湧き出てくるようで筆が進む。大好きな唐揚げ効果もあるかもしれない。作品の数々は、こうしたさりげない日常から生まれてきている。  休日は、海に近い自宅に突然舞い込んできた姉妹猫、真っ白な“しろみ”とキジトラの“どらみ”とのんびりするのが彼のお気に入りの過ごし方である。 協力:まちごと美術館 cotocoto 【もくじ】 障害者と雇用 目次 2024年1月号 NO.555 「働く広場」は、障害者雇用の啓発・広報を目的として、ルポルタージュやグラビアなど写真を多く用いて、障害者雇用の現場とその魅力をわかりやすくお伝えします。 心のアート 前頁 無題 作者:斎藤誠(あさひ共同作業所) リーダーズトーク 2 第7回 企業に求められる「雇用準備性」 三菱商事株式会社 人事部健康推進・DE&Iチーム 障がい者雇用担当 (前三菱商事太陽株式会社 代表取締役社長) 福元邦雄さん 文:豊浦美紀/写真:官野 貴 職場ルポ 6 農薬・化学肥料不使用栽培の農場で、戦力として働く 株式会社キューサイファーム島根(島根県) 文:豊浦美紀/写真:官野 貴 JEEDインフォメーション 12 令和6年度「障害者雇用納付金」申告および「障害者雇用調整金」等申請のお知らせ/障害者雇用納付金関係業務調査のごあんない〜障害者雇用納付金制度を支える仕組みです〜/「障害者雇用支援人材ネットワーク事業」のごあんない〜障害者雇用の専門家が企業のみなさまを支援します〜 グラビア 15 地域の食文化を支える 株式会社中野製麺(岩手県) 写真/文:官野 貴 エッセイ 19 相談員の苦悩と心得 最終回 日本相談支援専門員協会 顧問 福岡寿 編集委員が行く 20 専修学校での障がい者の受入れ、教育、就職への取組み 学校法人名古屋学園 名古屋情報専門学校(愛知県) 編集委員 金井渉 クローズアップ 26 障害のある人とスポーツ(第1回) 〜パラスポーツの歴史と概要〜 研究開発レポート 28 気分障害等の精神疾患で休職中の方のための 仕事の取組み方と働き方のセルフマネジメント支援 障害者職業総合センター職業センター ニュースファイル 30 編集委員のひとこと 31 掲示板・次号予告 32 JEEDメールマガジン登録受付中! ※「省庁だより」は休載します 表紙絵の説明 「お出かけで乗ったとき、とてもかっこよかったので、運転手さんになりたいと思ったのがきっかけで描きました。電車の細かい部分に色を塗るとき、筆の動かし方を工夫して、はみ出さないようにしました。根気強く続けるときれいに塗れて、かっこいい電車になりました」 (令和5年度 障害者雇用支援月間絵画コンテスト 小学校の部 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長賞) ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。 (https://www.jeed.go.jp/disability/data/works/index.html) 【P2-5】 リーダーズ トーク Leaders Talk 第7回 企業に求められる「雇用準備性」 三菱商事株式会社 人事部 健康推進・DE&Iチーム 障がい者雇用担当 (前三菱商事太陽株式会社代表取締役社長) 福元邦雄さん 福元邦雄(ふくもと くにお) 1986(昭和61)年、三菱商事株式会社入社。IT事業本部、シンガポール支店駐在などを経て2016(平成28)年から三菱商事太陽株式会社代表取締役社長、2022(令和4)年7月より現職。研修認定精神保健福祉士、産業カウンセラー。  「三菱商事株式会社」(以下、「三菱商事」)の特例子会社「三菱商事太陽株式会社」(以下、「三菱商事太陽」)は、1983(昭和58)年の設立時からシステム開発業務を主力に成長し、2018(平成30)年には完全在宅勤務の障がい者雇用に向けたIT技術者養成事業にも乗り出しました。立役者となった前代表取締役社長の福元邦雄さんは現在、三菱商事グループ全体の障がい者雇用推進に力を入れています。これまでの取組みと今後の方針についてうかがいました。 (文)豊浦美紀 (写真)官野貴 37歳のときの事故で指4本を失う ――福元さんご自身も障害者手帳をお持ちだそうですね。 福元 37歳のときにレジャー中の事故で左手4指を欠損しました。2カ月間の入院中、自分で排泄もできないふがいなさに、2回ほど窓から飛び降りたい衝動にかられるほど落ち込みましたが、その後は物事のとらえ方がガラッと変わりました。コップに入った半分の水の例え話じゃないですが「指が4本もないと思うか、親指も手のひらもあると思うか」。座右の銘は「そこにある出来事の受けとめ方が、人生を支配する」です。  シンガポール支店駐在時に、上司から「障害者手帳を持つ当事者として、三菱商事太陽に出向してみてはどうか」とすすめられ、これも縁だと思って、本社のある大分県に赴任しました。 IT技術者の養成事業 ――IT関連事業を展開する三菱商事太陽では、早くから在宅勤務も進めてきたそうですね。 福元 「社会福祉法人太陽の家」創設者であり、三菱商事太陽の初代社長も務めた故・中村(なかむら)裕(ゆたか)博士は「自宅で寝たきりであっても、頭がしっかりしていればプログラマーとして稼げる」と話していたそうです。三菱商事太陽はまさにその通りの道を進んできました。  三菱商事から委託されたシステム開発業務をメインに、地元官公庁のシステム関連業務へも拡大するなか、2014年には「在宅勤務制度」を導入しました。当時は、何かあればすぐに駆けつけられるよう、三菱商事太陽本社のある大分県の在住者を中心に、通勤困難な身体障がいのある4人を採用し、データ入力業務を担当してもらいました。  その後まもなく、新たな人材確保の必要に迫られました。というのも三菱商事で新しい社内システムの導入が決まり、土台となる専用ソフトウェアを使いこなせるシステムエンジニア(SE)が必要になったのです。しかし大分県内で求人を出してもまったく応募が来ませんでした。そこで私たちが目を向けたのは、全国各地にいるであろう「ITスキルを持ちながら在宅勤務を希望する人たち」でした。身体的な障がいにかぎらず、出勤によって生じるさまざまな課題(人とのかかわりや周囲の雑音など)を持つ人たちです。  そうして2018年に始めたのが、完全在宅勤務を前提にしたIT技術者養成事業です。ソフトウェア会社が提供するeラーニングの受講費用十数万円を三菱商事太陽が負担し、必要なスキルを在宅で習得してもらいます。参加条件は、@障害者手帳を持っている、A自宅にパソコンがありインターネット環境が整っている、Bすでに一定のプログラムスキルを保有している、C三菱商事太陽で週20時間以上働けること。インターネットで募ったところ全国から20代〜50代の35人が集まりました。書類審査などを経て自宅でeラーニングを履修後、三菱商事太陽の実習課題をクリアした7人を1期生として採用しました。 在宅勤務者の支援体制 ――IT技術者養成は、他企業あっせん事業にも拡大したそうですね。 福元 2期目は同様のIT技術者を求めている企業にも声をかけ、2019(令和元)年秋に4社合同の集団面接会を開催しました。eラーニングの修了認定を取った6人がオンラインで参加し、企業側は会議室に集まって一緒に質問をする形です。  他社の採用担当者は「何をどこまで聞いてよいのか」と戸惑っていたので、精神保健福祉士などの資格を持つ私が代わりに聞きました。面接を受ける人たちも、各社の同じような質問に何度も答える必要がないというメリットがありましたね。  しかし結局ほかの企業は1人も採用せず、三菱商事太陽が全員採用しました。コロナ禍を機にテレワークが進んだにもかかわらず、障がい者雇用になるとしり込みする理由はなんでしょうか。担当者たちから聞かれたのは「就労状況をきちんと確認できないのでは」、「何かあっても遠方では対応できないかもしれない」といった不安の声でした。  三菱商事太陽では、最終的な採用前に「就労環境」と「就労準備性」の確認をします。本人の自宅や就労移行支援事業所、かかりつけのクリニックも訪問し、何かトラブルが起きたときのセーフティネットがどれだけ整っているかを判断します。部屋の明るさや広さ、災害時の安全確保はもちろん、実際に支援する人に会って、どれだけ親身で温かいつながりがあるかも確認しました。本人が支援機関をフル活用し、信頼関係をつくっておくことは大事なポイントです。仮に就労環境や就労準備性が十分でないと判断されたときは、クリアできるような支援や工夫を考えます。こうして在宅勤務社員の支援体制を確立させていきました(図参照)。一連の取組みは、2020年度の厚生労働省「テレワーク推進企業等厚生労働大臣表彰(輝くテレワーク賞)」で特別奨励賞を受賞しました。 グループ会社の雇用推進へ ――三菱商事に戻ってからは、グループ全体の障がい者雇用推進に取り組んでいるそうですね。 福元 三菱商事のグループ会社を調べてみると、障がい者雇用の取組みが途上である企業もありました。三菱商事側に「グループ会社向けの支援施策の拡充が必要です」と説明し、本腰を入れて向き合う取組みをスタートさせました。  私自身も障がい者雇用の取組みが途上であるグループ会社を訪問し、「一緒に一歩ふみ出してみましょう」と働きかけましたが、やはり担当者から聞かれたのは「どう対応したらよいのか不安だ」との声でした。  そこで2023年3月、三菱商事グループの職場支援者たちの駆け込み寺%Iな存在として立ち上げたのが、合同相談窓口「MCグループ障がい者就労サポートデスク」(ショウサポ)です。障がい者の就労支援などを手がける会社と共同運営し、受入れ部署や支援担当者からの個別相談に対応しています。  また人事部では定期的に雇用推進のための社内セミナーも開催していますが、その内容を動画で配信するポータルサイト「障がい者雇用促進チャンネルSHOKO-CHANNEL(ショウコチャンネル)」を2023年4月にスタートしました。三菱商事グループの経営幹部層、人事担当者、受入れ部署などの各層に向けて、「業務切り出しのコツ」、「ケースごとに考える対応」、「テレワーク事例」といったテーマごとに数分〜十数分のショート動画を用意しています。いまは文章よりも動画で理解することに慣れた人が多いことを見込んで、あえて動画にしました。  この編集作業などを担当しているのが、2023年9月に、1日5時間勤務の条件で採用した三菱商事本社嘱託社員で、宮崎県在住の精神障がいのある男性です。かつて東京で専門商社に勤めていた経歴があります。じつは彼は、三菱商事による完全在宅勤務の障がい者雇用第1号でもあります。  遠隔地でもスムーズな業務・労務管理をするために、2023年9月に、外部の障がい者テレワークシステムや体調管理サポートツールを導入しました。体調管理から勤怠管理、タスク管理、ファイル共有などをシステムサービスで完結でき、とても便利です。例えば体調管理であれば、スマートフォンのアプリで本人の「セルフケア」をうながすプログラムを設定してもらい、毎日、自分の体調を選択式で入力してもらいます。日々のデータの積み重ねで本人の体調変化を読み取り、「青に近い黄色信号」が出ると上司や支援者に自動アラートされます。これまで「赤に近い黄色信号」になるまで気づかれなかったSOSを、いち早く自動的に知ることができます。今後はグループ会社でも活用してもらいたいと考えています。 障がい者雇用のあり方の転換 ――三菱商事グループの障がい者雇用について、今後の見通しを教えてください。 福元 これまで三菱商事では、障がい者雇用に算定されているのは私を含めた身体障がいのある社員が大半でした。しかしいまでは求人募集を出すと、精神障がいのある人の応募が圧倒的に多い状況です。これは40周年を迎えた三菱商事太陽でも同じ傾向にあり、加速度的に精神障がいのある人の新規雇用を進めていかないといけません。三菱商事の直接雇用も含めグループ全体で取り組まなければならない潮目にきています。  先にもお伝えした体調管理サポートツールは、いわば「ココロの車いす」だと思うのです。つまり歩行障がいのある方には車いすがあれば、生きづらさや働きづらさはかなり解消される。精神障がいのある方には、このような体調管理サポートツールでセルフケアの力をつけていただく。障がい者雇用の拡大にあらためて取り組む、最初の一歩としてのモデルケースを目ざしています。  会社側が就労環境を整えることで、精神障がいのある人が仕事に集中し成果を出していることは三菱商事太陽で実証済みです。今後は三菱商事に通勤する形で、9人ほどを定着支援者(ジョブサポーター)とともに集中配置する計画を実行していきます。 企業に必要な「雇用の質」 ――これから障がい者雇用を始めようという企業へのアドバイスをお願いします。 福元 障がい者雇用においては当事者の「就労準備性」が必要といわれていますが、同じように、雇用する側の企業や組織の「雇用準備性」も大切だと私は考えています。  「障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)」第四条では、障がい者が「有為な職業人として自立するように努めなければならない」とありますが、これは労働基準法にはない内容です。ちなみに私が三菱商事太陽にいたときも「生きづらさに負けない、働きづらさから逃げない」を理念に、毎日の朝礼で自作イラスト入りの紙芝居を使い、社員も会社も成長し続けるための意識改革が必要だと訴えてきました。ある社員からメールでもらった「社長が本気だということがわかりました」という言葉に押され、いまも個人的に動画を配信しています(※1)。  そして本気で働こうとする人のために、このほど改正された同法第五条では、雇用する側もしっかり職業能力の開発をするよう「雇用の質」が求められているのです。  障がいのある人を雇用すると、自社の課題が見えてきます。とくに精神障がいのある人にとって働きやすい組織というのは、整ったマニュアルや相談窓口を含め、グーグルが発表した研究結果などで知られる「心理的安全性」(※2)の高い組織のことですよね。障がいのある人だけでなく、LGBTQの人、新卒や転職してきたばかりの人たちも、やさしく受け入れて立ち往生させないための必要なインフラだといえます。互いに本気で取り組んで、職場でよい経験が積み重なっていけば、いつか「それって普通のことだよね」ということに気づくでしょう。  最後に、これから障がい者雇用にふみ出すという企業や担当者のみなさんに伝えたいことは、「最初の1人が1年以内で辞めても、落ち込んだり、絶対に現場を責めたりしないでください」ということです。一般雇用だって辞めるケースはいくらでもあるし、ここをふみ台に卒業するケースだってあるでしょう。何度も雇用して、試行錯誤しながら現場は育っていくのです。  どうかみなさん、諦めずに前向きに取り組んでください。そうして大小さまざまな課題を解決していった先に、どの社員にとっても働きやすい組織が熟成され、それが会社全体の生産性向上へとつながっていくのをきっと実感できるはずですから。 ★本誌では通常「障害」と表記しますが、三菱商事株式会社様のご意向により「障がい」としています ※1 「福元邦雄の千朝千話」https://www.kuniofukumoto.com/ ※2 心理的安全性:1965年にエドガー・シャインらによって提唱され、その後、エイミー・C・エドモンドソンが発展させた概念。組織やチームのなかで、だれもが安心して率直な発言や行動ができるという状態のこと。2016年にグーグルが発表した「生産性が高いチームは心理的安全性が高い」という研究結果により広まったとされる 図 (資料提供:三菱商事太陽株式会社) 【P6-11】 職場ルポ 農薬・化学肥料不使用栽培の農場で、戦力として働く ―株式会社キューサイファーム島根(島根県)―  野菜加工商品メーカーが原材料を農薬・化学肥料不使用で栽培している農場では、高齢化する人材課題を改善すべく、障害のある従業員たちが戦力として活躍している。 (文)豊浦美紀 (写真)官野 貴 取材先データ 株式会社キューサイファーム島根 〒698-2144 島根県益田市(ますだし)虫追町(むそうちょう)320-39 TEL 0856-28-8012 FAX 0856-28-8013 Keyword:身体障害、知的障害、精神障害、農業、障害者職業生活相談員、障害者就業・生活支援センター POINT 1 労災事故を機に障害者雇用の可能性を知り、就職面談会に参加 2 障害者就業・生活支援センターなどと実習から定着まで連携 3 個々の特性を見きわめ、農機操作や検査、清掃業務などで戦力化 青汁のケールを栽培  「まず〜い!もう一杯!」のキャッチフレーズで有名になった「青汁」を販売する「キューサイ株式会社」(本社・福岡県福岡市)。原材料となる緑黄色野菜ケールは、国内の契約農家や自社グループ農場で農薬・化学肥料を一切使用せずに栽培しているという。  なかでも島根県益田(ますだ)市内の丘陵地帯にある自社グループ農地は、東京ドーム15個分に相当する70ヘクタールを誇る。近隣に位置する加工工場を含めて運営しているのは、1998(平成10)年設立の子会社「株式会社キューサイファーム島根」(以下、「キューサイファーム」)だ。  現在、従業員70人のうち障害のある従業員は7人(身体障害1人、知的障害4人、精神障害2人)、障害者雇用率は11.2%(2023〈令和5〉年6月1日現在)だという。農業を本業とする職場における、障害者雇用の取組みを紹介していきたい。 農場でトラクター操作  萩(はぎ)・石見(いわみ)空港から車で約10分、標高80mほどの丘陵地帯に広がるキューサイファームの市原(いちはら)農場。なだらかなアップダウンのある畑には、約3週間前に植えられたケールの苗がきれいに並んでいた。「今年は猛暑や少雨で生育にも影響がありました」と話すのは、営農課のチームリーダーを務める大佐古(おおさこ)薫(かおる)さん。この日は、カラスや害虫に食べられて育たなかった苗の場所に、代わりの苗を補植する作業を行っていた。  「まず全員で畑を見回って補植が必要な部分を確認しつつ、害虫がついている苗を見つけたら一つひとつ手作業で駆除しています。農薬・化学肥料不使用での栽培を徹底しているだけに人の手は欠かせません」  キューサイファームの設立当初から、ほかの仕事を引退した男性や50代以上の主婦らがパート従業員として働いていたそうだが、いまでは77歳の従業員を筆頭に高齢化が進み、慢性的な人材不足が課題でもある。  そんな背景もあり、この農場では2015年から障害のある従業員が働き始めたという。取材したこの日も、10数人の従業員にまじって作業していた、4人の障害のある従業員に話を聞いた。  2015年入社のAさん(40歳)は、「社会福祉法人希望の里福祉会 益田障がい者就業・生活支援センターエスポア」(以下、「エスポア」)からの紹介で実習に参加したのが入社のきっかけだ。  「ここなら私も働けると思いました。夏にはスプリンクラーを設置して回ったり、周りに柵をつくったりする作業がたいへんです。たまに先輩から『そこ、苗植えとらんぞ』とか厳しくいわれますけど、仕事は続けられます」と笑顔を見せるAさん。いまは一人暮らしで、週1回訪問してくれるヘルパーと一緒に料理も学んでいるところだそうだ。  職業能力開発施設「島根県立西部高等技術校」在籍時に、キューサイファームの実習に参加したというBさん(38歳)は、「現場の雰囲気がよく、屋外での作業は開放感があるので、しっくりきました」とふり返る。これまでいくつか仕事をしたなかで、8年目になるキューサイファームが一番長く勤めている職場だという。  Bさんは最近、「生育調査」という仕事も任された。週1回、車で畑を回りながらケールの葉の成長ぶりなどを写真に収め、大きさや重量などを記録する。大佐古さんは、「畑を回ったついでにカラスや虫食いの害など気づいたことも報告してくれて助かっています」と頼りにしているという。  「収穫を迎えると『ああ今シーズンも終わる』という達成感があります。腰を痛めないよう体力を維持し、新しい業務があれば挑戦したい」というBさんは、8時から14時半までの勤務後、スーパーの棚卸しの仕事もかけ持ちしているそうだ。  営農課の永谷(ながたに)寿(ひさし)さん(54歳)は、以前はごみ収集会社で働いていたが、勤務先が廃業したため、エスポアの紹介で2017年にキューサイファームに入社した。「体力的にたいへんなときもありますが、仕事は続けられそうです」と話す。休憩時間に、畑のあぜに座って雑談をするのが楽しいそうだ。最近は糖尿病をわずらい、病院の指導で食事に気をつけた生活に努めているという。  同じく営農課の栗山(くりやま)友一(ゆういち)さん(30歳)は特別支援学校を卒業後、清掃会社や車の修理工場、型枠大工の仕事などをしたが続かず、近所の人に紹介されたキューサイファームで2017年から5年弱働いた。妻の実家の家業を手伝うため退職するも、その後、戻ってきたそうだ。  「小中学校時代は野球、特別支援学校のときはサッカー部でキャプテンマークをつけて県大会で初優勝しました」と体力に自信をのぞかせる栗山さん。その一方で「周りの人たちとなるべく話すようにしています。困ったときに助けてもらえますから。一緒に作業をしながらアドバイスももらえます」と語ってくれた。  栗山さんは職場の協力で大型特殊免許を取得し、トラクターに乗って有機肥料を撒(ま)く作業なども任されている。勤務は1日7・5時間とフルタイムに近いが、課題は「休みがちになること」だという。その理由に、持病のぜんそくだけでなく家族を養う心理的負担感をあげ、対策は、「最近始めたウクレレや、大佐古さんと車の話をしてストレス解消することです」と教えてくれた。 きっかけは労働災害  キューサイファームが障害のある従業員を雇用することになったのは、加工工場で起きた労働災害がきっかけだったという。  2015年2月、加工工場内で機械の清掃作業を行っていたCさんが、機械のコンベアに巻き込まれて左手首から先を切断するという痛ましい事故が起きた。退院後の同年5月、キューサイファームは、もともと期間雇用だったCさんを事務職の終身雇用に切り替え、さらに正社員に登用した。  義手をつけた左手は、いまもしびれが残っているというCさん。「幸い利き手を使えたので、片手でのパソコン入力も慣れてきました。一番の心配は車の運転でしたが、いまではスムーズに操作しています。職場のみなさんにはいろいろ支えてもらっています」と語ってくれた。Cさんの事故をきっかけに、キューサイファームでは現場の安全管理体制の強化に力を入れ、その後、事故は起きていないそうだ。  Cさんの存在は、自動的にキューサイファームが障害者雇用にふみ出すきっかけにもなった。当時から業務課の課長を務める四橋(よつはし)雅美(まさみ)さんが、現場支援を統括担当することになった。  「基本的な知識を身につけるため、まず障害者職業生活相談員の資格認定講習を受けました。そこでさまざまな障害のある人の就労状況を知り、『農業は、障害者雇用に合っているかもしれない』と思いつきました」  さっそく、四橋さんたちはハローワークの就職面談会に参加。そのときに採用者はいなかったものの、しばらくして公共職業能力開発施設やエスポアから職場実習生の受入れ依頼が来たという。  「当社の農場はつねに人材不足ですし、応募者も少ないのが現状です。実習は、足場の悪い畑でも作業ができる人なら基本的には受け入れしますし、これまで当社から採用をお断りしたことはありません」  さらに四橋さんは「どこを重点的に意識して障害者雇用をしていくべきか」を考えるために、特別支援学校を見学して回ったという。さまざまな分野の仕事を実践的に訓練している様子を見て「3年間かけて一定の技術を身につけ、接客や仕事の段取りなども学んできたのだから、職場でもスキルなどをじっくり身につけながら長く続けてもらおう」と決めたそうだ。  事務所や現場の掲示物には、ふりがなをふったりイラストを増やしたりして、目を引くわかりやすい伝え方になるように工夫。現場では過度にプレッシャーや負担をかけないよう配慮しつつ、戦力になるためのスキルアップをうながしてきたそうだ。  安定して働き続けてもらうには、就労支援機関との連携も欠かせない。「いまも何かあればすぐに連絡を取り合う関係です。先日も、従業員が一時いなくなり、一緒に探し回りました。本人は通勤途中に寄ったコンビニでバイクの鍵をシート内に入れてしまい、歩いて自宅に戻っていました。再び会社に徒歩で向かっていたところをエスポアの担当者が見つけてくれて、本当に助かりました」 高齢の先輩たちと一緒に  農場長を務める太田(おおた)洋介(ようすけ)さんにも話を聞いた。  「私も参加したハローワークの就職面談会では、ハローワークから『本人のできることとできないことを見きわめつつ、求めすぎないように』とアドバイスをもらいました。現場では、なるべく説明や指示をわかりやすく伝えることと、トラクターなど危険をともなう機械作業はしっかり切り分けるようにしました」  ほかの従業員には、四橋さんが障害者雇用の必要性や一般的な特性などについてわかりやすく説明し、理解をうながしたそうだが、「みなさん、すんなりと受け入れてくれたようでした」という。  農場で日々の作業を仕切る大佐古さんも、障害者職業生活相談員の資格認定講習を受けた一人だ。  「わかりやすい説明や確認を心がけていますが、彼らも一緒に作業をしながら質問をしてくれるので私も安心です。年の離れた現場の先輩たちが、彼らを孫のように指導し、たまに力仕事で頼っています。互いに支え合っている関係ですね」  太田さんも「高齢の従業員と若い従業員が、和気あいあいと一緒に作業をしている様子を見て、よかったなあと思っています。今後は高齢でリタイアする人も出てくるはずなので、うまく世代交代していけるとよいと思います」と期待する。 加工工場で働く2人  農場から車で10分ほど移動すると、ケールを液状や粉末状に加工する冷凍・乾燥工場(本社工場)がある。加工現場に入る従業員たちが白衣に着替えた後、手洗いをする「前室」が8カ所あり、手洗いシンクの洗浄や洗剤補充、手袋などの洗濯などの業務を、いまは2人の障害のある従業員が担当している。  彼らは、ケールの収穫時期に合わせた11月〜5月の繁忙期は、期間従業員と一緒に収穫に取り組み、それ以外の時期は、日ごろ手が回らない会議室や共有スペース、屋外で芝刈りや清掃などを行っているそうだ。  「工場内のトイレや廊下の清掃は、以前は業務課の従業員たちで行っていました。2人が通年で清掃してくれるようになって、いつもきれいになりました」と四橋さん。さっそく2人の働く様子を見せてもらった。  廊下で黙々と掃除機をかけていたのは、2016年に入社した三浦(みうら)徹(とおる)さん(32歳)。特別支援学校を卒業後に、袋製造会社やキノコ栽培所を経験したあと、県立高校の用務員として3年契約で働いたそうだ。3年目の契約期間終了前にエスポアの紹介で、キューサイファームでの実習を経験。午前中に清掃業務、午後は品質管理課でケールの搾汁(さくじゅう)や器具洗浄などを行ったが、「両方するのはむずかしいので、清掃業務だけがいいです」と希望し、そのまま清掃担当となった。実習や入社初期には、ベテラン従業員に清掃手順やコツなどを教えてもらったそうだ。  「いまでは休憩時間や作業中に社員さんたちから『三浦くん、がんばっているね』などと声をかけてもらって、うれしくなります。今後も清掃のスキルアップ、レベルアップをしていきたいです」と意欲的に話す。  三浦さんは18歳から、グループホームの生活と一人で暮らす生活を、交互にくり返している。「同じ支援団体が運営しているので、一人暮らしをして食生活などに自信がなくなったらグループホームに移り、落ち着いたらまた一人暮らしに挑戦しています」。いまはグループホーム仲間でソフトボールチームをつくって大会に出場したり、社内の書道部で苦手な漢字を練習したりするのが楽しいそうだ。  2年後の2018年に、三浦さんと同じ学校出身の大谷(おおたに)尊亨(たかゆき)さん(34歳)が加わった。大谷さんは、益田市内の公園などを運営する会社で草刈り業務などに9年間従事していたそうだが、結婚を機に引っ越した先が職場から遠くなったため退職。エスポアの紹介で、自宅からほど近いキューサイファームで実習を受け入社した。実習時から三浦さんに手順などを教わり、いまでは毎日一緒に業務を進めている。「毎朝、その日の仕事の段取りを2人で話し合い、判断に迷うときは業務課のみなさんにも相談しています」  休憩時間などにほかの従業員と話すなかで、自分と同じカメラ撮影が趣味という人ともめぐり合った。「誘ってもらって自分も鉄道撮影をするようになりました。風景や家族の撮影も楽しんでいます」という大谷さんは、「家族のために一生懸命がんばって働きます。将来の夢はマイホームを持つことです」という。  三浦さんや大谷さんの指導係を務めているのが、業務課の経理担当で障害者職業生活相談員でもある橋本(はしもと)美少代(みさよ)さん。三浦さんたちと一緒に朝礼を行い業務内容の確認などを行っているそうだ。  「2人が作業で困ったときはいつでも声をかけてもらっていますが、私が不在のときはほかの社員にも気軽に相談してくれています。私だけが対応していると誤解が生じることもあるでしょうし、1対1にならないよう業務課全体で声をかけ合って支え合っています」 苦い経験も  キューサイファームではこれまで1人だけ、定着できずに退職してしまった障害のある男性がいたという。四橋さんは「職場環境とは関係のない、私たちの支援が届かないところで辞めざるを得なくなったのが残念です」と悔やむ。  その男性はエスポアの紹介で入社し、順調に働き始めたものの、しばらくすると無精ひげを剃らずに乱れた服装で出勤したり、遅刻や欠勤が増えてきたりした。本人に確認すると、スマートフォンやタブレット端末で動画視聴やゲームに没頭してしまい、寝不足になっていたようだった。「問題はさらに深刻化しました」と四橋さん。  「端末の支払い金額がふくれ上がっていました。金銭管理をしていたエスポアがすぐに解約したのですが、また別の通信会社で契約していました」  結果として今度は100万円超の請求書が届き、エスポアと相談して再び就業前の生活支援からやり直すことになったという。四橋さんは厳しい口調で話す。  「社会的自立を支援するために、障害者雇用をする会社や支援機関が環境を整えても、社会そのものに、彼らの弱みにつけ込むような契約などを可能にするシステムがあるのは疑問です。プライベートは考慮すべきですが、生活に影響する部分は、もっと社会全体で防ぐ仕組みが必要ではないかと思います」  キューサイファームでは、苦い経験をくり返さないためにも、職場では日ごろから声かけやコミュニケーションを通して本人の変化を早めに察知することに努めているという。  そのうえで、今後の方針について四橋さんは、「従業員にとって、少しでも安心して働きがいのある職場環境を目ざしたいと思っています。地方の農業分野は、給与も最低賃金の上昇に合わせるのが精いっぱいですが、現場に欠かせない戦力として、独自の雇用制度も含めたキャリアアップの道筋も検討していきたいと考えています」と前向きに語ってくれた。 写真のキャプション 丘陵地帯に広がる、株式会社キューサイファーム島根の市原農場 約3週間前に植えられたケールの苗 営農課チームリーダーの大佐古薫さん 畑を見回り害虫の駆除を行う 営農課で働く永谷寿さん 移植器に新しい苗を投入する永谷さん(手前) 営農課で働く栗山友一さん 栗山さんは、トラクターでの作業にもたずさわっている 苗移植器を使い補植を行うAさん(手前) 作業にあたるBさん。生育の悪い苗を植え替える 業務課で事務を担当するCさん(右)、業務課の経理担当で障害者職業生活相談員の橋本美少代さん(中央) 業務課長の四橋雅美さん 農場長の太田洋介さん 本社工場で働く三浦徹さん 清掃作業にあたる三浦さん 本社工場で働く大谷尊亨さん 大谷さんは、ブラインドの清掃を行っていた 株式会社キューサイファーム島根本社工場 【P12-14】 JEED インフォメーション 〜高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)からのお知らせ〜 事業主のみなさまへ 令和6年度 「障害者雇用納付金」申告および「障害者雇用調整金」等申請のお知らせ 〜常用雇用労働者の総数が100人を超えるすべての事業主は障害者雇用納付金の申告義務があります〜  令和6年4月1日から5月15日の間に令和6年度申告申請をお願いします。前年度(令和5年4月1日から令和6年3月31日まで)の雇用障害者数をもとに、 ○障害者雇用納付金の申告を行ってください。 ○障害者の法定雇用率を下回る場合は、障害者雇用納付金を納付する必要があります。 ○障害者の法定雇用率を上回る場合は、障害者雇用調整金の支給申請ができます。 【申告申請期間】 種別 障害者雇用納付金 障害者雇用調整金 在宅就業障害者特例調整金 特例給付金 申告申請対象期間 令和5年4月1日〜令和6年3月31日 申告申請期間・納付期限 令和6年4月1日〜令和6年5月15日 (注1、注2、注3) (注1)年度の中途で事業を廃止した場合(吸収合併等含む)は、廃止した日から45日以内に申告申請(障害者雇用納付金の場合は、あわせて申告額の納付)が必要です。なお、令和6年度中の事業廃止等による申告申請については、制度改正により書式が変更となる予定であるため、期限内に申告申請できるよう、余裕をもって各都道府県申告申請窓口にご相談ください。 (注2)障害者雇用調整金、在宅就業障害者特例調整金および特例給付金は、申請期限を過ぎた申請に対しては支給できませんので、十分にお気をつけください。 (注3)常用雇用労働者の総数が100人以下の事業主が、特例給付金の申請を行う場合の申請期限は令和6年7月31日となります。 *詳しくは、最寄りの都道府県支部高齢・障害者業務課(東京・大阪は高齢・障害者窓口サービス課)にお問い合わせください(33ページ参照)。 JEED 都道府県支部 検索 障害者雇用納付金制度の改正について (令和5年4月1日施行関係) 1.障害者雇用調整金支給額の見直し  1人当たり月額29,000円になります。(令和5年3月31日までの期間については27,000円) 2.精神障害者である短時間労働者に関する特例措置(要件が緩和され延長)  週所定労働時間が20時間以上30時間未満の精神障害者について、当分の間、雇用率上、雇入れからの期間等に関係なく、1人をもって1カウントとします。 *制度改正の概要についてはJEEDホームページをご覧ください。https://www.jeed.go.jp/disability/seido.html JEEDホームページにて、記入説明書および解説動画をぜひご覧ください。 https://www.jeed.go.jp/disability/levy_grant_system_about_procedure.html 申告申請の事務説明会にぜひご参加ください。 *全国各地で2〜3月に開催します。 *参加費は無料です。 JEED 納付金 説明会 検索 事業主のみなさまへ 障害者雇用納付金関係業務調査のごあんない 〜障害者雇用納付金制度を支える仕組みです〜  障害者雇用納付金制度の適正運営、経済的負担の平等性の確保などの観点から、障害者の雇用の促進等に関する法律第52条に基づき調査を実施しております。  実際に調査の対象となった事業主の方に対しては郵便、お電話にて事前にご連絡し、日程調整や用意いただく書類などについてご案内いたします。  ご協力をお願いいたします。 【対象となる事業主の方】  申告申請を行ったすべての事業主のうち、主として雇用障害者の種類および等級や程度を明らかにする書類などの添付書類の提出が義務づけられていない事業主から、毎年度、一定数の事業主を選定します。 【調査方法】  関係書類やヒアリングにより、常用雇用労働者の総数および雇用障害者数や障害の程度などが適正であることの確認を行います。 【申告申請額に誤りがあった場合】  調査の結果、申告申請内容に誤りがあった場合には、納付金の追加納付・還付、調整金などの返還を行っていただくことになります。  なお、納付金の追加納付が必要な場合には、その納付すべき額に10%を乗じて得た額の追徴金が課せられます。  申告申請書作成時に根拠とした書類は、調査時に確認しますので適切な保管をお願いします。  また、障害者の退職後も、障害者であることを明らかにする書類(手帳等の写し)を3年間保存する義務があります。ご注意ください。 本調査について、詳しくは当機構(JEED)ホームページに掲載している「障害者雇用納付金等に関する事業所調査のごあんない」をご参照ください。 https://www.jeed.go.jp/disability/noufukin_chosa.html 「障害者雇用納付金制度記入説明書」にも掲載されております。 <お問合せ> 納付金部 調査課 TEL:043-297-9654 「障害者雇用支援人材ネットワーク事業」のごあんない 〜障害者雇用の専門家が企業のみなさまを支援します〜 障害者雇用の課題に対応した経験をもつ、「労務管理」「医療」「建築」などさまざまな分野の専門家である「障害者雇用管理サポーター」が企業のみなさまの疑問や課題に対応いたします。 サポーターの活用例 相談内容  精神障害のある社員の職場定着に向けて、自社の取組みの参考とするため、ほかの企業が実際にどのように取り組んでいるのかを把握したい。 支援内容  相談企業が、障害者雇用管理サポーターの所属している企業(精神障害のある社員を複数人雇用)を訪問した。  サポーターから、「電話応対の可否など、精神障害のある社員一人ひとりの特性に合わせて、職務内容や配置場所を変えていること」、「管理者による体調管理ができるように、毎日障害のある社員から日誌の提出を求めていること」、「障害のある社員本人の了解のもとで周囲の従業員に障害の特性を説明し、配慮を求めていること」などについて説明した。  相談企業からは、配置場所や活用している資料等について実際に目にすることができ、わかりやすく勉強になったとの声がきかれた。 相談内容  障害者に対する合理的配慮が適切に行われているか自社の状況を再確認しており、アドバイスがほしい。 支援内容  障害者雇用管理サポーター2名(社会保険労務士、先進的に取り組んでいる企業に所属する者)が相談企業を訪問のうえ、他社での合理的配慮の取組みについて情報提供し、障害者との面談方法について助言援助を実施した。  相談企業からは、労使で行う面談時に合理的配慮の考え方について再確認することや、障害者からの配慮事項の要望を受けて全社員に有効な就業規則の改定につなげられたことなど、合理的配慮の取組みが一歩進み、さまざまな社員にとって相談しやすく働きやすい環境整備につながったとの声がきかれた。 ※上記のほか、特例子会社の設立や運営に関する助言も行っています。 ご相談受付 サポーターによる支援をご希望の場合は、次の@、Aどちらかの方法でご連絡ください。 @中央障害者雇用情報センターの障害者雇用支援ネットワークコーディネーターにご相談ください。  企業のみなさまの相談内容に合わせて、サポーターと調整を行います(相談・支援にかかる費用は無料です)。 TEL:03-5638-2792 E-mail:syougai-soudan@jeed.go.jp A障害者雇用管理サポーター検索サイト「障害者雇用支援人材ネットワークシステム」により、ご自身でサポーターを検索し、直接連絡のうえ、支援の依頼についてご相談いただけます(支援に関する費用はサポーターによって異なります。サイトのサポーター検索結果からご確認ください)。 JEED 支援人材 検索 「障害者雇用支援人材ネットワークシステム」はこちらからアクセスできます <お問合せ> 職業リハビリテーション部 指導課 TEL:043-297-9072 【P15-18】 グラビア 地域の食文化を支える 株式会社中野製麺(岩手県) 取材先データ 株式会社中野(なかの)製麺(せいめん) 〒020-0811 岩手県盛岡市川目町(かわめちょう)23-12 TEL 019-622-6023 FAX 019-622-5972 写真・文:官野 貴  岩手県盛岡(もりおか)市には、「盛岡冷麺」や「盛岡じゃじゃ麺」といった独特の麺文化が栄えている。この地で、麺の製造を手がける「株式会社中野(なかの)製麺(せいめん)」では、知的障害などのある社員が活躍し、地域の食文化を支えている。  現在働く5人のうち、2人は30年以上勤務するベテラン。この日、麺生地づくりの作業をしていた矢本(やもと)尚幸(なおゆき)さん(47歳)もその一人で、製麺業務のほぼ全工程をオールマイティにこなす。  麺を切り出す「麺線カット」作業を行っていたのは、留場(とめば)和也(かずや)さん(27歳)。麺が注文通りの厚さや重さとなるように製麺機を調整しながら、切り出された麺を取り上げ、包装機へ流し込む。  麺を袋詰めし、消費期限のラベルを貼りつけていた藤原(ふじわら)淳子(じゅんこ)さん(50歳)もベテラン社員の一人。注文ごとに袋に入れる麺の数が異なるため、機械や手作業を使い分けて作業を行う。  第二工場では、北村(きたむら)大吾(だいご)さん(26歳)が箱詰め作業を行っていた。その作業の合間には、製麺機への打ち粉の補充、製品ラベルの発行など、さまざまな作業を手際よく進めていく。ここで生産された盛岡冷麺やスープなどは、全国の焼き肉店などに出荷されている。彼らの活躍が全国区での人気に一役買っているのだ。  同社は2022年に「野菜工場」を新設し、LED光によるリーフレタスなどの栽培も始めた。同社が支援する多機能型事業所の利用者が栽培担当者になる予定であり、現在は藤井(ふじい)亘(わたる)さん(47歳)が、その指導を行っている。配送部門で働いていた藤井さんは、病気の影響で片足を切断するも義足を装着して復職し、野菜工場の要となっている。同社では、人手不足を救う貴重な人材として、今後も障害者雇用を積極的に行っていくという。 写真のキャプション 麺生地づく @材料をミキサーに投入する矢本尚幸さん A小麦粉や水などの材料をミキサーでかくはんする Bかくはんした生地をミキサーから取り出す C圧延機を使い、生地を帯状に加工する D帯状の生地を重ねて生地を鍛える「複合」の工程 E複合後、熟成させた生地を圧延し、麺を切り出す「麺線カット」。ロールの間隔を調整し、麺の厚さを調整する 計量 一食分の麺を計量、注文に合わせて製麺機を調整する 麺を計量する留場和也さん。麺を手に持った感覚でおおよその重量がわかるという 包装 麺の袋詰めをする藤原淳子さん。小ロットの注文では、手作業で袋詰めを行う ラベラーを使い、消費期限のラベルを貼りつける 梱包、出荷 梱包した段ボールを積み上げる北村大吾さん。製品は全国へと出荷される 野菜工場 発芽したばかりのリーフレタス リーフレタスの定植作業を、就労継続支援B型事業所の利用者に指導する藤井亘さん(左) LEDの光を受け、成長したリーフレタス 昼食は麺の試食が定番。今日は中華麺の試食だ 麺を茹でる矢本さん 昼食の一コマ。(左から)北村大吾さん、矢本尚幸さん、藤原淳子さん、留場和也さん 【P19】 エッセイ 最終回 相談員の苦悩と心得 日本相談支援専門員協会顧問 福岡寿 福岡寿( ふくおか ひさし)  金八先生にあこがれて中学校教師になるも、4年で挫折。その後、知的障害者施設指導員、生活支援センター所長、社会福祉法人常務理事を経て、2015(平成27)年退職。田中康夫長野県政のころ、大規模コロニーの地域生活移行の取組みのため、5年間県庁に在籍。  現在は「NPO法人日本相談支援専門員協会」顧問、厚生労働省障害支援区分管理事業検討会座長。  著書に、『施設と地域のあいだで考えた』(ぶどう社)、『相談支援の実践力』(中央法規)、『気になる子の「できる!」を引き出すクラスづくり』(中央法規)などがある。  支援が必要な障害のある人にかかわる関係者や関係機関の方に、電話一本で集まってもらう。それが、相談支援の力量、あるいは実践力です。  そして、実践力という点では、集まっていただいた方と支援会議を進める際、単にご本人のケース検討会議で終わるのではなく、明日からの具体的行動や取組みを決めていく、いわゆる具体的なケアの支援体制づくりが大切です。  そうした意味では、「ケース検討会議」ではなく「ケア会議」だ、というこだわりがあります。  格言めいていますが、ある本を読んでいて、「行動が変わる⇒生活が変わる⇒習慣が変わる⇒生き方や人生が変わる」というくだりで、「なるほどなー」と腑に落ちたことがあります。  ケア会議を通じて、ご本人の行動が明日から変わっていく、行動が変わることで結果的に、やや大げさですが、人生が変わる。それが、相談支援の実践力だと思っています。  人は、心がけや周りからの助言やアドバイス、諭しではなかなか変わらない。それよりも、具体的な行動で人が変わる。そちらに重点を置いた支援会議になるように心がけてきました。  通所施設に通うことが億劫(おっくう)になってきたのか、欠席がちになり、そのうちまったく通所しなくなった方がいました。自動販売機で缶コーヒーを選んで飲むこと、これがその方の一日のささやかな楽しみだ、という話題が支援会議で出されました。  それで、通所施設にきちんと通い、活動や作業に取り組んでいただくことに重点を置くのではなく、家から出て、自動販売機に行くという行動をベースに考えました。  具体的には、通所施設の玄関まで来たら、所長が、出勤したという印と出勤手当として必ず、110円を支給するという取決めにしました。結果としては、110円と自動販売機の缶コーヒーというつながりで、再び玄関までは毎日来るようになりました。最終的には、半日勤務ではありますが、元の通所スタイルに戻りました。  また、ある相談支援専門員さんから、好事例としてうかがった話ですが、軽度発達障害の方で、ホームセンターでいろいろな部品や道具を購入して、何の役に立つのかはわかりませんが、自分なりに組み立てたり、つくることが好きな方がいました。  その方の生活課題は、朝決まった時間に起きることでした。昼夜逆転になってしまうことが頻繁にあるため、それが課題になっていました。  そこで、朝時間通りに起床するという取組みではなく、本人の強みを活かし、部屋の東側の窓のカーテンが起床時間に、自動的に開く装置づくりに取り組んでもらいました。  さまざまな試行錯誤はありましたが、ついに時間に合わせてカーテンが自動的に開く装置を開発しました。それは、ご本人の達成感にもつながり、また結果的には、朝、東側から差し込んでくる太陽の光で目が覚めるという行動の変化につながりました。  もう一つ紹介します。抑うつ状態のときに、心がけで元気になろうとするよりも、まず部屋の掃除をしてみる。その方が結果として気分障害がおさまっていくという話を精神保健福祉士の方からうかがったことがありました。  私は、職場を退職してフリーランスの仕事に変わって9年目になりますが、日課として定着したのは、ジム通いです。  汗を流して爽快な気分になることはわかっているのですが、なんとなく筋トレやランニングマシーンで走ることが億劫になって、ジム通いが滞ることがありました。  あるときから、見逃した番組をスマートフォンで観ることが多くなりました。現役のころはほとんど関心のなかったドラマが、退職後とても好きになりました。  ただ、45分のドラマを単に観るのは生活のロスのようにも思っていたのですが、イヤホンを耳にあて、スマートフォンでドラマを観ながらランニングをすることが習慣になりました。ジム通いが好きなのではなく、ドラマを観ることが好きなだけなのですが、結果として自分の生活スタイルが変わりました。ささやかですが、行動が変わることで生活が変わった一つの例です。 【P20-25】 編集委員が行く 専修学校での障がい者の受入れ、教育、就職への取組み 学校法人名古屋学園 名古屋情報専門学校(愛知県) トヨタループス株式会社 管理部次長 金井 渉 取材先データ 学校法人名古屋学園 名古屋情報専門学校 〒458-0924 愛知県名古屋市緑区有松(ありまつ)912 TEL 052-624-5658 FAX 052-621-0892 編集委員から  中学時代に特別支援学級にいた生徒などは、進学することがむずかしく、進学先も限定されてしまうという印象があるが、現状はどうなのだろうか。  そこで今回は、そのような生徒たちの受け皿となり、学校生活のなかで悩み・課題を克服しながら社会で必要な「人間力」を身につけることに取り組まれている「名古屋情報専門学校」を紹介する。 Keyword:専門学校、情報処理、ジョブトレーニング、ボランティア活動、インクルーシブ教育 写真:官野 貴 POINT 1 障がいのある生徒も、悩み・課題を持つ生徒も、安心して楽しく通える学校づくり 2 ジョブトレーニングで働く力を身につける 3 新しいことや、生徒がやりたいことを授業に取り入れる柔軟な対応 はじめに  江戸時代に誕生した「有松絞(ありまつしぼ)り」は全国的にも有名な織物の絞り染めで、伝統工芸として脈々と受け継がれており、地域にはいまでも当時の町並みが残っている。その愛知県名古屋市緑区有松に学舎を置く「学校法人名古屋学園名古屋情報専門学校」は、多くの障がいのある生徒や、悩み・課題を持つ生徒を受け入れている。  今回は、同校の高等課程担当で教務科長の中川(なかがわ)智晶(ともあき)先生、専門課程担当で教務主任の大西(おおにし)岳司(たけし)先生、そして就職担当で進路指導主事の中西(なかにし)達也(たつや)先生にお話をうかがい、また、ご多忙によりお会いすることが叶わなかったが、伊藤(いとう)和明(かずあき)校長先生のコメントも頂戴したので、その内容も含めて記事にさせていただいた。 障がいのある生徒や、悩み・課題を持つ生徒の受入れ  前身の学校の設立は1977(昭和52)年だが、1991(平成3)年に情報処理科目をおもな専門教科として、現在の名古屋情報専門学校(以下、「名情専(めいじょうせん)」)へ学校名を改称している。高等課程3カ年、専門課程2カ年を併置しており、高等課程は全18クラス、全生徒数750〜800人、専門課程は全6〜7クラス、生徒数250〜300人がここ数年の実績となっているが、生徒数は年々増加傾向にある。  また、名古屋鉄道名古屋本線「有松駅」から徒歩3分という立地条件と、全国でも有数の路線距離を誇る私鉄のため、県内の幅広い地域、および県外から生徒が通学している。  元々、名情専は一般の専修学校として設立されたのだが、ある年、中学時代に不登校やつらい経験をしていた生徒が、高等課程の入学生のなかにいたことがあった。その生徒はいじめにあったり、授業についていけなかったりするなど、さまざまな事情があったが、その背景に障がいがあることも、つらい経験の要因の一つだった。  学校としては、悩み・課題を持つ生徒に対応し、その年以降も継続して受け入れていくうちに、学校の取組みが口コミで広がっていった。その結果、そのような生徒が年数を重ねるごとに多く入学するようになり、同時に障がいのある生徒も増えていった。  高等課程では中学時代に特別支援学級に在籍していた生徒や、学習面の伸び悩みや不登校を経験してきた生徒、コミュニケーションをとることが苦手な生徒の入学が多く、性格もおとなしいタイプが多いという。そのため、学校側としては「まず最初に学校に慣れるよう配慮し、そして不安を抱かず毎日安心して通えるようサポート。次にワープロ・情報処理・ゲームプログラミングなどの勉強を通して自己の向上を目ざして自信を回復するとともに、専門課程や大学への進学、就職への目標をもって日々の授業に取り組めるよう教員が寄り添い、生徒が主役になれるように」との方針を掲げ、取り組んでいる。  生徒の障がいの種類は、自閉症やアスペルガー症候群などの発達障がい、精神障がい、知的障がい、身体障がいなどさまざまだが、現在は生徒全体の3〜4割ほどが「障害者手帳」の所持者、または所持見込みの生徒となっている。  理数系は苦手だが文系は得意、逆に理数系は得意で文系は苦手、もしくは「読む」、「書く」、「計算する」ことなど、学習に必要な分野で困難のある学習障がいの生徒もいる。  最初は「毎日通学できるか」、「授業についていくことができるか」、「学校生活を送ることができるか」といった不安を抱えながら入学する生徒が多い。しかし、前述の学校方針にあるように、教員が一人ひとりの個性・特性に配慮しながらサポートし、授業の内容も基礎から教えるため生徒に安心感が芽生えていくという。また、自分と同じように勉強に悩んできたり、いじめを経験してきたりした生徒が多いことで、共感し合える機会も多い。おとなしい性格の生徒も、似たタイプのクラスメイトが多いため、比較的友人ができやすい環境となっている。そして、以前の学校生活では孤立して疎外感を感じ不登校になっていた生徒でも、名情専に入ってからは元気に登校できるようになる、といったことが起きている。  さらに、障がいのない生徒も在学しているため、そのような生徒がほかの生徒の勉強でわからない点を率先して教え、面倒を見るといったこともあるという。  このように、さまざまな生徒を受け入れている学校はほかではあまり見受けられないため、非常に感心した次第である。 教育内容  高等課程の授業内容は、国語、英語、数学、体育などの「普通教科目」と、情報テクノロジーなどの「専門教科目」がある。高等課程1年次では小学校・中学校の復習をメインにすえており、苦手科目の克服も行っているが、集団で授業に取り組むことにより、勉強や体育の楽しさや、わかること・できることの喜びを知り、自信を芽生えさせる授業の展開に努めている。  入学前に、特別支援学級に在籍している生徒の進路相談を受けることもある。その際は直接名情専に来てもらい、教育方針や教員のサポート対応などを説明するとともに、親御さんからご本人が抱えている悩みや障がい特性を聞いて、認識合わせを行っている。  専門課程での教育方針は、社会人として必要な「人間力」=「自ら考え行動し、当たり前のことが当たり前としてできる力、相手の目線にたった考えを持ち、どんな困難があっても決して諦めない力」を養うこととしている。  授業は各種パソコンスキル、CAD、情報処理技術、WEBデザイン、プログラミング、サーバ構築などの情報処理関係の科目と、簿記やビジネススキルなどそのほかの科目があり、高等課程の3年間も含めて、さまざまな検定試験合格の実績が多くある。  また、障がいのある生徒のみを対象とした「就業力育成コース」があり、名情専の特長の一つとなっている。このコースでも「人間力」の醸成を方針として掲げ、障がいのある生徒が自立・自律し、社会で活き活きと働いていくために、学びを机上だけに頼らず「個々の力、共同・共働力、自己他己理解、自立・自律心、生活調整力・仕事を楽しむ力」を養う教育を行っている。  なかでも、実際の業務を想定した授業「ジョブトレーニング」に力を入れており、さまざまな業務体験を通じて、生徒を育成しているという。 ジョブトレーニング  「ジョブトレーニング」は実際の仕事を経験することにより、社会で必要な力を身につけるという考えから取り入れている。組立て作業・検査、梱包・野菜の袋詰め、事務作業のデータ入力、さらにサツマイモやスイカなどの栽培といった農作業もあり、幅広い業務体験を行っている。  なかでも、農作業体験を実施してよかった点をうかがうことができた。それは「自分を責めなくなった生徒が多くなった」ことであった。  例えば、収穫物のでき栄えが悪かった場合、その原因として、「種が悪いのではなく、水やりが足らなかった、土の状態がよくなかった」という考えに生徒はたどり着く。同じように自らに置き換えて「自分が悪いのではなく、知識を得たり、技術を習得したり、環境を変えればできるようになる」と、学校生活においても自身に対して何をすればよいか前向きに考えるようになり、農作業がそのきっかけになっていると聞くことができた。  また環境が原因だとわかることができれば、就職してからも自らに必要な合理的配慮がわかり、会社に申し出ることができることにつながるそうだ。  ジョブトレーニングは業務体験であるため、授業内容も固定していない。企業が実際に行っている作業を提供してもらい、授業に取り入れることもしている。  また過去のエピソードを紹介すると、ある生徒が業務指示を受けるたびに「〇〇さん」と自身の名前を呼ばれるのだが、何度も呼ばれるうちに「自分は求められている」と感じるようになり、必要とされる喜びを知ったとのこと。その生徒があるとき、教室の前で泣いており、その理由を聞いたところ、その日のジョブトレーニングが中止となったため、悲しくて涙が出てきたのだという。生徒の成長が感じられ、心温まるお話であった。 学校の特長  障がいのある生徒や課題を持つ生徒は、得意・不得意がはっきりしているため、学校側が目標プランを提示することがあるそうだ。学校側としては、マイナス面を見るのではなくプラス部分を伸ばしていきたいと考え、それに努めているという。  そうしていくうちに、最初は通学できるだけでよいと思っていた生徒も、だんだんと自信が芽生え、やりたいことが出てくる。そうすると、次は卒業、その次は就職と目標が生まれてくる。学校側としては、やりたいことがあればそれを実現させるため、できるだけ各自の意見を吸い上げて授業に取り入れるようにしているという。  取材しているなかで感じた名情専の強みの一つは、そういった柔軟な対応ができることにあると感じた。  授業の内容変更を一部の教員の判断で実現できること、独立した学校法人であるため自由度が高いことも要因であるようだが、大事な点は生徒との良好な関係を日ごろから構築し、コミュニケーションを図っているという点だ。  また、生徒の就職先は情報通信業、製造業、サービス業、青果業、官公庁、そのほかさまざまな業種、多くの企業がある。企業側から求められるスキルがある場合は、それを授業に取り入れて業務への適性を図ることも行っており、それが実際の就職にもつながっている。  なお、障がいのある生徒の卒業後の進路は、企業などへの一般就労が9割で、残り1割が就労移行支援事業所、就労継続支援事業所などとなっている。  就職後のフォローについては進路指導主事の中西先生がおもに担当しているが、期間を定めず継続的にフォローをしているという。  なんらかの問題が発生した際の対応はもちろんのことだが、企業の担当者や就職した生徒の意見を聞くことは、在学中に学校側が教えてきたことがよかったのか否かがわかる場となっているので、就職先の企業を訪問することを非常に大切にしているそうだ。  その答え合わせができれば、いま在籍している生徒たちへのフィードバックや授業の見直しにつなげられるとのこと。  また、それにとどまらず、名情専の卒業生が初めて受け入れる障がいのある社員となる企業もあるので、企業の担当者に対し、職場環境の見直しや既存従業員への理解活動の提案、マニュアルづくりのサポートもしている。そうすることで、企業との関係をより密にできるとうかがった。  長年のこのような取組みが実を結び、いまでは毎年数十人の障がいのある生徒が就職できるようになっているが、最初のころは中西先生も失敗の連続だったそうだ。  当初は、障がいについての知識もまったくない状態で学校への受入れを始め、障がいが関係しているが手帳を所持していない生徒も多く、手探りで授業や指導を行っていたとのこと。  そうしたなかで、いざ就職活動で生徒を送り出したときには「教育をやった気になっているだけで、まったくできていないぞ」と企業側から厳しくいわれたこともあったという。  そのときは心が折れそうになったそうだが、以降は障がいについて理解するために県内中の就労移行支援事業所を回って勉強し、また生徒一人ひとりとしっかり向き合うことにより、やる気を引き出す方法を少しずつ学んだそうだ。  そうやって長い年数をかけて、ようやくいまの形になったという、たいへんご苦労されたお話も聞かせていただいた。  授業も、最初のころは検定を数多く受けさせるなどしていたが、現在ではそういった要素は残しつつも、ジョブトレーニングなどを通じて学ぶこと、働くことの楽しさを実感してもらい、社会性を醸成することに重きを置いているとうかがった。  ここまでの記事で「生徒一人ひとりと向き合い個性・特性を見ながらサポートする、生徒に寄り添う」といった内容を何度か書いたが、教員が現場で実践するのは、やはり相当たいへんなことであるようだ。  授業は1クラス40〜50人程度で進める集合教育のため、全体の進行を重視して見ていきながら多様な生徒を個々にも見ていくのには、多くの教務経験も必要で労力も要するとのことだ。 校内・授業風景見学  名情専は1号館、2号館、体育館と三つの建物で構成されている。少子化により世間一般では学生の数が減少しているなかで、名情専は年々生徒が増加しているため、当初はなかった2号館を、2017年に増築した。  このことからも、名情専は学校生活や学習に課題を抱えた生徒たちの受け皿になっており、また受け入れた後の教育も評価されているのだと感じた。  校内では生徒たちの様子をうかがうことができたが、やはり比較的おとなしくやさしい感じの生徒が多い印象を受けた。授業の合間の休み時間でも、大きな声で談笑している生徒は見かけなかったが、仲よく話をしている生徒は多く見られ穏やかな雰囲気であった。  高等課程も専門課程も同じ校舎を利用しているが、制服があるのは高等課程のみのため服装で見分けることが可能だ。また、同校は男子生徒の比率がかなり高い。  座学の授業は専門課程の「画像編集」と「就職対策」を拝見した。素直に先生の話に耳を傾けている様子がうかがえた。  教室は黒板ではなく電子黒板を活用していた。視覚的に見やすいこと、またメモを取ることが苦手な生徒もいるために、電子黒板を取り入れたそうだ。  取材日以前にも一度見学したことがあるが、そのときは企業の方を講師として招いて行う「職業実践講座」を拝見した。仕事や職場を知る貴重な体験として講師の方がていねいに説明をされていた。これまで企業とよりよい関係を構築するために尽力してきた結果がここにも現れていると感じた。  取材日当日は、高等課程の試験期間中であったため、多くのクラスでは「学習会」を実施していた。学習会は、高等課程の取組みで、試験に向けて自習を行う時間だ。名情専では自宅では勉強ができない生徒もいるため、その日の試験が終わった後に高等課程の全員が学校に残り、翌日以降の試験に向けて勉強できるようにしている。自習のため教室では個々に自分が復習したい内容を勉強していたが、そのなかで生徒がほかの生徒に勉強を教えている様子も目にすることができた。  勉強ができる生徒が苦手な生徒を教えていると先に記述したが、実際に見ることができたのはよかった。教えられる側だけでなく、教える側もきっとよい経験になるはずだ。  最後に、ジョブトレーニングの様子を見学した。専用の作業室が常設されており、さまざまな器具が置かれていた。  行っていたのは、まずは小豆をさやから取り出し、選別する作業であった。小豆は生徒たちが畑で栽培、収穫したものだが、働くことの楽しさを知るために選別後は調理して生徒たちで食べる予定だという。自分たちが蒔(ま)いた種が成長して、やがて実となり、それをみんなで食べることは大きな楽しみに違いない。  もう一つ行っていたのは業務体験ではなく、不要になった食器を海外に送り、利用してもらうボランティア活動だったが、こういった社会貢献も授業の一環として行っていると説明を受けた。  ボランティアといっても、ひび割れや欠けがないかの検品、食器の種類ごとの仕分け、個包装、段ボールへの荷詰めといった内容について、やり方を相談しながら、チームで作業している様子を見ると、実際の業務に通じる内容だと感じた。  またボランティアを行うメリットとして、「相手先からの感謝・お礼のコメントを頂戴するので、働くことの喜びを実感でき、就業への意欲が高まる」との話も聞くことができた。 最後に  今回の取材を通じて感じたのは、障がいのある生徒もない生徒も、ともに学ぶ「インクルーシブ教育」の一つの答えが名情専にはあるのではないかということだ。  名情専が「インクルーシブ教育」を方針に掲げているわけではなく、また専門課程では障がいのある生徒のみが選択できるコースもあるので必ずしもあてはまらないが、障がいのある生徒、ない生徒、障がいはないが悩み・課題を持つ生徒など、さまざまな生徒がともに学んでいる。  一般校でインクルーシブ教育を実践しようとすると、障がいのある生徒は「マイノリティ」で「ユニーク」な存在であるために、授業についていけない、配慮が行き届かない、いじめにあうなどの問題が生じるケースがあると聞くが、名情専では障がいのある生徒と、学習面や学校生活での課題を持つ生徒の比率が高いため、そういった生徒に合わせた授業・配慮も行え、学校生活上の問題も発生しにくい。  また、生徒たち自身が何かしら悩みや課題を持つ生徒がいることを理解し、勉強を教えるなど、互いに支え合う風土が根づいている。  学校側の対応も一人ひとりの個性・特性に配慮しながらサポートし、授業も情報処理などの専門スキルを身につける科目もありながら、普通教科目では基礎から学ぶことも行っている。  非常にたいへんではあるが、すばらしい取組みをされていると感心しきりであった。  最後に、障がいや不登校などを理由に進学を悩んでいる生徒は全国に多くいるので、このような学校がもっと増えることに期待したい。そうなれば、障がい者雇用の機会も多くなるはずである。 ★本誌では通常「障害」と表記しますが、金井委員の意向により「障がい」としています 写真のキャプション 学校法人名古屋学園名古屋情報専門学校 伊藤和明校長(写真提供:学校法人名古屋学園名古屋情報専門学校) 高等課程担当で教務科長の中川智晶先生 専門課程担当で教務主任の大西岳司先生 就職担当で進路指導主事の中西達也先生 「ジョブトレーニング」では、さまざまな業務体験を行う(写真提供:学校法人名古屋学園名古屋情報専門学校) ジョブトレーニングの一つ、パッキンをはめる作業(写真提供:学校法人名古屋学園名古屋情報専門学校) ジョブトレーニング室には、各業務で使用する器具が揃えられている 農作業体験で、できたカブを収穫する生徒(写真提供:学校法人名古屋学園名古屋情報専門学校) 専門課程の授業「画像編集」の様子 専門課程の授業「就職対策」の様子。電子黒板を活用している 高等課程「学習会」の様子 「ジョブトレーニング」の様子。小豆の選別作業 さやから小豆を取り出す 「ボランティア活動」では、食器の梱包を行っていた 【P26-27】 クローズアップ 障害のある人とスポーツ 第1回 〜パラスポーツの歴史と概要〜  「東京2020パラリンピック」を契機に、注目度があがりつつあるパラスポーツ。本連載では、パラアスリートの活躍をはじめ、働きながらスポーツに励む障害のある人や、パラスポーツを応援する職場、企業や団体の活動などを紹介します。  第1回は、パラスポーツについて造詣の深い日本福祉大学教授の藤田紀昭さんに、「パラスポーツの歴史と概要」について執筆していただきました。 執筆者プロフィール 日本福祉大学 スポーツ科学部教授 公益財団法人 日本パラスポーツ協会 技術委員会副委員長 藤田(ふじた) 紀昭(もとあき)さん  1962(昭和37)年香川県生まれ。筑波大学大学院修士課程修了。2017(平成29)年より、日本福祉大学スポーツ科学部学部長。研究分野は、体育学・障害者スポーツ論。文部科学省スポーツ庁「オリンピック・パラリンピック教育に関する有識者会議」委員などを歴任。 パラスポーツとは?  パラスポーツ。聞きなれない言葉かもしれませんが、これまで「障害者スポーツ」と呼ばれていたものとほぼ同じ意味の言葉です。「パラ」には「もう一つの」という意味があり、もともとあるスポーツのルールや、やり方を修正したり、参加をサポートする用具を使ったりして、障害のある人も参加できるよう工夫された「もう一つのスポーツ」という意味です。もちろん、そうした修正などしなくてもよい場合もあります。パラリンピックのような高い競技レベルのものから、日常的に楽しむレベルのものまで、また、目的も各種大会でよい成績を残すことから、リハビリや健康のため、あるいは仲間と楽しむためのものまでさまざまです。参加形態も障害のある人だけが参加するものもあれば、障害のない人とともに楽しむインクルーシブなものまで多様です。  視覚障害、聴覚障害のある人のスポーツは明治、大正期から学校のなかで工夫した体育として実施されていましたが、学校教育の枠を超えてスポーツとして発展する契機となったのは、1964(昭和39)年に開催された東京パラリンピックといってよいでしょう。これを機に現在の公益財団法人日本パラスポーツ協会(JPSA)の前身の組織が創設され、わが国のパラスポーツの発展の起点となりました。その後、1998(平成10)年の長野冬季パラリンピック、2021(令和3)年の東京2020パラリンピックを経て、わが国のパラスポーツは発展してきました。  2025年には東京でデフリンピック(聴覚障害者の国際スポーツ大会)が開かれることになっており、聴覚障害者のスポーツの発展が期待されるところです。 パラスポーツの種類と現状  現在、夏季パラリンピックには陸上競技や水泳、車いすバスケットボールなど、おなじみの競技からボッチャやゴールボールといったパラリンピックに特有のスポーツなど22競技が、冬季パラリンピックではアルペンスキーやスノーボードなど6競技が実施されています。しかし、パラスポーツはこれにとどまるものではありません。日本パラスポーツ協会にはこれらの競技協会を含め78の競技団体が登録されています。登録されていない競技団体やレクリエーションスポーツを入れると数えきれないほどのパラスポーツが存在しているのです。スポーツはむずかしいと思っている人も自分に合ったスポーツを見つけられるはずです。  2022年度のスポーツ庁の調査(※)では週に1日以上スポーツ(散歩やウォーキング、軽体操などを含む)を実施している20歳以上の障害者は30.9%という結果が出ています。20歳以上の人全体の実施率が52.3%であることを考えると明らかに低いということになります。実施率が低い原因はさまざまですが、そもそも運動やスポーツに関心のない人が多いことのほかに、自分にできるスポーツがない、指導する人がいない、サポートする人がいない、自分にはスポーツはできないと思い込んでいることなどが考えられます。国もこれらの課題を解決し、少しでもスポーツをする障害のある人が増えるよう、障害者スポーツ推進プロジェクトなどの事業を展開しています。 広がるパラスポーツ  東京2020パラリンピックを契機として、アスリート雇用(企業に社員として籍を置きながら競技に打ち込むことができる雇用形態)される障害のある人が増えました。また、一般の雇用形態でも大会遠征のための費用を出したり、大会や合宿に仕事を休んで参加することを認めたりする企業も増えました。10年前では考えられないような環境ですが、これらは一部のトップ選手に限られたことです。障害のある多くのスポーツ愛好者は仕事の合間を縫って練習をしたり、大会に出場したりしています。これらは障害のないスポーツ愛好者も同じでしょう。  現在、スポーツ庁では各都道府県や政令指定都市に一つはパラスポーツの拠点となる機能を持ったスポーツセンターをつくろうとしています。施設を新たにつくるというよりは、そうした機能を、現在あるスポーツ施設に持たせるといった考え方です。スポーツに関心が薄い人や、中途で障害を負った人などにスポーツをする方法を教えたり、その人の住む地域のスポーツ施設でスポーツができたりすることを目ざしています。  こうした拠点施設を利用して多くの人がスポーツに関心を持ち、実践できるようになることが期待されます。また、障害のある人とない人が一緒にスポーツを楽しめるような工夫も促進されつつあります。さまざまな場所で、さまざまな機会に、さまざまな人がスポーツを実践できるようになることが期待されます。 *****  連載第2回は3月号に掲載予定です。仕事と両立させながら競技に取り組んだパラアスリートの山田(やまだ)拓朗(たくろう)さんにお話をうかがいます。 ※『「障害者スポーツ推進プロジェクト(障害児・者のスポーツライフに関する調査研究)」報告書』(令和4年度)30ページ (https://www.mext.go.jp/sports/content/20230501-spt_kensport02-000029224_87.pdf) 『令和4年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」』(https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/toukei/chousa04/sports/1415963_00008.htm) 日本におけるパラスポーツ年表 1928年 全日本盲学校体育連盟設立 1961年 第1回大分県身体障害者体育大会開催 1963年 日本ろうあ体育協会設立 1964年 国際身体障害者スポーツ大会(第2回夏季パラリンピック)開催(東京) 1965年 財団法人日本身体障害者スポーツ協会設立。第1回全国身体障害者スポーツ大会開催 1974年 大阪市障害者スポーツセンター開設(わが国初の障害者スポーツセンター) 1985年 財団法人日本身体障害者スポーツ協会公認身体障害者スポーツ指導者制度確立 1992年 第1回ゆうあいピック(全国知的障害者スポーツ大会)開催 1998年 第7回冬季パラリンピック開催(長野) 2001年 第1回全国障害者スポーツ大会(全国身体障害者スポーツ大会とゆうあいピックを統合)開催 2008年 第8回全国障害者スポーツ大会で「精神障害者バレーボール」が正式競技となり、精神障害者が参加可能に 2011年 スポーツ基本法施行、障害者スポーツの推進が明確化 2015年 スポーツ庁設置 2021年 第19回夏季パラリンピック開催(東京) ※筆者作成 パラスポーツ ◆ミニ知識◆ 「日本のパラスポーツの父中村裕博士」 (写真提供:社会福祉法人太陽の家)  大分県出身の外科医・中村(なかむら)裕(ゆたか)博士は、1958年から国立別府(べっぷ)病院(現 独立行政法人国立病院機構別府医療センター)の整形外科に勤務していました。  1960年、リハビリテーション研修で訪れたイギリスの「ストーク・マンデビル病院」で、国立脊髄損傷センター所長、ルートヴィヒ・グットマンと出会います。グットマン博士は脊髄損傷患者に対し、手術をするよりも、スポーツを通して残された能力を最大限に活かすという治療を推進していました。中村博士は、多くの脊髄損傷患者が、身体を動かす訓練を経て社会復帰を果たしていることを目の当たりにし、大きな衝撃を受けました。  中村博士は日本に戻るとすぐに、グットマン博士と同じ治療方法を実践していきます。義肢装具士や看護師を回診に加え、リハビリテーションにおけるスポーツの有効性を熱心に説き続けたのです。そして1961年には、全国初となる障害者のスポーツ大会「第1回大分県身体障害者体育大会」を開催、1964年には日本代表選手団団長として東京パラリンピック開催を実現させました。  翌1965年、障害者の自立を支援し、社会復帰させることを目的とした『太陽の家』を故郷の大分県別府市に設立。「No Charity, but a Chance!(保護より機会を!)」という理念のもと、57歳でこの世を去るまで、その支援活動に全霊を注ぎ続けました。 (編集部) ※参考資料:岡邦行著『中村裕 東京パラリンピックをつくった男』(ゆいぽおと/2019年) 【P28-29】 研究開発レポート 気分障害等の精神疾患で休職中の方のための 仕事の取組み方と働き方のセルフマネジメント支援 障害者職業総合センター職業センター  障害者職業総合センター職業センター(以下、「職業センター」)では、気分障害などの精神疾患をともなう休職者の職場復帰や雇用安定のための「ジョブデザイン・サポートプログラム」(以下、「JDSP」)の実施を通じ、ストレス対処、対人技能などの職場復帰支援に関する先駆的な職業リハビリテーション技法の開発および普及に取り組んでいます。  ここでは、「キャリア講習」、「社会人基礎力講習」、「テレワークのためのセルフマネジメント講習」の開発・改良の成果を取りまとめた冊子「仕事の取組み方と働き方のセルフマネジメント支援」(支援マニュアル23、2023〈令和5〉年3月発行)(※1)の概要をご紹介します。 【新たな開発・改良の背景】  開発等の背景として、@先行調査研究では、地域障害者職業センター(以下、「地域センター」)の職場復帰支援(以下、「リワーク支援」)に対して「休職していない社員を含めた、メンタルヘルス不調の予防・改善のための企業への助言、社員への協力等」を期待する企業が有意に少なかった半面、「業務遂行力の回復」などが多かったこと、A若年休職者へのリワーク支援に際し「職業経験の少ない若年者にキャリア講習を行う難しさがある」、「自己理解・自己分析を進めにくい」などの指摘があったこと、Bテレワークなどに対応する支援技法の開発が地域センターから求められていたことなどがあげられました。 【キャリア講習の改良】  職業センターが2017(平成29)年度に開発したキャリア講習カリキュラム(支援マニュアル17「ワーク基礎力形成支援」)の一部を、先述の背景をふまえて改良しました。  従来の講習でも、利用者が会社から期待される役割とその遂行状況、職場や生活のなかのストレス要因をふり返り、休職の要因を明らかにして、対処方法を検討する場が、数多く用意されていました。そこでは、ほかの利用者からの意見や質問によって、自分とは異なる価値観、とらえ方や知識がもたらされることが、自分の経験を再評価するきっかけとなっていました(下図)。  ただ、若年者のように職業経験が少ない利用者の場合、自分の経験を他者に伝えるための言葉を持ち合わせていないため、ほかの利用者との間で共有しにくく、また、ほかの利用者にとっては、どのような質問や意見を出せばよいのかもわかりにくい状況でした。  そこで、ほかの利用者に説明しやすいよう、事前の講座のなかで、@肩書等の「外的・客観的キャリア」と、仕事上のやりがい等の「内的・主観的キャリア」との、二つの対比の視点、A人生や仕事の転機の乗り越え方の視点など、キャリアの分析の手がかりとなる知識を学習する場を設けました。  次に、学んだ知識を使って、自分のキャリアをふり返り、仕事で大変だった経験、充実した経験、仕事を乗り越えた経験、仕事に取り組むうえで自分なりに大切にしていたことなどを、ほかの利用者に対して説明し、これを受けとめたほかの利用者から前向きなフィードバックを返してもらうことで、自分のキャリアの意味を確認し、復職後の仕事や人間関係に向け、自信を持てるようにしました。  新しいキャリア講習では、利用者が記入するシートの内容や使い方などを、若年者にも扱いやすいように工夫、変更しました。例えば、これまでの仕事で成功を実感できたこと、今後の仕事への夢などに関する設問への回答から、その人のキャリア・アンカー(判断・行動のより所)を分析できる「キャリア・アンカー自己評価シート」を開発しました。 【社会人基礎力講習の開発】  前述の背景をふまえ、社会人基礎力に焦点をあてた新たな講習を開発しました。社会人基礎力とは、職場や地域社会で必要とされる能力のモデルで、おもに大学のキャリア教育などで活用されています。  講習の進め方は以下の通りです。@社会人基礎力の知識を学ぶ、A自分の社会人基礎力のできていることと課題を確認する、B信頼関係が構築された利用者同士でAを共有、検討する。  以上の結果、次のことを目ざしています。 ○「働く目的や意味がわからない」、「取り組む目標がわからない」などの課題を抱えている職業経験の浅い若年の休職者には、働くうえで必要な力、自分が持っている力、課題となっている力について検討し、次の目標や行動計画を立てる。 ○若年層にかぎらずさまざまな年齢層の休職者が、復職後の課題解決の手がかりとして、社会人基礎力を活用できるようにする。 【テレワークのためのセルフマネジメント講習】  前述の背景をふまえ、テレワークにおけるセルフマネジメントの重要性を理解し、課題検討やグループディスカッションを通じて、各自がテレワークを行う際の対処方法を具体的に検討するための講習を、新たに開発しました。  現にテレワークを実施しているか、または経験のあるJDSP修了者へのアンケート調査やインタビューの結果から、テレワークでの課題と「対処法リスト」(左図)を作成し、利用者がこれを基に各自の課題と対処方法を具体的に検討することができるよう工夫しました。  職業センターではこのほかにもさまざまな支援技法を開発・改良し、支援者への普及や共有に努めています(※2)。ぜひご活用ください。 ※1 支援マニュアルNo.23「仕事の取組み方と働き方のセルフマネジメント支援」は、下記ホームページからご覧になれます。https://www.nivr.jeed.go.jp/center/report/support23.htm ※2 職業センターの支援技法開発成果物は、下記ホームページからご覧になれます。https://www.nivr.jeed.go.jp/center/ ★障害者職業総合センター職業センター TEL:043-297-9043 ほかの利用者からの質問、意見 経験のふり返り 経験の説明 テレワークのための対処法リスト 仕事の取組み方 □仕事を始めるときのルーティンを決めて、仕事モードに切り替えましょう。 (例:出社しているときの身だしなみに整える、「始めるぞ」と声に出して切り替える、通勤と見立てて一度外に出てから仕事を始める) □今日、取り組む業務を箇条書きにしましょう。 □仕事の優先順位を決め、1日のスケジュールを立ててから取り組みましょう。 □タイマーを使い、定期的に休憩を取りましょう。 テレワークの課題として挙げられる「長時間労働」への対策にもなります。 □疲れが溜まってくる夕方に運動する、机に向かわずに打合せをする時間を設けるなどの工夫をしましょう。 □スケジュールを可視化しましょう。(例:スケジュールをチーム内で共有する) スケジュール共有(例) Aさん Bさん Cさん Dさん 出社 テレワーク 出社 テレワーク 9:00 打ち合わせ 会議資料作成 メールチェック 時間休 10:00 E社への企画書作成 (予備) 会議室準備 11:00 会議 会議 会議 会議 12:00 昼休憩 13:00 打ち合わせ会場準備 営業のアポ取り電話 営業 会議の議事録作成 14:00 E社との打ち合わせ 顧客リストの作成 (予備) 15:00 報告書作成 16:00 チーム内打ち合わせ チーム内打ち合わせ チーム内打ち合わせ 17:00 チームリーダーへ報告 請求書作成 打ち合わせの議事録作成 出社時と違い、テレワークでは、上司や同僚が今どのような業務をしているかわかりづらくなります。つまり、自分が今どのような業務に取り組んでいるのかも、上司や同僚にはわかりにくいと言えます。お互いに共有をすることで、業務の効率化を図ることができます。 Aさんは今打ち合わせ中か! 環境整備 □テレワーク用の部屋と私生活用の部屋を分けましょう。 部屋を分けることが難しい場合… ・座る場所を変える。 ・イスを変える。 ・服装を変える。  といった工夫も効果的です。 □テレワークの時間を事前に家族に伝え、理解を得ましょう。 □以下の図を参考に、可能な範囲で作業環境を整えると、身体への負担感が軽減されます。 例えば… ・調整機能のある椅子を使う。 (座面の体圧分散、リクライニング、調整アーム、腰部のランバーサポート付きなど) ・使いやすいマウスを使う。 ・PCスタンドを使い、ディスプレイの高さを目線に合わせる。 ・ブルーライトカットメガネを使う。 ※左図出典:厚生労働省ホームページ「自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備」 自由記述 □ □ □ □ テレワーク経験者の声 ・業務内容に合わせてテレワークにするか否かを判断している。 ※講習の受講などはテレワークで実施する。 ・チャットで要点を確認し、オンラインツールでファイルを共有して視覚で意識合わせをしている。 ・一人になることで、集中しやすい反面、人の目がなくなることで、ダレてしまう可能性がある。当日の業務目標を立て、目標達成に向け、業務に取り組んでいる。 ・朝起きて着替えて、食事の支度など一通り終わったらラジオを聴く。始業までラジオを聞いてから朝礼に参加するようにしている。 ※JDSP終了者のうちテレワーク経験のある方へのアンケート結果等より一部抜粋 【P30-31】 ニュースファイル 国の動き 内閣府 障害者差別に関する相談窓口を開設  内閣府は、障害者差別に関する相談窓口の試行事業「つなぐ窓口」を2023(令和5)年10月中旬から2025年3月下旬まで設置する。障害者差別解消法に基づき策定された基本方針(2023年3月改定、2024年4月施行)に、「障害者や事業者、都道府県・市区町村等からの相談に対して、法令の説明や適切な相談窓口につなぐ役割を担う国の相談窓口について検討を進めること」が明記されたことにともなう措置。  「つなぐ窓口」では、障害のある人や企業等からの相談を、自治体・各府省庁などの適切な相談窓口に円滑につなげるための調整・取次を行う。「過去に相談をした際に、相談先から別の相談先を紹介されることがくり返されて、結局相談できなかった」、「障害があるので、お店に配慮やお願いしたいことがあるが、どうすればよいかわからない」といった相談を電話やメールで受けつける。 電話相談:0120−262−701(10時〜17時、祝日・年末年始除く) メール相談:info@mail.sabekai-tsunagu.go.jp 生活情報 東京 ろう者の交流・発信拠点がオープン  一般社団法人日本ろう芸術協会(世田谷区)と、一般社団法人ooo(オオオ)(調布市)が、視覚で世界をとらえる人々から生まれる文化を、世の中に発信していく場「5005(ゴーマルマルゴー)」を台東区にオープンした。  「5005」では、手話という視覚言語のアーカイブ(知恵や経験、文化などを継承する)を行うと同時に、ろう者・難聴者・CODA(コーダ)(ろう者を親にもつ聴者)たちを中心としたワーキング・プレイスを設置することで出会いと交流を深め、手話という視覚言語の文化醸成(じょうせい)を目ざすとしている。  また、ラウンジやギャラリーの運営、演劇公演やトークイベントなどを通して、多様な文化を持つ人々の交流の場をつくっていくほか、手話動画を撮影できるスタジオ設備運営、デフスペース研究・開発も予定している。イベント情報など詳細はホームページで。 https://5005place.com 働く 青森 就労支援活動がグッドデザイン賞受賞  就労継続支援A型事業所などを運営する「株式会社はちのへ東奥朝日(とうおうあさひ)ソリューション」(八戸(はちのへ)市)が、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(東京都)と、一般社団法人データワークサポート(八戸市)とともに取り組むデータ開発支援活動が、2023年度のグッドデザイン賞(公益財団法人日本デザイン振興会主催)を受賞した。  この活動は「就労支援データワークプラットフォーム」と呼ばれ、データに関する業務(データワーク)を希望する事業所が、AI導入やD]を進める自治体や企業からデータワークを受託・実施するためのもの。  事業所の職業指導員がデータワークになじみがなくても参画できるよう、作業の構造化やガイドライン化、データチェックなどをプラットフォームから提供・分業してできる仕組みを構築。作業前のトライアル環境や、作業中に参照できるマニュアルや作業ふり分けなどの提供により、心理的安全性を重視したワークデザイン、納品チェックの実施などによる品質の担保といったサポートを実現している。  障害のある人の働き方の選択肢を広げる点や、従来の就労継続支援を行う事業所とは縁遠い業務の導入にあたって、作業者の特性や思考に合った環境やガイドラインを設計・提供している点などが評価された。 東京 障害者就労支援事業子会社が設立  住友重機械工業株式会社(品川区)は、障害者就労支援事業を手がける完全子会社「住重(すみじゅう)ウィル株式会社」(品川区)を設立した。2024年1月から業務を開始し、同年中に特例子会社の認定を目ざしている。  おもな業務内容は、各種データ入力および提供業務や工場内の軽作業、グループ社員等向けの障害者関連研修、雇用定着支援。社名のウィルには、障害の有無にかかわらず、一人ひとりが「こうなりたい」、「こうしたい」というWILL(思い、意思)を持ち、仲間と大きな目標を達成する喜びを分かち合い、顧客や社会への貢献を実感できる会社にしたいとの想いが込められている。 本紹介 『発達障害児者の働く≠支える保護者・専門家によるライフ・キャリア支援』  本誌編集委員を務める松爲(まつい)信雄(のぶお)さん監修、一般社団法人職業リハビリテーション協会理事の宇野(うの)京子(きょうこ)さん編著による『発達障害児者の働く≠支える 保護者・専門家によるライフ・キャリア支援』(クリエイツかもがわ刊)が出版された。  生きづらさを抱える人たちが、よりよい人生を歩むための「働く」を考えることを目的に、「見通し」を持ってライフ・キャリアを描けるように、ジョブコーチやキャリアカウンセラー、研究者や教員、作業療法士、保護者・当事者などさまざまな立場にある20人あまりの執筆陣が、事例や経験、生き方や想いをわかりやすく伝えている。テーマは、「働く」ということ/障害のある人たちとの関わりから伝えたいこと/支援する人へ││就労アセスメントについて、など。A5判224ページ、2420円(税込)。 アビリンピック マスコットキャラクター アビリス 2023年度地方アビリンピック開催予定 1月 広島県、佐賀県 *開催地によっては、開催日や種目ごとに会場が異なります *  は開催終了 地方アビリンピック 検索 ※日程や会場については、変更となる場合があります。 写真のキャプション 広島県 佐賀県 ミニコラム 第31回 編集委員のひとこと ※今号の「編集委員が行く」(20〜25ページ)は金井委員が執筆しています。  ご一読ください。 障がいのある社員との接し方 トヨタループス株式会社管理部次長 金井渉  私が所属する「トヨタループス株式会社」では多くの障がいのある人が、ともに働いている。身体障がい、知的障がい、精神障がいのある人、そこに障がいのない人も加わり、業務内容も多岐にわたっている。  以前、障がいのある社員に、仕事の目的を聞いたことがある。単純に「お金がほしい」という意見や、「楽しいから」と話してくれた社員もいたが、答えることができない社員も多くいた。  答えることができなかった社員数人に、「仕事は楽しい?」と聞いたら、そのなかで「楽しくない」とはっきりいってきた社員がいた。  仕事の目的を答えられないのは想定の範囲内だったが、「楽しくない」は正直寂しかった。  障がいのある人のなかにはネガティブ思考の人もいるので致し方ない場合もあるのだが、それでも、それからはその社員に対してはしゃべりかける頻度を増やしたり、担当している仕事が世の中に役立っていることを伝えて、少しでも仕事にやりがいが持てるようになればと思って接している。  ただ、仕事に関しては、その社員は「作業がむずかしくて、自分はできていない」といいながら、チーム内では作業スピードがトップクラスで早い。たしかにむずかしい仕事は苦手だが、就業態度もいたって真面目だ。  なので「〇〇君は仕事ができているよ」と話しかけるのだが、その言葉を受け入れようとしない。  障がいのある社員に対し、どういう接し方・指導をしたらよいか、いまでも正解がわからなくなることがある。そんなときは、長期的視点で社員を見るようにしている。  短期的にはわからなくても、長期的に見るとその社員が成長しているかどうかわかるときがある。例えば、1年前と比較して成長・変化していると感じるようであれば、接し方は合っていたんだなと思うことができる。 ★本誌では通常「障害」と表記しますが、金井委員の意向により「障がい」としています 【P32】 掲示板 JEEDメールマガジン 登録受付中!  独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)では、JEEDが全国で実施する高齢者や障害者の雇用支援、従業員の人材育成(職業能力開発)などの情報を、毎月月末に配信しています。 雇用管理や人材育成の「いま」・「これから」を考える人事労務担当者のみなさま、必読! 高齢 定年延長や廃止・再雇用 障害 障害のある従業員の新規・継続雇用 求職 ものづくり技能開発・向上の手段 みなさまの「どうする?」に応えるヒント、見つかります! JEED メルマガ で 検索 ※カメラで読み取ったリンク先がhttps://www.jeed.go.jp/general/merumaga/index.htmlであることを確認のうえアクセスしてください。 次号予告 ●特集  2023(令和5)年11月17日(金)〜19日(日)に愛知県で開催された第43回全国アビリンピックを取材。全国から出場した選手たちの活躍の様子をレポートします。 ●メダリストを訪ねて  2023年3月にフランスで開催された第10回国際アビリンピックの「英文ワープロ」種目で、銀賞と特別賞を受賞した佐藤翔悟さんに、大会の思い出や、今後の抱負などをうかがいます。 ●編集委員が行く  菊地一文編集委員が、京都市立東山総合支援学校(京都府)を訪問。障害のある生徒の就労支援や職場実習など、学校独自の取組みについてお伝えします。 公式X(旧Twitter)はこちら 読者アンケートはこちら 本誌購入方法  定期購読のほか、最新号やバックナンバーのご購入は、下記へお申し込みください。  1冊からのご購入も受けつけています。 ◆インターネットでのお申し込み 富士山マガジンサービス 検索 ◆お電話、FAXでのお申し込み 株式会社広済堂ネクストまでご連絡ください。 TEL 03-5484-8821 FAX 03-5484-8822 編集委員 (五十音順) 株式会社FVP 代表取締役 大塚由紀子 トヨタループス株式会社 管理部次長 金井渉 NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク 副理事・統括施設長 金塚たかし 弘前大学教職大学院 教授 菊地一文 岡山障害者文化芸術協会 代表理事 阪本文雄 武庫川女子大学 准教授 諏訪田克彦 サントリービバレッジソリューション株式会社 人事本部 副部長 平岡典子 神奈川県立保健福祉大学 名誉教授 松爲信雄 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 筑波大学大学院 教授 八重田淳 常磐大学 准教授 若林功 あなたの原稿をお待ちしています ■声−−障害者雇用にかかわるお考えやご意見、行事やできごとなどを500字以内で編集部(企画部情報公開広報課)まで。 ●発行−−独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 境 伸栄 編集人−−企画部次長 中上英二 〒261−8558 千葉県千葉市美浜区若葉3−1−2 電話 043−213−6526(企画部情報公開広報課) ホームページ https://www.jeed.go.jp メールアドレス hiroba@jeed.go.jp ●発売所−−株式会社広済堂ネクスト 〒105−8318 東京都港区芝浦1−2−3 シーバンスS館13階 電話 03−5484−8821 FAX 03−5484−8822 1月号 定価141円(本体129円+税)送料別 令和5年12月25日発行 無断転載を禁ずる ・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。また、本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。 【P33】 (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 各都道府県支部高齢・障害者業務課 所在地等一覧 ホームページはこちら  JEEDでは、各都道府県支部高齢・障害者業務課等において高齢者・障害者の雇用支援のための業務(相談・援助、給付金・助成金の支給、障害者雇用納付金制度に基づく申告・申請の受付、啓発等)を実施しています。 2023年12月25日現在 名称 所在地 電話番号(代表) 北海道支部高齢・障害者業務課 〒063-0804 札幌市西区二十四軒4条1-4-1北海道職業能力開発促進センター内 011-622-3351 青森支部高齢・障害者業務課 〒030-0822 青森市中央3-20-2青森職業能力開発促進センター内 017-721-2125 岩手支部高齢・障害者業務課 〒020-0024 盛岡市菜園1-12-18盛岡菜園センタービル3階 019-654-2081 宮城支部高齢・障害者業務課 〒985-8550 多賀城市明月2-2-1宮城職業能力開発促進センター内 022-361-6288 秋田支部高齢・障害者業務課 〒010-0101 潟上市天王字上北野4-143秋田職業能力開発促進センター内 018-872-1801 山形支部高齢・障害者業務課 〒990-2161 山形市漆山1954山形職業能力開発促進センター内 023-674-9567 福島支部高齢・障害者業務課 〒960-8054 福島市三河北町7-14福島職業能力開発促進センター内 024-526-1510 茨城支部高齢・障害者業務課 〒310-0803 水戸市城南1-4-7第5プリンスビル5階 029-300-1215 栃木支部高齢・障害者業務課 〒320-0072 宇都宮市若草1-4-23栃木職業能力開発促進センター内 028-650-6226 群馬支部高齢・障害者業務課 〒379-2154 前橋市天川大島町130-1ハローワーク前橋3階 027-287-1511 埼玉支部高齢・障害者業務課 〒336-0931 さいたま市緑区原山2-18-8埼玉職業能力開発促進センター内 048-813-1112 千葉支部高齢・障害者業務課 〒263-0004 千葉市稲毛区六方町274千葉職業能力開発促進センター内 043-304-7730 東京支部高齢・障害者業務課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12ハローワーク墨田5階 03-5638-2794 東京支部高齢・障害者窓口サービス課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12ハローワーク墨田5階 03-5638-2284 神奈川支部高齢・障害者業務課 〒241-0824 横浜市旭区南希望が丘78関東職業能力開発促進センター内 045-360-6010 新潟支部高齢・障害者業務課 〒951-8061 新潟市中央区西堀通6-866NEXT21ビル12階 025-226-6011 富山支部高齢・障害者業務課 〒933-0982 高岡市八ケ55富山職業能力開発促進センター内 0766-26-1881 石川支部高齢・障害者業務課 〒920-0352 金沢市観音堂町へ1石川職業能力開発促進センター内 076-267-6001 福井支部高齢・障害者業務課 〒915-0853 越前市行松町25-10福井職業能力開発促進センター内 0778-23-1021 山梨支部高齢・障害者業務課 〒400-0854 甲府市中小河原町403-1山梨職業能力開発促進センター内 055-242-3723 長野支部高齢・障害者業務課 〒381-0043 長野市吉田4-25-12長野職業能力開発促進センター内 026-258-6001 岐阜支部高齢・障害者業務課 〒500-8842 岐阜市金町5-25G-frontU7階 058-265-5823 静岡支部高齢・障害者業務課 〒422-8033 静岡市駿河区登呂3-1-35静岡職業能力開発促進センター内 054-280-3622 愛知支部高齢・障害者業務課 〒460-0003 名古屋市中区錦1-10-1MIテラス名古屋伏見4階 052-218-3385 三重支部高齢・障害者業務課 〒514-0002 津市島崎町327-1ハローワーク津2階 059-213-9255 滋賀支部高齢・障害者業務課 〒520-0856 大津市光が丘町3-13滋賀職業能力開発促進センター内 077-537-1214 京都支部高齢・障害者業務課 〒617-0843 長岡京市友岡1-2-1京都職業能力開発促進センター内 075-951-7481 大阪支部高齢・障害者業務課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0782 大阪支部高齢・障害者窓口サービス課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0722 兵庫支部高齢・障害者業務課 〒661-0045 尼崎市武庫豊町3-1-50兵庫職業能力開発促進センター内 06-6431-8201 奈良支部高齢・障害者業務課 〒634-0033 橿原市城殿町433奈良職業能力開発促進センター内 0744-22-5232 和歌山支部高齢・障害者業務課 〒640-8483 和歌山市園部1276和歌山職業能力開発促進センター内 073-462-6900 鳥取支部高齢・障害者業務課 〒689-1112 鳥取市若葉台南7-1-11鳥取職業能力開発促進センター内 0857-52-8803 島根支部高齢・障害者業務課 〒690-0001 松江市東朝日町267島根職業能力開発促進センター内 0852-60-1677 岡山支部高齢・障害者業務課 〒700-0951 岡山市北区田中580岡山職業能力開発促進センター内 086-241-0166 広島支部高齢・障害者業務課 〒730-0825 広島市中区光南5-2-65広島職業能力開発促進センター内 082-545-7150 山口支部高齢・障害者業務課 〒753-0861 山口市矢原1284-1山口職業能力開発促進センター内 083-995-2050 徳島支部高齢・障害者業務課 〒770-0823 徳島市出来島本町1-5ハローワーク徳島5階 088-611-2388 香川支部高齢・障害者業務課 〒761-8063 高松市花ノ宮町2-4-3香川職業能力開発促進センター内 087-814-3791 愛媛支部高齢・障害者業務課 〒791-8044 松山市西垣生町2184愛媛職業能力開発促進センター内 089-905-6780 高知支部高齢・障害者業務課 〒781-8010 高知市桟橋通4-15-68高知職業能力開発促進センター内 088-837-1160 福岡支部高齢・障害者業務課 〒810-0042 福岡市中央区赤坂1-10-17しんくみ赤坂ビル6階 092-718-1310 佐賀支部高齢・障害者業務課 〒849-0911 佐賀市兵庫町若宮1042-2佐賀職業能力開発促進センター内 0952-37-9117 長崎支部高齢・障害者業務課 〒854-0062 諫早市小船越町1113長崎職業能力開発促進センター内 0957-35-4721 熊本支部高齢・障害者業務課 〒861-1102 合志市須屋2505-3熊本職業能力開発促進センター内 096-249-1888 大分支部高齢・障害者業務課 〒870-0131 大分市皆春1483-1大分職業能力開発促進センター内 097-522-7255 宮崎支部高齢・障害者業務課 〒880-0916 宮崎市大字恒久4241宮崎職業能力開発促進センター内 0985-51-1556 鹿児島支部高齢・障害者業務課 〒890-0068 鹿児島市東郡元町14-3鹿児島職業能力開発促進センター内 099-813-0132 沖縄支部高齢・障害者業務課 〒900-0006 那覇市おもろまち1-3-25沖縄職業総合庁舎4階 098-941-3301 【裏表紙】 事業主の方へ 指導者(障害のある方を指導する方)育成に役立つ 研修受講者募集 令和6年度コースは3月1日(金)より受付開始!!  職業能力開発総合大学校では、職業訓練や企業において教育・指導にたずさわる方々を対象とした研修を実施しています。実際に教育訓練を担当される方が指導するにあたって必要な知識および技能・技術を習得するための研修をはじめ、精神・発達障害への配慮や支援に役立つ研修もありますので、ぜひご利用ください。 【研修コースの例】  「精神・発達障害関係の指導員研修」として、4部構成(「精神・発達障害と似た行動をする訓練生への支援」<@「理解と接し方編」、A「訓練の支援と支援体制編」>および「一般校の指導員のための精神・発達障害に配慮した支援と対応」<B「メンタルの支援編」、C「就職活動の支援編」>)の研修コースを用意しており、段階的に受講することができます。 【研修期間・研修会場・受講料の例】 ・研修期間 1コース 2〜3日 ・研修会場 職業能力開発総合大学校など ・受講料 1コース 5,500円〜 ※研修期間、研修会場および受講料は、コースにより異なりますので、詳細は職業能力開発総合大学校研修部までお問い合わせください。 研修コースの内容や申込方法などの詳細はホームページで! 職業大研修 検索 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 職業能力開発総合大学校 研修部 〒187-0035 東京都小平市小川西町2-32-1 TEL:042-346-7234 FAX:042-346-7478 https://www.uitec.jeed.go.jp/training/index.html 1月号 令和5年12月25日発行 通巻555号 毎月1回25日発行 定価141円(本体129円+税)