グラビア 伝統工芸のにない手 株式会社いよぎんChallenge&Smile(愛媛県) 取材先データ 株式会社いよぎんChallenge&Smile 〒790-0822 愛媛県松山市高砂町2-2-5 伊予銀行事務センター別館5階 TEL 089-925-0135(代表) FAX 089-925-0136 写真・文:官野貴  愛媛県松山市にある「株式会社いよぎんChallenge&Smile」は、「株式会社伊予銀行」の特例子会社だ。2014(平成26)年に開設された障害者雇用の専門部門を前身として、2018年4月に設立、同年6月に特例子会社の認定を受けた。伊予銀行のマスコットキャラクターなどの木工グッズ、今治(いまばり)のタオルの残糸を使用した織物製品をはじめ、愛媛県内の伝統工芸品の製作を手がけている。  伝統文化における継承者の高齢化や後継者不足、障害者の職域や業務拡大といった課題を連携して解決する「伝福連携」を通して、地域に貢献したいとの思いのもと、知的障害などのある社員たちが作品づくりに取り組み、伝統工芸のにない手となっている。  「裂さき織お り」は、愛媛県佐田岬(さだみさき)地方に受け継がれた伝統工芸で、不要になった着物や布などを、コースターなどに生まれ変わらせる。愛媛県発祥の「姫てまり」は、幸せを願う幸福のシンボルとして嫁入り道具になるなど、古くから愛されてきた。「水引(みずひき)細工」は、紙の産地として知られる愛媛県四国中央市で生産された水引を使用しており、コサージュは贈答品として人気を博している。木工グッズは、親会社の顧客向けPRグッズとして活用されるほか、桜の花をモチーフとしたコースターは、愛媛県内を走る観光列車の個室で使用されている。  同社では、現在23人の障害のある社員が働いており、社員同士で作業内容を確認し、先輩が後輩への指導を担当。製品のデザインも社員自身が行うなど、一人ひとりが自信を持ってものづくりにたずさわっている。定着率も高く、2023(令和5)年には、有期雇用から無期雇用への転換を果たした社員もいる。親会社からの伝票綴りや入金帳作成などの業務に加え、今後、新たな業務にも挑戦していく予定で、障害者雇用を積極的に進めていくという。 写真のキャプション 裂織り @着物や浴衣などを裂いて緯糸(よこいと)とする。ロックミシンのメス(カッター)を使い、作業している A経糸(たていと)取り。整経台で経糸をつくる。糸の順番を間違えないように注意が B布を裂いてつくった緯糸を、手織り機で経糸に織り込んでいく。テクニックやコツは、先輩から後輩に引き継がれている 織物班の作業場。手前では水引細工が、奥では機織(はたおり)が行われている 水引細工 3本の水引を梅結びにしアクセサリーに。組み合わせればコサージュに あわじ結びをベースに、2本の水引を結び草花の葉に見立てる 姫てまり 姫てまりづくりの様子。集中して作業を進める。ひとつの製作にかかる時間はおよそ60分 橙色の芯に絹糸をていねいに巻いていく。絹糸は切れやすく、繊細な力加減が求められる 鮮やかに染められた絹糸が生み出す艶が姫てまりの特徴。アクセサリーやインテリアとして、松山市内のホテルなどで販売されている いよぎんChallenge&Smileでつくり出される製品。放置林の竹を使用したコースター(左下)はカラフルで人気が高い 木工グッズ 木工班の作業場。騒音に配慮し、糸のこなどの工作機械は、写真左奥の小部屋内に設置されている @焼印。力加減や時間調整がむずかしい。材料の板には、愛媛県内の間伐材を使用している A切り出し。糸のこを使い、焼印に沿って一定の間隔で切り出す。ケガ防止のため、専用の手袋を使用する B図柄は、「愛媛県イメージアップキャラクター みきゃん」。入り組んだ部分もあり、集中力が求められる C側面の研磨。三種類の紙やすりを使い分けて隅々まで磨き上げる。焼印の製品では、特に重要な工程 D色塗り。伊予銀行のクレジットカードIYOCAのイメージキャラクター「とりカエル」が姿を現した。裏面に磁石を取りつけてマグネットの完成