ミニコラム 第34回 編集委員のひとこと ※今号の「編集委員が行く」(20〜25ページ)は八重田委員が執筆しています。  ご一読ください。 音楽が心と体におよぼす影響について 筑波大学大学院教授 八重田淳  日本を代表する世界的な音楽家の坂本(さかもと)龍一(りゅういち)さんと小澤(おざわ)征爾(せいじ)さんが去年から今年にかけて相次いで亡くなられた(坂本さんは2023〈令和5〉年3月、小澤さんは2024年2月)。私は最近プールで泳ぎながら、大好きな彼らの音楽をよく聴いている。音楽が心におよぼす影響は計り知れないが、音楽は体にも影響を与えてくれるような気がする。水の中で澄んだピアノの音や壮大なシンフォニーを聴くと、リラックスできるし、勇気づけられる。これは心への効果だ。体への効果というのは、専門ではないのでよくわからないが、音楽によってキリッと背筋が伸びて姿勢がよくなったり、血の巡りがよくなったりと、自律神経にもプラスに作用している感じがする。私の場合は泳ぎながら音楽を聴くので、スーッと水の中を進むときに比較的長いトーンが耳に入ってくると、いつもより長く静かに息を止めたりするので、心肺機能にもよいのかもしれない。  では、仕事をしながら音楽を聴くことの効用についてはどうだろう。音楽によって創造力や集中力が高まるという人は少なくないと思う。以前、精神障害のある方が利用する就労継続支援B型事業所を訪問した際、働きながら音楽を聴くという話題が持ち上がったことがある。音楽を聴けば精神的に安定するし、作業効率もアップする。そんな職場だったら楽しそうだ。音楽が心身の回復に寄与することは音楽療法の科学でも実証されている。音楽は仕事の疲れを癒し、やる気にもさせてくれる。音楽そのものが仕事であり人生であった坂本龍一さんや小澤征爾さんに、こうした音楽の持つ力について訊ねてみたかった。