【表紙】 令和5年4月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第547号 ISSN 0386-0159 障害者と雇用 2023 5 No.547 職場ルポ 一人ひとりを多能工化、専門機械の生産支える ふぁみーゆツダコマ株式会社(石川県) グラビア 「一級家具製作技能士」の活躍 株式会社山ノ木(和歌山県) 編集委員が行く 知的障害のある学生の学校から職場への移行支援 横浜国立大学教育学部附属特別支援学校(神奈川県) 私のひとこと 手話を学んでみませんか 手話通訳士 谷千春さん 「宇宙飛行士」岐阜県・松尾(まつお)美月(るな)さん 誰もが職業をとおして社会参加できる「共生社会」を目指しています 5月号 【前頁】 心のアート 車 南裕貴 (しょうぶ学園) 素材:土/サイズ:それぞれ約120mm×50mm×50mm  「みなさんおはようございます」  朝一番、とてもていねいなあいさつから彼の陶芸工房での活動が始まる。  車やロボットの制作が中心で、まず各パーツをつくり、そのパーツをプラモデルのように組み立てる。一つできあがると「完成しました」とスタッフに必ず報告。車の総生産数はなんと600台。細部にまでこだわった作品たちは港に並ぶ新車のように整然と並べられ、彼の作品に対する思いやりが感じられる。  つくるものへのていねいさは人並み以上で、彼にとってその作品一つひとつが毎回最高傑作。「あぁ南さんがつくったモノだな」。彼の作品には、彼自身を映し出す不思議な魅力が宿っている。 (文:社会福祉法人太陽会 しょうぶ学園 福森創) 南裕貴(みなみ・ゆうき)  1994(平成6)年生まれ、鹿児島県鹿児島市在住。2019年より、「社会福祉法人太陽会しょうぶ学園」のデイサービスセンター「Doしょうぶ」の生活介護事業を利用。日中は陶芸工房で活動している。陶芸は、しょうぶ学園の利用を始めてから本格的に開始した。素材に触れながら技術を身につけ、いまでは器用に好きなものや興味のあるものをモチーフに、立体作品の制作を行う。車の制作が中心だが、そのほかにもロボットやウェポンも気の向くままに日々制作している。 協力:社会福祉法人太陽会 しょうぶ学園 【もくじ】 目次 2023年5月号 NO.547 「働く広場」は、障害者雇用の啓発・広報を目的として、ルポルタージュやグラビアなど写真を多く用いて、障害者雇用の現場とその魅力をわかりやすくお伝えします。 心のアート 前頁 車 作者:南裕貴(しょうぶ学園) 私のひとこと 2 手話を学んでみませんか 手話通訳士 谷千春さん 職場ルポ 4 一人ひとりを多能工化、専門機械の生産支える ふぁみーゆツダコマ株式会社(石川県) 文:豊浦美紀/写真:官野貴 クローズアップ 10 障害者職業能力開発校の活用術 第2回 〜社員個々の能力を発揮して活躍してもらうには〜 JEEDインフォメーション 12 国立職業リハビリテーションセンター 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 訓練生募集のお知らせ/令和5年度「地方アビリンピック」開催地一覧/ 作品募集 令和5年度 絵画コンテスト 働くすがた 〜今そして未来〜・写真コンテスト 職場で輝く障害者 〜今その瞬間〜 グラビア 15 「一級家具製作技能士」の活躍 株式会社山ノ木(和歌山県) 写真/文:官野貴 エッセイ 19 ろう者である想い 第2回 〜手話は言語〜 忍足亜希子 編集委員が行く 20 知的障害のある学生の学校から職場への移行支援 横浜国立大学教育学部附属特別支援学校(神奈川県) 編集委員 八重田淳 省庁だより 26 令和4年 障害者雇用状況の集計結果A 厚生労働省 職業安定局 障害者雇用対策課 研究開発レポート 28 第30回 職業リハビリテーション研究・実践発表会 Part2 パネルディスカッション T「『同僚』のちょっとした理解とサポートが力になる〜障害のある社員が働きやすい職場づくりについて〜」 U「大学等における発達障害学生への連携支援について」 ニュースファイル 30 編集委員のひとこと 31 掲示板・次号予告 32 訪問型・企業在籍型職場適応援助者支援スキル向上研修 表紙絵の説明 「職場の上司にコンテストを教えてもらい、応募しました。私はSFが好きで、いつトラブルが起きてもおかしくない危険な状況下で、命がけで働いている宇宙飛行士を描いてみようと思いました。画材は色鉛筆しか使っていないので、かなり時間がかかりましたが、楽しんで描けました。受賞を聞いて、心の中でヨシっとガッツポーズをしたのを覚えています」 (令和4年度 障害者雇用支援月間絵画コンテスト 高校・一般の部 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長奨励賞) ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。(https://www.jeed.go.jp/) 【P2-3】 私のひとこと 手話を学んでみませんか 手話通訳士 谷千春  私が手話通訳士として仕事を始めたのは、いまから40年ほど前になります。当時はまだ「手話」ということばが、社会の中に広まってはいませんでした。初めて会う人に「私は手話通訳士です」といっても必ず聞き返され、やっと通じたかと思えば、「指圧師さんですね」といわれたこともありました。また、テレビで私が手話通訳をしていると、視聴者の方から「画面の隅で小さい男の人が踊っている」という苦情がテレビ局に届いたこともありました。  そんな時代を経て、テレビや映画に聴覚障がい者や手話が数多く取り上げられ、街中でも手話で会話をしている人たちをごく普通に見かけられる現在の状況には、時の流れを感じさせられます。  最近、おもしろいことがありました。娘のインドネシア人の友人が来日したとき、行きたいところとして真っ先にあげたのは、世田谷区にあるカフェの名前だったそうです。それは昨年日本で放送された、聴覚障がい者の恋愛を描いたテレビドラマのロケ地でした。日本における手話の文化が、外国の地にまで波及していることに驚かされました。  ただ、そのような広がりのなかで、社会は聴覚障がい者にとって安心で暮らしやすいものになったかといえば、そうでもありません。例えば、コロナ禍におけるマスクの着用。聞こえない人たちは相手の表情や口の動きを見て話を理解しています。この数年間、多くの聴覚障がい者は、コンビニエンスストアでも駅でもいわれていることがよくわからず、ストレスを感じる日々を送っています。せめて一度マスクを下げて顔を見せたり、筆談をしてくれると助かります。また、聴覚障がい者をサポートする「聴導犬」は、盲導犬と等しく法律に定められた障がい者補助犬であるにもかかわらず、認知度が低く、多くの宿泊施設や飲食店で入店を拒まれるケースを未だに見聞きします。  では、聴覚障がい者と話をする場合、具体的にどのような方法を取ったらよいのでしょうか。もちろん、聴覚障がい者といってもコミュニケーション手段はまちまちです。補聴器を使う人、筆談を利用している人など。前述のドラマでは話したことばを瞬時に文字に変換するという便利なアプリを使うシーンも登場しました。相手にとって一番わかりやすいものを選ぶことが大切ですが、多くの聴覚障がい者にとって、もっとも楽なコミュニケーション手段のひとつは、やはり手話だといわれています。  例えば、日本語では「コンビニの前」、つまり位置関係としての「前」と、「寝る前」、つまり時間軸における「前」は同じ語彙です。しかし手話では、前者は手を前に出す動作で、後者は手を後ろに動かす動作ですので、語彙としてはまったく異なるのです。勘違いされがちなことですが、日本語と手話は異なる語彙・文法を持つ言語ですので、聴覚障がい者は文字に書かれた日本語を頭の中で一度手話に翻訳しなければなりません。ですから、私はみなさんにぜひ手話を学んでほしいと思っています。  その手話学習に関して二つのアドバイスをさせてください。一つめは「あまりむずかしく考えない」ということです。多くの人は手話をむずかしい言語だと思っています。もちろん、一つの言語を習得するには時間がかかります。しかし視覚言語である手話は、見てわかるという特徴があります。例えば、左腕にはめた腕時計を指さしてください。それは「時間」という手話になります。堅苦しく考えず、まずは身近なものの手話から覚えていきませんか。ちょっとした身振りでも案外通じるものです。  アドバイスの二つめは、「手話検定試験にチャレンジしましょう」です。何かを続けるモチベーションを維持するためには、身近な目標があるとよいですね。「手話通訳技能認定試験」という手話通訳士試験もありますが、それは将来のこととして、まずは手話検定を目ざしてみませんか。社会人になっていまさら試験は受けたくないという方のお気持ちは、もちろんわかります。しかし、例えば「手話技能検定6級」でしたら、学習期間は3カ月間、覚える単語は100個だけです。3カ月間、1日1単語覚えるのなら、なんとかなりそうですよね。試験はWebでも受けられますが、ぜひ一度試験会場にお越しください。小学生からシニアの方までいろいろな年齢層の方が手話を学ばれていることが実感できると思います。  手話を学ぶことは、障がいのある人たちのためだけでなく、みなさん自身にも恩恵をもたらしてくれるものです。例えば、手話教室で真っ先に教わるのは「相手の目を見る」、つまり、アイコンタクトの大切さです。視覚言語はきちんと相手を見るということがなければ成立しないのです。次に、手話を表すときには手の動きだけではなく表情豊かにともいわれます。もし、あなたが「おいしい」という手話を表しても、表情がともなわなければ相手には「まずい」と受けとめられてしまいます。また日本語ではあまり主語をいいませんが、助詞表現のない手話では「私」や「あなた」などの主語をはっきり伝えます。さらに手話では、遠回しの表現や二重否定はなかなか通じません。相手に伝わりやすい話し方の工夫も必要です。電車に乗るとき、聴覚障がい者は、あなたの隣ではなく向かい側の席に座ります。その方があなたの顔と手がハッキリ見えるからです。  つまり、手話を学べば、結果的に表情、コミュニケーション力、異文化への理解、思いやりの気持ちといったあなた自身の総合力も高められるのです。みなさんの手話学習が全国に約34万人いるという聴覚障がい者を支え、同時に、みなさんご自身の成長と幸福につながっていくことを願って、ペンを置かせていただきます。ありがとうございました。 谷千春 (たにちはる)  手話通訳士。NPO手話技能検定協会副理事長。日本社会事業大学講師。  1960(昭和35)年、東京生まれ。高校生のときに手話に出会う。福祉系専門学校を卒業後、東京都手話通訳派遣協会(当時)で手話通訳士としての活動を始める。その後、イギリス手話を学ぶために英国留学。帰国後はフリーの手話通訳士として、NHK手話ニュースキャスター、テレビ手話講座の講師などを務める。また、イギリス手話の技能を活かし、国際会議での手話通訳や、国内における外国人聴覚障がい者の研修講師なども担当する。『手で笑って手で泣いて−手話で社会をつなぐ』(2005年、旬報社)など著書多数。趣味は、落語、ワイン、ヨット。 ★本誌では通常「障害」と表記しますが、谷千春様のご意向により「障がい」としています 【P4-9】 職場ルポ 一人ひとりを多能工化、専門機械の生産支える ―ふぁみーゆツダコマ株式会社(石川県)― 機械機器メーカーの特例子会社では、社員それぞれが多種多様な部品の組立てや補助作業を担当しながら、多能工化とスキルアップを実現している。 (文)豊浦美紀 (写真)官野貴 取材先データ ふぁみーゆツダコマ株式会社 〒921-8031 石川県金沢市野町(のまち)5-18-18 (津田駒工業株式会社本社敷地内) TEL 076-244-9101 FAX 076-244-9253 Keyword:知的障害、身体障害、特別支援学校、機械組立、多能工、ジョブコーチ POINT 1 年1回程度の作業ローテーションで多能工化を図る 2 メモリーノートや不良防止活動などで、不良件数は年間10件未満に 3 週報や社内イベントを通して家族とのつながりも 繊維機械など60カ国以上に輸出  石川県金沢市に本社を置く「津田駒(つだこま)工業株式会社」(以下、「津田駒工業」)は、1909(明治42)年創業の繊維機械(織機)・工作用機器メーカー。県内3カ所に工場があり、織機の超高速ジェットルームなどを60カ国以上に輸出している。従業員数は約840人だ。  津田駒工業が2011(平成23)年4月に設立し、同月に特例子会社として認定された「ふぁみーゆツダコマ株式会社」(以下、「ふぁみーゆツダコマ」)は、フランス語のFamille(ファミーユ:家族)から名づけられた。親会社からの出向スタッフ3人を含めた全17人のうち、障害のある社員は12人(身体障害2人、知的障害10人)、親会社の津田駒工業と合わせた障害者雇用率は2.83%(2022〈令和4〉年6月1日現在)だという。  事務系作業にかかわる「庶務グループ」と、機械組立系作業にかかわる「作業グループ」があり、特に親会社の工場生産にかかわる請負業務で作業グループが手がけるものは、製造ライン用ボルトなどのピッキングから繊維機械の構成部品(ASSY:アッセンブリー)組立まで、57種類ほどがある。親会社と同じ敷地内にある職場での作業の様子や工夫、多能工化を含めた人材育成の取組みなどを紹介していきたい。 業務拡大にスタッフ奔走  ふぁみーゆツダコマの設立準備には2年ほどかけたという。地域の特別支援学校と連携し、2年生からの実習生の受け入れを始めて採用につなげてきた。設立時に親会社から出向し、現在は業務課長を務める鈴木(すずき)紀子(のりこ)さんが説明する。  「最初は図面の電子化といった作業が中心でしたが、当時の現場グループ長が、地道に取り組む実習生の様子を見て『製造にかかわる作業もできるかもしれない』と試みたところ、予想以上の結果でした。そこで簡単な部品組立から始め、徐々に業務の幅を広げてきました」  委託元は、ほとんどが親会社の本社工場だ。業務開拓に奔走してきたのは、40年の本社工場勤務後に転籍してきたシニアスタッフの崎(さき)喜博(よしひろ)さんと、2015年から出向し、作業グループ長を務めている山田(やまだ)嘉幸(よしゆき)さんだ。  崎さんは「障害のある社員たちのキャパシティと、工場側の生産台数の波を見ながら、『この作業ならできます』と打診したり、いったん試して検証させてもらったりして少しずつ業務を増やしてきました」という。山田さんも、親会社の部品組立部門での経験や人脈を活かしつつ「多少の危険をともなう業務でも、障害のある社員が安全に作業できるようさまざまな改善工夫をしています」と話す。  現場で数多くの治具(じぐ)も手づくりしてきた崎さんは、職場の「よきおじいちゃん」的存在として、障害のある社員たちの相談相手も務めている。「親会社にいたときは、どの部下も同じように教えていましたが、ここでは、一人ひとりに合った指導や作業手順などが必要だと気づきました」と明かす。一方の山田さんは、「よきお父さん」的存在として社員を叱咤激励する役目を自任し、「直してほしいところは、地道にいい続けることも大事です」と語る。ちなみに鈴木さんは、自ら「お母さん的存在です」と紹介。職場では、作業の下準備や障害のある社員の精神的なフォローが大きな役目だそうだ。  作業グループの出向スタッフとして昨年、初めて20代の若手が加わった。本島(もとじま)稜丸(りょうま)さんは、親会社の組立課で6年の経験がある。ふぁみーゆツダコマでは年上の障害のある社員が多いことから、どう対応したらよいのか悩んだが、少しずつ指示や注意をすることに慣れてきたそうだ。自身の変化についても語ってくれた。  「障害のある人への見方が変わりました。ここで一緒に働くようになり、『こんなこともできるんだ』、『こんなふうに話すんだ』と気づくことが増え、視野が広がりました」 ローテーションで多能工化  57種類もの業務を請け負う作業グループでは、年1回程度の作業ローテーションを軸に、より多くの障害のある社員が数多くの作業を担当できるよう多能工化を図っている。崎さんは「親会社で手がけるのは専門機械なので、特殊な小ロットの部品が必要です。部品の組立や補助作業も、必然的に多能工化が求められます」としたうえで、「短期間で交替しながら取り組むことで、社員の気持ちがリフレッシュされ、スキルアップにもつながります」と説明する。  障害のある社員が担当する業務は、一人あたり年間6種類前後。優先順位もつけてバランスよくマスターしていけるよう、うながしている。崎さんは、「業務の幅を広げることがむずかしい社員は、できる作業の“質”を上げていきます。私でもかなわないほど上達した社員もいます」と目を細める。  入社12年目の吉田(よしだ)惇一(じゅんいち)さん(30歳)は、昨年11月の作業ローテーションを機に、給油バルブ部品とチューブの接合作業を担当している。「油を供給するためのバルブ接合に必要な部品なので、しっかりと密着させないと油の圧力で吹き飛んでしまう恐れがあります」と詳しく説明してくれた。続けて吉田さんは、「昔やっていた作業を久しぶりにまた担当するときは、いろいろ忘れているので勉強し直します」と明かす。  コロナ禍の影響で請負量が減った時期 には「この機会に新しい作業を覚えよう」と、臨時的な作業ローテーションも実施した。その結果、2月から新しい作業を担当しているのが、吉田さんと同じく入社12年目の山口(やまぐち)真里佳(まりか)さん(33歳)だ。手がけているのは、織機に使われるボビンホルダーの土台補強作業。海外調達した金属ホルダーは、取りつける織機によって土台の補強が必要な場合がある。そこでホルダーをいったん分解し、金属補強プレートを接着剤で貼りつけて乾燥させ、バリ取りをして、再び組み立てるという。山口さんは「接着剤の塗り過ぎに注意し、接着面がずれないようクリップで留めます」と説明してくれた。  ちなみに山口さんは2年前から、実家近くで一人暮らしをしているそうだ。週末には掃除などの家事をヘルパーさんに手伝ってもらっている。「私が自立して生活していることで、両親も安心しています」とのことだ。 難易度の高い組立作業も  近年は、作業グループが請け負う作業も難易度が上がっている。その一つが2年前から始めた「集中給油チューブASSY」の組立作業だ。以前はチューブのカットと潤滑油を入れこむ作業だけを請け負い、その間に行う組立作業は本社工場の社員が行っていた。あるときその社員が定年退職することになったことから、ふぁみーゆツダコマに白羽の矢が立った。  課題は、複雑な組立作業や仕様を、どのように障害のある社員に覚えてもらうかだった。山田さんたちは作業を二つに分解し、細かい仕様が書きこまれていた図面イラストを簡略化して作業場に掲示した。崎さんは「チューブを束ねる順番を決めるなど、ちょっとしたルールをつくることでチューブ選びの間違いを防いでいます」と説明する。この組立作業を請け負うことで、本社工場での新たな人員確保や部品運搬の往復が必要なくなるなど、Win-Winの結果になったという。  作業を担当する社員は現在3人。この日は入社11年目の岩中(いわなか)貴幸(たかゆき)さん(29歳)が黙々と作業していた。織機の仕様によって接合場所が異なる十数本のチューブを、数本ずつ束ねながら完成させていく。岩中さんは、「これは簡単なほうで、もっと複雑に入り組んだASSYもあります。間違えないよう束ねる順番を工夫しています」と説明する。  これまでいくつもの作業を担当してきた岩中さんは、「仕事はすぐに覚えられるけれど、すぐに忘れてしまいます。注意されたことはメモを取るようにしています」と話す。今後の目標について「新しい社員が入ってきたとき、先輩として何でも教えられるような存在になりたいです」と話してくれた。 それぞれ一人で作業  ほかにもこの日、作業グループで仕事に打ち込んでいた障害のある社員の様子を紹介したい。  入社12年目になる朴木(ほおのき)隆浩(たかひろ)さん(32歳)は、この日は「沈みプラグ」と呼ばれる小さな部品にシールテープをすき間なく重ならないよう器用に巻きつけていた。崎さんによると朴木さんは、根気があって同じ作業をずっとやり続けることが得意だそうだ。朴木さんは「むずかしい作業は覚えるのに時間がかかるので、スタッフの人たちに相談しながらやっています」と話す。一方で、背後にあったチューブを束ねやすくした治具を指さして「自分が改善提案しました」と教えてくれた。趣味はギターだそうだ。  立ちながらチューブのカット作業をしていたのは、入社7年目の鈴木(すずき明里(あかり)さん(25歳)。業務課長の鈴木紀子さんの娘さんでもある。紀子さんは、「明里だけ特別にならないよう気をつけてきました。朝は一緒に車で自宅を出ますが、彼女は途中で降りて電車通勤をしています。職場では私のことは『鈴木さん』と呼び、課長と社員の関係です」と話す。一方の明里さんは、母親と同じ職場であることについて「安心します」と明かす。同僚から親子関係についていわれることもないそうで、「毎日できる仕事を一生懸命にやっていきたいです」と教えてくれた。  2022年に入社したばかりの田中(たなか)尚生(なおき)さん(19歳)は、特別支援学校在籍中の実習で「先輩たちがやさしかったので、入社を志望しました」という。いま担当しているのは、金属製のワッシャーにネジとナットをセットする作業で、近くの棚に並んだ箱から英数字9桁ほどの型番がついたナットなどを選び出してくる。「型番を間違えないことが重要ですが、まだ間違えたことはありません」と話す田中さんは、「今後はいろんな作業に慣れていきたい」と抱負を語ってくれた。 本社工場内の拠点  親会社の本社工場内の一角にも、ふぁみーゆツダコマの作業拠点がある。この日、織機に使われる金属部品にボルトなどを組み込んでいたのは、入社7年目の新崎(しんざき)一路(いちろ)さん(25歳)。これまでに担当した業務は「数えきれないほど」だが、「いろいろな経験ができるのもこの職場のよいところです。一人でできる作業を増やしていきたいです」という。新崎さんは、プライベートでは陸上の短距離競技を続けており、昨年開催された日本ID陸上競技選手権大会にも出場。「自己ベストに近い記録でした。今後も続けていきたいです」と笑顔で語ってくれた。 不良品は年間10件未満に  作業グループの社員は、職場では常に「メモリーノート」を手元に置いている。朝礼前に当日の体調や睡眠時間を記入し、作業中は、担当する作業内容(製番など)を記入しながら確認しているそうだ。記入表の下には「今日注意されたこと、気をつけること」を書く欄もある。山田さんは、「実際は、いろいろ書き忘れていることも多いのですが、1日の流れを客観的に確認すること自体が大事です」と説明する。  また、障害のある社員たちの安全教育やスキルアップのために月1回、就業時間内の約1時間を使って「KYK(危険予知活動)」と「FBK(不良防止活動)」も実施している。親会社での同様の活動をアレンジした内容だ。KYKでは、数人ずつグループごとに、提示された作業風景イラストから「危険な部分」を見つけ出し、対策を考える。FBKでは、次工程で発見された不良や、作業中の自主検査で見つけた不良の「原因」について、社員から意見を求め「なぜそうなったか」、「そうならないためには次からどうしたらよいか」を自ら導き出してもらい、全員と情報共有するという。  こうした活動や日々の積み重ねが奏功し、以前は年20件ほど確認されていた不良件数も、10件未満に抑えられるようになった。山田さんは「最初はスタッフが全部品をダブルチェックしていましたが、数年で障害のある社員に任せられるようになりました。目標の年間5件におさまった年もあります」と手ごたえを語る。  本社の地下フロアにあるショールームも見せてもらった。最先端の革新織機「エアジェットルーム」は、空気の吹き出す力でヨコ糸を飛ばしながら織り上げる仕組みだ。鈴木さんが話す。  「目に見える所にも隠れた所にも、障害のある社員が組み立てた部品が使われています。たまに勉強会と称して社員たちを連れてきて、自分たちがどんなに重要な部品をつくっているかを再認識してもらっています」 個人ファイルで情報共有  鈴木さんは2年前、障害のある社員一人ひとりのさまざまな情報をまとめた個人ファイルを全員分作成した。「当時、社員の一人が精神的に不安定な時期が続いたとき、スタッフみんなで対応しやすいよう情報共有のためにつくりました」  ちょうど少し前に、企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)の養成研修を受けた鈴木さんは、そこで学んだことも参考に作成したそうだ。スタッフだけでなく社長にも目を通してもらうという。  毎週金曜日には障害のある社員の家族あてに週報を送り、社員が現在どんな仕事に取り組んでいるか、会社の状況なども含めて知らせている。「ちょっとした連絡事項や家庭での様子などを書いて送り返してくれる親御さんもいて、ほどよい連携ができています」と鈴木さん。毎年夏には社員の家族らを招き、本社敷地内でバーベキューを開催してきた。最近はコロナ禍で中止になっているが、今年は再開したいという。 本社内に庶務グループ  津田駒工業の本社にある総務庶務関係部署の一角には、ふぁみーゆツダコマの庶務グループがあり、現在3人が在籍している。名刺印刷から社内書類の印刷・封入、株主総会向けの備品準備、電話対応まで多種多様な事務系の業務を一手に引き受けている。  ここで入社13年目になる車いすユーザーの城下(しろした)由香里(ゆかり)さんと、同僚の松橋(まつはし)珠代(たまよ)さんは長いつき合いだ。城下さんが「松橋さんには車いすでは困難な作業も率先して助けてもらっています」というと、すかさず松橋さんが「城下さんは、それ以外の仕事をしていますし、何かしてあげているという感覚はまったくありません」と笑顔で返していた。  本社内で唯一の車いすユーザーだという城下さんは「車通勤ですが、雪が降った日などは屋根のある玄関前に駐車させてもらうなど配慮してもらい、たいへん助かっています」と話す。本社の廊下などを移動するときには、車いすの音が静かすぎて歩行中の社員とぶつかりそうになることがあるため、あえて大きめの鈴をつけている。ちなみに城下さんは、プライベートでは電動車椅子サッカーチームに所属し、昨年の全国大会では約30チームのなかで準優勝に輝いたそうだ。 現場の生産を支える戦力として  2023年2月下旬に、ふぁみーゆツダコマの代表取締役になったばかりの北野(きたの)浩司(こうじ)さんにも話を聞いた。北野さんは親会社の取締役、管理部門統括、総務部長なども兼任。製造現場のこともよく把握しているため、ふぁみーゆツダコマにとっては大きな支えでもある。  「入社以来ずっと製造畑を歩み、特に本社工場の織機部門に長くたずさわっていました。現場で見かけていたふぁみーゆツダコマの社員は、真面目な仕事ぶりと元気のよさが印象的でした。同じ津田駒工業の仲間として、互いに刺激になっていると思います」  親会社の取締役になってから何度か視察したときは、複雑な部品の組立作業をこなす障害のある社員の姿に感心したそうだ。  「本社の製造現場とスタッフがうまく連携し、実際に請け負うための作業や治具関係の工夫を重ねてきた結果だと実感しました。これは親会社でも続けてきた創意工夫の社風の現れだと自負しています。社員のスキルも相当に上がってきており、間違いなく津田駒工業の生産現場を支える大事な戦力になっています」  北野さんは今後、ふぁみーゆツダコマの人員増を含めて規模を大きくしていきたいと明かした。  「本社から7qほど離れた野々市(ののいち)工場にも拠点をつくり、工作機械部門の作業請負など、業務の幅を広げていきたいと考えています。障害のある社員の年齢層が偏りつつある課題もあり、若い人を採用しながらスキルの継承も考えていく必要もあります。いずれにせよ、これからも『ふぁみーゆ』の名前の通り、家族のような温かい職場で、社員一人ひとりが津田駒工業を支えていける存在になるよう引き続き努力していくつもりです」 写真のキャプション ふぁみーゆツダコマ株式会社の作業エリア 業務課長の鈴木紀子さん シニアスタッフの崎喜博さん 作業グループ長の山田嘉幸さん 作業グループで支援にあたる本島稜丸さん 作業グループの吉田惇一さん 吉田さんは、バルブとチューブの接合作業を担当している 作業グループの山口真里佳さん ボビンホルダーに接着剤を塗布する山口さん 作業グループの岩中貴幸さん 集中給油チューブASSYを組み立てる岩中さん 作業グループの朴木隆浩さん 沈みプラグにシールテープを巻きつける朴木さん 作業グループの鈴木明里さん 自動切断機を使ってチューブをカットする鈴木さん 簡略化した図面イラスト。チューブを束ねる位置が図解されている 作業グループの田中尚生さん 部品にネジやナットを取りつける田中さん 作業グループの新崎一路さん 新崎さんは、本社工場内の一角で作業を行っていた 津田駒工業株式会社が製造する大型織機「エアジェットルーム」 庶務グループで働く城下由香里さん(左)と松橋珠代さん(右) 代表取締役の北野浩司さん 【P10-11】 クローズアップ 障害者職業能力開発校の活用術 第2回 〜社員個々の能力を発揮して活躍してもらうには〜  障害者職業能力開発校では、在職中の障害のある社員への職業訓練を行っているところもあります。障害のある社員が長く活躍できるように、障害者職業能力開発校を活用してはいかがでしょうか。そこで第2回は、視覚障害のある休職者が職場復帰を目ざすための職業訓練についてご紹介します。 はじめに  国立職業リハビリテーションセンター(以下、「国リハ」)および国立吉備(きび)高原職業リハビリテーションセンター(以下、「吉備リハ」)では、求職者の職業訓練だけではなく、休職者の職場復帰を目ざした職業訓練(以下、「職場復帰訓練」)、在職者のスキルアップを目ざした在職者訓練も実施しています。  「休職中の障害のある社員の復職をどうしたらよいか」と悩んでいる人事担当者もいるのではないでしょうか。国リハや吉備リハの職場復帰訓練は、身体障害、高次脳機能障害、難病の方を対象に行っていますが、今回は、最近問合せが増えている視覚障害者の職場復帰訓練についてご紹介します。 視覚障害者の職業訓練  国リハおよび吉備リハでは、視覚障害者を対象とした事務系の訓練コース(※)を設置しています。職場復帰訓練に限らず、視覚障害者がパソコンを中心とした事務系職種で必要なスキルを習得する場合、視覚障害者用支援機器やソフト(以下、「支援機器」)を活用します。特に重度視覚障害者(障害等級1・2級)の場合、支援機器の使用が必須となることも多く、支援機器の使用経験がない、あるいは少ない場合には習熟に時間を要すことがあり、訓練目標や訓練期間設定の際に留意が必要です。 職場復帰訓練  職場復帰訓練は、障害の進行や事故等により受障し、休職している障害者が職場に復帰するために必要な技術・知識を習得する訓練で、訓練期間は標準で半年間です。短期間でスムーズな復職につなげるため、企業や対象者と相談しながら、復帰後の職務を想定した実践的な訓練に取り組むことが重要な点といえます。  そのため、職場復帰訓練を行うにあたって、国リハや吉備リハの担当者が企業に訪問して職場環境や業務内容を確認するほか、企業の担当者が職業訓練の様子を見学して、視覚障害者が働く際に必要な支援機器や操作状況を、直接確認する機会を設けています。事前に確認しておくと業務設定、作業切り出しの検討をスムーズに進めることができます。  また、視覚障害者が働く際の課題として作業指示のむずかしさがあります。そこで訓練期間中は、復職時に想定している業務や環境で支援機器を使用して事前に課題を発見し、対応策を検討することにしています。さらに、企業担当者が訓練対象者の作業の様子を実際に見ることによって、新たな仕事を任せる際の判断材料にもできます。  なお、社内専用システムを活用する場合など、訓練場面で実際の職務の再現がむずかしいこともありますが、可能なかぎり実際の職務に近い環境での訓練を目ざしています。  復職時にどの程度の職務を遂行できるかは、対象者のパソコンスキルによっても異なります。入所前に現状の作業能力および技能習得の可能性を把握し、職業訓練の計画を立てたうえで、国リハもしくは吉備リハ、企業、対象者間で目標を確認します。  復職後は、職業訓練を担当した職員が職場を訪問し、職場環境を整えるための相談も行っていますので、支援機器の導入などについても安心して検討することができます。  視覚障害者の復職には、視力や見え方の変化、進行により、業務内容は変えずに支援機器を活用する場合と、まったく新しい業務に従事する職種転換の場合があります。  前者の場合、パソコンを中心とした作業が多いことがほとんどで、支援機器の操作習得を中心にカリキュラムを設定し、より短期間の訓練での復職を目ざしたり、支援機器を活用して、訓練中に元の業務に取り組んだりしています。  後者の場合、対象者の多くは、文字入力、インターネット検索程度のパソコンスキルであり、支援機器の使い方のほか、パソコン操作そのものの習得が必要となってきます。また、復帰後の職務に合わせたピンポイントな訓練がより効果を発揮します。  なお、中途の視覚障害者の場合は、仕事だけでなく日常生活でも変化が大きいため、職場復帰訓練受講の前に歩行訓練などの生活訓練を受けることで、通勤方法などのイメージもわき、よりスムーズな職場復帰訓練や復職につながります。歩行訓練や日常生活スキルを向上させる訓練を実施している機関の情報について、対象者が利用している医療機関にご相談することをおすすめします。 職場復帰訓練の事例  国リハの事例を紹介します。 事例@ 支援機器の活用に向けた訓練  入力を中心としたパソコン作業を担当していましたが、視力低下にともない対象者自身が離職を検討していた事例です。それまで困っていなかった通勤などの移動にも不安が生じたため、まずは別の支援機関で歩行訓練を受けていたところ、国リハの情報を得て、人事担当者から国リハへ相談がありました。 事例A 担当業務の縮小による職種転換に向けた訓練  新型コロナウイルスの感染拡大により、 ヘルスキーパー部門が閉鎖となり、職種転換が必要となった事例です。職種転換のため、東京障害者職業センターなどの支援機関に相談し、国リハを紹介された事例になります。  本事例では、企業が用意した訓練課題に取り組むだけでなく、課題終了後に企業担当者にメールで提出するなど、実際の職務に近いスキームで訓練を行いました。  今回の2事例では、拡大読書器や画面拡大ソフト、画面読み上げソフトを活用しました。また企業に訓練指導員が訪問し、支援機器の設定なども行いました。  職場復帰訓練では、こういった支援機器のほかにも、オペレーティングシステムの設定、ショートカットキーなどのパソコンの基礎的な内容も学びます。オペレーティングシステムに備わっている拡大機能やマウスポインタ―の設定機能、画面コントラストの設定機能などのアクセシビリティ機能を変更することで、業務の継続が可能なこともあります。  まずは国リハまたは吉備リハを見学し、具体的な職場復帰の進め方を知ることが一番です。  障害者の新規採用だけでなく、在職中の障害者に活躍してもらいたいという場合も、障害者職業能力開発校を活用することをおすすめします。 図 視覚障害者の復職に向けた訓練の流れ 支援ソフト、機器の使い方 Windowsの設定 事務処理に必要な技能・知識の習得 復帰後の職務を想定した訓練 業務の切り出し等事業主の協力が不可欠 フォローアップ 指導員が訪問しての支援 事例@ 支援機器の活用に向けた訓練 障害の進行・視力低下による離職の検討 ↓ 移動への不安から歩行訓練を受ける ↓ 支援機関から情報取集 ↓ 国リハ見学 ↓ 職場復帰訓練 □支援ソフトの活用による正確性の維持  ・画面拡大ソフト  ・画面読み上げソフト 等 □ショートカットキーなどのキーボード操作の習得による作業スピードの向上 □実際の業務で使用するフォーマットを活用した訓練 企業からの提供 スムーズな復職 事例A 担当業務の縮小による職種転換に向けた訓練 ヘルスキーパー部門の閉鎖 職種転換のための社内サポートの限界 ↓ 東京障害者職業センターなどの支援機関で職種転換の相談 ↓ 国リハへの相談・見学・体験 訓練のイメージが具体化 ↓ 職場復帰訓練 □企業が訓練課題を用意  ・インターネットからの情報収集作業  ・PDF化作業  ・データ集計作業 等 □作業後は企業にメールで提出 実際の業務内容やスキームに近い訓練 ↓ スムーズな復職 ※「視覚障害者情報アクセスコース」(国リハ) https://www.nvrcd.jeed.go.jp/person/training/business/index.html 「ITビジネスコース」(吉備リハ) https://www.kibireha.jeed.go.jp/course/systems.html ★12ページで、国リハおよび吉備リハの訓練生募集のお知らせを掲載しています。ぜひご覧ください! 写真のキャプション (支援機器の例)画面読み上げソフトと点字ディスプレイ 【P12-14】 JEED INFORMATION JEED インフォメーション 〜高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)からのお知らせ〜 国立職業リハビリテーションセンター 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 訓練生募集のお知らせ 〜障害のある方々の就職に必要な職業訓練や職業指導を実施しています〜 入所日など  国立職業リハビリテーションセンター、国立吉備高原職業リハビリテーションセンターでは、年間約10回の入所日を設けています。応募締切日や手続きなどの詳細については、お気軽にお問い合わせください。 ○遠方の方については……  国立吉備高原職業リハビリテーションセンターでは、併設の宿舎が利用できます。国立職業リハビリテーションセンターでは、身体障害、高次脳機能障害のある方、難病の方は、隣接する国立障害者リハビリテーションセンターの宿舎を利用することができます。 お問合せ 国立職業リハビリテーションセンター  埼玉県所沢市並木4-2  職業評価課  TEL:04-2995-1201  https://www.nvrcd.jeed.go.jp 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター  岡山県加賀郡吉備中央町吉川7520 職業評価課  TEL:0866-56-9001  https://www.kibireha.jeed.go.jp/ 募集訓練コース 国立職業リハビリテーションセンター 訓練系 訓練コース メカトロ系 機械CADコース 電子技術・CADコース FAシステムコース 組立・検査コース 建築系 建築CADコース 情報系 DTPコース Webコース ソフトウェア開発コース システム活用コース 視覚障害者情報アクセスコース ビジネス系 会計ビジネスコース OAビジネスコース オフィスワークコース 物流系 物流・資材管理コース 職域開発系 オフィスアシスタントコース 販売・物流ワークコース サービスワークコース 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 訓練系 訓練コース メカトロ系 機械CADコース 電気・電子技術・CADコース 組立・検査コース 資材管理コース ビジネス情報系 OAビジネスコース 会計ビジネスコース システム設計・管理コース ITビジネスコース 職域開発系 事務・販売・物流ワークコース 厨房・生活支援サービスワークコース オフィスワークコース 物流・組立ワークコース サービスワークコース ○訓練の期間は……  「システム設計・管理コース」、「ITビジネスコース」(ともに国立吉備高原職業リハビリテーションセンター)は2年間、そのほかの訓練コースは1年間の訓練です。 ○対象となる方は……  「視覚障害者情報アクセスコース」(国立職業リハビリテーションセンター)、「ITビジネスコース」(国立吉備高原職業リハビリテーションセンター)は、視覚障害のある方を対象にしています。そのほかの訓練コースの詳細はホームページをご参照ください。 事業主のみなさまへ  両センターでは、障害のある方の採用をお考えの事業主と連携し、個々の事業主の方のニーズや訓練生の障害特性などに応じた、特注型のメニューによる職業訓練を行っておりますのでご活用ください。ご利用いただく事業主の方には次のような支援も行っております。 ■障害特性に応じた特別な機器・設備の配備や作業遂行に関する支援方法のアドバイスなど、円滑な受入れに関する支援 ■雇入れ後の職場定着に向けた技術面でのフォローアップとキャリアプランづくりのための支援 詳細については…https://www.jeed.go.jp/disability/person/person07.html ◆令和5年度「地方アビリンピック」開催地一覧◆ 各都道府県における障害者の技能競技大会「地方アビリンピック」が下記の日程で開催される予定です。詳細は、「地方アビリンピック」ホームページをご覧ください。 アビリンピック マスコットキャラクター アビリス 都道府県 開催日 会場 北海道 10月 中北海道職業能力開発促進センター 青森 10月下旬〜11月上旬 青森職業能力開発促進センター ほか1カ所 岩手 7月29日(土) 岩手県立産業技術短期大学校 宮城 7月8日(土) 宮城職業能力開発促進センター 秋田 7月5日(水) にぎわい交流館AU 山形 7月5日(水) 山形国際交流プラザ(山形ビッグウイング) 福島 7月8日(土) 福島職業能力開発促進センター 茨城 7月15日(土) 7月16日(日) 茨城県職業人材育成センター 栃木 7月8日(土) 栃木職業能力開発促進センター ほか2カ所 群馬 7月1日(土) 群馬職業能力開発促進センター 埼玉 7月1日(土) 国立職業リハビリテーションセンター 千葉 11月頃 千葉職業能力開発促進センター 東京 2月中旬〜下旬 東京障害者職業能力開発校 ほか1カ所 神奈川 10月21日(土) 10月28日(土) 関東職業能力開発促進センター ほか1カ所 新潟 9月9日(土) 新潟市総合福祉会館 ほか1カ所 富山 7月22日(土) 富山市職業訓練センター ほか1カ所 石川 10月22日(日) 石川職業能力開発促進センター 福井 7月8日(土) 福井県立福井産業技術専門学院 山梨 9月30日(土) 山梨職業能力開発促進センター 長野 7月22日(土) 7月23日(日) 長野職業能力開発促進センター 岐阜 7月1日(土) ソフトピアジャパンセンター 静岡 7月15日(土)ほか1日 静岡市東部勤労者福祉センター清水テルサ ほか2カ所 愛知 6月24日(土)ほか4日 中部職業能力開発促進センター ほか3カ所 三重 7月1日(土) 三重職業能力開発促進センター 道府県 開催日 会場 滋賀 11月25日(土) 近畿職業能力開発大学校附属 滋賀職業能力開発短期大学校 京都 2月10日(土) 京都府立京都高等技術専門校 京都府立京都障害者高等技術専門校 大阪 6月17日(土) 7月1日(土) 関西職業能力開発促進センター ほか2カ所 兵庫 6月17日(土) 7月1日(土) 兵庫職業能力開発促進センター 奈良 7月22日(土) 奈良職業能力開発促進センター 和歌山 7月1日(土) 和歌山職業能力開発促進センター 鳥取 6月29日(木) 鳥取県立福祉人材研修センター 島根 7月8日(土) 島根職業能力開発促進センター 岡山 6月24日(土) 7月1日(土) 岡山職業能力開発促進センター 広島 1月上旬 広島職業能力開発促進センター 山口 10月21日(土) 山口職業能力開発促進センター 徳島 9月16日(土) 徳島職業能力開発促進センター ほか1カ所 香川 未定 未定 愛媛 7月8日(土) 愛媛職業能力開発促進センター 高知 7月1日(土) 7月8日(土) 高知職業能力開発促進センター ほか1カ所 福岡 7月1日(土) 7月8日(土) 福岡障害者職業能力開発校 ほか2カ所 佐賀 1月頃 佐賀職業能力開発促進センター 長崎 7月8日(土) 長崎職業能力開発促進センター 熊本 6月24日(土) 6月25日(日) 熊本職業能力開発促進センター 大分 10月14日(土) 大分職業能力開発促進センター 宮崎 7月8日(土) 宮崎職業能力開発促進センター ほか1カ所 鹿児島 7月8日(土) 7月10日(月) 鹿児島職業能力開発促進センター ほか1カ所 沖縄 7月1日(土) 7月15日(土) 沖縄職業能力開発大学校 ほか1カ所 ※2023年4月10日現在 地方アビリンピック 検索 アクセスはこちら! ・開催地によっては、開催日や種目ごとに会場が異なります。 ・新型コロナウイルス感染症の影響などにより、日程や会場が変更される場合があります。 作品募集 令和5年度 絵画コンテスト 働くすがた〜今そして未来〜 写真コンテスト 職場で輝く障害者〜今その瞬間〜 応募者全員に記念品をプレゼント!  毎年9月1日〜30日は、「障害者雇用支援月間」です。国民のみなさまに障害者雇用への理解と関心を深めていただけるよう、障害のある方々を対象に「働くこと」をテーマとする絵画を募集する「絵画コンテスト 働くすがた〜今そして未来〜」と、「障害のある方の仕事にスポットをあて、障害のある方が働いている姿を撮影したもの」をテーマとする写真を募集する「写真コンテスト 職場で輝く障害者〜今その瞬間〜」を実施しています。優秀作品をもとにポスター等を作成し、全国のハローワーク等に掲示します。 絵画コンテスト ★募集作品  働くこと、または仕事に関係のある内容のもの ★応募資格  障害のある方(プロ以外であること) ★応募部門  小学校の部/中学校の部/高校・一般の部 写真コンテスト ★募集作品  障害のある方の仕事にスポットをあて、障害のある方が働いている姿を撮影したもの ★応募資格  障害の有無は問いません(プロ以外であること) ※部門の別はありません 賞・展示  絵画コンテスト(部門ごと)、写真コンテストで選考を行い、厚生労働大臣賞1点、当機構理事長賞1点、理事長奨励賞数点をそれぞれ選出します。入賞作品は、全国5か所で開催を予定している展示会において展示します。 6月15日(木) 応募締切(消印有効) 詳しくはホームページの募集要項をご覧ください。 https://www.jeed.go.jp/disability/activity/contest/index.html ★過去のポスターや入賞作品などもご覧いただけます。 JEED 絵画写真 検索 お問合せ先 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者雇用開発推進部 雇用開発課 TEL 043-297-9515 Email tkkike@jeed.go.jp シンボルキャラクター“ピクチャノサウルス” (かおはカメラ、つのは絵筆をイメージしています) 【P15-18】 グラビア 「一級家具製作技能士」の活躍 株式会社山ノ木(和歌山県) 取材先データ 株式会社山ノ木 〒641-0036 和歌山県和歌山市西浜1660-284 TEL 073-445-8087 FAX 073-446-0579 写真・文:官野 貴  和歌山県和歌山市に本社、工場を構える株式会社山ノ木は、オーダー家具の設計や制作、施工を行っている。制作にたずさわる社員は6人。そのうち2人の聴覚障害のある社員が、大きな戦力となって働いている。取材に訪れたこの日は、飲食店のカウンターの制作中で、山原耕一さん(50歳)と堀健次さん(40歳)が協力しあいながら、カウンター上部に化粧板を取りつける作業を行っていた。  山原さんと堀さんは、ともに「一級家具製作技能士」の資格を持つ腕利きの職人だ。カウンターは美しい仕上がりが求められるため、職人の技が光る。2人は、手話で打ち合わせを行いながらテンポよく作業を進めていた。ほかの社員とは、手振りや筆談などでコミュニケーションを取る。職人同士の共通認識もあり、簡単な用件であれば身振り手振りで意思疎通ができるそうだ。また、1週間の作業工程表や連絡事項を文書にすることで、伝達事項を正確に伝える工夫がなされている。  カウンターの作業が一段落着くと、2人はそれぞれ別の作業に取りかかった。山原さんは大型の電動工具を使用して板材から必要な寸法の部材を切り出していく。音が聞こえないため、電動工具の異常に気づきにくいが、目視や振動に注意を払うことで、これまでにけがや事故はないという。  一方、堀さんは、幼稚園からオーダーされた本棚の制作。手づくりした治具(じぐ)を活用し、作業を素早く正確に進めていた。オーダー家具や什器は、注文にしたがってつくるため、ていねいな仕事はもちろん、納期に間に合わせるため仕事の速さも求められるのだ。2人はさらに経験を積み重ね、職人の高みを目ざす。 写真のキャプション 協力して化粧板の長さを測る山原(やまばら)耕一(こういち)さん(左)と堀(ほり)健次(けんじ)さん(右) カンナを叩き、刃を調整する ノコギリで切った化粧板をカンナで仕上げる 化粧板の角がピタリと合った。技の見せ所だ 図面を検討する山原さん オーダーにしたがい、必要な部材を書き出す 寸法を測り、印をつける。ロスを少なくするのも職人の技だ 昇降盤という電動工具で板材を切断する。慎重に作業を進める 器具を使い、化粧板を固定する堀さん 電動ドリルやドライバーを使い、部材を手際よく組み立てる 仕上がりをチェック。子どもが使用するため、角を丸くしている 手話でコミュニケーション 休憩中の一コマ。健聴者とのコミュニケーションでは、大きな声であれば聞き取れる山原さん(中央)が、堀さん(右)に手話で伝える場面も 【P19】 エッセイ 第2回 ろう者である想い 〜手話は言語〜 忍足亜希子 忍足亜希子(おしだりあきこ)  俳優。1970(昭和45)年生まれ。北海道千歳市出身。銀行勤務を経て、1999(平成11)年、映画『アイ・ラヴ・ユー』で日本最初のろう者主演女優としてデビュー。同作で毎日映画コンクール「スポニチグランプリ新人賞」を受賞。以後、俳優業以外にも講演会や手話教室開催など、多方面で活躍中。  2021(令和3)年には、夫で俳優の三浦剛との共著『我が家は今日もにぎやかです』(アプリスタイル刊)を出版。  私にとって欠かせないコミュニケーション方法のひとつは「手話」です。  昨年、映画『コーダあいのうた』や、ドラマ『silent』などで手話が再び注目を浴びました。  しかし、昔のろう者は、ろう学校では手話は禁止、聴者文化に合わせるために口話(声を出して話す)で教育を受けてきました。手話が「言語」として認められたのは、2013(平成25)年10月で、鳥取県で全国初の「手話言語条例」が制定されました。認めてもらえるまでかなりの時間がかかりましたが、私自身も「手話は大切な言葉である」と誇りを持っていますし、素直にうれしかったです。  現在は、幼稚園、保育園、小学校や、ドラマや映画、SNSなどを通して知ってもらえる機会も増えました。  このように、少しずつ環境はよくなりつつありますが、実際にはまだまだだと感じます。  例えば、私の連絡手段はメールやLINEが主です。スマートフォンはとても便利になりましたが、ろう者にとっては、まだまだ視覚的情報は少ないように思います。  2011年3月11日に東日本大震災が起きたとき、津波警報が発令されましたが、視覚的情報としての伝達はなかったため、亡くなったろう者の方もいたと聞いています。  ろう者には、視覚的情報・情報保障・合理的配慮が必要です。今後も課題はたくさんあるのではないでしょうか。声以外にも筆談、空書き、ボディランゲージ、スマートフォンで文字を打つなど、コミュニケーション手段はいろいろあります。大切なのは「伝える・伝え合う」こと。  私は、ろう者としての誇りを持って、手話を大切にしています。そして、ろう者のコミュニティも同じく大切にしたいし、聴者とのかかわりも社会で生きていくうえで必要であり、ろう者と聴者が共存できるような、だれひとり取り残されない社会にしたいと思っています。  家族とのコミュニケーションは、手話で話すようにしています。同じ言葉で話していた方がみんなで笑えるし、一緒に楽しめます。そんなふうに、「孤独な人をつくらない」という思いを大切にしています。  映画やドラマをきっかけに再び手話がブームになっているので、少しでも手話に興味を持っていただけるとうれしいですが、「ろう者に会う機会がない」という話をよく聞きます。  日本では、人口約1億2692万人(※1)に対して、ろう者は約34万人(※2)と推計されています。出会う機会は少ないかもしれませんが、手話サークル、手話講習会、スターバックスのサイニングストアなどに行けば必ず会えます。会ったときは構えないで、臨機応変に対応してもらえたらなと思います。  筆談でもいいのですが、せっかくだから「手話はどうやるの?」と遠慮なくどんどん聞いて、少しでも手話を知るよいきっかけにしてください。  「ありがとう」、「お疲れ様でした」、「また会いましょう」など、少しでも手話を楽しんでいただけるとうれしいです。もちろん、どなたでも喜んで手話で大歓迎します。 ※1 総務省統計局「平成28年12月1日現在人口推計」 ※2 厚生労働省「平成28年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)」(調査の時期:平成28年12月) 写真のキャプション 手話で「ありがとう」と話す忍足亜希子さん 【P20-25】 編集委員が行く 知的障害のある学生の学校から職場への移行支援 横浜国立大学教育学部附属特別支援学校(神奈川県) 筑波大学大学院 教授 八重田 淳 取材先データ 横浜国立大学教育学部附属特別支援学校 〒232-0061 神奈川県横浜市南区大岡2-31-3 TEL 045-742-2291 FAX 045-743-4746 URL http://fuyou.ynu.ac.jp 編集委員から  学校から職場への移行は、学生自身が早い時期から好きで得意なことを見つけ、教育者がそれを伸ばし、支援者が本人に適した仕事につなげることによって実現する。特別支援学校における進路指導者には、学生の卒業後のキャリア形成にかかわる「移行」の役割が求められる。今回、就職前の大事な時期である高等部に対する「キャリア」の授業を新設した横浜国立大学教育学部附属特別支援学校における、知的障害のある学生の学校から職場への移行の取組みをご紹介する。 写真:官野 貴 Keyword:特別支援学校、進路指導、移行支援、キャリア形成、知的障害、余暇 POINT 1 特別支援教育はキャリア形成の基本 2 企業就労を含めた多彩な進路選択を 3 進路指導は「知る」、「やってみる」、「決める」の流れで はじめに  「やさしい心 じょうぶな体 がんばる力」を教育理念として掲げる横浜国立大学教育学部附属特別支援学校(以下、「横国・特支」)は、知的障害のある児童生徒62人(小学部16人、中学部20人、高等部26人)に対し、42人の教職員が一貫した特別支援教育を提供している(2022〈令和4〉年度)。校長のコ永(とくなが)亜希雄(あきお)先生(訪問時)は、横浜国立大学教授を併任されている。副校長の羽賀(はが)晃代(あきよ)先生、主幹教諭の鈴木(すずき)学(まなぶ)先生(以前は進路指導担当)、進路指導担当の吉岡(よしおか)敬信(あきのぶ)先生、小学部教諭の宮野(みやの)雄太(ゆうた)先生、高等部主事の中武(なかたけ)愛(あい)先生のほか、おもな職員は、県や市の教育委員会の人事交流として派遣された方々で構成されている。今回の取材(2023年2月28日時点)では、特に進路指導担当の吉岡先生から、「知的障害のある高等部学生をどのようにして就職に結びつけているのか」という取組みについてお話をうかがうことができた。 教育・研究・人材育成という3本柱について  横国・特支は、「教育・研究・人材育成」を3本柱とし、1979(昭和54)年に知的障害のある子どもたちのための特別支援学校(当時は、附属養護学校)として開校された。横浜市営地下鉄の弘明寺(ぐみょうじ)駅を降り、横国・特支の玄関まで徒歩で約5分。通学に便利な場所であり、同校専用の大きなグラウンドもある。玄関を入ると、進路指導担当の吉岡先生が笑顔で出迎えてくださった。  校長室に案内され、最初に目に入ったのは、冒頭の「やさしい心 じょうぶな体 がんばる力」という横国・特支の教育理念である。校長のコ永先生は、「この3つが、順番に校歌の1、2、3番の出だしの言葉になっています」と説明してくださった。知的障害のある子どもたちの、こうした「心・技・体」の充実は、教科指導を中心に、多彩な教育活動(校外宿泊学習・運動会・文化祭・修学旅行・校外学習など)を通じて育まれている。  校長のコ永先生は研究者でもあり、ご自身の研究テーマとして「特別支援教育における合理的配慮決定のための合意形成プロセス」や「小・中学校における合理的配慮決定プロセス」などが含まれている。文部科学省科学研究費助成事業の主任研究者などを歴任され、横浜国立大学教授としての教育と人材育成にもたずさわっておられる。まさにご自身が「教育・研究・人材育成」を具現化されているような方だ。コ永先生は、生徒が卒業後も続く「ライフ・キャリア」を強く生きるために、「心・技・体」は欠かせないとおっしゃる。「特別支援教育は、キャリア形成の基本になると思います。卒業後の就職をできるかぎりスムーズに実現し、学生がその後のキャリアを広め、豊かな人生を送ってほしいと願っています」。続けてそうおっしゃる先生は、筑波大学大学院で生涯発達科学の博士号を取得されており、「人は人生をかけて発達する」という生涯発達科学の知見を教育の現場に活かすべく、日々、この「教育・研究・人材育成」に奮闘されている。  ここ数年、特に教員の長時間勤務が問題視されている。校長としての管理業務のほかに、研究、そして横浜国立大学教育学部の学校教員養成課程(特別支援教育)で授業をされているコ永先生も例外ではないだろう。  「校長先生も長時間勤務状態でさぞかしたいへんだと思います。吉岡先生のような進路指導教員も、さらに多ければ、職場実習なども手厚くなるのでしょうか」とたずねた。コ永先生は柔らかな笑顔で、「教員数だけの問題ではないかもしれませんね。吉岡先生のように質が高い先生が多くいるというわけでもないでしょうし。進路指導教員の研修も大切です」と、「人材育成」の課題についても触れてくださった。そして、「すみません、本当はもう少しお話をしたいところなのですが、実はこれから大学で授業がありまして、私はここで失礼しなければなりません。このあとは、進路指導担当の吉岡先生にご案内をしていただきます」といわれ、横国・特支から1時間近く離れた場所にある横浜国立大学に、たくさんのお荷物を背負って出かけられた。その後ろ姿を見つめながら、「どうかお体を大切になさってください」と心の中で祈った。  折しも、取材当日の朝日新聞朝刊には「教員残業代なし 危機感」という見出しで、働いても働いても残業代がつかない「定額働かせ放題」の問題が取りあげられていた。公立学校教員の「教員給与特措法」(給特法)の扱いが問題になっており、例えば、文部科学省の2016(平成28)年度「教員勤務実態調査」によると、公立学校教員の平均残業時間(時間外勤務)は、小学校が月約59時間、中学校が約81時間と推定されているという。ちなみに、1966年の同様の調査では残業時間は8時間と推定され、この8時間分の超過勤務を基本給の4%として上乗せし、これを「教職調整額」として給与の一部としているのが現状という記事である。しかし、60年前の基準では現状に見合わない。現在の残業時間は当時の7〜10倍になっているのだ。私は取材当日の朝、電車の中でこうした記事を読みながら移動したこともあって、横国・特支は公立学校ではないが、コ永校長をはじめ、ほかの先生方の勤務状態はどうなのだろうと心配しながら「取材」をさせていただいた。特別支援学校教員の職場ストレスと健康状態は、教育の質にも影響をおよぼす可能性があるからだ。  そのような実態調査研究もあると思うが、それはさておき、横国・特支のなかで行われている研究は、いわゆる教育研究・授業研究が主体であり、非常に豊富である。コ永校長だけでなく、すべての教員がかかわる教育研究・授業研究を継続的に実施されている。これまでの研究課題の一部を以下に示す。 @人間関係形成能力を育む言語活動−キャリア教育の視点から−(2014〜2016年)  ・人間関係形成能力を育む言語活動について、本校の取り組みの整理と授業研究 A特別支援学校(知的障害)における「社会に開かれた教育課程」に向けて−自立と社会参加を図る授業づくりをもとに−(2017〜2018年)  ・地域外部資源等を活用した授業・単元の構想  ・本人参加の視点に基づく授業の改善  ・社会に開かれた教育課程に向けた指導事例の蓄積と整理 B知的障害のある児童生徒の“魅力”デザインプロジェクト(2019年、2021年)  ・表現活動における児童生徒の魅力を引き出す授業デザインの検討  ・卒業後、魅力ある社会人になるための9年間の指導計画検討  ・児童生徒の自己理解を引き出す授業デザインの検討 C特別支援学校における授業成果の「見える化」〜評価しにくい内容を評価しやすくするための手続き〜(2022年)  こうした研究の内容については各種研究報告会や学会発表などの機会で知ることができると思う。横国・特支は使命としてさまざまな教育研究に取り組んでおり、その成果は「明日の教育実践」に活かされている。  教育研究・授業研究は、人材育成につながる。教職員の資質向上を目的とした研修のほかに、横国・特支では、横浜国立大学教育学部などから教育実習生や介護などの体験生を受け入れる「開かれた学校」であり、これは特に附属学校の強みの一つであるといえる。未来の若手教育者を育てるための教育実習のほか、JICA研修、公開講座などにも活用されている。大学院生が取り組む研究をサポートするという人材育成もある。また非常勤講師のシステムにより、研究を行う大学院生が早くから教育の実践現場にたずさわる機会を提供している。  横国・特支はたいへん広い土地にあるため、風通しがよく、教室の中にも太陽の光が明るく差しこんでいる。心地よいキャンパスだ。この風通しのよさは、自然だけでなく、おそらく人間関係でも同様なのだろう。そんな印象を強く受ける学校だ。 高等部学生の進路状況  次に、高等部の進路状況を見てみよう。  2019〜2021年で、高等部の13人が特例子会社に就職し、3人が職業訓練校あるいは専門学校へ進学している。そして就労移行支援事業所には7人が、就労継続支援B型事業所には4人が、それぞれ「サービス利用者」となっている。吉岡先生によると、「過去3年間における企業就労率は5割」とのことであった。  ただし、企業就労のみをゴールとしているわけではなく、在宅も含め、横国・特支は進路選択の幅を広げた指導を実施している。企業就労のうち、特例子会社と一般企業雇用の割合は6対4とのことであった。  本校を卒業した知的障害のある方々の仕事内容は、直近のデータによると、清掃(27%)、販売(25%)、事務補助(21%)、PC作業(11%)、軽作業(8%)、介護・保育(6%)、厨房補助(2%)である(図)。また、2016年から2020年の5年間で、就労継続支援B型事業所への進路率は10%減少している。その代わり、就労移行支援事業所の利用は10%増加した。こうした傾向から、卒業後の進路先が企業就労により近づいていることがうかがえる。 進路指導について  次に、進路指導担当の吉岡先生が案内してくださったのは、小学部、中学部、高等部、職員室、進路資料室である。教室内では、複数教員によるティーム・ティーチング教育が用いられている。例えば、6人の小学部教室におじゃましたときには、2人の教員が生徒にきめ細かく教えていた。  中学部では、「総合的な学習の時間」として「はたらく」という学習内容を設定し、「進路およびキャリア形成に関する学習」として位置づけられている。授業風景を見学させていただいたときも、キャリアに関する内容のお話をされていた。  高等部では、教育課程に新しく「キャリア」の授業が2022年に新設された。この授業は、高等部の授業として、週5コマある。したがって、生徒はこの仕事に特化された授業を通して、「定時にはたらく」ことの意味を知ることができる。「キャリア」の授業を毎日受けることは、「労働の習慣化」にもなるので、有効だと思う。さらに、ある企業から受けた実際の作業は、こうした授業で体験することができる。職業教育と職業訓練の一環として有効だろう。作業報酬は発生しないが、実際の企業の製品を間違いなくつくることで、学内でOJTに近いことを実現できているようだ。横浜国立大学内のコンビニエンスストアや食堂で行われる職業実習(詳細は次に説明)とあわせて、高等部の学生、特に3年生にとって、「キャリア」の授業は大切な時間となっているはずだ。  さらに、高等部における単元学習の一つに、SDGsをテーマとした「国際協働学習」がある。いまの時代に合ったテーマの教育を提供しているのも特筆すべき点である。具体的には、フランスの学校との交流実績もあるそうで、壁画の共同制作などを行っているそうだ。オンライン教育の場で、相互に報告会を行うなど、先駆的な取組みといえる。また、高等部では、就職後にも大切な「自己理解」に関する教育も行っている。自身の力量と特性を理解し、自分らしく働けるようになるためにも、自己理解の促進は大切な教育目標の一つである。 高等部の進路学習  進路学習の内容として、それぞれの学年で大きなテーマがある。1年次に「知る」、2年次に「やってみる」、3年次に「決める」という学習課題だ。  1年次では、企業の職場見学を行っている。特徴的なのは、グループでのインターンシップであり、これは附属学校の強みともいえる。前述したように、横国・特支はその本校である横浜国立大学での職業実習を効果的に取り入れている。実習は5日間で、大学の校内清掃、広報、事務、食堂などの職場で、まずは見学実習を行っている。  2年次には、進路の選択肢として福祉事業所もあるため、就労移行支援事業所や就労継続支援A型・B型事業所などの職場見学を行う。基幹相談支援センターなど、自分が実際に利用できる機関の学習も含まれているようだ。見学させていただいた授業中も、学生は基幹相談支援センターや就労系事業所について学習していた。横浜国立大学での職業実習は2年次にも実施するが、個人単位では、企業実習期間は5日とのことであった。  3年次には、生徒が実際に自分で選んだ実習先で1〜2週間実習を行う。そして進路指導教員は担任と連携を取り、学生が自分の力を把握し、その力を職場で試しながら、自身に合った就職先を焦らず選べるように支援している。この企業実習先が実質的には卒業後の就職先となっているとのことであった。  学生が卒業後の進路選択について幅広く学習できるよう、企業や就労系事業所のパンフレットや、働くことに関する豊富な書籍を自由に閲覧できる進路資料室もご案内いただいた。現在、この資料室をさらに使いやすくするための準備を進めているとのことであった。 卒業生への支援  学校は基本的に卒業後の3年間は、生徒のフォローアップを行っており、必要に応じて相談支援機関や就労支援機関と連携を取り、「支援の主体」の移行を果たしている。  同窓会「ふようコスモス」では、卒業生の余暇支援を行っている。これは卒業生の保護者が中心となって実施している。年4回青年教室を開き、月1〜2回の愛好会活動を実施し、余暇支援と同時に卒業生の現況確認が行えるため、効率的である。  「キャリア」とは職業生活を含む「人生航路」を意味する。人生のなかで、余暇を楽しく有意義に過ごすことは、職業人としてもきわめて大切だ。知的障害のある労働者本人が、「働きながらも余暇を楽しんでいるか」という確認もできる。このアフターフォローのためにも、同窓会の存在は大切である。 おわりに  今回、私は「教員」の一人として、横国・特支を見学させていただいた。教員は、小学校であれ、大学であれ、授業準備に膨大な時間を要する。授業の事前事後にかかる時間は、実際に教える時間の10倍以上を要することが少なくない。  もちろん、これには個人差があると思う。授業前に教材を作成し、授業計画を練り、該当する参考資料を古いものから最新のものまで調べ、その内容を学生にわかりやすく興味深く教え、さまざまな相談に乗り、最後はきちんと評価するという仕事だ。これを徹底的にやろうとすると、帰宅してからも、つい仕事をしてしまう。少しでもよい授業を行おうとしても「完璧な授業」などないので、教員の仕事は「終わりがない」とよくいわれる。毎回最高の「ライブ・パフォーマンス」を「ライブ授業」でやろうとして躍起になって準備していると、作業量ばかり増え、数時間があっという間に過ぎ、教育者として本来持つべき「教える喜びや楽しさ」を忘れてしまいがちになる。  本稿の冒頭で教員の長時間労働の問題に触れたが、長時間労働にならざるを得ない理由の一つは、この授業準備であることは間違いない。今回、特別支援学校における進路指導について取材を実施したわけだが、同じ教員目線で、先生方と職員の方々の働き方を垣間見ると、そのたいへんさはひしひしと伝わってくる。  昔(1984年)の話で恐縮だが、私が「特別支援教育」を院生として学んでいたころは楽しかった。知的障害のある特別支援学校の学生と一緒に泳ぎ、歌い、遊んだ。知的障害のある方向けの職業リハビリテーション生活施設で一緒に食事をつくり、踊りに出かけ、パーティを企画するといったレクリエーションを担当した。また、アメリカで制度化され始めたころのジョブコーチとしての援助つき雇用による就労支援も、現在の日本の就労継続支援B型事業所のようなところで行った。そのとき、職業リハビリテーションには、働くこと以外に「余暇」の充実がとても大切だと思った。どうせ働くなら「活き活き」と「楽しく」働きたい。これはだれしも同じなのではないだろうか。  今回、横国・特支の学生が真剣に学ぶ目の強さ、奮闘する教員の授業内容が「わかった!」と喜んだときの学生の笑顔、その笑顔の一瞬を掴んだときの教員の凛とした表情を見て、特別支援教育のよさを肌で感じた。また、ほぼ毎日を学外で職場開拓・作業実習・企業と施設と支援機関間の連携に奔走している進路指導教員(吉岡先生)の「マーケティング担当」を彷彿させる力量の一端を拝見し、学校から職場への移行スペシャリスト(アメリカでは、Transition Coordinator)の重要性を再認識することができた。  最後に、誌面をお借りして、あらためて横浜国立大学教育学部附属特別支援学校の先生方と学生さんに感謝し、敬意を表します。どうもありがとうございました。 図 卒業生の職種別の企業就労状況(2011〜2020年度) 企業就労 企業就労のうち特例子会社と一般企業の割合は6:4 清掃 27% 販売 25% 事務補助 21% PC作業 11% 軽作業 8% 介護・保育 6% 厨房補助 2% (資料提供:横浜国立大学教育学部附属特別支援学校) 写真のキャプション 横浜国立大学教育学部附属特別支援学校 校長のコ永亜希雄先生 校長室でお話をうかがった 進路指導担当の吉岡敬信先生 教室の中は明るく風通しがよい 案内していただいた吉岡先生(左)と授業の様子を見学する八重田淳委員(右) 中学部「はたらく」の授業 (写真提供:横浜国立大学教育学部附属特別支援学校) 高等部「キャリア」の授業 中学部の「職場見学」。社員として働く卒業生から説明を受ける (写真提供:横浜国立大学教育学部附属特別支援学校) 高等部「職業」の授業内での検品作業。実際に販売される商品の検品を行う (写真提供:横浜国立大学教育学部附属特別支援学校) 横浜国立大学における職業実習(インターンシップ)。大学図書館での清掃作業 (写真提供:横浜国立大学教育学部附属特別支援学校) 進路資料室の一角 資料を手に取る八重田委員 【P26-27】 省庁だより 令和4年 障害者雇用状況の集計結果A (令和4年6月1日) 厚生労働省 職業安定局 障害者雇用対策課 1 民間企業における雇用状況 ◎産業別の状況(第4表)  産業別にみると、雇用されている障害者の数は、「金融業、保険業」「生活関連サービス業、娯楽業」以外のすべての業種で前年よりも増加した。  産業別の実雇用率では、「医療、福祉」(2.89%)、「鉱業、採石業、砂利採取業」(2.47%)、「生活関連サービス業、娯楽業」(2.38%)、「農、林、漁業」(2.36%)、「電気・ガス・熱供給・水道業」(2.36%)、「運輸業、郵便業」(2.32%)が法定雇用率を上回っている。 2 国、地方公共団体における在職状況 (1)国の機関(第3表(1))  国の機関(法定雇用率2.6%)に在職している障害者の数は9703.0人、実雇用率は2.85%。国の機関は44機関すべてにおいて法定雇用率を達成している。 (2)都道府県の機関(第3表(1))  都道府県の機関(法定雇用率2.6%)に在職している障害者の数は1万409.0人、実雇用率は2.86%。知事部局は47機関中46機関が達成、知事部局以外は117機関中107機関が達成している。 (3)市町村の機関(第3表(1))  市町村の機関(法定雇用率2.6%)に在職している障害者の数は3万4535.5人、実雇用率は2.57%。2462機関中1846機関が達成している。 (4)都道府県等の教育委員会(第3表(2))  都道府県等の教育委員会(法定雇用率2.5%)に在職している障害者の数は1万6501.0人、実雇用率は2.27%(都道府県教育委員会は2.26%、市町村教育委員会は2.33%)。都道府県教育委員会は47機関中26機関が達成、市町村教育委員会は48機関中32機関が達成している。 3 独立行政法人等における雇用状況(第3表(3))  独立行政法人等(法定雇用率2.6%)に雇用されている障害者の数は1万2420.5人、実雇用率は2.72%。独立行政法人等(国立大学法人等を除く)は91法人中78法人が達成、国立大学法人等は86法人中70法人が達成、地方独立行政法人等は188法人中144法人が達成している。 【第3表】国、地方公共団体等における在職状況 (1)国、地方公共団体の機関(法定雇用率2.6%) [ ]内は、実人数 @法定雇用障害者数の算定の基礎となる職員数 A障害者の数 B実雇用率 C法定雇用率達成機関の数/機関数 D達成割合 国の機関 340,474.5人 (339,099.5人) 9,703.0人 [8,325人] (9,605.0人) 2.85% (2.83%) 44/44 (46/46) 100.0% (100.0%) 都道府県の機関 363,592.0人 (361,308.0人) 10,409.0人 [8,135人] (10,143.5人) 2.86% (2.81%) 153/164 (143/160) 93.3% (89.4%) 市町村の機関 1,341,687.5人 (1,329,895.5人) 34,535.5人 [26,923人] (33,369.5人) 2.57% (2.51%) 1,846/2,462 (1,763/2,477) 75.0% (71.2%) (2)都道府県等の教育委員会(法定雇用率2.5%) @法定雇用障害者数の算定の基礎となる職員数 A障害者の数 B実雇用率 C法定雇用率達成機関の数/機関数 D達成割合 都道府県等教育委員会 726,284.5人 (729,403.5人) 16,501.0人 [12,876人] (16,106.5人) 2.27% (2.21%) 58/95 (50/99) 61.1% (50.5%) (3)独立行政法人等における雇用状況(法定雇用率2.6%) @法定雇用障害者数の算定の基礎となる労働者数 A障害者の数 B実雇用率 C法定雇用率達成機関の数/機関数 D達成割合 独立行政法人等 455,960.5人 (445,189.5人) 12,420.5人 [9,745人] (12,244.5人) 2.72% (2.69%) 292/365 (284/364) 80.0% (78.0%) 注1 (1)(2)の各表の@欄の「法定雇用障害者数の算定の基礎となる職員数」とは、職員総数から除外職員数及び除外率相当職員数(旧除外職員が職員総数に占める割合を元に設定した除外率を乗じて得た数)を除いた職員数である。 注2 (3)の表の@欄の「法定雇用障害者数の算定の基礎となる労働者数」とは、常用労働者総数から除外率相当数(対象障害者が就業することが困難であると認められる職種が相当の割合を占める業種について定められた率を乗じて得た数)を除いた労働者数である。 注3 各表のA欄の「障害者の数」とは、身体障害者、知的障害者及び精神障害者の計であり、短時間労働者以外の重度身体障害者及び重度知的障害者については法律上、1人を2人に相当するものとしてダブルカウントを行い、重度以外の身体障害者及び知的障害者並びに精神障害者である短時間労働者については法律上、1人を0.5人に相当するものとして0.5カウントとしている。  ただし、精神障害者である短時間労働者であっても、次のいずれかに該当する者については、1 人分とカウントしている。 @ 令和元年6月2日以降に採用された者であること A 令和元年6月2日より前に採用された者で、同日以後に精神障害者保健福祉手帳を取得した者であること 注4 法定雇用率2.5%が適用される機関とは、都道府県の教育委員会及び一定の市町村の教育委員会である。 注5 ( )内は、令和3年6月1日現在の数値である。  なお、精神障害者は平成18年4月1日から実雇用率に算定されることとなった。 注6 「独立行政法人等」とは、障害者の雇用の促進等に関する法律施行令別表第2の第1号から第10号までの法人を指す。 注7 特例承認・特例認定や各機関における法定雇用障害者数の算定の基礎となる労働者数の変化等により機関数は変動する。 【第4表】民間企業における産業別の雇用状況 区分 @企業数 A法定雇用障害者数の算定の基礎となる労働者数 B障害者の数 A.重度身体障害者及び重度知的障害者 B.重度身体障害者及び重度知的障害者である短時間労働者 C.重度以外の身体障害者、知的障害者及び精神障害者 D.重度以外の身体障害者及び知的障害者並びに精神障害者である短時間労働者 E.計A×2+B+C+D×0.5 F.うち新規雇用分 C実雇用率E÷A×100 D法定雇用率達成企業の数 E法定雇用率達成企業の割合 産業計 企業 107,691 (106,924) 人 27,281,606.5 (27,156,780.5) 人 125,433 (124,508) 人 17,969 (18,003) 人 317,201 (304,060) 人 55,844 (53,414) 人 613,958.0 (597,786.0) 人 58,855.0 (55,081.0) % 2.25 (2.20) 企業 52,007 (50,306) % 48.3 (47.0) 農、林、漁業 411 (415) 46,600.5 (45,295.5) 197 (190) 23 (22) 647 (594) 76 (131) 1,102.0 (1,061.5) 95.0 (101.0) 2.36 (2.34) 234 (235) 56.9 (56.6) 鉱業、採石業、砂利採取業 71 (76) 10,692.0 (10,755.0) 50 (49) 2 (2) 128 (124) 69 (2) 264.5 (225.0) 26.5 (23.0) 2.47 (2.09) 36 (39) 50.7 (51.3) 建設業 4,762 (4,775) 853,184.5 (848,091.0) 4,422 (4,316) 221 (241) 8,076 (7,656) 377 (322) 17,329.5 (16,690.0) 1,325.0 (1,237.0) 2.03 (1.97) 2,315 (2,262) 48.6 (47.4) 製造業 25,700 (25,772) 7,047,383.5 (7,074,417.0) 37,430 (37,376) 1,701 (1,837) 80,931 (78,358) 4,118 (3,868) 159,551.0 (156,881.0) 10,819.5 (9,809.5) 2.26 (2.22) 14,219 (13,816) 55.3 (53.6) 電気・ガス・熱供給・水道業 290 (280) 216,131.5 (215,587.5) 1,318 (1,310) 42 (35) 2,400 (2,356) 61 (51) 5,108.5 (5,036.5) 265.0 (233.5) 2.36 (2.34) 133 (126) 45.9 (45.0) 情報通信業 6,307 (6,034) 1,720,494.5 (1,663,143.0) 7,705 (7,470) 285 (284) 15,750 (14,431) 497 (471) 31,693.5 (29,890.5) 3,702.5 (3,270.0) 1.84 (1.80) 1,717 (1,585) 27.2 (26.3) 運輸業、郵便業 7,556 (7,625) 1,622,161.0 (1,637,091.5) 7,683 (7,710) 886 (896) 20,340 (19,788) 2,121 (2,083) 37,652.5 (37,145.5) 2,978.5 (2,615.5) 2.32 (2.27) 4,141 (4,059) 54.8 (53.2) 卸売業、小売業 16,418 (16,445) 4,322,579.0 (4,354,457.0) 15,967 (15,896) 3,087 (3,092) 50,050 (48,441) 11,347 (10,895) 90,744.5 (88,772.5) 8,638.5 (8,448.5) 2.10 (2.04) 6,322 (6,099) 38.5 (37.1) 金融業、保険業 1,446 (1,447) 1,130,604.0 (1,166,607.0) 6,329 (6,474) 266 (256) 12,282 (12,224) 388 (377) 25,400.0 (25,616.5) 1,799.0 (2,031.0) 2.25 (2.20) 587 (563) 40.6 (38.9) 不動産業、物品賃貸業 2,068 (2,071) 491,743.5 (488,030.5) 1,930 (1,916) 237 (240) 4,971 (4,740) 549 (517) 9,342.5 (9,070.5) 936.5 (835.0) 1.90 (1.86) 731 (660) 35.3 (31.9) 学術研究、専門・技術サービス業 3,596 (3,446) 1,262,286.5 (1,205,918.0) 5,449 (5,161) 672 (672) 14,449 (13,174) 2,128 (1,942) 27,083.0 (25,139.0) 2,958.5 (2,436.5) 2.15 (2.08) 1,254 (1,143) 34.9 (33.2) 宿泊業、飲食サービス業 3,157 (3,123) 768,041.0 (762,022.0) 2,637 (2,664) 986 (1,017) 8,518 (8,308) 3,309 (3,302) 16,432.5 (16,304.0) 1,641.0 (1,532.0) 2.14 (2.14) 1,450 (1,441) 45.9 (46.1) 生活関連サービス業、娯楽業 2,979 (3,034) 490,435.5 (503,049.0) 2,159 (2,193) 479 (515) 6,120 (6,132) 1,477 (1,454) 11,655.5 (11,760.0) 927.5 (865.5) 2.38 (2.34) 1,293 (1,260) 43.4 (41.5) 教育、学習支援業 2,369 (2,323) 521,387.0 (503,449.0) 2,149 (2,054) 265 (253) 4,466 (4,220) 515 (502) 9,286.5 (8,832.0) 994.0 (985.5) 1.78 (1.75) 859 (836) 36.3 (36.0) 医療、福祉 18,525 (18,208) 3,139,350.0 (3,095,914.0) 13,858 (13,881) 6,049 (5,924) 45,802 (43,924) 22,048 (20,987) 90,591.0 (88,103.5) 12,473.5 (12,084.5) 2.89 (2.85) 11,129 (10,811) 60.1 (59.4) 複合サービス事業 886 (900) 289,757.5 (294,115.0) 1,350 (1,362) 183 (165) 3,081 (3,044) 410 (390) 6,169.0 (6,128.0) 408.0 (399.0) 2.13 (2.08) 372 (368) 42.0 (40.9) サービス業 11,150 (10,950) 3,348,775.0 (3,288,838.5) 14,800 (14,486) 2,585 (2,552) 39,190 (36,546) 6,354 (6,120) 74,552.0 (71,130.0) 8,866.5 (8,174.0) 2.23 (2.16) 5,215 (5,003) 46.8 (45.7) 注 前号掲載(※)の第1表と同じ ※前号はこちらからご覧いただけます。 https://www.jeed.go.jp/disability/data/works/202304.html 【P28-29】 研究開発レポート 第30回 職業リハビリテーション研究・実践発表会Part2 パネルディスカッション T「『同僚』のちょっとした理解とサポートが力になる 〜障害のある社員が働きやすい職場づくりについて〜」 U「大学等における発達障害学生への連携支援について」  職業リハビリテーションに関する研究成果を周知するとともに、参加者相互の意見交換、経験交流を生み出すための機会として、毎年開催されている「職業リハビリテーション研究・実践発表会」。今年度は、新型コロナウイルス感染拡大防止対策を講じ、定員を減らしたうえで特別講演やパネルディスカッションなどを実施し、その様子をリアルタイムで配信して視聴いただける形式をとりました。また、昨年度に引き続き、その様子の動画や実践事例などの発表資料を当機構障害者職業総合センター(NIVR)のホームページに掲載しています(★)。今号では、パネルディスカッションT・Uの様子をダイジェストでお伝えします。  パネルディスカッションT 『同僚』のちょっとした理解とサポートが力になる〜障害のある社員が働きやすい職場づくりについて〜  障害者の離職理由の一つに、上司や同僚などとの人間関係の悪化が挙げられます。障害のある社員が安心して働き、仕事の成果を上げるには、「職場に受け入れられている」という感覚を持てることが大切です。そのためには、人事担当者や企業在籍型ジョブコーチなどの支援者だけではなく、受け入れる職場の上司や同僚が大きな役割を果たすと考えられます。パネルディスカッションTでは、障害者職業総合センター研究員の宮澤(みやざわ)史穂(しほ)氏をコーディネーターとして、株式会社スタックス代表取締役社長の星野(ほしの)佳史(よしふみ)氏、株式会社良品計画人事部の成澤(なるさわ)岐代子(きよこ)氏、常磐大学人間科学部准教授の若林(わかばやし)功(いさお)氏をパネリストに迎えて、これまであまり注目されてこなかった「同僚」に焦点をあて、障害のある社員が働きやすく、力を発揮しやすい職場づくりについての意見交換を行いました。  はじめに、宮澤氏より、本ディスカッションの背景として、障害のある従業員の同僚に対する調査の結果(※1)が紹介されました。それによると、例えば「障害のある方に対して何かサポートをしたことがあるか?(複数回答)」という質問に対しては、「声をかけている(31.2%)」、「話し相手になっている(18.1%)」、「仕事に関してアドバイスしている(16.3%)」、「障害のある方を認めており、それを伝えている(14.8%)」、「仕事を手伝っている(14.7%)」、「相談にのっている(12.6%)」、「特に何もしていない(43.7%)」となっており、過半数の同僚が、障害のある社員に対して何かしらのサポートをしている実態があることが報告されました。  次に、各パネリストから、それぞれの企業内の取組み事例などが紹介されました。金属部品を製造する株式会社スタックスの星野氏からは、従業員54人中、障害のある社員3人を雇用している事例が紹介され、「障害のある社員の特性を理解するために従業員向けの研修を実施する」、「同僚の配慮が行き過ぎて遠慮とならないように、必要な場合には社長が介入する」、「体験実習などでは、当事者の能力よりも、受け入れ側の従業員の様子をチェックする」など、中小企業の立場で、障害者を雇用する環境をつくるために工夫している点などが紹介されました。  『無印良品』を運営する株式会社良品計画の成澤氏からは、店舗や人事部が共同で採用活動を行い、障害のある社員の活躍を後押ししている「ハートフルプロジェクト」の取組みが紹介され、プロジェクトの意義や必要な配慮などについて同僚の従業員の理解をうながし、障害のある社員を仲間として迎える風土をつくることで、理解者や経験者が増えていく、安定的な障害者の雇用や定着につながっている事例が紹介されました。  若林氏からは、議論を深める材料とするために、「ナチュラルサポート(一般の従業員が職場において、自発的または計画的に援助を提供すること)」や「合理的配慮」の概念、同僚のサポートが発生するための要因について考察した理論や研究などが紹介されました。  後半のディスカッションでは、「同僚が困ったときに相談できる環境があることが大切」、「助けてあげたいと思ってもらえるように、本人の行動に問題がある場合には、本人にそれをうまく伝えることも重要」などの意見が出され、活発な議論がなされました。 パネルディスカッションU 大学等における発達障害学生への連携支援について  大学等で学ぶ発達障害のある学生は年々増加しています。支援体制を構築して成果が出ている大学もありますが、多くの大学では就労支援を実施する体制などに困難を抱えており、発達障害のある学生に対する大学等と就労支援機関との連携による就労支援の充実強化が必要になっています。パネルディスカッションUでは障害者職業総合センター主任研究員の井口(いぐち)修一(しゅういち)氏をコーディネーターとして、富山大学保健管理センター客員准教授の西村(にしむら)優紀美(ゆきみ)氏、特定非営利活動法人リエゾン理事長の中山(なかやま)肇(はじめ)氏、千葉公共職業安定所専門援助部門雇用トータルサポーターの白崎(しらさき)裕美(ひろみ)氏、東京障害者職業センター多摩支所主任障害者職業カウンセラーの小野寺(おのでら)十二(みつぐ)氏をパネリストに迎えて、発達障害の学生に対する大学と就労移行支援機関との連携による就労支援の在り方について考えていきました。  はじめに井口氏から本ディスカッションの背景として、発達障害学生の就労支援にかかる調査研究結果(※2)が紹介され、連携支援の課題として、大学側から「就労支援機関の情報不足や利用制限」、「学内支援体制の人員不足」、「障害者施設の利用に難色を示す学生が多い」などが、就労支援機関側では「学生・家族の障害理解」、「学内の支援体制等により連携が求めにくい」、「学業と就職活動の並行実施の難しさ」、「利用可能な就労支援が限られる」などが挙げられているとの説明がありました。  次に各パネリストから、それぞれの取組み事例が紹介されました。西村氏からは、学内の関係者や家族が連携して、学生の学ぶ機会の保障と、自己理解・自己対処力の向上、社会参入への意欲につなげている取組みが紹介され、その支援を就労移行支援や企業に引き継いでいくことの重要性が強調されました。就労移行支援事業所として、富山大学と連携して学生の支援にあたっている中山氏からは、大学と支援方法や情報の共有をしながら、就労に必要な訓練の提供とアセスメントやモニタリングを行い、就職先の企業に支援をつないでいった事例が紹介されました。白崎氏からは、発達障害を含め、就職活動に困難を抱える学生を大学と連携して支援するために「新卒応援ハローワーク」内に設置された「特別支援チーム」が紹介され、大学との連携をとりやすくするための仕組みの必要性が強調されました。小野寺氏からは、地域障害者職業センターで実施している発達障害の学生に対する就労支援の内容や相談内容の傾向などが紹介され、発達障害のある学生に対する「支援の個別性」、「支援の連続性」、「ネットワークによる支援」が大学・支援機関・企業などの連携による支援のポイントであることが言及されました。  後半のディスカッションでは「大学には障害者雇用の知見がなく、どのように連携したらよいのかわからないといった課題がある」、「教員など、学生の傾向を把握しやすい関係者を巻き込むことで、取り残される学生がないようにすることが大切」などの意見が出され、活発な議論がなされました。 (注)コーディネーターおよびパネリストの方々の所属先・役職は開催日時点のものです ★右記ホームページにて、動画や発表資料をご覧いただけます。https://www.nivr.jeed.go.jp/vr/30kaisai.html (※1)資料シリーズNo.105「障害等により配慮が必要な従業員の上司・同僚の意識に関する研究」(2022) https://www.nivr.jeed.go.jp/research/report/shiryou/shiryou105.html (※2)調査研究報告書No.166「発達障害のある学生に対する大学等と就労支援機関との連携による就労支援の現状と課題に関する調査研究」(2023) https://www.nivr.jeed.go.jp/research/report/houkoku/houkoku166.html ◇お問合せ先:研究企画部 企画調整室(TEL:043-297-9067 E-mail:kikakubu@jeed.go.jp) 写真のキャプション 星野佳史氏 宮澤史穂氏 若林功氏 成澤岐代子氏 西村優紀美氏 井口修一氏 小野寺十二氏 白崎裕美氏 中山肇氏 【P30-31】 ニュースファイル 国の動き 内閣府 障害者差別・偏見「ある」88.5% 6割近くは「状況改善」  内閣府は、2022(令和4)年に実施した「障害者に関する世論調査」の結果を公表した。調査は、全国の18歳以上の日本国籍者3千人を対象に、2022年11月から12月にかけて郵送方式で実施し、有効回収率は58.8%(有効回収数1765人)だった。  このなかで、障害を理由とした差別や偏見について「ある」、「ある程度はある」との回答が計88.5%にのぼった。このうち58.9%は「5年前と比べて差別・偏見が改善された」と回答した。  また「障害者差別解消法」について74.6%が「知らない」と回答。共生社会の考え方について「知っている」との回答は48.5%だったのに対し、「言葉だけは聞いたことがある」が31.5%、「知らない」が19.3%だった。 https://survey.gov-online.go.jp/r04/r04-shougai/index.html 地方の動き 鳥取 聴覚障害者らの電話サービス利用無料  鳥取県は、聴覚や発話に困難のある人とない人との会話を通訳オペレーターによる手話を介して意思疎通を図る「電話リレーサービス」について、「地域登録」と呼ばれる新制度の活用を全国の自治体で初めてスタートさせた。利用料(通話料)も県が負担するため無料となる。  電話リレーサービスは2021年7月から、「一般財団法人日本財団電話リレーサービス」(東京都)が公共サービスとして運営。携帯電話のカメラ機能を利用してオペレーターが手話やチャット、音声などで通訳しながら、双方向の意思疎通を図る。24時間365日利用可能で、緊急通報や医療機関への連絡も可能。  これまで利用するには当事者による個人登録か、勤務先の事業所による法人登録が必要だったが、2月から自治体による登録申請が可能となった。問合せは鳥取県福祉保健部ささえあい福祉局障がい福祉課情報アクセス担当へ。 電話:0857−26−7201 FAX:0857−26−8136 鳥取 インターネット上にバリアフリー美術館  障害のあるアーティストの作品に特化したオンライン上の美術館「鳥取県立バリアフリー美術館」がグランドオープンした。  都道府県立のオンライン美術館で障害者アートに特化して、360度バーチャル空間を使ったオンライン美術館の創立は全国初の試みだという。作品解説の音声読み上げ・手話翻訳、作品の自動閲覧、表示の色調の変更機能などのほか、さまざまな障害特性に対応したバリアフリー機能を整備した。  各種コンテストの受賞作品のほか、県内の福祉施設や個人アーティストからも作品を収集し、デジタルデータ化や写真計測による3Dデータ化で展示している。美術館は専用のインターネットサイトから無料で利用可能。 https://tottori-bfm.jp 生活情報 全国 有料道路、障害者割引の要件緩和  「東日本高速道路株式会社(NEXCO東日本)」、「中日本高速道路株式会社(NEXCO中日本)」、「西日本高速道路株式会社(NEXCO西日本)」、「首都高速道路株式会社(首都高)」、「阪神高速道路株式会社(阪神高速)」、「本州四国連絡高速道路株式会社(JB本四高速)」の6社は、障害者割引制度を見直し、1人1台の要件緩和とオンライン申請を開始した。  有料道路の障害者割引は、通勤、通学、通院などで有料道路を利用する当事者を対象に、通行料金の50%の割引を適用する制度。これまでは事前登録された「自家用車」にかぎり割引を適用する「1人1台要件」だったが、今後は、事前登録のない自動車を利用する際は料金所で一旦停止したうえで、係員が障害者手帳や本人の同乗の確認などを行う。重度の障害者のみを対象にタクシーなどを利用する場合も割引を適用する(事前に割引の申請手続きが必要)。  また自家用車を事前登録のうえ、ETCの利用申請をする人を対象に、窓口に出向くことなく申請できるようオンライン申請も可能になった。利用にはマイナンバーカードおよびマイナポータルへの登録が必要。 本紹介 『よくある50シーン別高次脳機能障害のある人に伝わる説明&ヨ利帖』  社会福祉法人名古屋市総合リハビリテーション事業団理事長の山田(やまだ)和雄(かずお)さん、名古屋市総合リハビリテーションセンター附属病院院長の日比野(ひびの)敬明(ひろあき)さんらが監修した『よくある50シーン別高次脳機能障害のある人に伝わる説明&ヨ利帖』(中央法規出版刊)が出版された。  名古屋市総合リハビリテーションセンターでの長年にわたる実践に基づき、理解力、処理速度、記憶力などの低下がある高次脳機能障害のある人への上手な伝え方のノウハウを、図とイラストを使ってわかりやすく解説。支援者や家族、職場の上司や同僚の立場を想定し、伝え方の11のメソッドに加え、「リハビリテーション」、「生活」、「就労」、「学校」など50シーン別に紹介。B5判186ページ、3080円(税込)。 『発達障害の就労とキャリア発達ーライフステージをつなぐ支援』  独立行政法人国立特別支援教育総合研究所発達障害教育推進センターの主任研究員である榎本(えのもと)容子(ようこ)さんや、国立障害者リハビリテーションセンター研究所障害福祉研究部心理実験研究室研究室長の清野(せいの)絵(かい)さんらによる編著『発達障害の就労とキャリア発達ーライフステージをつなぐ支援』(新曜社刊)が出版された。  発達障害のある児童生徒、学生の将来の就労を見すえたキャリア発達支援の実現のために、大学、高校、中学校、小学校それぞれの段階においてどのようなキャリア発達支援ができるか、さまざまな立場の人々とどう連携するかについて、実践事例からの知見を中心に紹介している。A5判208ページ、3960円(税込)。 作品大募集! あなたの力作がポスターになる! 令和5年度 「絵画コンテスト働くすがた〜今そして未来〜」 「写真コンテスト職場で輝く障害者〜今その瞬間〜」 応募締切 令和5年6月15日(木)【消印有効】 児童・生徒をはじめ社会人・一般の方もご応募いただけます。 絵画コンテストの応募は障害のある方が対象です。 写真コンテストの応募は障害の有無を問いません。 多くのみなさまからのご応募をお待ちしています。 詳しくはホームページの募集要項をご覧ください。 JEED 絵画写真 検索 <過去のポスターや入賞作品などもご覧いただけます> 主催:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 ミニコラム 第23回 編集委員のひとこと ※今号の「編集委員が行く」(20〜25ページ)は八重田委員が執筆しています。  ご一読ください。 忘れるということを忘れないように 筑波大学大学院教授 八重田淳  先日、スイミングクラブで泳いだあと、家の鍵が見当たらないことに気づいた。慌てず、順番に思い出してみると、どう考えても駐車場に停めた車の中にしかないだろうと思って運転席の周囲を探したが、ない。最近、よく忘れ物をする。まあ、年のせいもあるのだろうが、鍵がないと家に入れないので、困った。でも、鍵は15分後に見つかった。スイミングクラブの受付に問い合わせたり、交番に行ったりしたけれど、結局、鍵は車の中にあった。さっき探したじゃないか。なんで見つけられなかったのだ。答えは、「よく探さなかったから」。  こういうことは、忘れもの探しのときだけではなく、日常でよくあることだ。例えば、なんでこんな簡単な問題がわからなかったのか?「よく考えなかったから」。どうしてこんなに忙しいんだ?「無計画だから。やるべきことを忘れていたから」。そういうことだ。  「編集委員が行く」の原稿の締切日も、実は忘れていた。なぜか。「締切日をメモすること自体を忘れていたから」なのかもしれないが、本当のところは、心のどこかで「なんとかなるだろう」という思いあがりがあったからだと思う。猛省である。編集部の方に締切日を数日間延長していただいたおかげで「なんとかなった」のは、自分の力ではない。「なんとかしていただいたから」である。  せっかく反省したのだから、今度は反省したことを忘れないようにしたい。それでもスラスラ忘れていく自分がいることは、忘れていない。やがてそんな自分も忘れてしまうのかもしれない。このミニコラムに書かせていただいたことを、忘れないようにしようと思う。 【P32】 掲示板 受講者募集! 職業リハビリテーションに関する各種研修のご案内 訪問型・企業在籍型職場適応援助者支援スキル向上研修 受講料無料 ◆訪問型・企業在籍型職場適応援助者支援スキル向上研修(第2回)  訪問型または企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)として1年以上の実務経験を有する方に対して、雇用管理やアセスメントに関する支援スキルの向上を図る研修を実施します。  講義・演習に加え、ケーススタディ、グループワーク、アクションプランの作成等実践的な内容が特長です。 ◆日程および会場  【第2回】<大阪会場> ※全国からお申込みいただけます。  日程:令和5年7月4日(火)〜7月7日(金)  会場:クラボウアネックスビル3階(大阪府大阪市中央区久太郎町2-4-11) ◆申込受付期間  令和5年4月11日(火)〜5月19日(金) ◆お申込み先  ホームページに受講申請書および申請方法を掲載しています。 ◆お問合せ先  大阪障害者職業センター  TEL:06-6261-5215  E-mail:osaka-ctr02@jeed.go.jp  https://www.jeed.go.jp/disability/supporter/supporter04.html 職場適応援助者(ジョブコーチ) ステップ1 ジョブコーチをめざす方 職場適応援助者 養成研修 ジョブコーチ支援をする際に必要な知識・技術の習得 障害者職業総合センター 全国の地域障害者職業センター ステップ2 ジョブコーチの実務経験のある方 職場適応援助者 支援スキル向上研修 ジョブコーチとしての支援スキルの向上 障害者職業総合センター・大阪障害者職業センター 読者アンケートにご協力をお願いします! 回答はこちらから→ メールマガジン好評配信中! 詳しくは JEED メールマガジン 検索 次号予告 ●特集  2023(令和5)年3月22日(水)〜25日(土)にフランス共和国メッス市で開催された「第10回国際アビリンピック」を取材。出場した日本人選手たちの活躍の様子などをレポートします。 ●この人を訪ねて  障害者の就労支援を目的としたeスポーツ大会の開催・運営を行う、株式会社ePARA(埼玉県)代表取締役の加藤大貴さんに、今後のeスポーツの可能性などについてお話をうかがいます。 ●編集委員が行く  阪本文雄編集委員が、医療法人社団三愛会が運営する多機能型事業所ワークサポートセンター三愛(香川県)を訪問。地域の支援機関との連携や、その取組みなどについて取材しました。 公式ツイッターはこちら! 最新号発行のお知らせやコーナー紹介などをお届けします。 本誌購入方法 定期購読のほか、最新号やバックナンバーのご購入は、下記へお申し込みください。 1冊からのご購入も受けつけています。 ◆インターネットでのお申し込み 富士山マガジンサービス 検索 ◆お電話、FAX でのお申し込み  株式会社広済堂ネクストまでご連絡ください。  TEL 03-5484-8821  FAX 03-5484-8822 あなたの原稿をお待ちしています ■声−障害者雇用にかかわるお考えやご意見、行事やできごとなどを500字以内で編集部(企画部情報公開広報課)まで。 ●発行−−独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 飯田 剛 編集人−−企画部次長 中上英二 〒261−8558 千葉県千葉市美浜区若葉3−1−2 電話 043−213−6526(企画部情報公開広報課)※電話番号が変わりました ホームページ https://www.jeed.go.jp/ メールアドレス hiroba@jeed.go.jp ●発売所−−株式会社広済堂ネクスト 〒105−8318 東京都港区芝浦1−2−3 シーバンスS館13階 電話 03−5484−8821 FAX 03−5484−8822 5月号 定価141円(本体129円+税)送料別 令和5年4月25日発行 無断転載を禁ずる ・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。また、本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。 編集委員 (五十音順) 株式会社FVP 代表取締役 大塚由紀子 トヨタループス株式会社 管理部次長 金井 渉 NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク 副理事・統括施設長 金塚たかし 弘前大学教職大学院 教授 菊地一文 岡山障害者文化芸術協会 代表理事 阪本文雄 武庫川女子大学 学生サポート室専門委員 諏訪田克彦 サントリービジネスシステム株式会社 課長 平岡典子 神奈川県立保健福祉大学 名誉教授 松爲信雄 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 筑波大学大学院 教授 八重田淳 常磐大学 准教授 若林 功 【P33】 JEEEEDDメールマガジン(無料) 新規登録者募集中!! 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)では、機構が全国で実施する高齢者や障害者の雇用支援、従業員の人材育成(職業能力開発)などの情報を、毎月月末に配信しています。 主な特徴 ◇毎号特集を組んで業務内容を紹介 ◆当機構の制度やサービス内容がよくわかる ◇マイエリア情報で地元情報をチェック! ◆セミナーやイベント情報が満載 雇用管理や人材育成の「いま」「これから」を考える、人事労務担当者や就労支援担当者のみなさま、必読! 定年延長・廃止に再雇用… 障害のある従業員の新規・継続雇用… 技能開発・向上の手段… そのお悩みのヒント見つかります!! 登録方法 JEED メルマガ で 検索 または から! 企画部 情報公開広報課(TEL:043-213-6215) 【裏表紙】 5月号 令和5年4月25日発行 通巻547号 毎月1回25日発行 定価141円(本体129円+税)