【表紙】 令和7年6月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第573号 ISSN 0386-0159 障害者と雇用 2025/7 No.573 職場ルポ 就労支援機関と連携し「だれもが働きやすい職場」に 株式会社日本エー・エム・シー(福井県) グラビア 郷土の味をつくる 株式会社しまおう(長崎県) 編集委員が行く 安定した職業生活を支えるリワークの意義と課題 医療法人社団心緑会小石川メンタルクリニック リワークデイケア(東京都) NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワークJSN東京(東京都) この人を訪ねて 「青年学級」から始まった活動の広がり 社会福祉法人わかぎり理事長、東京福祉大学教育学部教授 柳本雄次さん 「大阪・関西万博 大屋根リングをつくる人」 大阪府・松本(まつもと)郁子(いくこ)さん 読者アンケートにご協力をお願いします! 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) Japan Organization for Employment of the Elderly, Persons withD isabilities and Job Seekers 7月号 【前頁】 心のアート 自動車 山田あつし (特定非営利活動法人障害者アート支援工房COCOPELLI) 画材:えんぴつ、水彩絵の具、画用紙/サイズ:21cm×30cm  山田さんは絵を描くことがそんなに好きではないのかもしれません。ワークショップに来ても周りの人と話をしたり、変顔をしたり、冗談をいい合ったりしているときが、とても活き活きしている時間です。うながされて、しかたなく筆を取り描いた作品は、あたたかな色合いでまとめた大好きな電車や自動車など、関心のあるものをやや斜めからみたような、悪乗りで描いたちょっと変なものやネガティブな言葉で画面いっぱいになるような作品のときもあり、自身の感情や体調が色濃く作品に現れることがよくわかります。  気持ちが切り替わって気持ちよく描いたあとは、とてもよい笑顔でアトリエを後にします。この自動車はそんな作品の一つです。 (文:特定非営利活動法人障害者アート支援工房COCOPELLI(ココペリ) 米田(よねだ)昌功(まさのり)) 山田 あつし(やまだ・あつし) 1997(平成9)年生まれ。 2020(令和2)年 「美の祭典 越中アートフェスタ2020」富山県民会館、奨励賞 2022年 「PAT&BRUT展」北日本新聞社ギャラリー 2023年 「NOMAMA to GAMAMA展〜氷見のアール・ブリュット展〜」氷見市芸術文化館 2024年 「ぶりゅっと・とやま! みられ展」ギャルリ・ミレー 【もくじ】 障害者と雇用 働く広場 目次 2025年7月号 NO.573 「働く広場」は、障害者雇用の啓発・広報を目的として、ルポルタージュやグラビアなど写真を多く用いて、障害者雇用の現場とその魅力をわかりやすくお伝えします。 心のアート 前頁 自動車 作者:山田あつし(特定非営利活動法人障害者アート支援工房COCOPELLI) この人を訪ねて 2 「青年学級」から始まった活動の広がり 社会福祉法人わかぎり理事長、東京福祉大学教育学部教授 柳本雄次さん 職場ルポ 4 就労支援機関と連携し「だれもが働きやすい職場」に 株式会社日本エー・エム・シー(福井県) 文:豊浦美紀/写真:官野貴 クローズアップ 10 障害者雇用率向上へのヒント 第4回 「選ばれる企業」になるための障害者採用 JEEDインフォメーション 12 令和7年度「地方アビリンピック」開催地一覧/障害者職業総合センター職業センター2024(令和6)年度成果物のご案内/JEEDメールマガジン 新規登録者募集中!! グラビア 15 郷土の味をつくる 株式会社しまおう(長崎県) 写真/文:官野貴 エッセイ 19 障害のある人の地域生活支援について 第3回 「地域移行」に一歩を踏み出す 日本社会事業大学社会事業研究所 客員教授 曽根直樹 編集委員が行く 20 安定した職業生活を支えるリワークの意義と課題 医療法人社団心緑会小石川メンタルクリニック リワークデイケア(東京都)、NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワークJSN東京(東京都) 編集委員 三鴨岐子 省庁だより 26 令和7年度 障害保健福祉部予算の概要(2) 厚生労働省 障害保健福祉部 研究開発レポート 28 発達障害者の障害特性を踏まえた相談の進め方 障害者職業総合センター職業センター ニュースファイル 30 編集委員のひとこと 31 掲示板・次号予告 32 国立職業リハビリテーションセンター 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 指導技法等体験プログラムのご案内 表紙絵の説明 「大阪・関西万博の大屋根リングのデザインを見たとき、その工法や素材に興味を持ち題材に選びました。キャンバスには『協力しながら慎重に木組みの作業をする様子』、『大屋根リング全体のデザイン』、『きれいな木目』、『働く人たちの汗』など描きたいことが多く、構図にとても迷いました。仕上がった作品には、きれいな木目がわかる木組み作業をしっかり描けたかなと満足しています」 (令和6年度 障害者雇用支援月間絵画コンテスト 高校生・一般の部 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長奨励賞) ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。 (https://www.jeed.go.jp/disability/data/works/index.html) 【P2-3】 この人を訪ねて 「青年学級」から始まった活動の広がり 社会福祉法人わかぎり理事長、東京福祉大学教育学部教授 柳本雄次さん やなぎもと ゆうじ 1947(昭和22)年、静岡県生まれ。1975年3月、東京教育大学大学院教育学研究科特殊教育学専攻博士課程単位取得後退学、筑波大学心身障害学系教授、筑波大学附属大塚養護学校校長などを経て、2018(平成30)年4月から東京福祉大学教育学部教授、2021(令和3)年からは社会福祉法人わかぎり理事長も務める。著書に『特別支援教育〜一人ひとりの教育的ニーズに応じて』(共編著、2019年、福村出版)、『使ってみよう!スヌーズレン』(共編著、2022年、ジアース教育新社)など。 特別支援学校の卒業生のために ――柳本さんが理事長を務める「社会福祉法人わかぎり」は、もともと特別支援学校の卒業生のための「青年学級」から始まっているそうですね。 柳本 はい。現在の筑波大学附属大塚特別支援学校(以下、「大塚特別支援学校」)で1967(昭和42)年に開設された「青年学級」が始まりです。これは特別支援学校の卒業生らに学習や余暇活動の機会をつくることを目的にした取組みで、1960年代以降、全国各地で展開されてきました。いまは自治体や地域ごとに運営しているケースもありますね。  青年学級は当初、学校職員らが行っていましたが、保護者のみなさんの間で、「卒業生たちの成長を支える青年学級をよりよい活動にしていこう」という思いが広がり、親の会である「桐親会(とうしんかい)」が発足し、1978年には一般社団法人の認可を取得しました。最初は校長先生の自宅を事務局にしていたそうです。  そこまで熱心だったのは当時、特別支援学校を卒業した子どもたちが、引き続き通える福祉作業所のような場所があまりなく、学校側が「卒業生のアフターケア」の必要性を強く感じていたからでしょう。保護者のみなさんも、横のつながりがなくなることへの不安だけでなく、地域に受け皿が必要だという問題意識があったのだと思います。私自身は2000(平成12)年から10年間ほど大塚特別支援学校の校長を務めた縁もあって、桐親会とつながり、運営を見守ってきました。  いまも青年学級は、大塚特別支援学校の体育館を会場にして月1回程度開催しています。ミニ運動会や音楽を楽しむ会、ゲーム大会、バスを借り切っての1泊旅行、二十歳を祝う会、手話講座など、毎回趣向を凝らした内容です。  開設から58年になる青年学級は、参加者も卒業したての若者から70代までと幅広い年齢層になっています。卒業生のみなさんが、安心できる環境で、ともに学び、楽しい時間を過ごせる場を提供し続けてこられたのは、ひとえに保護者のみなさんの熱意と学校側の協力のたまものだと感じています。  また桐親会では、青年学級を軸にして、さまざまな活動・事業を展開してきました。定期的な余暇活動として和太鼓教室や音楽クラブ、フラワーサロンとお茶会、在校生の放課後支援活動などを続けていますし、社会参加の機会を広げるために高齢者施設などを訪問する試みもありました。  こうした青年学級を中心とする活動のなかで、最も大きく展開したのが2002年に開所した「工房わかぎり」です。2008年に就労継続支援B型事業所に移行し、2017年には念願だった社会福祉法人わかぎりとして独立しました。私は2021(令和3)年から同法人の理事長を務めています。この法人化を契機にグループホームわかぎりの家(定員5名)を開設しました。 地域社会とつながり、自立につなげる ――「工房わかぎり」について教えてください。 柳本 工房わかぎりはおもに知的障害のある人のために働く場を提供し、日々の生活や作業を通して社会的自立につながる支援を行っています。定員20名ですが、ずっと満員状態で、70代の方もいらっしゃいますね。いまでは大塚特別支援学校の卒業生だけでなく、地元地域に住む人たちも利用されています。活動場所は賃貸ビルの1〜3階フロアです。  ここで手がけているのは手芸品や革製品。晒(さらし)生地(きじ)や布バッグに、利用者たちが刺し子縫いや羊毛刺繍をほどこします。ときにボランティアさんから支援を受けて、外部の作家さんがデザインした下絵に沿って、好きな色の糸を選びながらていねいに縫っています。近年、特に力を入れているのが革製品で、パスケースや小銭入れ、ミニバッグなどをつくっています。職員が型に合わせて裁断したものを、利用者さんが手縫いし、断面を専用の薬品で磨き上げて仕上げます。  利用者さんたちは、いまや職人さんのように上手な人たちばかりですね。細かい作業を集中してやり続けられる能力を、いかんなく発揮しているように思います。商品そのもののよさが認められ、バザーや展示即売会での売り上げが好調で、地域の学校からも卒業記念品として注文をもらうようになりました。私自身も驚いたのですが、前年度は全員に臨時ボーナスが出るほどの販売実績でした。  就労継続支援B型事業所というのは作業成果によって工賃を払いますから、やはり商品開発や品質、営業が大事だとつくづく感じます。工房わかぎりでは、英語を併記したホームページで「製品の質とデザイン性にこだわる」ことを打ち出し、オンラインも含めて積極的な販売促進に努めています。  そして、いまの施設長は特別支援学校の元教諭で、職員たちと一緒にいろいろなアイデアを出し合い、積極的に動いてくれています。昨年は新たな取組みとして、羊毛刺繍が得意な利用者さんがサポート役になり、ワークショップを何度か開催しました。地域の方たちが参加してくださり、とても好評だったので今後も続けていく予定です。もちろん収益の一部になっていますし、何より、地域社会とつながるよい機会になっていることがうれしいですね。 主体性を持って人生を歩めるように ――これまでをふり返り、障害のある人の自立支援について、お考えをお聞かせください。 柳本 やはり特別支援学校を卒業したあとも、青年学級のような第三の居場所が、いろいろな所にあったほうがいいなと思っています。地域の人たちもなんらかの形でかかわったり参加したりできる機会がもっと増えるとよいですね。  一方で、障害のある人の自立支援という考え方が浸透したいまの時代、より重視されるようになったのが、本人の主体性です。特別支援学校は、一人ひとりが主体性を持って人生を歩んでいける力を育む場でもあります。以前の教育の場では、進路指導という「進路について指導する」イメージがありましたが、いまはキャリア教育として、自分で考える力を育てていく方向に移行しています。そういう意味では、障害者雇用をされている企業側のみなさんにも、職場におけるキャリアアップのほか、地域社会での自立を視野に入れた活動の機会提供やサポートなどをしていただけるとよいのではないかと思います。特別支援学校の卒業生をはじめ障害のある人たちが、地域社会とつながりながら主体性を持って学び続け、自立していける環境・仕組みがさらに充実していくことを願っています。 【P4-9】 職場ルポ 就労支援機関と連携し「だれもが働きやすい職場」に ―株式会社日本エー・エム・シー(福井県)― 従業員180人の部品メーカーでは、就労支援機関と連携しながら障がい者雇用を進め、継続的な支援や改善で、だれもが働きやすい職場を目ざしている。 (文)豊浦美紀 (写真)官野貴 取材先データ 株式会社日本エー・エム・シー 〒910-2222 福井県福井市市波町(いちなみちょう)13-8 TEL 0776-96-4631(代表) FAX 0776-96-4600 Keyword:製造業、知的障害、精神障害、聴覚障害、就労支援機関、ジョブコーチ、定着支援 (左の写真提供:株式会社日本エー・エム・シー) POINT 1 雇用前から支援会議や学習会などを実施し受け入れ体制を準備 2 2カ月ごとの面談を継続し、ていねいな定着支援とキャリアアップを図る 3 「だれもが働きやすい職場づくり」を軸に職場全体の社風を醸成 高圧配管用継手の製造  1963(昭和38)年創業の「株式会社日本エー・エム・シー」(以下、「日本AMC」)は、高圧配管用の金属製継手(つぎて)の専門メーカーとして建設機械、農業用機械、工作機械など多くの製品を提供している。福井県内をはじめタイ、フィリピン、中国など5拠点で毎月約1万種類、300万個を生産し、建設機械向け高圧配管用継手の市場では国内トップシェアを誇る。  日本AMCは2015(平成27)年ごろから障がい者雇用に力を入れ始め、いまでは従業員180人のうち障がいのある従業員が9人(身体障がい2人、知的障がい3人、精神障がい4人)で、「障害者雇用率」は4.77%(2025〈令和7〉年4月15日現在)にのぼるという。日本AMCは2022年3月に「もにす認定」(※)を受けたほか、2024年には「障害者雇用優良事業所」当機構理事長表彰を受賞した。  障がいのある従業員の担当作業は、組立をはじめ梱包、開梱、検査、出荷、清掃など幅広く、必要な配慮やサポートを受けながら戦力として育っている。  総務部を中心とする職場でのサポートや支援機関との連携など、これまでの取組みとともに、現場で活躍する従業員のみなさんを紹介する。 合同就職面接会を機に  日本AMCは2014年、身体障がいのある従業員2人のうちの1人が定年退職したことから翌年の雇用率が0.6%となり、当時の法定雇用率2.0%を下回った。  当時から総務部の部長を務め、現在は取締役専務執行役員も兼任する高橋(たかはし)永(ひさし)さんは、「ちょうどそのころ会社全体としてダイバーシティ経営の推進に動き出していたこともあり、総務部として障がい者雇用にも取り組んでいこうということになりました」と話す。同じく当時から総務部に所属し、いまは総務課長を務める平瀬(ひらせ)布美代(ふみよ)さんとともに障がい者雇用に取り組むことになった。  高橋さんたちはさっそく2014年10月、ハローワーク主催の障がい者向け企業就職面接会に初めて参加した。「予想以上に多くの求職者が参加していて驚きました。17人の方と面接もして、大きな手ごたえも感じました」(高橋さん)  その後、日本AMCが開催した「会社見学会」には就労移行支援事業所や特別支援学校から12人が参加、11月に7人が3日間の就業体験会に参加し、精神障がいのある男性1人が高校新卒として2015年4月に入社した。  このとき日本AMCは、3月から6月にかけ計3回の「支援会議」を開催した。本人と保護者をはじめハローワーク担当者、当機構(JEED)の福井障害者職業センターの障害者職業カウンセラーと職場適応援助者(ジョブコーチ)が一堂に会し、本人の不安を軽減できるよう、現場の支援体制づくりについて意見交換や情報共有を行ったそうだ。  一方、総務部や入社した男性の配属部署の17人を対象に「障がい者雇用学習会」も開いた。福井障害者職業センターから、本人の特性や必要な配慮、ジョブコーチ支援の内容について説明を受け、アドバイスももらった。平瀬さんは「いろいろな面で初めて経験することもあり、専門家の方たちに相談しながら受け入れの準備ができたのは心強かったですね」と当時について話す。  その男性社員は、職場では出荷準備作業などを順調にこなしていたが、事情により7カ月後に退職となった。「残念な結果でしたが、受け入れが失敗したわけではないので、引き続きハローワークなどの紹介を受けながら採用活動を進めていきました」と高橋さん。  同年のうちに男性2人を採用し、最初に入社した従業員と同様に、支援会議や学習会を開催しながら定着支援に力を入れたそうだ。前回同様、ジョブコーチによる支援を活用し、入社3カ月後には「ジョブコーチ支援振り返り会議」として、福井障害者就業・生活支援センターの担当者も加わり、職場改善や本人への支援対応について情報交換を行った。  2人のうち1人は2年目にやむなく退職となったが、もう1人の麻生(あそう)竜馬(りょうま)さん(37歳)は、現在勤続10年目になるという。さっそく、麻生さんが働いている現場を見せてもらった。 部品の組付け作業  麻生さんの配属先である製造部製造2課組立グループは、本社2階のフロアにある。あちこちに部品材料などが入った容器が積み上げられ、従業員はそれぞれ部品の組立作業などに従事している。麻生さんも、組立の工程の一つであるナットやワッシャーの組付け作業をしていた。  麻生さんは、以前の職場で体調を崩し退職後、就労移行支援事業所に通っていたところハローワーク経由で紹介されたそうだ。日本AMCでは、本人の特性を考慮して「作業指示はこまかく分ける」、「図や写真を活用した説明」などの工夫をしながらOJTを重ねた。  麻生さんについて、製造部製造2課課長の今度(こんど)隆宏(たかひろ)さんは、「ほかの従業員と分けへだてなく指導していますが、毎日コミュニケーションをとるようにしています」と話す。本人の特性として、周囲への注意力が散漫になったり、忘れやすくなったりすることがあるため「現場には安全面で守るべきルールがあり、麻生さんには、毎日のようにくり返し確認しています」とのことだ。  また麻生さんは、隣のベテラン男性に話しかけることが好きで、つい話に夢中になってしまうこともある。そこで本人に承諾を取り、2人の間にパーテーションを立てることで、作業の合間だけ世間話ができるようになっているそうだ。  数年前から麻生さんは、組付け作業以外にも、部品入り容器を別フロアから運搬してくる作業も担当するようになった。「やることがたくさんあって、たいへん」という麻生さんだが、一方で「いまはやさしい先輩がいて、上司もよい人だからありがたいです」と明かしてくれた。 2カ月ごとの面談でフィードバック  麻生さんたちが入社以来ずっと続けているのが、2カ月ごとの「障がい者フォロー面談」だ。就業面や生活面についての状況確認と可能な支援について、本人と総務部、配属先の管理職らが一緒に話し合う場となっている。  高橋さんは「日ごろから本人と会話はしていますが、それとは別に面談というあらたまった場で、じっくり話を聞いてもらいたいという気持ちがあるようです。職場では言葉数が少ない従業員でも、面談の終わるころに、急に話し始めることも少なくありません」と話す。  面談を通して本人の状況を把握するなかで「思い切って生活面に立ち入ることもあります」と平瀬さん。あるときは、年末調整で保険料の金額がかなり高いことに気づいた平瀬さんたちが本人に確認してみると、必要のない保険契約をいくつもしていたことが判明した。外部の支援機関とも連携しながら、解約手続きをサポートしたこともあったそうだ。高橋さんが話す。  「本格的な障がい者雇用に取り組むときは、やはり外部の就労支援機関との連携体制づくりが最重要だと実感しています。一人ひとりの特性について多様なアドバイスをもらいながら一緒に職場環境を考えていけば、私たちができることも多いと気づきますね」 社内で品質優秀賞  現場の上司や同僚に見守られつつ、キャリアアップを図っている従業員もいる。営業部出荷課出荷Bグループに所属する水本(みずもと)美咲(みさき)さん(25歳)だ。特別支援学校3年次に先生からすすめられて会社見学に訪れ、夏休みを活用した就業体験を6日間、11月〜12月にも現場実習を9日間経験したという。  水本さんは2018年の入社以来、オーリング装着と呼ばれる出荷準備作業を担当してきた。オーリングとは環状パッキンのことで、ネジなどにはめ込むことで接着部分から液体などが漏れないようにするものだ。  作業デスクに置かれた専用トレーは20カ所に区切られており、水本さんが、一つずつオーリングを入れてから、専用の治具を使ってネジ部品に一つずつはめ込んでいく。営業部出荷課課長の中(なか)重徳(じゅうとく)さんは、「この専用トレーを使うことで、数え間違いによる二重装着・装着漏れや異品装着を防止しています。水本さんにかぎらず、だれもが作業しやすいよう工夫した職場改善の一つです」と説明する。  同じ現場の先輩としてフォロー役をになっている酒田(さかた)真奈美(まなみ)さんは、「心がけているのは、不安のない状態で仕事に取り組んでもらうことです」と話す。「『気になることはいつでも聞いてね』といってありますし、顔や手の動きが見える距離にいるので、動きが止まったり顔色が悪かったりするときは声をかけています」  特に入社から数年の間は体調を崩すこともあり、休憩室に行くよう誘導したり、同僚の女性従業員らで励ましたりしていたそうだ。水本さんは「最初のころは仕事への緊張で、食べても吐いてしまって、すごく痩せてしまったこともありました。だんだん職場に慣れてきて、大丈夫になりました」とふり返る。最近では「安全唱和の声が大きいと褒められたことが、うれしかったです」という。  水本さんの仕事ぶりについて酒田さんは、「とにかく素直でまっすぐな性格で、まじめにていねいに作業してくれます。私がダブルチェックをしていますが、全然ミスがありません。それどころか製品の小さな傷も見つけ出してくれるので、助かっています」と太鼓判を押す。実際に水本さんは2024年、2人の従業員とともに社内で「品質優秀賞」を受賞している。  中さんは、水本さんについて「そろそろ次のステップというか、ほかの業務にもトライしてみないかとすすめているところです」という。そして、いまはピッキング作業をペアでやり始めているそうだ。同時に、現在の6時間勤務のパートタイム契約から正社員を目ざせるよう、週1回の8時間勤務も試している。  「フォロー面談などで、みんなで相談し、彼女の意思を尊重しながら進めています」と平瀬さん。中さんも「これは本人が自立して生活していくためのキャリアアップの一環です。余計なお世話と思われているかもしれませんが、少しずつ背中を押していきたいですね」と親心をのぞかせる。  水本さんも「新しい作業でミスがないか不安になることもありますが、ほかの業務もフルタイム勤務も、挑戦したいと思っています」と笑顔で意欲を語ってくれた。 人と話すことが苦手でも  2017年に入社した沙(いさご)新吾(しんご)さん(56歳)は、前の仕事を辞めてから、初めて療育手帳を取得したという。「なんとなく自覚があったので、きちんと診断してもらいました。その後は障害福祉サービス事業所で清掃やシール貼りの作業などをしていました」  その後、福井障害者就業・生活支援センターの紹介で5日間の就業体験に参加し、「就業振り返り会議」などで必要な配慮についても情報共有してもらったそうだ。平瀬さんによると「人と話すのが苦手と聞いていたので、会話の負担をかけないようスケジュール表を作成し、それに沿って作業できるようにしました」。  沙さんの担当は本社建物内の清掃業務で、日ごろは1人でこなしている。会議室や食堂、廊下など場所も内容も多岐にわたるが、最初は福井障害者職業センターから派遣されたジョブコーチにくり返していねいに教えてもらいながら、作業を覚えることができたそうだ。  5〜10分ごとに細かく区切られた「作業タイムスケジュール表」も年々改善されてきた。簡単な平面図に番号で清掃場所を示したり、使い分けるタオルを色で判別しやすくしたり、備品の補充を総務部に依頼するときは「注文リスト」にチェックを入れて提出する形にした。沙さんは「いまはストレスなく、1人で作業できているので働きやすいです」と話す。平瀬さんによると「職場に慣れてきたのか、最近は注文リストを提出するときも、私たちに声がけをしてくれるようになっています」とのことだ。  一人暮らしの沙さんは「今後は、健康に気をつけながら定年まで働き続けることが目標です」と話してくれた。私生活では、毎日家計簿をつけ、お弁当もつくっているそうだ。 「優秀勤労障害者」を受賞  4人目に紹介するのは、2021年に「優秀勤労障害者」当機構理事長努力賞を受賞した油谷(あぶらだに)宏明(ひろあき)さん(36歳)だ。油谷さんは2007年、農業高校の卒業と同時に入社し、品質保証部で検査業務を担当してきた。聴覚障がいのある油谷さんは、通常の会話はできるため、入社前に「少し聴こえにくいので、迷惑をかけることがあるかもしれない」と伝えていたそうだ。  だが実際に工場内で働き始めてみると、予想以上に、相手の声が聴き取れないことに気づいた。特に機械音で騒がしい現場での細かい指示や、自分に向けられていない会話などは聴き取りにくかったという。「まだ人間関係ができていなかったこともあり、内容を聞き返すことがなかなかできませんでした。その結果、何度かミスをしてしまったこともあります」と明かす。  入社以来10年以上にわたり先輩として指導してきた小林(こばやし)晶子(あきこ)さんが、当時のことをふり返ってくれた。  「最初のころ、『わかりました』といったあとに勘違いしていたことがありました。それで一時期、指示した内容をその場で復唱してもらうことにしました。すると本人も、自分から『もう1回いってください』などと積極的に確認するようになっていったように思います」  その後、職場に慣れるなかで本音もいえるようになり、いまではわからないときもすぐに確認できるようになったそうだ。  油谷さんは5年ほど前、上司にすすめられて国家資格の機械検査技能士2級試験を受け、2回目で合格できた。2年前からは、機械を使っての専門的な検査業務を任されている。「覚えることが増えたので、たいへんなことも多いですけど、キャリアアップという意味でも、自分の身になっていると実感しています」と話す。次は、機械検査技能士1級試験にも挑戦したいという油谷さんは、「ゆくゆくは、職場の上司や同僚から安心して仕事を頼まれるような存在になりたいですね」と語る。小林さんも「本人の努力もあり、すっかり成長して、いまではかなり助けてもらうこともあります。今後も活躍していってほしいです」と笑顔で激励していた。 だれもが働きやすい職場に  日本AMCは2017年から、企業と特別支援学校の連携・協力を推進する福井県の制度「『ともに働く』就労応援ふくい」サポーター企業に登録し、職場見学・就業体験・現場実習の受け入れを行っている。同様に、就労支援機関などからの職場見学・就業体験も続けている。「職場全体で人材不足というわけではありませんが、今後も特別支援学校からの実習生は受け入れますし、採用活動も続けていきます」と高橋さんは語る。  一方で、現場の支援担当者や同僚に過度な負担がかからないよう、フォローが必要な場面も増えている。平瀬さんは、2022年にJEEDの「企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修」を修了し、継続的に「職場適応援助者支援スキル向上研修」も受けているそうだ。「私たちの障がい者雇用についての姿勢は、会社全体のダイバーシティ推進にもつながっているので、ぶれずに取り組むことができていると思います」と平瀬さん。実際に職場では、フィリピンやベトナムなど5カ国の出身者が15人、60〜70代の従業員も20人働いており、コミュニケーションや体力などのハンデを軽減する工夫をしてきた。  こうした会社全体の取組みの軸となっているのが、「『だれでも、いつでも、どこでも』働きやすい、働きがいのある職場づくり」という社長方針だ。  高橋さんは「職場では、子育てや介護、病気療養など、いつだれがサポートを必要になるかわかりませんよね」としたうえで、「障がいの有無に関係なく『働きやすい職場づくり』は基本的に同じです。さまざまなサポートや職場改善の取組みが、だれにとっても働きやすい職場につながりますし、またサポートする側も、一緒に成長できるということを実感しています」と語ってくれた。 ★本誌では通常「障害」と表記しますが、株式会社日本エー・エム・シー様のご意向により「障がい」としています ※もにす認定:正式名称は「障害者雇用に関する優良な中小企業主に対する認定制度」で、厚生労働大臣が認定するもの 写真のキャプション 株式会社日本エー・エム・シーは、高圧配管用の金属製継手の製造を手がける 株式会社日本エー・エム・シー取締役専務執行役員で総務部部長の高橋永さん 総務部総務課長の平瀬布美代さん 製造部製造2課課長の今度隆宏さん 麻生さんは、ナットやワッシャーの組付け作業を担当している 製造部製造2課組立グループの麻生竜馬さん 水本さんは、オーリング装着作業を担当している 営業部出荷課出荷Bグループの水本美咲さん オーリングの装着漏れ防止などに専用トレーが活用されている 営業部出荷課で水本さんのフォローにあたる酒田真奈美さん 営業部出荷課課長の中重徳さん 折りたたんだ新聞は、製品を入れるコンテナの下敷きや中敷きとして利用されている 沙さんは、清掃業務のほか「新聞折り」の作業も担当している 総務部総務課の沙新吾さん 品質保証部で油谷さんの指導にあたってきた小林晶子さん 油谷さんは、製品の検査業務を担当している 品質保証部の油谷宏明さん 【P10-11】 クローズアップ 障害者雇用率向上へのヒント 第4回 「選ばれる企業」になるための障害者採用  障害者の採用市場はいま、求職者が企業を“選ぶ”時代へと変化しています。採用競争が激化するなか、法定雇用率の達成だけでなく、「どんな企業が選ばれるのか」という点が大きな分かれ目になりつつあります。特に、やりがいや成長を重視する人材が増えるなかで、企業には「働く魅力」や「ともに成長するビジョン」の提示が不可欠です。第4回では、障害者採用の支援に長くたずさわってきた障害者雇用コンサルタントの松井優子さんが、「選ばれる企業」になるための採用の再設計と実践アプローチについてお伝えします。 執筆者 障害者雇用ドットコム代表 東京情報大学非常勤講師 松井(まつい)優子(ゆうこ)さん はじめに  近年、障害者の採用市場にも大きな変化がみられています。これまでは「企業が選ぶ側」だった採用活動が、「障害のある人側が企業を選ぶ時代」へと移行しつつあります。また、人材不足が深刻化するなかで、企業間の採用競争も激化し「採用できる企業」と「採用が難航する企業」の二極化が進んでいます。これは一般枠の採用だけでなく、障害者雇用でもこの傾向がみられます。  このような時代背景をふまえ、企業は採用活動に関するアップデートをしていく必要があります。障害者採用の支援に長くかかわってきた立場から、今回は「選ばれる企業になるために必要な具体的なアプローチ」についてお伝えしていきます。 障害者枠で働きたい層の変化  これまで障害者雇用といえば、定型的な作業を、安定してこなせる人材を採用するというイメージが一般的でした。しかし近年、障害者枠で働きたいと考える人たちの層に変化が生まれています。特に目立つのは、2018(平成30)年に障害者雇用義務の対象に精神障害者が加わって以降、「やりがいを持って働きたい」、「自分自身も成長したい」、「企業に貢献したい」という意欲を持った人たちが増えてきていることです。  これにより、従来の事務補助や軽作業だけでなく、例えばITサポート、マーケティング、バックオフィス業務など、より専門性を活かした職種にも対応できる人材層へと拡大しています。これは企業にとって、大きなチャンスとなります。業務内容を「かぎられた範囲に限定されたもの」から考えるのではなく、多様な人材活用の一環として積極的に設計し直すことで、採用の可能性も組織の成長可能性も大きく広がっていくからです。いま、障害者の採用を限定された領域から可能性の拡大へととらえ直すこと。これが、これからの企業に求められる視点です。 採用がむずかしいと感じる企業の“共通点”  障害者の採用を進めるうえで、「なかなかよい人材が集まらない」、「採用しても定着しない」と悩んでいる企業も少なくありません。こうした企業に共通してみられるのが、従来型の採用手法や業務設計にとらわれ続けているという点です。例えば、障害のある人の職務として軽作業や定型業務しか設定されていない場合、意欲を持ち、スキルを活かして働きたいと考える人材には、その企業の求人は魅力的に映りません。  また、自社の魅力や特徴を十分に発信できていないケースも多く見受けられます。どのような社風なのか、どんな働き方ができるのか、成長機会やキャリアパスはあるのかなどが具体的に伝えられないまま採用活動を進めても、選ばれる企業にはなりにくいのが現実です。  さらに、「採用する側の目線」だけで活動してしまっていることも大きな課題です。「まずは採用して障害者雇用率を満たしたい」、「◯◯障害だから、△△の業務はむずかしいだろう」という認識をしていると、いまの障害者枠の求職者のニーズとは大きなギャップが生じます。時代が変わり、働き手も変わっています。企業はどのような人材を採用したいのかを真剣に考えることが、いま、強く求められているのです(図1)。 「選ばれる企業」になるためのアプローチ  では、実際に「選ばれる企業」になるためには、どのような取組みが必要なのでしょうか。いますぐ取り組める四つのアプローチをご紹介します。 1.採用ターゲットの再設計  「障害者だからこの仕事しかできない」という固定観念を手放し、どのような業務を任せる人材を採用したいのかを明確に定義することが第一歩です。そのうえで、勤務条件(時短勤務やフレックス、リモートワークの可否、頻度等)を明記することがミスマッチを防ぎ、活躍人材を確保する鍵となります。 2.企業の魅力発信  単に仕事内容を列挙するだけでは、魅力は伝わりません。自社の雰囲気、働き方、支援体制、成長できる環境などを、リアルな言葉で、具体的に発信することが重要です。働き手が知りたいのは、「この会社に入ったら、どんな日々が待っているか」、「自分はここで成長できるか」という未来像です。 3.選考プロセスの見直し  画一的な面接や書類選考では、本当に必要な人材を見抜けないこともあります。例えば、コミュニケーションが苦手でも、業務遂行能力に優れている人、未経験でも、素養やポテンシャルを持つ人がいます。このような人材を見きわめるには、業務体験型のインターンシップを活用するのも一つの方法です。 4.入社後のサポート体制の整備  採用はスタートであり、職場定着には、障害者と一緒に働く社員の理解や、受け入れ体制を整えることが欠かせません。定着率とパフォーマンスに大きく影響します。もし採用後にトラブルや課題が発生した場合も、障害特性だけで原因を決めつけるのではなく、業務設計・環境・マネジメントの観点から冷静にふり返ることが重要です(図2)。  いま、障害者採用で企業に求められているのは、「ともに働く未来」を描く力です。採用活動においては、準備不足やマネジメントの課題、原因分析の不十分さが定着の壁になるケースも少なくありません。選ばれる企業になるためには、採用手法に加え、組織のなかで障害者雇用をどのように位置づけ、どんな価値を生み出していくのか。その意味づけを再設計することが必要です。 *****  次回は、テクノロジーの活用や多様な働き方に取り組んでいる企業の事例から、これからの時代に企業に求められる障害者雇用についてお伝えします。 図1 採用の課題を解決するためのポイント 魅力的な職場を伝えられているか? 成長機会があるか? 求める人材像を明確にしているか? 業務や採用方法が時代に合っているか? 筆者作成 図2 選ばれる企業になるために… 採用ターゲットの再設計 選考プロセスの見直し 企業の魅力発信 入社後のサポート体制の整備 筆者作成 【P12-14】 JEEDインフォメーション 〜高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)からのお知らせ〜 ◆令和7年度「地方アビリンピック」開催地一覧◆ 各都道府県における障害者の技能競技大会「地方アビリンピック」が下記の日程で開催される予定です。 アビリンピック マスコットキャラクター アビリス 都道府県 開催日 会場 北海道 10月4日(土) 北海道職業能力開発促進センター 青森 10月下旬〜11月上旬(予定) 青森職業能力開発促進センター(予定) ホテル青森(喫茶サービス)(予定) 岩手 6月22日(日) 岩手県立産業技術短期大学校 矢巾キャンパス 宮城 7月12日(土) 宮城職業能力開発促進センター 秋田 7月10日(木) 秋田市にぎわい交流館AU 山形 7月3日(木) 山形国際交流プラザ(山形ビッグウイング) 福島 7月5日(土) 福島職業能力開発促進センター 茨城 7月19日(土) 7月20日(日) 茨城県職業人材育成センター 栃木 7月5日(土) 栃木職業能力開発促進センター 障害者スポーツセンター(わかくさアリーナ) 群馬 7月5日(土) 群馬職業能力開発促進センター 埼玉 7月5日(土) 国立職業リハビリテーションセンター 埼玉職業能力開発促進センター 千葉 11月29日(土) 千葉職業能力開発促進センター 東京 2月中旬〜下旬 東京障害者職業能力開発校 職業能力開発総合大学校 神奈川 11月8日(土) 11月15日(土) 関東職業能力開発促進センター 神奈川障害者職業能力開発校 新潟 9月6日(土) 新潟市総合福祉会館(予定) ホテルグローバルビュー新潟(予定) 富山 7月19日(土) 富山市職業訓練センター 富山県技術専門学院 石川 調整中(10月頃) 石川職業能力開発促進センター 福井 6月21日(土) 7月5日(土) 福井職業能力開発促進センター 福井県立福井産業技術専門学院 山梨 10月5日(日) 山梨職業能力開発促進センター 長野 7月12日(土) 長野職業能力開発促進センター 岐阜 7月5日(土) ソフトピアジャパンセンター 静岡 7月12日(土) 静岡市東部勤労者福祉センター清水テルサ 静岡市清水文化会館マリナート 静岡職業能力開発促進センター 愛知 @6月7日(土) A6月8日(日) B6月15日(日) C6月28日(土) @大成今池研修センター A専門学校日本聴能言語福祉学院 B愛知県立名古屋聾学校 C中部職業能力開発促進センター 三重 6月28日(土) 三重職業能力開発促進センター 滋賀 11月15日(土) 近畿職業能力開発大学校附属滋賀職業能力開発短期大学校 京都 1月31日(土) 京都府立京都高等技術専門校 京都府立京都障害者高等技術専門校 大阪 6月21日(土) 7月5日(土) 関西職業能力開発促進センター (社福)日本ライトハウス視覚障害リハビリテーションセンター 兵庫 6月21日(土) 7月5日(土) 兵庫職業能力開発促進センター 奈良 7月19日(土) 奈良職業能力開発促進センター 和歌山 7月5日(土) 和歌山職業能力開発促進センター 鳥取 6月26日(木) 鳥取県立福祉人材研修センター 島根 7月12日(土) 島根職業能力開発促進センター 岡山 7月5日(土) 7月12日(土) 岡山職業能力開発促進センター 広島 7月19日(土) 広島職業能力開発促進センター 山口 10月4日(土) 山口職業能力開発促進センター 徳島 6月28日(土) 徳島職業能力開発促進センター 徳島ビルメンテナンス会館 香川 2月頃 未定 愛媛 7月5日(土) 愛媛職業能力開発促進センター 高知 @6月28日(土) A7月5日(土) @学校法人龍馬学園 龍馬デザイン・ビューティ専門学校 A高知職業能力開発促進センター 福岡 【北九州会場】 7月5日(土) 【福岡会場】 7月12日(土) 【北九州会場】 福岡職業能力開発促進センター 【福岡会場】 クローバープラザ 佐賀 1月頃 佐賀職業能力開発促進センター 長崎 7月5日(土) 長崎職業能力開発促進センター 熊本 6月22日(日) 熊本職業能力開発促進センター 大分 10月4日(土) 大分職業能力開発促進センター 宮崎 7月5日(土) 宮崎職業能力開発促進センター 宮崎県ビルメンテナンス協会 鹿児島 @7月7日(月) A7月12日(土) @鹿児島ホテル短期大学校 A鹿児島職業能力開発促進センター 沖縄 7月19日(土) 沖縄職業能力開発大学校 ※2025年6月10日現在 詳細は、ホームページをご覧ください。 地方アビリンピック 検索 アクセスはこちら! ・開催地によっては、開催日や種目ごとに会場が異なります。 ・日程や会場については、変更となる場合があります。 障害者職業総合センター職業センター 2024(令和6)年度成果物のご案内  障害者職業総合センター職業センターでは、発達障害者、精神障害者および高次脳機能障害者それぞれの障害特性や事業主のニーズに応じた新たな職業リハビリテーション技法の開発と改良を行っています。また、その成果を支援マニュアル等に取りまとめて、幅広い普及に努めています。2024年度は、以下の三つの技法開発に取り組み、支援マニュアル等を発行しました。 支援マニュアルNo.28 「発達障害者の障害特性を踏まえた相談の進め方」  発達障害者の自己理解を深めるためには自ら経験を振り返り、気づきを得ることが大切であることから、支援者は適切にサポートすることが求められています。  そのため、発達障害者との相談におけるポイントを、「相談の構造化」、「相談で活用できる支援ツールの整理」、「支援者の相談スキルの振返り」としてまとめました。  付録では、相談の際によく遭遇する場面を取り上げ、「対応のヒント集」、相談で活用できる各種支援ツールを一部紹介しています。(2025年3月発行) ※今号の「研究開発レポート」(28ページ)で概要についてご紹介しています。 実践報告書No.41 「職場復帰に向けた調整のための効果的なアセスメントの実施方法」  職場復帰支援では、休職者・事業主・主治医の三者から必要な情報を把握したうえで、職場復帰に向けた取組課題や目標についての共通認識を形成することが大切です。  そこで、今回は職場復帰支援において、休職者と事業主が職場復帰に向けた情報の整理・共有に基づいて合意形成を行う際のポイントや、合意形成後の円滑な支援や調整につなげるための支援ツールとして「情報共有シート(2024版)」、「復職に向けた行程整理シート(2024版)」等を作成し、実践報告書として取りまとめました。(2025年3月発行) 実践報告書No.42 「高次脳機能障害者の自己理解を進めるための支援技法の開発」  高次脳機能障害者の自己理解を進めるためのアプローチは、認知機能の低下等も含め、個々の状況に応じて支援方法を検討することが大切です。  そこで、今回は高次脳機能障害者自身の目標にしたいことや関心のあること、できていることに目を向けるアプローチを検討し、実践しました。  「キャリア講習の改良(高次脳機能障害者版)」、「振返り・工夫検討シート」の作成や、個別相談やメンバー同士の意見交換などを活用した振返りの工夫など、職業センターのプログラムで実践したこと、活用したツール、工夫点や留意点などを実践報告書に取りまとめました。(2025年3月発行) ◎障害者職業総合センターホームページ(NIVR)から、全文やすぐに使える資料等をダウンロードできます。 https://www.nivr.jeed.go.jp/center/index.html <お問合せ>障害者職業総合センター職業センター 企画課調整係 TEL:043-297-9043 無料 JEEDメールマガジン 新規登録者募集中!! 当機構(JEED)では、JEEDが全国で実施する高齢者や障害者の雇用支援、従業員の人材育成(職業能力開発)などの情報を、毎月月末に配信しています。 おもな特徴 ◇毎号特集を組んで業務内容を紹介 ◆当機構の制度やサービス内容がよくわかる ◇マイエリア情報で地元情報をチェック! ◆セミナーやイベント情報が満載 雇用管理や人材育成の「いま」「これから」を考える、人事労務担当者や就労支援担当者のみなさま、必読! 定年延長・廃止に再雇用… 障害のある従業員の新規・継続雇用… 技能開発・向上の手段… そのお悩みのヒントが見つかります!! 登録方法 JEED メルマガ で 検索 または から! 企画部 情報公開広報課(TEL:043-213-6215) 【P15-18】 グラビア 郷土の味をつくる 株式会社しまおう(長崎県) 取材先データ 株式会社しまおう 〒853-0031 長崎県五島市(ごとうし)吉久木町(よしくぎちょう)729-1 TEL 0959-74-2525 写真・文:官野貴  長崎県五島市に所在する「株式会社しまおう」(以下、「しまおう」)は、地元や県内で水揚げされた海産物を使った練り物製品の製造、販売を手がける。製品は、五島市の郷土食として長年市民に親しまれている。また、市内の飲食店などで提供され、離島を訪れる観光客にも好評だ。  同社における障害者雇用のきっかけは、9年前に障害者就業・生活支援センターの依頼で職場実習を受け入れたこと。現在では、従業員23人中、5人が障害のある従業員であり、若い世代が島を出てしまい働き手の少ない離島において、障害のある従業員が欠かすことのできない戦力となっている。  9年前に職場実習を経て入社したのが石田(いしだ)利香(りか)さん(58歳)だ。実習で集中して作業に臨む姿が雇用につながったという。「食べ物をつくるのが得意です。成型がイメージ通りに仕上がるとうれしい」と話す。  入社3年目の門口(かどぐち)恵海(めぐみ)さん(28歳)も、職場実習を経て入社した一人。仕事のやりがいについてたずねると「自分のつくった製品が、贈答品などとして日本全国に送られていると思うとうれしいです」と教えてくれた。  島外で働いていた佐々野(ささの)瑠哉(りゅうや)さん(27歳)は、地元の福江島(ふくえじま)で働きたいとの思いから、しまおうへの転職を決めた。「しまおうは楽しい職場です。ここで働き続けたい」と話す。  市内のスーパーなどへの配送・納品を担当している井川(いがわ)宏汰朗(こうたろう)さん(21歳)は、特別支援学校在籍時の職場実習を経て入社。担当業務は「自分に合った仕事」と話す。納品の際、「お客さまから『しまおうのすり身が一番おいしいよ』と話しかけられたことがあり、とてもうれしかった」と教えてくれた。  同社は2024(令和6)年度、「障害者雇用に関する優 良な中小事業主に対する認定制度」(もにす認定制度)の認定や「障害者雇用優良事業所」県知事表彰を受けた。今後も、特別支援学校の職場実習を引き受けるなど、障害者雇用に貢献していく予定だという。 写真のキャプション 人気商品の一つ「すり身パック」の製造工程で、充填機にすり身を補充する石田利香さん すり身が充填されたパックの成型作業。手でパックを押し、形を整える。力加減が重要だ 成型したすり身パックをコンテナに並べる石田さん(左)。充填機への補充と成型の作業を同時並行で行っている 「すり身パック」の裏側に封印シールを貼る門口恵海さん パック裏側の表示を隠さない位置に、まっすぐに貼りつける シールを貼り終えたすり身パックをコンテナに並べる門口さん 「あじ巻かまぼこ」の製造工程で、すり身の計量・打ち出しを担当する佐々野瑠哉さん(左から2人め)。周囲の作業の進捗を見ながら、タイミングよくすり身を打ち出す 製造装置の洗浄を行う佐々野さん。装置のセッティングも担当しており、製造部門において欠かせない社員だ 出荷作業の様子。石田さんは、賞味期限の印字を1点1点ていねいに確認しながら作業を進めていた スーパーの売り場に並ぶ「しまおう」の練り物製品。地元で愛される郷土の味だ スーパーの売り場に製品を並べる井川宏汰朗さん。「自分に合った仕事です。お客さまが見やすいように商品を並べることを心がけています」と話す 【P19】 エッセイ 障害のある人の地域生活支援について 第3回 「地域移行」に一歩を踏み出す 日本社会事業大学社会事業研究所 客員教授 曽根(そね)直樹(なおき) 知的障害のある人の入所施設、障害児の通園施設、レスパイトサービス、障害者グループホームの職員を経験した後、障害者相談支援事業の相談員などを経て厚生労働省障害福祉課虐待防止専門官として5年間勤務。日本社会事業大学専門職大学院教授を経て定年退職後、現職。  「地域移行」とは、障害のある人の生活の場を、入所施設から地域社会に移行することです。昭和の時代に、「収容保護」と「指導訓練」の場として障害者の入所施設がつくられました。定員100人、なかには500人規模の施設もつくられ、広い土地が必要だったり、建設予定地の周辺住民からの反対にあったりして、人里離れた場所に施設がつくられることも少なくありませんでした。  1959(昭和34)年、デンマークで制定された「1959年法」にノーマライゼーションという言葉が使われました。障害のある人を特別な施設に「収容保護」し、障害を改善して「健常者」に近づけるために「指導訓練」を受けさせるという考えをあらため、障害をそのまま受け入れ、地域社会のなかで居住・仕事(子どもにとっては、保育園・幼稚園や学校)・余暇の三つの側面で、障害のある人が一般市民として障害のない人と同じ生活を送ることができる社会こそがノーマルな社会だ、という障害福祉の理念の大転換でした。  日本でも、北欧から遅れること20年、国連が宣言した1981年の国際障害者年とともにノーマライゼーションが浸透しはじめ、地域移行が政策として取り上げられるようになりました。2006(平成18)年に施行された障害者自立支援法(現在の障害者総合支援法)は、市町村、都道府県に3年間を計画期間とする「障害福祉計画」の策定を求めました。障害のある人たちが、少人数で職員の支援を受けながら地域の住居で生活するグループホームの設置目標数などとともに、入所施設から地域生活に移行する人数も目標として掲げ、地域移行を計画的に進めることになったのです。  障害福祉計画は、現在第7期に入っていますが、地域移行者数は、第4期計画から減少しはじめ、いまでは、3年間の計画期間で地域移行者数がゼロという市町村も少なくない現状となっています。その要因は、施設を出て地域で生活できる人たちは地域移行を果たし、それがむずかしい重度や高齢の障害のある人が施設に残っているからと説明されています。でも、それだけなのでしょうか。  市町村では、障害福祉計画をつくるにあたり、障害当事者や家族、福祉関係者、有識者、地域住民の代表などから構成される計画策定委員会を立ち上げて検討します。大学教員という仕事柄、いくつかの市町村の計画策定委員会に加わることになりましたが、それらの市町村は、いずれも地域移行の目標値を達成していませんでした。とある市の担当者に「地域移行の目標人数を達成するために何をしていますか?」とたずねてみると、「特になにもしていません」という回答でした。地域移行の目標が達成できていないのに何もしていない実情があるのだとしたら、地域移行が進まない要因は施設入所者の障害の重度化、高齢化以外にも原因があるのではないかと思いました。  そこで、市から施設入所しているすべての障害のある人に対して、地域移行の希望があるかについての意向調査をすることを提案しました。重い知的障害があって、ご自分で調査に回答することができない人もいることを考慮し、施設入所している人を担当している相談支援専門員を通して意向を把握することになりました。市の職員と相談支援専門員が協力して取り組んだ結果、200人以上の施設入所者のうち30人以上から地域移行の希望があるという回答が集まりました。その後、個別に地域移行に向けた支援を行った結果、それまで地域移行ゼロだったところ、1年で9人が地域移行することができました。  もし、このような取組みを全国約1700の市町村が行ったらどうなるでしょう。地域移行が進まないのは、入所者の重度化・高齢化が要因と思い込んで立ち止まっている状態から、次の一歩を踏み出すことができるのではないでしょうか。 【P20-25】 編集委員が行く 安定した職業生活を支えるリワークの意義と課題 医療法人社団心緑会小石川メンタルクリニック リワークデイケア(東京都)、NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワークJSN東京(東京都) 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 取材先データ 医療法人社団心緑会(しんりょくかい) 小石川メンタルクリニック リワークデイケア 〒112-0012 東京都文京区大塚3-6-5 白井ビル NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワークJSN東京 〒150-0011 東京都渋谷区東2-22-10 メディアパーク八島ビル2F 三鴨(みかも)岐子(みちこ) 編集委員から  現代の職場では、メンタルヘルスの問題がかつてないほど深刻になっています。長時間労働、人間関係のストレス、在宅勤務による孤立など、働く環境は多様に変化しており、だれもが心の不調を抱えるリスクと隣りあわせです。「うつ病」や「適応障害」などの精神的な不調により、社員が休職や退職を余儀なくされるケースが後を絶ちません。そうしたなか、職場への復帰をサポートする「リワークプログラム」を取材しました。 Keyword:精神障害、メンタルダウン、医療、リワーク、復職、デイケア、就労移行支援事業所 写真:官野貴 POINT 1 職場でのメンタル疾患の発生が増えている 2 回復・復職のための充実したリワークプログラムを構築 3 再発防止のためにも職場環境の整備が必要 職場でのメンタルヘルスとリワークプログラム  リワーク(return to work)プログラムとは、「職場復帰支援プログラム」のことであり、休職した方が、円滑かつ安定的に元の職場に復帰することを目ざして設計された、医療と就労支援の中間的なステップです。元の職場に戻るだけではなく、場合によっては転職も視野に入れます。治療とリハビリの両面をになうリワークは、単なる通院治療では得られない「社会復帰のウォーミングアップ」を提供するもので、おもに四つの場所で提供されています。 1.行政機関(費用:無料) a.都道府県・政令指定都市の精神保健福祉センター b.地域障害者職業センター c.市町村の保健センター・保健所 2.医療機関 精神科病院、神経科クリニック(各種健康保険・自立支援医療) 3.就労移行支援事業所(利用者負担) 4.民間企業(有料)  本記事では、医療機関「医療法人社団心緑会小石川メンタルクリニック リワークデイケア」(東京都)と、就労移行支援事業所「NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワークJSN東京」(東京都)でのリワークプログラムを取材しました。 精神科デイケア※でのリワークプログラム  医療法人社団心緑会小石川メンタルクリニック院長の山田(やまだ)浩樹(ひろき)さん、精神保健福祉士の瀬戸口(せとぐち)和久(かずひさ)さん、作業療法士の高田(たかだ)勝太(しょうた)さんにお話をうかがいました。同クリニックのリワークデイケア(以下、「小石川デイケア」)は2008(平成20)年開設で、現在17 年目。スタッフは医師・看護師・精神保健福祉士・作業療法士・臨床心理士・公認心理師の総勢9名です。医師と医療スタッフが試行錯誤しながら以下のプログラムを構築してきました。 ・病状と体力の回復 ・対人コミュニケーション ・思考力、集中力、持続力 ・ディスカッション ・認知、行動面 ・自己理解、自己分析  毎年、約80名の新規利用者があり、8割が休職中、2割が離職をした方です。小石川メンタルクリニックの患者さんのほか、他のクリニックにかかりながら、小石川デイケアに通う人もいます。  休職者の場合、平均利用期間は6〜7カ月です。これは企業が復帰を「待ってくれる期間」であり、おおむねこの期間内に体調と心を整え職場復帰をします。主治医面談→小石川デイケア見学→体験参加→受け入れ会議→正式登録・利用開始という流れです。 利用開始〜復職までの流れ  初めて利用する人は、まず十分に静養したのち、生活リズムを取り戻すために小石川デイケアに通い始めます。最初のころは通うだけでもOKで、ソファなどでゆったりくつろぎます。少し元気を取り戻してから、プログラムに参加していきます。 ◎デイケア導入期(1〜2カ月)週2〜3日 ・決まった時間に通所できる ・生活リズムが整い継続通所できる ◎回復期(1〜2カ月)週3〜4日 ・自分の課題を設定し取り組む ◎リハビリ勤務・復職交渉期(1〜2カ月)週5日 ・自分の課題のほか、通勤や仕事の練習を行える ・120分のワークに集中できる ・円滑な職場復帰の準備が整う  1日6時間程度のプログラムで、利用者の段階に応じて、集団ワークや個人作業を行います。一人ひとりの課題(過集中傾向、自己否定感、他者との距離感など)を医療スタッフが個人面談でアセスメントし、プログラム参加やふり返り面談により改善をうながします。  小石川デイケアのスペースは2フロアに分かれています。個人作業ルームはコワーキングスペースのようにとても静かで、パソコンに向かう人、書き物をする人、本を読む人などがいて、利用が始まったばかりの人と、復職間近で仕事関連の作業をする人が混在しています。グループワークルームでは、みなさんがリラックスして、とても和やかな雰囲気でした。「元の職場では多かれ少なかれ対人関係の課題があり、つらい思いをしてきた方もいます。疑似的な職場ですが、アットホームな雰囲気のなかで、お互いのつらさを理解し、“仲間”に出会えた安心感があるのではないでしょうか。ここで人と話すことで笑顔を取り戻していきます」と高田さんが話していたのが印象的でした。 再発を防ぎ、長く働き続けるために  うつ病などは症状が軽快したからといって職場復帰しても、再発するケースが多くあります。その背景には、ストレス対処スキルの未獲得、自己理解の不十分さ、職場との関係再構築のむずかしさなど、さまざまな課題が存在します。ですから、ただ復帰するのではなく、「再発を防ぎ、継続して働き続けられるようにする」ことが重要です。そのためのプログラムは以下のような内容です。 ・集団認知行動療法 ・SST(ソーシャルスキルトレーニング) ・マインドフルネス ・アンガーマネジメント ・リワークミーティング ・復職支援プログラム ・軽スポーツ 《リワークミーティング例》 ・仕事の断り方・頼り方 ・仕事に対する力の入れ具合 ・仕事のモチベーション維持の仕方 ・不安とどう向き合うか ・自分の課題にどう向き合えばよいか ・キャパオーバーにならないペースの保ち方 ・人に怒られる、嫌われる恐怖心を薄めるには  これらはあらためて教わったことはないですが、仕事をしていくうえで知っておくとよい、とても大切な内容だと思いました。 企業との架け橋としての役割  休職や離職は社員個人の問題だけではなく、組織との関係が大きく影響するケースが多いです。ですから企業側も、本人任せにせず、本人の状態を把握し、組織が改善すべき点をみつけていくことが大切です。企業側には産業医や産業保健スタッフがいますが、主治医との情報連携をしようと考える企業は、まだまだ少数です。要望があれば瀬戸口さんたちは企業へ訪問し、利用者と企業の橋渡しを行っています。 復職後のフォロー  復職後も、平日や土曜日に担当スタッフとの個人面談ができます。土曜日の復職者テーマミーティングでは、体調管理、人間関係、仕事の取り組み方などについて、ほかの復職者やスタッフからアドバイスをもらうことができます。また、復職前の方が参加し、復職した方の経験談を聞くことができる場にもなっています。 コメントをいただきました 山田浩樹さん  離職前よりしなやかな強さを得られるようなリハビリを提供したいです。 瀬戸口和久さん  企業が気軽に医療とどう連携できるかを一緒に考えたいです。 高田勝太さん  休職してきた方には、自分の強み弱みを知って職場に戻り、これが最後の休職になってほしいと願いながらサポートしています。企業の方には、困っていることがあればいつでも気軽にご相談いただきたいと思います。 就労移行支援事業所のリワークプログラム  NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク(以下、「JSN」)は、精神科の医師が中心となって、精神障害のある方の就労を後押しするために設立された法人です。JSNの東京事業所であるJSN東京では、統括施設長の茂木(もぎ)省太(しょうた)さん、所長の井川(いかわ)幸恵(ゆきえ)さん、就労支援員の全形文(じょんひょんむん)さんにお話をうかがいました。  大阪の事業所も含め、数カ所の就労移行支援事業所を運営するJSNでは、就労した元利用者が体調を崩し休職した場合、必要に応じてフォローアップを行っていました。JSNは地域の医療機関との連携があるので、休職している方の対応について、医師からの紹介も多くありました。  初期のプログラムは食事・睡眠・運動への意識づけがメインでした。リワークプログラム内容のバリエーションの充実、よりよいプログラム構築のため、医療機関のリワーク施設やほかの就労移行支援事業所への見学・意見交換も行いました。現在は、JSNの理事で医師の杉山(すぎやま)博道(ひろみち)さんに協力をいただき、利用者のニーズに寄り添ったプログラムを構成しています。 プログラム例 【トレーニング】 ・軽作業・事務作業などの訓練 ・心理教育プログラム、グループワーク ・リハビリ出勤 【面談】 ・時間をかけて面談を実施 ・課題を細かく整理し、ていねいにフィードバック、次の面談までの目標を設定 ・復職前面談(本人・職場担当者・JSNスタッフの三者面談) 【個別プログラム】 ・復職後を想定した、実際の業務内容になるべく近い訓練 ・なぜ休職にいたったのかを考え、再休職を防ぐ取組みを提供 ・日報システム(SPIS(エスピス))を通して体調の波を把握し、自己管理スキルを会得  「医療機関では認知機能リハビリテーションがメインになると思いますが、われわれのような福祉事業所では生活面も含めた幅広い相談に乗れたり、企業担当者への定期的な報告ができ、ジョブコーチとしてフットワークが軽く動けたりする利点があります。企業の担当者や産業医との仲介役をになうことが増えてきました」と、茂木さんがお話しくださいました。 医療・本人・企業を結ぶ支援  JSNでは、利用前に3点セットと呼ばれる書類を用意しています。@本人アンケート、A主治医意見書、B支援者アンケートの三つです。もちろん、本人との面談からの聞き取りを大事にしながらも、別の角度の意見もアセスメントの参考にしています。日ごろから医療機関とのかかわりが多いため、本人と関係者の連携に長けている印象があります。  全さんは、休職・離職にいたるまでの思いを吐露してもらい、悲しみや怒り、自分を責めるといった気持ちの整理をすることを手伝います。自信を失くしている方が多いので、「本来の自分らしさ」は何だろうと一緒に考えていきます。その変化を文書化し、経緯報告を求める企業へは本人に確認したうえで伝えるようにしています。  休職は主治医の判断のみで可能ですが、復職には会社の判断も必要です。主治医が「復職可」と判断しても、会社側から「待った」がかかることもあります。正確な情報の共有が必要であると感じました。 プログラムの進化  井川さんに、新しく導入したプログラムについてお話しいただきました。  「自分をよりよく知ること、働く前の自分を取り戻すためにどうすればよいかに気づいてもらうこと、物事のとらえ方の癖、復職後の自分の立ち位置について考えるというワークを行い、一緒にふり返りを実施してきました。リワークで元気を取り戻し、復職していった方と面談をすると、職場ではコミュニケーションがうまくできないという状況がみえてきて、やはり医療機関で行う認知機能リハビリテーションが必要と考えました」  「日本精神障害者リハビリテーション学会前会長である池淵(いけぶち)恵美(えみ)先生を中心とした医療者が開発した、『VCAT(ヴィーキャット)−J(ジェイ)』という支援プログラムと出会いました。これは『Jcores(ジェイコアーズ)』というソフトウェアを用いた認知機能リハビリテーションと、就労支援モデルを組み合わせた支援プログラムです。注意・作業記憶・処理速度・言語性記憶・流暢性・遂行機能の六つをパソコンゲームと言語セッション(グループワーク)を通じて高めていくプログラムです。本人の得意なことや苦手なことを支援者と共有して、それを基に職場で働きやすくするための合理的配慮に活用することが、大事なポイントです。今後効果が出てくると期待しています」 早期発見・早期対応  「メンタル不調がどんどん悪化する前に、早い段階で自分自身を理解し、対処できるようになってほしい、という願いから、『リワーク』をやっています。早期発見、早期対応の大切さがご本人にも企業にも浸透していくとよいと思います」と茂木さんがお話しくださいました。 リワークをめぐる課題  小石川デイケアの瀬戸口さんによれば、利用機関によっては、リワークには次のような課題がみえています。 ・企業との連携 ・症状の改善に時間を要する ・個別対応の困難性 ・利用期間の短縮 ・職場復帰後のサポート ・支援の範囲がかぎられる ・ほかの医療機関との連携 ・一般枠か障害者枠かの選択 ・無料でリワークを行う行政機関の予約が取れないこと ・費用負担の問題(企業か、個人か)  就職したときは一般雇用だった人が、過酷な労働環境によるメンタルダウンによって精神障害と認定される状態になり、職場復帰をするときに、障害者枠での勤務にするかどうか、という大きな問題が出てきます。本来、従業員の潜在能力を活かすことが求められる職場において、逆にダウンしてしまう現象が、決して少なくないということに、多くの人がもっと注意を向けていかなくてはならないと感じました。  ひとたび職場を離れると、元に戻すには時間とエネルギーがかかります。本人の心、身体、金銭面などの負担が発生し、また企業側のダメージもとても大きいことがよく理解できました。だからこそ、重篤な状態にならないように、企業が職場環境を整備する必要もあるのではないでしょうか。同時に初期症状を自分でも気づくことができるような、メンタルヘルス教育が重要であると痛感しました。 企業側が知っておくべきリワークの意義  障害者雇用を担当する企業の人事・労務担当者にとって、精神障害のある従業員の「定着」は大きなテーマです。特にうつ病を含む気分障害は、就労しても長続きしないという課題があり、定着において支援が必要とされます。  リワークプログラムに参加した従業員は、単に症状が改善しただけでなく、「自分の強み・弱みを理解し、セルフマネジメントができる」状態に近づいています。企業にとっては、このようなプロセスを経た復職者をよく理解することで、精神障害のある従業員の定着につながる知識が得られると考えます。  また、企業と医療機関が協働することで、「この企業は復職を支援してくれる」という安心感が職場内に広がり、社員のエンゲージメント向上にもつながるのではないでしょうか。 導入・活用のヒント  現在、リワークプログラムを実施する機関では、企業側からの相談にも対応しています。まずは地域にどのような支援資源があるのかを把握することが第一歩です。加えて、以下のような企業内での制度整備が必要です。 ・復職に関する社内ガイドラインの整備 ・リワーク利用時の社内フロー明文化 ・通勤練習期間や時短勤務など合理的配慮の設定 ・人事担当者のメンタルヘルス研修の実施  こうした取組みを通じて、メンタル不調に陥った社員が「戻れる場所がある」と感じられる職場環境を整えることが、求められています。 まとめ  今回、筆者がリワークを取り上げるきっかけとなったのは、とある公的機関の医師が「最近、休職者は企業から復職前にリワークプログラムの受講を決められている場合が多く、費用のかからない公的機関は数カ月の順番待ちである」と発言したのを耳にしたからでした。費用がかかるのは、どのような機関なのか、違いは何なのかと疑問がわきました。今回は医療機関のデイケアと就労移行支援事業所を取材し、それぞれの特徴を知ることができました。  職場にはストレスがつきものですが、昔に比べると対処しきれず、身体に変調をきたしてしまう人が増えているような感覚を持ちます。もちろん職場だけではなく、家庭などの生活面にもストレスは多く存在します。  取材でみえてきたのは、安心して「しんどさ」を正直に語れる場所をみつけられない人がじつに多いということでした。日々のつらさが極まったとき、メンタルと身体症状の崩れが起き、休職や離職につながります。ですが、リワークのような信頼できる人と場所に出会え、自分の気持ちを言葉にしたとき、傷が癒え、回復していくのも事実です。  リワークプログラムの進化や、医療者、支援者の熱意と努力をすばらしいと感じました。しかし、かかわるみなさんが「じつは、リワークプログラムが不要となる世界を求めている」と発言していたのも事実です。そもそも、職場でのメンタルダウンが発生しなくなるような取組みについての情報がもっと広まり、減らしていきたいと願う機運が高まることが重要なのではないか、と思いました。 ※精神科デイケア: 精神障害者の社会生活機能の回復を目的として、個々の患者に応じたプログラムにしたがってグループごとに治療するもの。実施される内容の種類にかかわらず、その実施時間は患者一人あたり一日につき6時間を標準としている(精神科医師、作業療法士、精神保健福祉士、臨床心理技術者、看護師などが在籍する) 写真のキャプション (右下写真提供:NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク JSN東京) 医療法人社団心緑会 小石川メンタルクリニック 医療法人社団心緑会の理事長で小石川メンタルクリニック院長の山田浩樹さん 小石川メンタルクリニックリワークデイケア精神保健福祉士の瀬戸口和久さん 小石川メンタルクリニックリワークデイケア作業療法士の高田勝太さん グループワークルームでのプログラムの様子。利用者が進行役となってクイズゲームが行われていた NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワークJSN東京 大阪精神障害者就労支援ネットワーク統括施設長の茂木省太さん JSN東京の所長で精神保健福祉士の井川幸恵さん JSN東京の就労支援員で訪問型職場適応援助者の全形文さん JSN東京の就労支援員で訪問型職場適応援助者の全形文さん Jcoresプログラム 機能選択画面(画像提供:VCAT-J研究会) Jcoresプログラム ゲームタイトル画面(画像提供:VCAT-J研究会) 【P26-27】 省庁だより 令和7年度 障害保健福祉部予算の概要(2) 厚生労働省 障害保健福祉部 ※1および2の1までは、前号に掲載しました。 https://www.jeed.go.jp/disability/data/works/book/hiroba_202506/index.html#page=28 2 地域移行・地域定着支援などの精神障害者施策等の推進 2 精神科救急医療体制の整備 18億円(18億円)  地域で生活する精神障害者の病状の急変時において、早期に対応が可能な医療体制及び精神科救急情報センターの相談体制を確保するため、引き続き地域の実情に応じた精神科救急医療体制を整備する。  また、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に資する精神科救急医療体制整備を推進するとともに、依存症患者が救急医療を受けた後に適切な専門医療や支援等を継続して受けられるよう、依存症専門医療機関等と精神科救急医療施設等との連携体制を構築する。 3 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に関する医療提供体制の整備の推進 188億円(192億円)  心神喪失者等医療観察法に基づく医療を円滑に行うため、引き続き指定入院医療機関を整備し、地域偏在の解消を進める。  また、指定医療機関の医療従事者等を対象とした研修や指定医療機関相互の技術交流等により、更なる医療の質の向上を図る。 【令和6年度補正予算】 ・心神喪失者等医療観察法指定入院医療機関施設整備事業 7.3億円  心神喪失者等医療観察法指定入院医療機関の医療観察法病棟について、防災・減災の観点から、大規模修繕に必要な施設整備を実施する。 4 アルコール健康障害対策・薬物依存症対策・ギャンブル等の依存症対策の推進 @アルコール・薬物・ギャンブル等の依存症対策の推進 8.4億円(8.4億円)  アルコール、薬物、ギャンブル等の依存症患者やその家族等が必要な治療や支援を受けられるよう、全国拠点機関において、依存症対策に携わる人材の養成等に取り組む。  また、都道府県等において、依存症の治療・相談支援等を担う人材を育成するとともに、相談拠点や専門医療機関等の設置を行うことにより、各地域における医療・相談支援体制の整備等を推進する。  さらに、相談支援や普及啓発等に全国規模で取り組む民間団体を支援するとともに、依存症の正しい理解を深めるための普及啓発を実施する。 【令和6年度補正予算】 ・依存症に係る医療の充実等を図るための支援 2.2億円  アルコール依存症、薬物依存症、ギャンブル等依存症及びゲームに関連する問題など、依存症の実態解明や地域の現状・課題に関する調査研究を実施し、依存症対策を推進する。 Aアルコール健康障害対策の推進 8百万円(12百万円)  アルコール健康障害対策基本法及びアルコール健康障害対策推進基本計画に基づき、飲酒に伴うリスクに関する知識の普及啓発や、都道府県におけるアルコール問題に関する横断的取組を支援する。 5 高次脳機能障害及びその関連障害に対する地域支援ネットワーク構築の促進 1.3億円(1.3億円)  高次脳機能障害の当事者への専門的相談支援及び医療と福祉の一体的な支援を普及・定着させるため、高次脳機能障害の診断及びその特性に応じた支援サービスの提供を行う協力医療機関(医療機関、リハビリ機関等)及び専門支援機関(就労支援機関、教育機関等)を確保・明確化する。さらに、地域の関係機関が相互に連携・調整を図り、当事者やその家族等の支援に資する情報提供を行う地域支援ネットワークを構築し、切れ目のない充実した支援体制の促進を図る。 6 てんかんの地域診療連携体制の整備 31百万円(31百万円)  てんかんの治療を専門的に行っている医療機関を「てんかん支援拠点病院」として指定し、関係機関との連携・調整等の実施及び各支援拠点病院で集積された知見の評価・検討を行うため「てんかん全国支援センター」を設け、専門的な相談支援や関係機関との連絡・調整を担う人材の確保や養成等を行い、てんかんの診療連携体制を整備する。 7 摂食障害治療体制の整備 23百万円(23百万円)  摂食障害の治療を専門的に行っている医療機関を「摂食障害支援拠点病院」として指定し、関係機関との連携・調整等の実施及び各支援拠点病院で集積された知見の評価・検討を行うため「摂食障害全国支援センター」を設け、摂食障害の診療連携体制を整備する。 8 こころの健康づくり対策等の推進 78百万円(89百万円)及び地域生活支援事業等の内数  精神疾患を有する方への早期の専門的対応を充実するため、かかりつけ医や精神保健医療福祉関係者等への研修を実施するほか、うつ病などの治療で有効な認知行動療法の研修を実施し、治療の質の向上を図る。また、精神保健上の問題による自殺対策のうち、自殺のハイリスク者で再企図の多い自殺未遂者の再企図を防ぐための医療従事者研修等を実施し、医療提供体制を構築する。 9 公認心理師実習演習担当教員及び実習指導者養成講習会事業 33百万円(33百万円)  公認心理師の質の維持・向上のため、公認心理師となるために必要な科目を教授する実習演習担当教員及び実習施設において必要な科目を指導する実習指導者を養成するための講習会を実施する。 10 虐待対応体制整備の支援 41百万円(41百万円)  令和4年の精神保健福祉法改正により、令和6年4月以降においては、精神科病院の業務従事者による虐待を受けたと思われる患者を発見した者は速やかに都道府県・指定都市に通報することが義務付けられたため、精神科病院に対する指導監督権限を有する都道府県・指定都市において、精神科病院における虐待防止措置を支援するとともに、虐待通報窓口を設置し、虐待事案に対し適切な対応をするために必要な経費について財政的支援を行うことにより、虐待の防止や障害者の保護等の対応ができる体制を整備する。 3 発達障害児者の支援施策の推進 1 強度行動障害を有する者に対する地域支援機能の強化 @広域的支援人材の配置及び集中的支援の実施、支援のネットワークの構築等の推進 4.3億円(4.3億円)  著しい行動障害が生じているなどの難しい事案に対応する現場の職員を支援するため、高い専門性を有する「広域的支援人材」の発達障害者支援センター等への配置を推進する。  また、強度行動障害を有する者に対する支援人材が連携した支援の実施や、支援者同士での意見交換や情報共有等の取組を進めるため、ネットワーク構築を推進する。 A強度行動障害者支援のための中核的人材養成 【令和6年度補正予算】 ・強度行動障害者支援のための中核的人材養成研修事業 21百万円  強度行動障害者支援について専門性の高い中核的人材を養成するとともに、令和9年度から全国の都道府県で中核的人材養成が開始できるよう、研修指導者の養成及び研修指導者が活用する教材の開発等を実施する。 2 発達障害の初診待機解消に関する取組の推進 93百万円(93百万円)  発達障害児者の診断に係る初診待機の解消を進めるため、発達障害の医療ネットワークを構築し、発達障害の診療・支援ができる医師の養成を行うための実地研修等の実施や医療機関におけるアセスメント対応職員の配置を進める。 3 発達障害児者とその家族に対する支援 1.6億円(1.6億円)  都道府県及び市町村において、同じ悩みを持つ本人同士や発達障害児者の家族に対するピアサポートや発達障害児者の家族に対するペアレントトレーニング、青年期の発達障害者に対する居場所作り等を実施することにより、発達障害児者及びその家族の支援を推進する。 4 教育と福祉の連携の推進 地域生活支援事業等の内数  市町村内における家庭・教育・福祉の連携促進及び地域支援対応力の向上を図るため、教育委員会や福祉部局、学校、障害児通所支援事業所等の関係者が障害児への切れ目ない支援について協議を行う場の設置や福祉機関と教育機関等との連携の役割を担う「地域連携推進マネジャー」を市町村に配置する。 4 障害者に対する就労支援の推進 1 雇用施策と福祉施策の連携による重度障害者等の就労支援 7.7億円(7.7億円)  重度障害者等に対する就労支援として、雇用施策と福祉施策が連携し、企業が障害者雇用納付金制度に基づく助成金を活用しても支援が充分ではない場合や、重度障害者等が自営業者として働く場合等で、自治体が必要と認めた場合に、必要な就労支援を行う。  また、事業実施市町村におけるHPやリーフレット等による周知・広報等の取組を支援する。 2 工賃向上等のための取組の推進 5.8億円(5.8億円)  一般就労が困難な障害者の自立した生活を支援する観点から、就労継続支援事業所などに対し、経営改善、商品開発、市場開拓や販路開拓等に対する支援、在宅障害者に対するICTを活用した就業支援体制の構築や販路開拓等の支援等を実施する。  また、全都道府県において、関係者による協議体の設置により共同受注窓口の機能を強化することで、企業等と障害者就労施設等との受発注のマッチングを促進し、障害者就労施設等に対する官公需や民需の増進を図る。さらに、農業等の専門家派遣や伴走型コーディネーターの活用によるマッチングから事業実施までの支援等を行い、農福連携等の推進を図る。 【令和6年度補正予算】 ・就労継続支援A型事業所の経営改善モデル事業 2.9億円  直近の生産活動収支が赤字であるA型事業所に対して、生産設備の導入に加え、指定権者である自治体との連携や経営改善コンサルタントによる各種分析・業務開拓等を併せて実施することにより、赤字から黒字へ転換するノウハウを収集し、横展開するモデル事業を行う。 ・障害者就労施設における生産活動の効率化に資するICT機器等の導入事業 3.1億円  障害者就労施設における、障害者が従事することができる業務範囲の拡大や、従事する作業の効率化を図るため、ICT機器や工作機械・治具、その他効率化するために必要となる機械の導入支援を行う。 ・障害者就労施設における就労支援事業会計の管理・経営改善支援等事業 3.2億円  障害者就労施設に実効性のある経営改善計画の策定等に向けて、都道府県等において、事業所に対する就労支援事業会計に関する専門家派遣や相談窓口の設置、事業所から提出される指定申請や事業計画書について経営面から精査・助言する専門家の活用を実施する。 ・農福連携プラス推進モデル事業 1.3億円  農業以外の林業や水産業、伝統工芸等の分野を中心に、農福連携等に取り組む障害者就労施設に対して、マッチング、立ち上げ支援(機器等導入・初期運用支援)に係る費用を一括的に支援するとともに、コーディネーターが伴走することで、より効果的な事業実施・検証・事例報告までを一気通貫したモデル事業を行う。  モデル事例の報告を受け、全国へ事例の共有を行い、農業以外の分野も含めた障害者の就労支援の取組を推進する。 3 障害者就業・生活支援センター事業の推進 7.9億円(7.9億円)  就業に伴う日常生活の支援を必要とする障害者に対し、窓口での相談や職場・家庭訪問等による生活面の支援などを実施する。 4 就労選択支援員養成研修の実施 【令和6年度補正予算】 ・就労選択支援員養成研修等の実施 70百万円  国が実施主体となって就労支援員養成研修を実施する。また、順次、就労選択支援の対象となる就労継続支援A型の新規利用者等について、モデル的な取組を通じて課題やノウハウを収集し、マニュアル等を作成する。 5 東日本大震災等の災害からの復旧・復興への支援 1 「第2期復興・創生期間」の終了を見据えた障害福祉サービスの再構築支援(復興) 24百万円(29百万円)  令和7年度に「第2期復興・創生期間」が終了することを見据え、期間終了後の障害福祉サービスの提供体制の確保や事業所の自立を図るための事業に要する費用について、財政支援を行う。 2 避難指示区域等での障害福祉制度の特別措置(復興) 10百万円(15百万円)  東京電力福島第一原発の事故により設定された帰還困難区域等及び上位所得層を除く旧緊急時避難準備区域等・旧避難指示解除準備区域等の住民について、障害福祉サービス等の利用者負担の免除の措置を延長する場合には、引き続き市町村等の負担を軽減するための財政支援を行う。 3 被災地心のケア支援体制の整備(復興) 被災者支援総合交付金(77億円)の内数  東日本大震災による被災者の精神保健面の支援のため、専門職による相談支援等を実施するとともに、自主避難者等への支援などを通じて、引き続き専門的な心のケア支援を行う。 【令和6年度補正予算】 ・被災者への心のケアの充実を図るための支援 1.5億円  令和6年1月の能登半島地震に加え、9月の石川県における大雨による被災者等への心のケアについて、仮設住宅や避難所等への訪問支援等の充実を図る。 ★本誌では通常西暦で表記していますが、この記事では元号で表記しています ※( )内は令和6年度予算額 【P28-29】 研究開発レポート 発達障害者の障害特性を踏まえた相談の進め方 障害者職業総合センター職業センター  障害者職業総合センター職業センター(以下、「職業センター」)では、発達障害のある人を対象としたワークシステム・サポートプログラム(以下、「WSSP」)の実施を通じて、発達障害の特性に応じた的確な支援を行うための技法開発・改良を行っています。  WSSPでは「作業」、「就労セミナー」、「個別相談」の各場面を関連づけながら支援を行います。また、「個別相談」においては「経験を振り返る」、「目標を設定し、実行する」、「実行したことを振り返る」という過程を通じて、発達障害者自身の困っていることや改善したいことについて解決策を見出し、解決に向けた一歩をふみ出すことなどを目的として実施しています。この一連の相談の流れは就労支援の場では多く行われると考えます。  発達障害のある人はその特徴の幅広さや現れ方の多様さから、相談において個別性の高い対応が必要となります。一方、相談の多くは個室で発達障害者と支援者の一対一で行われ、他者からのスーパーバイズを受ける機会はかぎられています。そのため、発達障害者との相談スキルは個人のなかで蓄積されていても、形式知として共有されにくい状況があります。  このような背景から、支援者の日々の実践をサポートするため、発達障害者との相談の進め方やコツについて、支援マニュアル28「発達障害者の障害特性を踏まえた相談の進め方」を取りまとめましたので、その概要についてご紹介します。 【相談の構造化】  相談が進んでいく過程とその構成要素を図1の通り整理しました。また、過程ごとに支援者が押さえるべきポイントを整理しました。なお、本支援マニュアルにおける「相談」とは、「経験を振り返り、目標を設定する。設定した目標を実行し、その結果をさらに振り返る」という一連の流れをさしています。 【過程1】相談の準備  発達障害者が安心して相談に臨めるよう、信頼関係の構築や環境調整など、相談を効果的に実施するための準備を行います。  本支援マニュアルでは、本人が落ち着いて安心できる相談環境を設定するため「感覚特性」、「コミュニケーション」、「注意」など、アセスメントが必要な項目をとりまとめ、アセスメント結果に基づいた相談時の工夫について紹介しています。また、相談の組立方法として、「相談の枠組みチェック表」を作成しました。相談の目的や取り上げる話題、相談の進め方、相談が終わった後の今後の予定などについて具体的に検討できるものとなります。 【過程2】共通認識の形成  相談で取り上げる話題を選定し、その状況を詳細に把握、確認、整理することで課題を絞り込み、行動変容に移行していくための意思決定を図ります。  共通認識の形成を行うにあたっては、まず、相談で取り上げる話題(テーマ)について優先順位を確認し、どの話題から取り上げるかを協議します。相談で取り上げる話題が決まったら、その状況について「事実」と「本人が感じたこと」を分けて整理するなど詳細を確認することで課題の絞り込みを行い、行動変容に向けた意思決定を行います。この際、支援者は「課題」や「できなかったこと」だけではなく、本人の持っているスキルや強みに着目すること、また、本人の「気づき」や「主体性」を大切にして支援を行うことが重要です。 【過程3】目標設定  課題に対する具体的な行動目標を決め、目標達成に向けた準備を行います。  本支援マニュアルではSMART理論(※)を参考に「課題に対して目標が適切か」、「実行可能か」、「いつまでに実行するか」といった具体的な行動目標を設定する際に検討すべき点をまとめています。 【過程4】取組結果の振返り  行動目標に取り組んだ結果を振り返り、今後の展開について検討します。  振返りは設定した取組期間の終了後、速やかに行います。振り返る際には、達成できた、できなかっただけではなく、「どの程度達成できたか」、「目標達成のためにどんな工夫を行ったか」、「取組みの前後で本人の気持ちや周囲の反応の変化はあったか」などを振り返ります。取組みの結果、課題に対して期待する結果が得られなかった場合は、目標設定が適切であったかなどを検討することが必要です。  発達障害者のなかには、相談だけでは行動後のイメージが持ちにくく、行動し、その結果を振り返ることでその効果を感じ取れる人もいます。そのような人にとっては、振返りを行うことで、新たな視点を獲得し、行動の継続や変容の動機づけとなる場合もあります。 【支援ツールの整理】  相談で支援ツールを活用することは、効率的に情報を整理したり、俯瞰(ふかん)的かつ客観的に事象をとらえることができるなどメリットがあります。職業センターではこれまでにWSSPの実践を通じて、発達障害者への支援ツールを複数開発してきました。そのなかには相談で活用できるものもありますが、発達障害者の幅広い特徴や想定される活用場面に応じて作成されてきたため、支援ツールの使い分けが必要となっていました。  本支援マニュアルでは、過去に開発した支援ツールについて、目的や使用する場面、活用のコツなどを整理し、表にまとめました。あわせて、各支援ツールが把握、整理できる範囲を示した支援ツール関連図(図2)を作成しました。 【支援者の相談スキルの振返り】  効果的な相談のためには、支援者は本人の特徴をとらえ、その特徴に応じた対応や工夫を意図的に選択することが大切です。そのためには、支援者自身が自らの性格や認知の特徴、他者とのかかわり方の傾向、相談スキルの現状を理解するとともに、必要なスキルや工夫の仕方を研鑽(けんさん)し、身につけていくことが必要です。  支援者の相談スキルの振返りの一助となることを目的に「就労支援における発達障害者との相談スキルのチェックリスト」を作成しました。相談スキルについて、全体の振返りとして活用できるほか、特定の対象者との相談において、より意識するとよい点などを検討するためにも使用できます。 【対応のヒント集】  支援者へのヒアリングなどで収集した発達障害者との相談においてよくある場面(「話題が拡散しやすい」、「相談時間が超過する」、「『はい』と返事をするが行動化されない」など)での対応や実践例を紹介しています。相談場面において、対応に迷われた際のヒントとして活用いただけます。 *****  支援マニュアル28「発達障害者の障害特性を踏まえた相談の進め方」は、障害者職業総合センターホームページに掲載しています(★1)。また、冊子の配付を希望される場合は、当センターに直接ご連絡ください(★2) ※(29ページ)SMART理論:目標を効果的に設定する際に検討すべき重要な点をまとめたフレームワーク ★1「支援マニュアルNo.28」は、https://www.nivr.jeed.go.jp/center/report/support28.htmlよりダウンロードできます。 ★2 障害者職業総合センター 職業センター TEL:043-297-9043 https://www.nivr.jeed.go.jp/center/index.html 図1 相談の過程と構成要素 相談の過程 1 相談の準 2 共通認識の形成 3 目標設定 4 取組結果の振返り 各過程の構成要素 ・信頼関係の構築 ・相談の準備に必要なアセスメント ・アセスメント結果に応じた相談時の工夫 ・相談の組立 ・相談で取り上げる話題と優先順位の選定 ・状況の整理と課題の絞り込み ・課題に取り組む準備の確認 ・主体的な課題の取組に向けた関わり ・行動変容に向けた具体的な目標の設定 ・目標達成に向けた準備 ・取組結果の振返り ・次の目標、または今後の展開の検討 図2 支援ツール関連図(一部抜粋) ストレス関連 ●ストレスサインの把握 Cストレス対処整理シート(ストレス温度計) ストレスに応じた休憩のとり方 E休憩のとり方チェックシート ストレスと環境の相互作用 G職場環境適応プロフィール L感覚特性チェックシート さらに詳細を確認する M特性対処のヒント集 ●ストレス対処方法の検討 Dストレス対処法整理シート F体験整理シート(2023版) 対処方法の実行 ○22 SOCCSS法 実施用紙 写真のキャプション 支援マニュアルNo.28 【P30】 ニュースファイル 地方の動き 神奈川 民官連携の農園開設  横須賀市は、日建リース工業株式会社(東京都)との協働により、障害者雇用の場の創出を目的とした「はーとふる農園よこすか」の開設を発表した。あわせて障害者の就労機会の創出等を目的とする包括連携協定を両者で締結した。  農園は、市有地を活用し、同社の仮設資材を活用した『高床式砂栽培』を導入。2027年までにビニールハウス9棟などを段階的に開設し、計60人の障害のあるスタッフの雇用を予定している。ベビーリーフ栽培からスタートし、種植えから間引き、収穫を毎日行いながら、日ごろの作業成果をふり返ることができる。収穫物は、直売所や飲食店、スーパーなどで販売。また、市内学校の児童生徒を対象とした農園見学の実施や、市民を対象とした農園体験イベントなども予定している。問合せは横須賀市財務部FM推進課まで。 電話:046−822−8518 山口 芸術文化活動を支援  山口県は、障害者の芸術文化活動を通じたさらなる自立や社会参加の促進を図るため、「山口県障害者芸術文化活動支援センター」を、山口県障害者社会参加推進センター(山口市)に設置した。  おもな事業は、@「相談支援」…障害者の芸術文化活動における支援方法や創造環境の整備、権利の保護、鑑賞支援、作品の販売・公演などに関する相談に対応。A「人材育成」…多様な分野で芸術文化活動にかかわる人や団体に対し、支援方法や権利保護などに関するセミナーを開催。B「芸術文化活動(鑑賞・創造・発表等)に参加する機会の確保」…鑑賞・創造・発表などに参加する機会の確保、書道・写真講座など創作活動の場を提供するほか、山口県障害者芸術文化祭の作品展示会やステージ部門(太鼓やダンス)などを開催。C「ネットワークの構築、情報収集・発信」…ネットワークの構築や作品・作家などの情報収集・発信、などとしている。問合せは同センターまで。 電話:083−928−5432 神奈川 LINEで就労関連情報  神奈川県は、コミュニケーションアプリ「LINE」を活用し、障害者雇用について、当事者が働く前に必要な情報や、企業などが雇用するときに役立つ情報を発信する「かながわ障がい者就労サポート」の運用を開始した。愛称は、ともワク(「ともにワーク」の意)。  LINEの公式アカウント「かながわ障がい者就労サポート」を登録すると、@障害のある当事者向けに、就職面接会の開催や職場体験など働く前に必要な情報がプッシュ配信される。職業訓練に関する情報や就職活動の進め方などについて調べることができる。A企業向けに、補助金・助成金や雇用事例など、障害者雇用に役立つ情報を調べることができる。企業交流会やセミナーなどのイベント開催情報がプッシュ配信される。B位置情報から就労支援機関を検索できる。詳しくは県のホームページで。 https://www.pref.kanagawa.jp/docs/z4r/linesyogai-syuro.html 生活情報 全国 発達特性ある学生の「困り感」調査  公益財団法人日本財団(東京都)は、学生生活や就職活動に困難を感じている学生を対象にした調査結果を公表した。  Web定量調査で得られた有効回答数は、全国の20〜25歳までの1万7398人で、うち学校生活や日常生活に強い困り感を持つ若者は14%。これは全国の20〜25歳(約714万人)から推計すると約100万人にのぼるという。  学校生活での困り感としてもっとも高かった「人前で発表することがとても苦手」は、全体32.3%に対し、困り感の強い人は63.3%と30ポイント超の差があった。また、時間割や履修登録に関しては「時間割を組むことが苦手だった」は全体7.4%、困り感の強い人は28.8%、「必要な単位の把握や履修登録等の手続きが難しく、一人でできなかった」が全体6.2%、困り感の強い人は24.3%で、それぞれ差があった。さらに、強い困り感を持つ学生のうち就職活動で何らかの困難を感じた人は97%にのぼった。詳細は日本財団ホームページで。 https://www.nippon-foundation.or.jp/who/news/information/2025/20250327-110405.html 全国 障害者支援の財団設立  株式会社アシックス(兵庫県)は、運動・スポーツにかかわる社会課題に取り組む一般財団法人ASICS Foundation(アシックスファウンデーション)を設立した。社会的または経済的に困難な状況にある青少年、障害のある人、女性などに対する運動・スポーツを通した支援を提供する団体への助成などを行う。  当面は、事業や生産拠点がある国と地域(ベトナム、インドネシア、インドなど)や日本での取組みを予定。助成などを通じてスポーツの普及活動、スポーツ大会やイベントの開催、スポーツプログラムの実施、指導者の育成、スポーツコンテンツの開発といったソフトインフラの整備、また、学校や公園のグラウンド・スポーツ施設の整備、スポーツ用品の提供といったハードインフラの整備をおもに行っていく。元パラリンピック水泳選手の一ノ瀬メイさんも理事を務めている。 茨城 JAXA展示館がアクセシビリティ向上  JAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)筑波宇宙センター(つくば市)の展示館「スペースドーム」が約10カ月間にわたる老朽化対策工事を終え、聴覚障害や視覚障害のある人向けのアクセシビリティを向上させて開館を再開した。  「スペースドーム」は、実物大の人工衛星や本物のロケットエンジン、国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟の実物大模型などを展示している。今回、新型ロケット「H3」や気候変動を予測する人工衛星「しきさい」などの小型模型について手に取って触れられるようにした。また模型の名前などを紹介する点字を設置し、宇宙活動の紹介映像に字幕がついた。  リニューアルにあたっては聴覚障害や視覚障害のある学生が学ぶ国立大学法人筑波技術大学(つくば市)も協力し、展示物に触れる模型があるとよいことや、展示パネルの視認性などについて教職員がアドバイスをしたほか、学生らも実際に訪れて改善点などを伝えた。開館時間は10時〜17時(見学受付は9時30分〜16時30分)、入場無料、不定休。 本紹介 『発達障がいの子の進学と就労サポートブック』  児童青年精神科医で、日本発達障害ネットワーク理事長や日本自閉症協会会長を務める市川(いちかわ)宏伸(ひろのぶ)さんが、『発達障がいの子の進学と就労サポートブック』(成美堂出版刊)を出版した。  本書では、発達障害のある子どもが自立して就労し、充実した人生を送るために「親にできること」、「知っておくべきこと」を中心に解説。まず発達障害について、よく見られるサインや専門医につながるルート、中学・高校・大学での支援体制、専門的な職業教育を行う高等特別支援学校とその職業教育について紹介している。さらに「働くこと」と就労支援をテーマに、進路事例や相談窓口、若年コミュニケーション能力要支援者就職プログラムについて紹介し、障害者トライアル雇用、中小企業による障害者雇用などをテーマにしたコラムも掲載している。A5判160ページ、1540円(税込み)。 【P31】 ミニコラム 第47回 編集委員のひとこと ※今号の「編集委員が行く」(20〜25ページ)は三鴨委員が執筆しています。ご一読ください。 働く場所が幸せな場所になるために 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子  「職場」と「精神疾患」の関係を考えるとき、精神疾患のある人が就労するケースと、働く人が職場で精神疾患になるケースがあります。職場にはストレスがつきものですが、それが精神疾患の原因になるほどであれば、看過することはできません。私の少ない経験のなかでも、職場でつらい経験をして、精神障害と認定されるまでになってしまった人に、いままで何人も会ってきました。  職場全体がさまざまなことに追われていて、従業員の心身に気を配ることができなくなっているのか、働く人のストレス耐性が低くなっているのか、はたまた両方なのか。  今号の二カ所のリワークの取材で、共通して出てきたのは、「多くの人が、集団でのかかわり合いによって回復していく」というお話でした。  さまざまな情報共有ツールの発展やテレワークの普及で、リアルに顔をあわせて仕事をする機会が減っています。昨今では、わからないことは何でも生成AIに聞くことが増え、ますますコミュニケーションの機会が減っています。コミュニケーションが苦手と感じる人が増えても仕方がない状況です。  それでも、人が元気を取り戻すのは、人との関係からという事実。だからこそ、「相手のことを思いやる気持ち」を大切にしてみる。そんなことを考える機会となりました。 【P32】 掲示板 国立職業リハビリテーションセンター 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 指導技法等体験プログラムのご案内 訓練場面の見学や体験等を通して、疑問や不安を解消しませんか?  職業訓練上特別な支援を要する障害のある人の職業訓練技法等について理解を深め、新たな受入れや受入れの拡大に向けた今後の検討の参考にしていただくことを目的に、訓練場面の見学や体験等を行う『指導技法等体験プログラム』を実施しています。  障害者の職業能力開発のあらまし、障害者職業訓練の構成と運営等を学ぶ「障害者職業訓練初任者コース」や、発達障害者・精神障害者の特性、生活チェックシートの活用、訓練教材の体験(データ入力課題)等を学ぶ「支援入門コース」など幅広いコースを設置しておりますので、ぜひご参加ください。詳細については、下の二次元コードよりご確認ください。 お問合せ先 国立職業リハビリテーションセンター 職業指導部 技法普及課 〒359-0042 埼玉県所沢市並木4-2 TEL:04-2995-1144 E-mail:shokureha-giho@jeed.go.jp 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 職業訓練部 訓練第二課 〒716-1241 岡山県加賀郡吉備中央町吉川7520 TEL:0866-56-9045 E-mail:kibireha-giho@jeed.go.jp 雇用管理や人材育成の「いま」・「これから」を考える人事労務担当の方、ぜひご覧ください! メールマガジン好評配信中! 詳しくは JEED メルマガ 検索 次号予告 ●私のひとこと  筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター教授の白澤麻弓さんに、聴覚障害者に対する情報保障支援の現状と今後の見通しについて、ご執筆いただきます。 ●職場ルポ  全農チキンフーズ株式会社の子会社で、町の基幹産業となっている鶏肉製造会社の住田フーズ株式会社(岩手県)を取材。地域の就労支援機関や特別支援学校より実習を受け入れ採用した障害のある従業員が、工場のラインで戦力となって活躍している姿を紹介します。 ●グラビア  タイム技研株式会社の子会社で、ガス製品や水製品のバルブの製造などを行うタイム技研高知株式会社(高知県)を訪問。障害のある従業員の作業スピードに合わせ作業量を設定するなど、障害に配慮した同社の取組みをお伝えします。 ●編集委員が行く  大塚由紀子編集委員が、ヤマトホールディングス株式会社の特例子会社、株式会社スワン(東京都)を取材。障害のある人の働く選択肢を広げる取組みについて執筆します。 公式X(旧Twitter)はこちら! 最新号発行のお知らせやコーナー紹介などをお届けします。 @JEED_hiroba 編集委員 (五十音順) 株式会社FVP 代表取締役 大塚由紀子 トヨタループス株式会社 取締役 大野聡士 NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク 副理事・統括施設長 金塚たかし 弘前大学教職大学院 教授 菊地一文 サントリービバレッジソリューション株式会社 人事本部 副部長 平岡典子 武庫川女子大学 准教授 増田和高 神奈川県立保健福祉大学 名誉教授 松爲信雄 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 筑波大学大学院 教授 八重田淳 国際医療福祉大学 准教授 若林功 あなたの原稿をお待ちしています ■声−−障害者雇用にかかわるお考えやご意見、行事やできごとなどを500字以内で編集部(企画部情報公開広報課)まで。 ●発行−−独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 鈴井秀彦 編集人−−企画部次長 綱川香代子 〒261-8558 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-2 電話 043-213-6200(企画部情報公開広報課) ホームページ https://www.jeed.go.jp メールアドレス hiroba@jeed.go.jp ●編集委託−株式会社労働調査会 〒170-0004 東京都豊島区北大塚2-4-5 電話 03-3915-6415 FAX 03-3915-9041 7月号 令和7年6月25日発行 無断転載を禁ずる ・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。また、本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。 【P33】 読者アンケートにご協力をお願いします! よろしくお願いします いつもご愛読いただき、ありがとうございます。 「働く広場」では、よりよい誌面をつくるため、読者アンケートを実施しています。 ぜひみなさまの声をお聞かせください。 お待ちしています! 回答方法 今号に同封した「読者アンケート」用紙にご記入のうえ、FAXにてお寄せください。 FAX 番号はこちら → 043-213-6556 Webでの回答も可能です。 コードはこちら ※カメラで読み取ったリンク先がhttps://krs.bz/jeed/m/hiroba_enquete であることを確認のうえアクセスしてください 【令和6年度読者アンケート結果の一部より】 ご回答者の所属先 民間企業55.1% 障害者福祉施設(就労支援機関を含む)・団体18.6% 学校・教育機関6.0% 医療機関3.8% 国、地方公共団体の機関6.9% 個人1.9% その他(社会福祉協議会、介護施設、NPO法人など)6.6% 無回答1.1% 「働く広場」は参考になっていますか? 非常に参考になる 30.1% 参考になる 57.8% あまり参考にならない 6.9% 参考にならない 1.6% 無回答 3.6% 参考になったコーナーとその理由 【職場ルポ】 コミュニケーションの取り方、各々の会社で工夫されている点、作業内容、職場定着の工夫、特性に応じた分業、支援の内容、作業の切り出し、現場の実態が参考になる。/一人ひとりが活躍していること、温かいサポートが具体的に伝わる内容だったから。 【グラビア】 実際に働いている様子が写真でわかりやすく解説されていた。 【編集委員が行く】 足を使って取材された生の声を多く記事に盛り込んでおられる点がたいへん参考になった。/職業能力開発校の存在、また発達障害者や精神障害者の職業訓練に重要な役割を果たしていることを知ることができた。 企画部 情報公開広報課 TEL:043-213-6200 【裏表紙】 障害のある方の職業訓練校 国立職業リハビリテーションセンター 中央障害者職業能力開発校 受講生募集 受講料 無料 就労希望の 職種に合わせて選べる17コース!! メカトロ系 機械設計科 電子機器科 テクニカルオペレーション科 建築系 建築設計科 情報系 OAシステム科 DTP・Web技術科 ビジネス系 経理事務科 OA事務科 オフィスワーク科 物流系 物流・資材管理科 職域開発系 アシスタントワーク科 オープンキャンパス 毎月開催 職リハ ホームページで訓練内容や施設の説明がご覧になれます。 お問合せ先 職業指導部職業評価課(〒359-0042 埼玉県所沢市並木4丁目2番地) 電話:04-2995-1201 E-Mail:shokureha-hyokaka@jeed.go.jp Web:http://www.nvrcd.jeed.go.jp 7月号 令和7年6月25日発行 通巻573号(毎月1回25日発行)